実の親より育ての親:ちよの負けん気、実の父親/佐藤雅美

ちよの負けん気、実の父親 物書同心居眠り紋蔵 (講談社文庫)

ちよの負けん気、実の父親 物書同心居眠り紋蔵 (講談社文庫)

八丁堀小町と呼ばれているちよは、料理茶屋・観潮亭の看板娘として評判を得ていたが、抜群の三味線の腕を持つみわに看板娘の座を取って代わられる。さらに、みわの出生の秘密に負けん気を起こしたちよが「あたいは公方様のお姫様かもしれない」と思い込み…。表題作他全8編収録の人気捕物帖第11弾。

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魔物が棲む町

魔物が棲む町 物書同心居眠り紋蔵 (講談社文庫)

魔物が棲む町 物書同心居眠り紋蔵 (講談社文庫)

高輪・如来寺に赴任した快鴬は、門前町人たちに地代を課そうとしたが、彼らがいっこうに払わないので公儀に訴えた。ごく簡単な訴訟だったはずなのに、背後に拝領地の売買という、奉行所が裁決を避けてきた容易ならぬ問題が。訴訟を取り下げさせるという厄介事が紋蔵に降りかかる表題作。「物書同心居眠り紋蔵シリーズ」第10弾。

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千世と与一郎の関ヶ原

千世と与一郎の関ヶ原 (講談社文庫)

千世と与一郎の関ヶ原 (講談社文庫)

細川忠興の嫡子与一郎は秀吉の仲立ちで前田利家の七女千世を娶った。睦まじい夫婦ぶりも束の間、秀吉の死後家康から前田家との縁切りを迫られる。姑の玉も石田三成が人質にとろうとするのを拒んで自害し、追い詰められた千世は屋敷を逃れて落魄の身に…。関ヶ原の思わぬ実像を描き出した傑作歴史小説。

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口は禍いの門

口は禍いの門 町医北村宗哲 (角川文庫)

口は禍いの門 町医北村宗哲 (角川文庫)

  • 作者: 佐藤雅美,宇野信哉
  • 出版社/メーカー: 角川書店(角川グループパブリッシング)
  • 発売日: 2011/12/22
  • メディア: 文庫
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病気を治す腕は一流、厄介事を解決する知恵も一流、宗哲の医院は今日も大繁盛だ。今村芳生なる蘭方医が宗哲のもとを訪れ、“本道(内科)に限っては官医に蘭方を禁ずる”という幕府の達しに、激しく不満を述べた。宗哲が相手にしないとみると、漢方医で将軍家御匙の楽真院と老中首座に直談判に行く始末。辟易した楽真院から、今村の口を封じられないか、と相談を受けた宗哲だったが…。人情の機微に触れるシリーズ第3弾。

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一心斎不覚の筆禍

一心斎不覚の筆禍 物書同心居眠り紋蔵 (講談社文庫)

一心斎不覚の筆禍 物書同心居眠り紋蔵 (講談社文庫)

話題の書本で先祖の名誉が汚されたので、作者を罰してほしい―。大店の老舗菓子屋の主人の訴えに、書本を罰した先例はないという紋蔵が読んでみると、室鳩巣の記した賎ヶ岳の戦いでの美談が偽りだと理詰めで証された見事な出来栄え。そんな折に作者が殺されて…(表題作)。大人気の読み切り連作長編。

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戦国女人抄 おんなのみち

戦国女人抄 おんなのみち (実業之日本社文庫)

戦国女人抄 おんなのみち (実業之日本社文庫)

戦国武将の娘として、政略の道具に使われ翻弄された娘たちの生涯とは? お市の方の娘として浅井家から救出され、嫁ぎ先から引き戻され、秀吉の命を受けて徳川秀忠に嫁したお江をはじめ、非業な運命を受け入れつつ、懸命に生きた千世、満天姫、於長、千姫ら弱き女たち。敵味方問わず、波乱に満ちた生きざまを強いられた戦国のならいを、緻密な考証と、時代に埋もれる人間の営みを正確に見据える歴史観で描きだした直木賞作家の傑作連作集。

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やる気のない刺客

やる気のない刺客 町医北村宗哲 (角川文庫)

やる気のない刺客 町医北村宗哲 (角川文庫)

元渡世人にして名医と評判の宗哲のもとには、患者だけでなく時に厄介な相談事が舞い込む。人宿に奉公の口を探しに来た女りゑは、将来を言い交わした男が思わぬ借金を背負ってしまったため売女奉公をしたいと言う。ところが証文を交わした夜、人宿の2階でりゑが突然、苦しみ始めた。請われて往診に出向いた宗哲は薬を処方したが、よくならないばかりか事態は思わぬ方に流れて…。円熟の腕が冴えわたる、人気シリーズ第2弾。

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槍持ち佐五平の首

槍持ち佐五平の首 (文春文庫)

槍持ち佐五平の首 (文春文庫)

ころは文政の初年、相馬藩の宿割役人が主に先立ち、奥州街道は大田原宿の本陣にて明日の宿泊の確認にやってきた。そこへ会津藩が格式を笠に着ての無理難題。この騒動に巻き込まれた臨時雇いの槍持ち、佐五平の運命が翻弄されていく。表題作を始め、武家社会に生きる男たちの姿を赤裸々に描く時代小説短篇集。

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向井帯刀の発心

向井帯刀の発心 <物書同心居眠り紋蔵> (講談社文庫)” title=”向井帯刀の発心 <物書同心居眠り紋蔵> (講談社文庫)”></a></p>
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向井帯刀の発心 <物書同心居眠り紋蔵> (講談社文庫)

 物書同心居眠り紋蔵シリーズの文庫版の最新刊です。前作「白い息」から2年。非常にゆっくりしたペースですすんでいるこのシリーズも、これで8作目となります。その間実に16年。しかしこの居眠り紋蔵シリーズは、私の最も好きな時代小説のひとつです。
 そんな背景を持つこのシリーズですが、物語の中の時間は前作から2年も経過しているわけではありません。定廻同心に出世したのもつかの間、またすぐに例繰方へ戻された紋蔵のその後の日常の物語。

 佐藤雅美さんの小説らしく、当時の町奉行所に関する正確な時代考証に裏付けされた物語は、前半でややその面が強すぎて、背景説明がくど過ぎる感じさえしますが、後半に向けて初期の紋蔵シリーズらしい、ホッとする暖かさ感じさせる展開に。佐藤雅美さんは実はこういう物語力もあるんだよなぁ、と改めて認識させられました。
 ちなみに今作のテーマは「家」だと思います。もう少し砕けて「家族」と言っても良いのかも。江戸時代は封建社会。その中心は「家」制度でした。紋蔵の藤木家は不浄役人のしがない御家人ではあっても、代々受け継がれた「家」に代わりはありません。子だくさんの紋蔵にも、跡継ぎ問題は重くのしかかります。
 そして事情は八丁堀のご近所さんも同じ。そして大身の旗本も同じ。跡継ぎ問題は"お家騒動"の一番の火種です。大名家で起こればそれは歴史になりますが、家の大小、家格に関わらず、その他無数の下級武士たちにも問題の大きさは同じで、"小さなお家騒動"はあちこちで起こっていたはずです。そんな、武家の世相に揉まれる紋蔵。

「腹は立つだろうが結束を乱してはならぬ。このようなことは日がたつうちに丸くおさまる。悪いがここは我慢をしてくれ。それが紋次郎のためでもある。分かってくれるな」
紋蔵はただ黙って首をたれた。

 スパーマンのヒーローでも何でもない紋蔵。一人のしがない下級役人にして人の親。世間と仕事と家族の板挟みに遭いながらも、「藤木家」の小さな幸福を追い求める彼の姿は、単なる時代劇上の架空の人物ではなく、現代にも通じる人間ドラマを感じます。それがこのシリーズの一番面白いところです。
 なお、残念なことに今作の解説は最低です。最初の2行で読む気をなくしました。
 【お気に入り度:★★★★☆】