PENTAX K-1/K-1 IIをはじめリコーイメージング製のデジタルカメラ用Wi-Fi接続アプリとして、今年メジャーバージョンアップを果たした Image Sync 2.0 は、依然としてなかなか微妙な出来映えであるというエントリーを先日書きましたが、それに関してTwitterでとても良い情報をいろいろ教えてもらいました。
そんな中で特に興味を引いたのは「ペンタックス機で使えるWi-Fi接続アプリは Image Sync だけではない」と言うものです。なんと「PK読み込み」というなかなかストレートな名前が付けられた非純正のサードパーティ製アプリがあるとのこと。いやいや、なんで今まで誰も教えてくれなかったの?と、自分のアンテナの低さをまたもや実感させられました。
それはともかく、このアプリは撮影済みデータの転送に特化した非常にシンプルなものだそうですが、私がやりたいのは正に撮影済み画像の転送であって、リモート撮影などはどうでも良いわけで、むしろ使用用途に特化したアプリというのは大歓迎です。
ただしこの PK読み込み にはiOS版のみでAndroid版はありません。しかしAndroid用にはこれと似たようなサードパーティ製アプリがGoogle Playストアでリリースされているようです。私はiOS端末しか持っていないので、この「PK読み込み」を試してみることにしました。ありがたいことに無料となっています。
で、結論を最初に書いておきますが、これはまさに私が欲しかったアプリそのものです。操作も分かりやすく、動作も軽く、一覧の読み込みも速いし何しろ安定しています。撮影済みデータの転送用途としては、素晴らしい完成度だと思います。iOS端末を使われているなら、是非Image Syncに代えてこちらを使われることを強くお勧めしたいです。
なお、先日書いた Image Sync 2.0 に関するエントリーは↓これです。
今回のエントリーはこれの続編というか、問題解決編とでも言うべきものです。
接続
通常使用時にカメラと接続するための手順からして PK読み込み は Image Sync よりも少し改良されています。
Image Syncの接続手順は以下の通りでした。
- カメラ側でWi-FiをONにする
- スマホ/タブレット側のWi-FiをカメラのSSIDに接続(したことを確認)する
- Image Syncを起動する
- カメラ内画像のタブを選ぶ
しかし PK読み込み の場合は以下のようになります。
- カメラ側でWi-FiをONにする
- PK読み込み を起動する
これだけです。あらかじめWi-Fiの接続状況を気にする必要が無くなっているのです。
インストール後初めて使用する場合は左のようなメッセージが出て、手動で接続(または確認)する必要があります。しかしそれ以降は、前回接続したカメラをアプリが記憶してくれているので、2回目以降は右のようなメッセージが表示され「接続」をタップすればOK。手動でWi-Fi設定を開く必要はありません。
これは自宅内で使用するときや、出先で公衆Wi-FiにiPhoneがすでに繋がっている場合などは、特に便利だったりします。設定を開いてWi-Fiの接続先を確認したり変更したりする作業は、たった一手間ではあるのですが、これが不要になるだけで地味に使い勝手には効いてくる部分だと思います。
画像一覧の読み込み
Wi-Fiに接続できたら、あとは少しの間待つだけ。
Wi-Fiが繋がったらあとは何も操作しなくても自動的にカメラが認識され(左)、SDカードに記録された画像を読み込んで(中)一覧が表示されます(右)。
ここまでの待ち時間はごく常識的な範囲というか、あっという間。他社と比べてもまったく遜色ないレベルです。画像一覧のスクロールも何のストレスもなく普通にできます。Image Syncでスロット1を読み込むよりも速いと思いますし、スロット2でも何の問題もありません。これこそが当たり前なのに「素晴らしい!」と感じてしまいます。
表示されるサムネイルはiPhone Xで横3枚縦7列です。画像間の隙間も適度に詰められていて、 Image Sync の一覧表示よりもずっと見やすいです。
画面左下をタップすると表示に関する設定ができます(左)。ファイル形式によるフィルターと表示順を選べます。デフォルトは「全てのファイルを表示」で「日付順」となっていましたが、通常は「新着順」にしたほうが使いやすいと思います。
さらにK-1/K-1 IIの場合限定ですが、画面左上の”sd1″や”sd2″と表示されたカードスロット名をタップすれば、読み込み元のカードスロットを切り替えることができます(中)。事実上 Image Sync ではスロット1 以外使えない仕様になっていましたが、PK読み込み はごく当たり前にサクサクとスロット1と2の切替ができます。当たり前だけど素晴らしい!(2回目)
なおRAWファイルの場合は画像のサムネイルは表示されません(右)。それでも転送だけはできるのですが、これでは画像を選びようがないので、RAWファイルのみ記録したカードに対しては、このアプリは使えないと言って良いと思います。後述するようにRAWファイルは転送時間の点であまり実用的ではないですし、いっそのこと表示オプションでJPEGに限定してしまっても良いかもしれません。
ちなみにこのアプリは横位置表示に対応しています(Image Syncは縦位置固定でした)。これも当たり前のこと。iPhone Xでは横長すぎてちょっと使い勝手は悪いですが…
iPadならこの通り。横位置でも縦位置でもかなり実用的で使いやすそうです。やっぱり大画面は正義ですね。
画像の選択と転送
次にいよいよ画像の転送をしてみましょう。
転送したい画像の選択はタップするだけ。選択された画像には青いチェックマークが付きます(左)。全選択することも可能ですし、一度行った選択を全部チャラに戻すのも簡単にできます。
そして画面右上の「選択項目を読み込む」をタップすれば、転送が始まります。転送中の画像の下にプログレスバーが出て、おおよその進行度合いが分かるようになっていますし、送信済み画像は緑のチェックマークに変わります(中)。
なお、画像サイズによるのかもしれませんが、今回試したSサイズの標準画質JPEGでは、3枚同時(平行?)読み込みがされるようです。そのおかげか、Image Sync と比べると転送にかかる時間も圧倒的に早いように思われます。
そして全ての転送が終わるとダイアログがポップアップして完了した旨を通知してくれます(右)。
ここで、簡単ではありますが Image Sync 2.0 と PK読み込み で読み込み時間に違いはあるのかどうか? 比較計測してみました。まったく同じ画像を使用し、それぞれ転送するのにかかる時間を両アプリで測定してみたものです。
結果はこの通り。
PK読み込み | Image Sync 2.0.1 | |
---|---|---|
JPEG x1枚:3.2MB | 9 sec | 10sec |
JPEG x5枚:15.8MB | 24 sec | 43 sec |
RAW(DNG) :50MB | 97 sec | 145 sec |
サイズの小さなJEPGでは1枚あたりの転送時間の改善は誤差とも言える範囲ですが、5数まとめて転送するとその差はずっと大きくなります。平行転送しているのはやはり転送時間短縮に大きな効果があるようです。
また巨大なRAWファイルの転送にかかる時間も計ってみましたが、ちょっと予想外の大差が付きました。前回 Image Sync で計ったときはここまで遅くなくて、やはり90秒そこそこだった気がするのですが… 上記は紛れもなく同じファイルで同じように計った上での差なので、ファイルによって大きなバラツキが出るのかもしれません。
いずれにしろ転送時間の改善も非常に大きなものがあります。他社並みとは行かないかもしれませんが、何枚かまとめて転送する場合にかかる時間としては、十分に実用範囲にあるのではないかと思います。
安定性
PK読み込み は使い始めてまだあまり時間が経っていないのですが、とりあえずここまでにアプリが落ちたという経験はありません。上に書いた転送時間のベンチマーク測定時も、普通に一回の起動中に全て計ることができましたが、Image Syncはこの測定時にも2回強制終了しました。
本当の意味での安定性は、もうしばらく見ていく必要があると思いますが、少なくとも Image Sync 2.0 よりは遙かに良いと言えると思います。
これはPENTAX一眼レフ(およびGRII)にとっての救世主
ということで、非常にシンプルな画像転送に特化したアプリですが、とりあえずリモート撮影は不要と言うことであれば、もはやImage Syncを使用する理由は無くて、iPhoneユーザーであればこちらの PK読み込み を使えば、Wi-Fi機能に関する悩みはほぼ全て解消してしまうと思います。
良いところ箇条書きにすると、
- 速い:一覧の表示も、操作に対するレスポンスも、画像転送も速い
- 簡単:起動して画面の眺め回すだけで全ての機能が把握でき、しかも予想通りに動く。
- 安定:不意のシャットダウンには遭遇していない。
むしろ悪いと思えるところはほとんどありません。
画像の拡大表示ができればなお良いと思いましたが、操作系のシンプルさを追求し必要最低限の機能に絞るという意味では、これで良いのかもしれません。このアプリ上でピントやブレをがっちり確認したいわけじゃないですから。とりあえず転送してしまって、iPhone側でチェックすれば済む話です。
ちなみにこういったサードパーティアプリは、今年春先にSDKが公開されたことで、作成が可能になったものなのだろうだと思います。
このSDK公開が何を目的にしていたのかはよく分からなかったのですが、こうやってアプリ開発とは無縁な一般ユーザーに恩恵が巡ってきたわけで、意味のあることだったんだなと今さらながら実感しました。Image Syncの出来は悪いけど、SDKの一般公開は深いコミュニティを作っていく上でも、地味に素晴らしい施策だと思いますので、このまま続けていって欲しいです。
この勢いでKAFxマウントの規格も公開してしまえば良いのに! なんて思わなくもないですね。大手レンズメーカーはもはや振り向かなくても、思いもしないアクセサリーが出てきたりするかもしれないですから。
おまけ:Image Syncを使わない、もう一つの方法
さて、これもTwitterで教えてもらったのですが、リコーイメージング純正の Imege Sync が使えないなら「K-1で撮影したSDカードを他社カメラに挿して転送だけすれば良い!」という荒技があるそうです。なるほど!ということで私も試してみました。
私が持っているWi-Fi機能入り他社製カメラと言えば、ニコンD500とLUMIX LX100 IIがありますが、LUMIXの方が使いやすいのでこちらで試してみました。
PENTAX K-1改のスロット2でJPEGを記録したSDカードをそのままLUMIX LX100 IIに差し込んでみました。カメラ本体で再生ボタンを押してみると、普通よりもちょっと間を置いた感じがしつつも、背面液晶にK-1改で撮ったはずの画像が表示されました(左)。GPSによるジオタグが付いてるよ、という表示までされてたりします。
しかし詳細データを表示しようとすると「表示できるデータはありません」となってしまいます(右)。この辺は単にExifの基本フィールドを読んでるだけではなく、メーカー固有のデータを参照しているのでしょうか。
そしてLUMIX用のWi-Fi接続ソフト Image App を起動してみます。とりあえず普通に接続は完了しました。
そして画像転送を選択します。
すると、無事にこうして一覧のサムネイルが表示されました(左)。これらの画像はLX100 IIではなく、PENTAX K-1改で撮ったものです。
そして画像選択して転送することも可能(中)。しかし一枚拡大表示は出来ませんでした(右)。一瞬粗い画像が表示されるのですが、すぐにビックリマークに変わってしまいます。Wi-Fi連携する場合はやはりPanasonic製のサポートされたカメラで撮影された画像でないと、何か制限があるようです。
ということで、実験成功です。SDカード差し替えという手間がかかりますが、Image Syncでもどうせスロット2は使えないのだから、手間は似たようなものかもしれません。サブカメラとしてLX100 IIを一緒に持って行けるなら、これも一つの選択肢だと思います。
なお、先ほどと同じJPEG画像5枚(計15.8MB)の転送時間を計ってみたら、7秒で5枚とも転送できてしまいました…。やっぱり普通はこうなんですよね。PENTAX機の画像転送の遅さは、アプリの出来よりも、恐らくAPIまたはカメラ側H/Wにボトルネックがあるのだろうと思います。
やはりその点も改善した K-1 IIIやK-3 IIIに期待したいと思います。それまでは何とか「PK読み込み」で十分乗りきっていけると思います。