予告も予想もされていなかった隠れスターレンズ FA35mmF2 突然のHD化リニューアル

 約3週間ほど前のこと、ニセコでスキーを楽しんでるときにリコーイメージングから新レンズ発表のニュースが舞い込んできました。しかも今回は2本あるらしいとか。となると、昨年夏から発売延期されたままになっているDA★11-18mmF2.8がようやく発売されることになったとか、あるいはCP+にDFA★85mmF1.4のモックでも展示されるのか? と、あまり期待せずにiPhoneの小さな画面でリリースを読んでみると… 果たしてDA★11-18mmF2.8発売決定については予想通りだったものの、もう一つは思いもしないレンズが発表されていました。

 それが “HD PENTAX FA35mmF2″です。なに? そんなレンズの予定はロードマップにあったっけ? しかも”DFA”でも”DA”でもなくて”FA”なのか? 何かの間違いじゃ… と思ってよく見てみると、なんとこれはフィルム時代に発売されたまま、なぜかディスコンされずにずっと販売が続けられていた”smc PENTAX FA35mmF2AL”のリニューアル版のようです。主な変更点はコーティングがsmcから最新のHDコーティングになったことで、さらに外観も今風のデザインに手が加えられています。

 しかし絞りリングは相変わらずあるし、AF駆動もボディ内モーターを使うみたいだし、クイックシフトフォーカスも搭載されず、AWはおろかWRですらありません。その一方で、フィルム時代のレンズらしく、シンプルな光学系はそのままで、今時のフルサイズ用レンズでは考えられない軽量コンパクトさもそのままです。単焦点レンズでも(だからこそ?)10万や20万を超える値段があたりまえの時代にあって、お値段もほぼ据え置き。実売で5万円を遙かに下回ります。

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 予想も期待もしていなかった中でいきなり登場した意外さと、FAのままリニューアルされたという成り立ちの特殊さに興味を持ち、これはちょっと使ってみなくては!と思ってしまいました。

開封してみる

 マップカメラのWEBショップで事前に発注しておいたのですが、発売日の2月22日にはちゃんと手元に届きました。

ペンタックス 単焦点広角レンズ HD PENTAX-FA35mmF2 W/C Kマウント 22860

ペンタックス 単焦点広角レンズ HD PENTAX-FA35mmF2 W/C Kマウント 22860

 ちなみに特に大人気で品薄みたいなことはなくて、各種カメラ店でもAmazonでも即納状態。だいたいお値段は44,000円前後(2019年2月時点)のようですです。

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 リコーグループになって以降統一されたシルバー基調デザインの箱です。約10cm角程度でフルサイズ対応のレンズが入ってるとは思えない小ささ。

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 小さな箱にこれだけのものが入っていました。レンズ本体に前後キャップ、専用フードとポーチまで付いていました。smc版でも同じだったのでしょうか。

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 前玉側はこんな感じ。比較的大きな前玉のように感じますが、何しろフィルター径はPENTAX伝統の49mmしかありません。レンズの奥まで暗く沈んでいて良いコーティングが施されていることを覗わせます。

 絞り羽根は6枚で円形でもありません。この辺の仕様もsmc版そのまま引き継いでいるようで、古さを感じさせる部分です。

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 マウント側はこんな感じです。絞りとAF駆動が機械式で接続されるオリジナルのKAFマウントです。今時ボディモーター駆動式のAFレンズが新製品で出るなんて、思ってもいませんでした。ちなみに最短撮影距離は30cmで、最大撮影倍率は0.19倍です。マクロ風味とまではいきませんが、十分に寄れるレンズだと思います。

 その光学系はなんとたったの5群6枚。うち1枚(最後玉)は非球面レンズです。なのでsmc版の時はレンズ名の最後に”AL”が付いていたのですが、最近の命名規則では”AL”は敢えて付けなくなったようです。非球面レンズなんて使われていて当たり前ってことでしょうか。

 なお、コーティングをsmcからHDに変えた”だけ”という表現には、メーカーとして異議があると言うことで、先日リコーイメージングのFacebookページに、以下のような投稿がされていました。

 ふむふむ、コーティングを変えるのも大変なんですね。

 でもって「蛇足」として書かれている話をずいぶん前に聞いて以来、私は保護フィルターは付けない派になりました。そもそもコーティングひとつでガラッと描写が変わってしまうようなシビアな光学系に、余計な平面ガラスをいれるなんて台無し… と思っています。※個人およびリコーイメージングの意見です

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 さて閑話休題。鏡胴外観をもう一度じっくり見てみましょう。基本的な構造はsmc版と変わっていないのですが、ピントリングの滑り止めゴムローレットとか、グリーンのラインとか、距離指標のフォントとか、デザインのディテールは最新テイストにリニューアルされています。

 なお外径は64mmで長さは44.5mm、重量はわずか193gで、そのあたりはsmc版とほぼ変わっていません。超小型で超軽量。これでフルサイズ対応でAFできて手ぶれ補正もボディ側で対応してるんだから、レンズなんてこれで良いんじゃない?と思えてきます。

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 で、今時のレンズとして珍しいのは絞りリングがそのまま付いてること。デジタル化されて以降のKマウント機では絞りの制御はボディ側でやるようになっているので、不要な機構です。最近のボディでは基本的にはAポジションに固定したまま使うことになりますが、K-1などではカスタムセッティングを一部変更すれば絞りリングを使うことも出来ます。

 使い勝手としては是非絞りリングを使いたいと思ったこともあるのですが、その場合Exifに絞り値が記録されなくなってしまうので、結局絞りリングの使用は諦めて、ボディの後ろダイヤルでキコキコやっています。

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 あと、鏡胴の左右にはこんなロゴが入っています。このレンズ、コーティングまで変えて、当然K-1 IIとかKPとかK-70なんかで使うことを想定しているはずなのに、冒頭でも触れたとおり、シリーズ名が”FA”のままなんですよね。シリーズ名の命名基準が何かあるのでしょうか? 光学系の設計よりも絞りリングがあるとか、そういう点で決まっているのかも。

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 昨年夏に出た単焦点レンズ、DFA★50mmF1.4と並べてみました。DFA★50mmF1.4は描写性能を追求した完全な新設計で特別に大きく重たいレンズですが、それと比べるとHD FA35mmF2は、同じマウントの同じフルサイズ対応の単焦点とは思えない差があります。描写性能にはこの大きさが正当化できるだけの差があるのでしょうか?

 いえ、DFA★50mmF1.4は描写性能だけではなく、手触りも動作も上品で高級感あって気に入っているのですが、やはりこの大きさと重さに怯み、持ち出すかどうかを悩んでしまうことがあります。

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 続いてFA50mmF1.4と並べてみました。オリジナルのsmc版FA35mmF2ALはこの50mmF1.4と同じ世代、シリーズとして登場したもので、外観もそっくりでした。ピントリング、距離指標、絞りリングなど、基本構成は同じながらもHD FA35mmF2は確かにかなり今風に変身しています。

 このFA50mmF1.4はデジタルで使うと、開放ではボヤボヤだしボケは汚いし、フリンジでまくりで発色も今ひとつ。その代わり嵌まると何とも言えない味わいを生み出すじゃじゃ馬レンズです。小さくて軽いからと言ってやはり使いどころをかなり選ぶので常用は出来ません。

 もしかしてこのFA50mmF1.4もHD FA化されたり… しないですね。もうDFA★50mF1.4がありますから。むしろF1.7とかF1.8あたりでHD化して欲しいかも。

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 さてK-1 IIにHD FA35mmF2を取り付けてみました。うん、このくらいの大きさのレンズがK-1には良く合ってると思います。しかも軽くて取り回しもかなり楽なはず。もともと昔の一眼レフカメラの単焦点レンズって、本来こんなサイズ感でしたよね。

 なおバヨネット式のフードはもちろん逆さ付け可能でPLフィルター操作用の窓も付いています。

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 ところでこのレンズ、上でも書いたとおり絞りリングがそのまま残されているので、こうやってフィルム時代のボディと組み合わせて使うことも出来ます。

 で、これやって思い出したのですが、35mmF2という同じ基本スペックのレンズをすでに1本持ってたな、と…。すっかり忘れていましたが。

 クラシックZeissの35mmF2ですが、やはりMFということでなかなか持ち出す機会がない1本です。いや、もしかしたら35mmの画角が自分には合ってないのかも? という気もしなくはありません。比較的望遠好きなほうですから。

 あと、FA31mmF1.8AL Limited とも微妙に近いレンズもありましたっけ。

 これはAPS-C時代はよく使っていたつもりですが、K-1になってからあまり使わなくなりました。やはり30mm台は向いてないのか?
 
 だとしたらHD FA35mmF2も結局使わなくなってしまうのか? まーそうなったらその時はその時です。使ってみないとその辺は分からないですからね。

試しに使ってみる

 ということで、K-1 IIに取り付けてさっそく試し撮りに出かけてみましょう。タイトルに書きましたがこのレンズは一部で「隠れスターレンズ」と言われるほど描写性能には定評があったわけで、そんなsmc版の良いところをちゃんと引き継ぎ、HDコーティングによってさらにブラッシュアップされてることを期待して。

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 近所の河津桜が咲いたという地元ニュースを聞いて、散歩に出かけてみました。まだ蕾が多くて見頃はもう少し先な感じでした。35mmと言えば意外に広角っぽさが出ます。しかもF2開放はよくボケますね。

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 でもうまく切り取ると広角っぽさは消えたりもして、やっぱりこの領域のレンズは使いこなし甲斐があって、難しい代わりに面白いです。そこを乗り越えられたら、このくらいの焦点距離のレンズももっと好きになるはず。

 このカット見ると分かるとおり、開放だとわりと周辺減光しますが、Lightroomではまだレンズ補正データがサポートされていません。というか、LightroomもFlickrもレンズ情報が”smc PENTAX FA35mmF2AL”と、旧型で表示されてしまいます。もしかして同じレンズID使ってるとか? うーん、それで良いんだっけか?

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 次はほぼ無限遠をがっつり(と言ってもF8)絞ってみました。RAWからレンズ補正なしで現像したものですが… ここまで絞ると周辺減光もほぼないし、拡大して見ると何となく古いレンズっぽさがあるものの、しかししっかり解像していてコントラストもあって、発色も自然でしっかりしています。

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 こっちは中距離でF5.6。アラをあげればキリがないけど、結局これで何か問題ある? って感じにまとまっていると思います。フルサイズ36Mでこれだけ写るんだから、レンズなんて5群6枚のこのくらいの大きさで、コーティングさえしっかりやればもう十分なんじゃないの?って思います(2回目)。

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 菜の花と青空。ちょっとわざとらしいくらい鮮やかに発色します。ボディ駆動のAFは遊びが大きくてピント精度に不利なはずですが、K-1 IIとの組み合わせでは近距離でもバシッと決まります。開放の前ボケも後ボケも綺麗。

 なおAF駆動音はそんなにうるさくありません。フォーカスは全群繰り出し式ですが全体が軽量なおかげでしょうか。

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 逆光気味にしても黄色の鮮やかさは変わりません。

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 梅はそろそろ最盛期ですね。やはり開放の近距離はややピント面もふわっとした感じがありますが、それは被写体のせいもあるかも。そしてピント面の前後には大口径レンズらしくマゼンタとグリーンのフリンジが結構出ますが、消そうと思えば消せるし、残しておいた方が風情が感じられるくらいです。

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 HDコーティングのおかげか明暗差が激しくても、きっちりクリアに写るし、うっすら出ている木漏れ日の玉ボケも素性は良さそう。端っこの方はやはりラグビーボールになってしまうのは、このサイズのレンズでは仕方ないところでしょうか。

 それにしてもFA50mmのじゃじゃ馬ぶりを思うと、これ本当にフィルム時代のFAレンズがベースなの?コーティング変更とそれにともなう再設計だけでこんなになるの? って、smc版を知らないので何とも言えませんが、思ってた以上に綺麗に写ることに感心してしまいました。

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 画面の端っこに太陽入れたってこの通り。ボケはちょっとワサワサしてきつくなりましたが、それにしてもこれだけの逆光耐性を持っていたら何の不満もありません。もしかしたら人によっては「つまらない」とか言い出しそうな気さえしてきます。

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 じゃぁってことで、調子に乗ってここまでやってみたけど、ピントを合わせた梅の花はビクともしないです。うーむ、HDコーティング恐るべし。

 こうなると、やはりFA Limitedシリーズを同じようにリニューアルして欲しいですね。それこそ「つまらない」レンズになってしまうのかも知れませんが、このくらい安定し懐の深いFA Limitedがあったら… DFA★なんてもういらないんじゃないか?ってなるかも。あ、メーカー的にはそれじゃなまずいのか…(A^^; 

大きいけれど最高なレンズより、小さくてそこそこ写るレンズが欲しい

 さて、DA★300mmF4に続き、今年に入ってさっそく2本目のレンズとなりました。しかもこの2本は第一印象が非常に良くてかなり当たりな気がしています。時々整理しているものの、最近またKマウントレンズは増殖中です。

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 それにしてもこのサイズ感のしっくりくる度合いも気に入ってしまいました。やはりDFAズームとかDFA★とか、最新設計のレンズはそれはそれで隙がなくて素晴らしいけど、大きいですよね。このHD FA35mmF2くらいのサイズ感で、24mmとか50mmとか85mmがあったら、それだけでもう良いんじゃないか?って思います(3回目?)。

 そういう意味で、ペンタキシアンは誰も予想していなかったし、望んでもいなかったし、登場した時もわりと否定的意見の多かったこのレンズですが、K-1のコンパクトさを生かすためにも、この方向はアリだと本気で思います。

 今やK-1を超える大きさ&重さのフルサイズミラーレス機とそのレンズ製品が登場しつつある時代ですから、それを逆手にとって「一眼レフだからこそ小型軽量」を目指して欲しいと思います。

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 保有レンズリストを更新しました。隙間がなかったのでクラシックZeiss 2/35mmは省略しましたが手放してはいません。それにしても30〜40mm台がやたらにたくさんありますが、それはそもそもペンタックスのレンズラインナップがそこに集中しているから。これ以外にもDAレンズに35mmがあと2本あるくらいです。

 さて、この図でひとつ触れておかないといけないのは、レンズではなくボディについてです。昨年4月にPENTAX K-1 Mark IIを購入し、てそれまで使っていたK-1と合わせてフルサイズ機2台体制にしたのですが、色々考えて結局K-1 Mark IIは手放してしまいました。手元に残したのは古いK-1をアップデートしたK-1改の方です。

 シャッターカウントも多いし、いろいろ使い古したボディなのですが、昨年新品で手に入れたK-1 Mark IIよりもこっちのほうがなぜか手に馴染むんですよね。アップデート後はスペック上どちらも同じK-1 Mark IIのはずだし、どこがどう違うと明確に言えないのですが、アップデート後は結局K-1改の方ばかり使うようになっていました。多分、そう感じるのは思い入れのさなんだろうと思います。

 ということで、HD FA35mmF2は下取り交換の形で手に入れたので、DA★300mmF4に引き続きキャッシュアウトはゼロです。それどころかおつりが余っている状態ですので、これはまた今後出てくるであろう新製品の購入に充てたいと思います(意味深)。

PENTAX 一眼レフ K-1 Mark II ボディ  15996

PENTAX 一眼レフ K-1 Mark II ボディ 15996