K-3 IIのAF動体追尾性能は本当に改善しているのか?

投稿者: | 2015年6月8日

 K-3 IIの改善点の一つであるAF動体追尾性能がK-3に対してどのくらい良くなっているのか、確かめてみたくなりました。普段あまりこういうことはやらないのですが、ここは敢えてAF性能だけを見るためにテスト撮影をしてみました。動体AFの性能テストと言えば、WEBでも雑誌でも昔からよく見るのは電車の撮影です。確かに手軽で動体AF性能を見るにはうってつけの被写体です。

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 撮り鉄はやったことないのですが、いつもの駅のホームの端っこはそこそこ見通しが良かったはず…ということで、お手軽に最寄り駅に向かいました。

K-3 IIのAF改善についておさらい

 ここでK-3 IIのAF改善点についておさらいしておきましょう。まず、公式の製品ページには次のような記述があります。

K-3で実績のある27点(クロス25点)AFシステムを採用。最新のAFアルゴリズムを組み合わせることにより、AFの高速化を図りました。コンティニュアスAF(AF.C)では、奥行き方向にすばやく動く被写体への追従性が向上。ペンタックス リアルタイムシーン解析システムとの相乗効果により、動体のAF撮影がスムーズかつ快適です。さらに、最新の設計によるズームレンズ※使用時は、シングルAF(AF.S)も高速化。シャッターチャンスに強さを発揮します。

 この文章を読み解くと、改善点は二点あって、

  1. コンティニュアスAF(動体追尾)性能の改善 → すべてのAFレンズで有効
  2. シングルAFの高速化 → 最新のレンズのみ対応

 ということになっています。後者のほうに対応したレンズを私は持っていないので、現時点で得られる恩恵は前者のみ。うん、とりあえずそれで十分です。手持ちのDA★60-250mm F4やDA★300mm F4で動体追尾性能が向上するなら、万々歳です。

コンティニュアスAFの設定

 テストに先立ち、設定を確認しましょう。K-3 IIになってもAF周りの設定項目はK-3と変わっていません。これまで1年半ほどK-3を使ってきて得た経験で、一番良い結果が得られる(歩留まりが高い)と思える設定をおさらいしておきます。

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 まずAFモードはAF.Cに。普段はAF.Sを使っています。AF.Aは使ったことがありません。動体かどうかを自動判別するってことだと思いますが、こういうのって百発百中で当たらないとイラッとするので、使いません。

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 測距点については実に7モードもあるのですが、動体の場合は9点セレクトエリア拡大にしてみました。場合によってはセレクト1点のほうが良い結果が得られるかも。

 これらはメニューに入らなくても、マウント脇のAFモード切り替えボタンを押しながらダイヤルを回せば、一発で簡単に設定切り替えできます。

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 次にピント優先かコマ速優先かの設定。1コマ目に対する設定と、続く連写中の設定がそれぞれ別々に出来ます。これらは頻繁に切り替えるモノではないので、カスタム設定メニューの中にあります。
 デフォルトは1コマ目がレリーズ優先、連写中はピント優先となっていますが、1コマ目もピント優先に変更します。連写速度は落ちますが、どんなにシャッターが切れてもピント合ってないと意味ないですから。

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 AF.C時のAFホールド度合いは3段階+オフが選べます。AFエリアが一瞬被写体を外すような場合には有効なはずですが、どうも初動も遅くなるような気がしたので、オフ設定にしました。

 コマ速優先設定やホールド設定については、K-3 IIで動作が変わってるかもしれません。その辺の詳細は今回は調べていません。とりあえず上記のようなK-3のベスト設定で比較してみることにします。

成田エクスプレス

 さっそくテストです。ホームの端っこからこちらに向かってくる成田エクスプレスにカメラを向け、とにかくシャッターを押しきります。レンズはDA★300mm F4で、ISO200。絞り優先で開放に設定… したつもりだったのにK-3はなぜかF4.5になっていました。とはいえ、十分明るかったのでシャッター速度は1/1600sec前後で切れていますし、被写界深度的にも影響はないと思われます。

 撮れたカットをすべていつものサイズで並べると大変なことになるので、小さなサムネイルと私が判定した結果だけお見せします。

K-3 II

K-3II_CAF
 撮影開始位置は目測、フレームの中心は向かって左側のライトに向けています。追い切れなくなるまで撮影して25カット。ちなみにカードはSanDiskのUHC-Iで、書き込み待ちは発生していません。

 ピントの判定基準は私の主観で、微妙だけどぎりぎりアウトなやつは”NG?”としてあります。OKカットは20枚、率にして80%です。初期の2枚のぎりぎりNGなやつはブレのような気もします。

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 20コマ目あたりから3枚連続するNGカットも微妙なところです。上に貼ったの21コマ目。これはブレではなく明らかにピントがついてきていません。しかし等倍拡大しないなら十分に見られる範囲かな?と個人的には思います。

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 最後は相当にピント移動速度も速く、もはやダメかと思えば23コマ目で追いついて最後まで意地で合わせ続けます。上に貼ったのは最後の25コマ目。ちょっとぶれてるかもしれませんが、ピント的にはセーフではないかと思います。

K-3

K-3_CAF
 総カット数はK-3 IIよりやや多くて28コマ撮れました。開始位置が目測なのと、そもそも被写体の成田エクスプレスが別の時刻のものなので、速度が厳密に同じかどうかがわかりません。カードは同じくSanDiskのUHC-Iを使用しています。

 というあたりを差し引いても、結果には差が見られます。NGカットは明らかにピント要因で、微妙だけどぎりぎりセーフと判定した”OK?”も含めると、OKカットは16カット、率にして57%となりました。まぁ、これまでF1など何度か動体撮影した際の体感、歩留まりとだいたい一致してるので、それほど何かたまたま不利な条件に当たったとは思いません。

 感覚的には、一度外したときの復帰に時間がかかるようで、NGカットが連続しやすいのがポイントでしょうか。列車が近くなってピント移動が多くなると、ほとんど外してしまうものの諦めてしまうわけではなく、なんとか追いかけてくるあたりはけなげではあります。

K3PS8804.jpg
 これは15コマ目。それまで順調に追いかけてきたのになぜか外してしまいました。と言っても、このサイズのサムネイルではほとんど分からないかも。サーボが追いつかないと言うよりは、後ろに急に抜けてしまった感じなので、もしかしたらセレクトエリア拡大のせいで、何か迷ったのかも?しかし、成田エクスプレスの正面は非常にコントラストが高くて、AFには最適なパターンだと思うのですが。

総武快速

 まったく同じ条件、同じテスト内容ですが、被写体を別の電車に変えてみました。成田エクスプレスはこの駅を通過していきますが、総武快速は停車します。とはいえ、ホームへの進入時点ではそれほど速度は変わらないのではないかと思います。ただし今回は絞りもちゃんと開放に設定していますので、条件はより揃っています。

 ということで、単にもう一回同じテストをやってみた、と言う程度の意味でご覧ください。

K-3 II

K-3II_CAF2
 まずはK-3 II。今回は30コマ以上切れました。OKカットは22コマで73%ほど。まだそれほど車両が近づいていない段階で時々微妙に外すあたりとか、かなり近づいたところで追い切れなくなってOK率を押し下げていますが、おおむね傾向は成田エクスプレスの場合と同じで再現性がありそうです。

K-3

K-3_CAF2
 次にK-3ですが、全部で30コマ以上切れたのは同じですが、全体的にK-3 IIよりも早めにシャッターが切れており、30コマ目の車両の位置がまだまだ遠いことが分かります。ただし、この先はすべてNGでした。

 この30コマ中OKカットは17カットで率にするとやはり57%。ただし内容はだいぶ異なっていて、まだ電車が遠いときと、逆にかなり近づいたときにがんばったのに対し、その中間でNGが11コマも続くという結果に。一度外すとなかなか戻ってこない、という傾向はやはり再現性があるとも言えますが、それにしても何とも言えない結果です。

まとめ

 もちろん、上に紹介したものだけでなくそれぞれ何度か試してみました。もちろん結果にばらつきはあるのですが、K-3 IIとK-3の動体追従AF性能に差があるか?と言えば、「ある」というのが私の結論です。その体感的な差としては、上に紹介した結果がほぼ代表していると言って良いのではないかと思います。

 特にK-3 IIは大外しすることもなく、その分復帰も速くて1〜2コマ以内にピントは戻ってきます。他方K-3は一度外すとなかなか戻ってこず、その間もなぜかシャッターは切れていきます。そのせいか、ピント優先にしていてもK-3の方がカット数が稼げる傾向があって、どうやらK-3 IIはピント優先設定が本当にピント優先になったのかな?という気もします。体感的にはどちらも秒間5コマ程度と思われます。

 あとは、AFエリアの設定はやはり1点にした方が良いのではないか?とか、コマ速優先にしたらどうなるだろう?とか、ホールド設定は使い物になってるだろうか?とか、あるいは最新DFA150-450mmやDFA70-200mmだと、サーボが速くてK-3 IIの本領をさらに発揮するのではないか?とかとか、まだ気になる部分はあるのですが、とりあえず現状でも私的に標準の使用方法でこれだけ改善しているということで、買い換えの価値は十分にあると思います。(いえ、もう買ってしまったのですけどね)

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 撮り鉄もなかなか楽しい(そして難しい)ですね。

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