100名城スタンプを集めるという趣味をはじめて今年で4年目に入っています。これまでに集めたスタンプは先月訪れた伊予松山城で38個目となり、予想していたよりもかなり良いペースで進捗しているのですが、やはり後半にかけては、なかなか行きづらい城跡が残りがちで、だんだんとペースは落ちてくるはずです。
そんな100名城の中でも特にハードルが高いとされているのが、最北端かつ最東端に位置する名城跡である「根室半島チャシ跡群」です。100名城リストは北から順に番号が振られているので、この「根室半島チャシ跡群」はリストのトップにあって、堂々たる「No.1」という番号が振られています。
根室と言えば北海道のほとんど東端にあり、東京はじめ大抵の場所から行くには、遠くて時間もお金もかかりますが、とは言え場所は道東です。根室半島の先端には納沙布岬。その他周辺の見どころには事欠きません。どんなルートでどんな日程を組んだとしても、根室への道程は単純に旅として楽しめるはず。
そんなことを考えつつ、今年からはじめたマイル修行も兼ねて、週末一泊で根室までスタンプを押しに行ってくることにしました。
根室までどうやって行くのか?問題
まずは東京から根室までどうやって行くのかを抑えておきましょう。もちろん陸路や海路含めいろいろな手段がありますが、もっとも一般的な空路+レンタカーを利用しました。なお、さすがに今回は日帰りではありません(可能なんですけどね ^^;)。
まずは朝一番の飛行機で釧路空港へ飛び、そこからレンタカーで根室半島までは約160kmの道のりです。釧路-根室間には高速道路はありませんが、車に乗っている時間は片道2.5時間も見ておけば十分でしょう。そして、北海道ですからドライブルート全部が観光の一部です。
あるいはレンタカーを使わずに、敢えて釧路からJR根室本線(花咲線)で乗り鉄の旅をする手もあります。実際ダイヤを調べると、朝一の飛行機からバスと鉄道を乗り継いで、午後の早い時間に根室まで行けるし、その日のうちに釧路まで戻ってくることも可能です。
また空路に関しては、釧路空港よりも中標津空港の方が根室に近いのですが(ただしANAのみ運航)、羽田からの直行便は中標津到着が午後になってしまうので、その日のうちに根室の現地まで行っていろいろ見物するのは無理っぽいです。直行ではなくて新千歳乗り換えルートならば午前中に中標津空港までいけます。
釧路からR44をひたすら東へ
羽田から朝8時発のJAL541便に乗って釧路空港へ到着したのは9時40分頃でした。予約してあったレンタカーに乗っていざ根室へ向けて出発したのは10時過ぎです。根室への途中にある厚岸で昼ご飯を兼ねた寄り道をしましたが、それについては別途記事を書く予定です。
東へ向かう国道44号線は、5月の道東らしいとても美しい景色の中を真っ直ぐ貫く、素晴らしいドライブコースでした。
厚岸を過ぎてしばらく行った茶内あたりの風景です。雪はすっかり消え、緑の草が生えてきていますが、まだ気候的には春といった感じで気温は12℃くらいでした。
なお↑この写真は16:9になっていますが、上下トリミングしたのではなく2枚の写真からパノラマ合成したのち、16:9に切り取ったものです。拡大しないと分からないと思いますが、写真の左の方は牧場で牛さんがたくさん写っています。
ちなみに撮影場所はこんなところです。ここは茶内酪農展望台と言って、のどかな牧場の風景の中に、忽然とこんな鉄塔が建っていて登れるようになっています。わりとグラグラと揺れているし、足下もスカスカなので、ある程度の高さまで登ってくると、突然足がすくむような恐怖感を感じるアトラクション(?)でした。
道中はどこまで行ってもこんな風景が広がっていて、いちいち写真を撮っていたら全く前に進まなくなる状況です。ところどころ寄り道しながら道東の空気をたっぷり楽しみつつゆっくりと進んでいきます。短いながらも急ぐ旅ではないですから。
道東はどこでもそうなのかも知れませんが、R44周辺は牧場街道と言った感じでした。なので牛や馬がのんびり草を食んでる姿が車窓からも見られました。さらには野生のエゾジカも何頭か見かけましたし、根室の手前、風蓮湖あたりではタンチョウの姿(と多くのカメラマン)も見られました。
エゾジカについては、道路に出てくることが多く衝突事故が多発しているので注意するようにと、レンタカー屋さんで言われていましたが、幸い道路上で出会うことはありませんでした。
城とは何か?を問いかけてくる「根室半島チャシ跡群」を見物する
釧路から根室に向けて、約160kmに及ぶ楽しい寄り道だらけのドライブを経て、午後3時頃に根室半島に到着しました。いよいよ日本100名城のリスト番号 No.1にあげられた城跡を見物しましょう。
「根室半島チャシ跡群」はその名の通り「群」になっていて、根室半島の北側に広がる24のチャシ跡全体を指します。「ヲンネモトチャシ跡」はその中のひとつで、もっとも代表的かつ見学しやすい「チャシ跡」です。
さっそくのその「チャシ跡」とやらを見に行きましょう!
表示に従って進んでいくとこんなところに出ました。何もないのになぜか癒やされるこの景色! が、チャシ跡はどこ?
荒涼とした海沿いの平地を進んでいくと立派な説明板が表れました。ふむふむ、なるほど…
「チャシ」とは北海道の先住民であるアイヌの人達が13~19世紀頃にかけてが建造したもので、盛土と掘切によって周囲から切り離された高さのある平地をさすそうです。そこには特に建物が建てられたわけではなく、そもそも用途は諸説あるものの確かなことは分かっていません。
その諸説の中でも「チャシは砦だったのではないか?」という有力な一説を採用し、城跡として日本100名城に登録されています。いずれにしろ、一般的なイメージの「城」とはかなり雰囲気が違っています。
ちなみにこの写真の奥に写っている小屋はチャシ跡とは関係なくて、野鳥観察用の小屋(ハイド)です。
さらに進んでいくと、何でもないようでいて、もしやこれは人工物では?と思わせる台形の地形に行き当たります。
近寄って見ると… どうやらこれが目指していた「根室半島チャシ群跡」の中の「ヲンネモトチャシ跡」のメインとなるチャシ跡のようです。
獣道が続いているようなので、せっかくだからチャシ跡の上に乗ってみましょう。
チャシ跡の上からの眺めです。すぐ目の前は整備された漁港になっていて小さな集落があります。
このチャシ跡は漁港の方から眺めたほうが、より全貌が分かりやすいようですが、午後遅くで逆光になりそうだし、漁港まで歩くには遠そうだったので諦めました。
By 1467jp – photo by 1467jp, CC 表示-継承 3.0, Link
漁港側から眺めると↑こんな感じだそうです。長い年月の風雪に晒されてもこの形状を保ってきたというのが何か不思議です。いや、昔はもっと高くて角張っていたものなのかも。(この写真はWikipediaに掲載されているクリエイティブ・コモンの画像を転載しました)
チャシ跡の上から来た方角を振り向くとこんな感じでした。この凸凹は自然の地形なのか、あるいは人工物なのか? この一体にはこのチャシ跡含め、いくつか遺跡があるようです。
チャシ跡に突き刺さるこの木片は誰かのいたずらか、風で吹き飛ばされてきたものか?
それはともかく、こうして縁から海辺を覗き込んでみると、けっこうな高さがあります。これはやはり防御または監視のための砦だったのではないか?という気がしてきます。うん、そうに違いない。
海は真っ青でとても綺麗です。私たち以外に誰も他に見学者はおらず、とても静かでした。東京は夏日となり札幌でも20℃を超えたというこの日、根室半島の気温は10℃そこそこで、まだ冷たい風が吹いていました。
この厳しくも美しい自然の中で、アイヌの人達は数100年もの長い時間、どんな生活をしていたのだろうか? と思いを馳せながら、しばしボーッと時間を過ごしてしまいました。
ノツカマフチャシ跡は入り口まで行ってみた
さて「根室半島チャシ跡群」は24のチャシ跡が含まれているのですが、実際に見学可能なのはヲンネモトチャシ跡とノツカマフチャシ跡の2つだけです。
ヲンネモトチャシ跡だけでも満足したのですが、一応ノツカマフチャシ跡にも行ってみました。
ノツカマフチャシ跡の看板のある小さな駐車場に車を停めたのですが…
どうやらこのずっと先、やはり海辺に丸いチャシ跡があるようです。が、通路が草に埋もれていてよく分からなかったので、前進するのは断念しました。
ちなみに上の写真にあるように、今回借りた車は日産のエクストレイル。悪路を走ることはありませんでしたが、普通の道でも乗り心地良くてドライブもなかなか楽しめました。ブレーキだけは頼りなくてどうも慣れなかったですが。
せっかくだから納沙布岬へ!
さて、チャシ跡を目指してやってきたら、いつの間にか納沙布岬まではあと数kmというところにいました。そんなの絶対寄るに決まっています。
根室半島の先端には背の低いかわいい灯台が建っています。これが納沙布岬灯台。「北海道灯台発祥の地」と書かれていますが、これが北海道で最初の建てられた灯台なのでしょうか?
Wikipediaで調べてみると、納沙布岬灯台が最初に建てられたのは明治7年のこと。現在の建物は昭和5年に建て直したものだそうです。もちろん現役です。
灯台の中には入れないのですが、周辺の敷地は開放されていて灯台の裏側というか海側に出ることが出来ます。この先っちょが正真正銘、根室半島の先端にして北海道の最東端です。現在日本人が住んでいる土地では最も早くに日が昇り、最も早く日が沈みます。
で、最近も変なことで話題に上ってしまいましたが、この海の先には北方四島があります。実際に歯舞諸島や国後島の姿をうっすらと肉眼では見ることができましたが、超広角レンズしか持っていなかったので、写真ではほとんど分かりません。
でも無理矢理等倍拡大して見ると… わずか数km沖合にある貝殻島の灯台の姿はちゃんと写っていました。この灯台は戦前に日本が建てたものですが、今はロシアが管理しています。といいうか、管理されずに放置されているそうです。
なお、納沙布岬灯台の裏側には小さな小屋が建っています。さきほどのヲンネモトチャシ跡近くにもあった野鳥観察用のハイドです。鍵は開いていて誰でも入れるのですが、覗いてみると観察中の人は誰もいなかったので、ちょっと中で休憩してみました。
中はとても綺麗に整備されていて管理が行き届いているようです。この納沙布岬で見られる鳥たちの写真が飾ってあって、それを眺めるだけでも楽しめます。
野鳥観察用の細長い覗き窓から眺める本土最東端の海はより風情があります。野鳥観察のための施設ですから海を眺めるだけではなく、野鳥も探してみました。ウミネコは山ほどいてブンブン飛び回っていました。しかも結構近くまで寄ってきて目が合うくらいです。あと遠くてよく分からなかったのですが、なにやら猛禽類も飛んでいました。鳶の可能性が高いですが、私の中では天然記念物のオオワシということにしておきたいと思います。
納沙布岬には灯台以外にも本土最東端の碑や北方領土関連の施設などがあります。この写真に霞んで写っている高い塔は「オーロラタワー」という展望台ですが、入り口付近は寂れていて、一瞬営業してないかのようでした。いずれも時間があればゆっくり見てくる価値があるのだろうと思いますが、今回は100名城スタンプが目当てなので先を急ぎます。
肝心の100名城スタンプを押して本土最東端到達証明書をもらう
さて現地の見学は無事に終えたので、あとは肝心の100名城スタンプがを押さなくてはなりません。通常は管理事務所とか入場券販売所などで管理されている100名城スタンプですが、「根室半島チャシ跡群」の場合は現地に何もないので、根室市内のいくつかの施設まで行かなくてはなりません。
詳細は根室市観光協会のWEBページが詳しいです。
ということで、根室駅までやってきました。道央の滝川から続く、長い長い根室本線(花咲線)の終着駅です。当然日本国内最東端にある駅だと思っていたら、どうやらひとつお隣の「東根室」という駅が最東端になるそうです。
この日、ずっとドライブしてきた国道44号線は根室本線の横をずっと走っており、何度か1両だけの列車が走って行く姿を見かけました。そして根室-釧路間は撮り鉄的にも有名な撮影ポイントがいくつもあるのだとか。
今回は撮り鉄をしている時間はなさそうだったので、全てパスしましたが、またいつかそれ目当てに訪れたいと思いました。
閑話休題。100名城スタンプはこの根室駅のすぐ横にある根室市観光案内所においてあります。オリジナルグッズまであるようですね。
ということで、無事に日本100名城のなかでも最難関と言われるNo.1のスタンプをゲットできました。私にとっては39個目です。最難関を突破したから後は楽勝~ とはいきません。
ちなみに北海道の100名城はあと二つ、五稜郭と松前城なのですが、いずれも道南にあって、根室からは最も遠い位置にあります。なので一度の旅で3つ全てをハシゴする、と言うわけにはいきません。函館はまだ根室よりは訪れやすい場所なので、いずれ別の機会に行くことにしましょう。
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さて、ここで100名城スタンプ以外に気になるものを見つけてしまいました。それは「日本本土四極踏破証明書」というもの。
島嶼を除いた日本本土の東西南北端で発行されているそうです。東端はもちろん根室は納沙布岬、北端は稚内の宗谷岬、西端は長崎県は佐世保の神崎鼻、南端は鹿児島県南大隅町の佐多岬だそうです。
ということで、せっかくなので最東端踏破証明書を発行してもらうことにしました。無料です!
こうなると、これも残りの3つも集めなくては!という気になります。
現在進行中の日本100名城と、現存12城カードに加え、まだ着手していない続日本100名城もやらないといけないし… また日本中を旅する理由がひとつ増えてしまいました。
根室半島をぐるっと一周してもそれほど時間はかかりません。帰路はまた国道44号線を釧路まで戻りました。いかに道東とは言えこの時期は日が長いので、釧路に着く頃にようやく日没を迎えました。思ったほど慌ただしくもなく、移動距離が長かったわりには結構ゆっくり遊んだ気がします。
時折書いていますが、いつか自分の車で北海道はゆっくりと一周したいです。スタンプを押す用事はなくなりましたが、またいずれ根室には訪れたいと思います。
おまけ:釧路湿原展望台も行ってきた
日が変わって翌日、午前中には釧路市内や釧路空港からほど近い、釧路湿原展望台に行ってきました。
これが駐車場のすぐ横にある展望台。有名な建築家が設計したものだとか。内部はちょっとした資料館になっていて屋上展望台含めて有料です。でも、幻の淡水魚イトウがいたりして、それなりに見応えがありました。
その屋上展望台からの眺めはこんな感じ。見ての通りほとんどがまだ枯れ木のままで、新緑の季節は釧路にはまだきていません。むしろ、桜がちょうど咲いていました。
また周囲は釧路湿原の端っこを体験できる散策路が整備されています。と言っても結構山坂階段があって、一周するには大人の足で1時間かかります。
でも、ちゃんと散策路も行ってきました。↑この風景を見るために。ここは散策路の一番奥にある「釧路湿原サテライト展望台」です。そこからは釧路湿原の本体部分を見渡せるようになっています。ちょっとこの瞬間だけ曇ってしまったのですが、この写真で見る以上に現地では感動的な眺めでした。
それに色んな小鳥が沢山いました。目が慣れないうちは鳴き声だけ聞こえて姿は見えないのですが、そのうち見えるようになってくると、そこら中の木にうじゃうじゃいるのが分かるようになってきて面白いです。
散策路の周辺は。湿原と言うよりは普通に気持ちの良い森の中という感じでした。
でも足下を見ると色んな植物が生えているのが分かります。
これはどちらも「ふき」らしいです。「ふきのとう」と呼ぶには育ちすぎていて花が咲いた後でしょうか。右はすでにタンポポのように綿毛が出来ています。遊歩道のまわりにはやたらにこうした野生のフキが生えていました。
ということで、約1時間の湿原のヘリ散歩をたっぷり楽しみました。
使ったカメラとレンズ
今回の道東の旅にはPENTAX K-1改を持って行きました。レンズはいろいろ迷ったのですが、敢えて超広角ズームDFA15-30mm F2.8を付けていきました。他のレンズはなしでこれ一本のみです。それ以外はiPhone Xで間に合わせようという作戦です。
今回は撮影主体の旅ではないので、レンズ交換を避けて1本だけ持って行くとしたら普通は標準ズームにするところですが、イメージする道東の風景は超広角で合いそうだな、という勝手な思い込みよるものです。それに、ワイド端は超広角とは言えテレ端は30mmですから、スマホやGRとほぼ同じ画角ということで、ある意味これは標準画角とも言えます。
レンタカー移動と言うこともあって、大きさや重さは全く気にならなかったのですが、やはりこれ一本だとちょっと写真がタンチョウになる… じゃなくて単調になりがちです。まー、記録写真なのでとにかく広い画角で北海道の雄大さと空の広さが写せて良かったです。
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北海道は毎冬ニセコに通っていますが、それ以外に約2年前に冬の網走から知床にかけて旅したことがありました。初夏も良いですがやっぱり冬も良いです。真冬の根室や釧路はどんな風景なのでしょう? 雪を被ったチャシ跡とか、風情がありそうです(到達できるかどうか心配ですが)