理屈が通らねえ

理屈が通らねえ (角川文庫)

理屈が通らねえ (角川文庫)

  • 作者: 岩井三四二,西のぼる
  • 出版社/メーカー: 角川書店(角川グループパブリッシング)
  • 発売日: 2013/03/23
  • メディア: 文庫
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苦労して解いた算法の難問「十字環」に、旅の算法者が新しい解き方を示したという。面目を潰された江戸算法塾・長谷部塾の二文字厚助は、“刀を抜かぬ果たし合い”をすべく、謎の算法者を追う旅に出た。ある日、山の土地分割を巡り争う村に立ち寄った厚助は、得意の算法を使い山を測ってやるのだが…。事件、騒動、銭勘定。算法ならば通る理屈も、人の世ではまるくおさまるためしなし。悪戦苦闘の珍道中、痛快時代小説。

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はて、面妖

はて、面妖 (光文社時代小説文庫)

はて、面妖 (光文社時代小説文庫)

足利義昭を京から放逐し、織田信長が天下人となった。幕府御用絵師として将軍家に代々仕えていた狩野家では信長に絵を献上することにし、四代目を継ぐべく若手絵師の源四郎に選定を託した。源四郎は、無謀にもかつて足利義輝に注文された屏風絵を信長に献上することに決めるのだが―(「花洛尽をあの人に」)。戦国の世、歴史に埋もれた人間模様を描いた傑作。

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亀井琉球守

亀井琉球守 (角川文庫)

亀井琉球守 (角川文庫)

「親の仇が、いまや味方か―」尽きぬ戦のなか、恩賞をめぐる一喜一憂も束の間、ひとたび気働きを怠れば、そこには我が身と一族郎党の死が待っている。毛利に滅ぼされた尼子党にあって、秀吉・家康という天下人の下を生き延び、流浪の身から一代で因幡国鹿野の大名にまで出世した亀井茲矩。秀吉に「琉球」を願い出た男が、戦塵の果てに辿り着いたのは―。家族と家臣を守り抜き、乱世に夢を追い続けた男の波瀾の生涯を描く。

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村を助くは誰ぞ

村を助くは誰ぞ (講談社文庫)

村を助くは誰ぞ (講談社文庫)

尾張が美濃に攻め寄せるという。軍勢が村へ入れば村人たちには生き死にの大問題だ。オトナ衆の次郎衛門は戦火から村を守るため、織田勢から自軍の乱妨と略奪を禁止する命令書をとりつけようとするが…。戦乱の中で奔走する村人たちの、たくましさとせつなさを描いた表題作を始め、全6本の粒ぞろい歴史短編集。

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たいがいにせえ

たいがいにせえ (光文社時代小説文庫)

たいがいにせえ (光文社時代小説文庫)

応仁の乱以来、三十三年も途絶えている祗園御霊会を復活すべく三左衛門は洛中を駆け回っていた。だが、協力を得られた町は半分ほど。さらに幕府と対峙する延暦寺からは横やりが。病に苦しむ孫から「祗園さんのお祭り、連れてって」とせがまれる三左衛門は、悪疫から都を救うための御霊会を復興出来るのか(「祗園祭に連れてって」)。降りかかる無理難題に挑む人々を描いた七つの短編。

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難儀でござる

難儀でござる (光文社時代小説文庫)

難儀でござる (光文社時代小説文庫)

 友人から借りた紙袋いっぱいの本の中に紛れていた一冊。作者の岩井三四二さんのことは今まで全く知らず、作品を読むのも今回が初めてです。比較的最近活躍されている作家さんらしく、タイトルの語感、帯のコピーからしても、多分気楽に読める娯楽系の時代小説なんだろうと思って、気楽に読み始めました。
 が、読み始めてみればその予想は外れていました。時代は戦国時代。織田、今川、松平、北条、武田… などなど、この時代おなじみの武将たちの名前がぽんぽんと出てきます。なんと、これは戦国武将を扱った硬派な歴史小説だったのか… と、最初は面食らったのですが、次第に読み進めるうちに、やはり「難儀でござる」というタイトルから感じられるように、どことなく力の抜けた視点の物語ばかりで、少し安心しました。
 八編の短編からなるこの小説は、武田信直(武田信玄の先代)と今川氏親の時代に始まり、松平竹千代(後の徳川家康)が人質に取られ、織田信長が天下取りに後一歩のところまで近づき、そして勝頼(信玄の跡取り)とともに武田が滅び、最後は豊臣方と徳川方が関ヶ原で決戦を行うまで、時代を追って進んでいきます。
 しかし、物語の主題はそれら武将たちの活躍や隆盛そのものにはありません。その戦国時代の主役たちの影で、主に仕えて無理難題を背負い、右往左往する家来や周辺の人々。「へぇ、そんな背景があったのか」と感心してしまうような、歴史の脇役たちが主人公です。
 彼らのうちの一人は次のように思います。

豪華な城を持ち、何万貫文もの収入と何千人という家来を抱えていた大名であっても、ひとたび合戦に敗れてしまえば命をとられるし、逃れたとしても追いかけられる。大名とは、いや侍とは、なんともあさましい世渡りだろうか。

 そう、この小説は武士という世渡りの理不尽さを語った物語なのですが、どこかそこにはストレートな嘆きではなく、大らかさというか、生き生きとした空気を感じてしまいます。それはこの時代、実際に武士は武士として、日本の社会を動かす原動力として機能していたからなのでしょうか。江戸時代、存在意義を失った武士の方がよほど、どうしようもない悲壮感と絶望感、理不尽さを感じてしまいます。
 「難儀でござる」という一言からも、実は小説的な脚色にとどまらない、この時代の武士たちの本質を見たような気がしてきます。
 【お気に入り度:★★★★☆】