前編からずいぶん間が空いてしまいましたが、FUJIFILM X-S1試用雑記の続編です。基本的にはコンパクトカメラをベースとしていながら、超高倍率ズームとEVFを搭載して、大きさ的にもデザイン的にも一眼レフに近いスタイルをしたこの手のカメラを使ってみるのは初めてだったりします。それはなかなか新鮮な体験でした。20倍を超えるような光学ズームももちろんですが、何しろそしてフルサイズ換算で600mmなどという世界をこんなに簡単に使えてしまうことへの驚きによるものです。
FUJIFILM X-S1, EXR Auto, 1/320sec, F7.1, ISO200, AWB, DR200%, Landscape(HR), 158.6mm
数ある高倍率ズームカメラの中でもこのX-S1は、所詮レンズ固定の便利カメラだからというエクスキューズはどこにも感じられず、本当にワイド端からテレ端までを使いこなせ、Zシリーズの血脈を継いでいることが感じられるカメラです。
やや季節外れ感がありますが、この1ヶ月くらいの間にX-S1で撮った写真を貼っておきます。そもそも撮影時からしてそうなのですが、さらに撮影したカットの中から自分で選んでみると、結果的にほとんど超望遠域の写真となってしまいます。実際のところ広角側は24mm相当のF2.8と、なかなか使い道のあるスペックなのですが、気がつくとグイッとズームリングを回してしまいます。
撮影モードはEXRオートかまたはPモードです。EXRモードでは自動シーン認識が行われて適宜露出調整が行われると同時に、高解像度優先モード(HR)か、ダイナミックレンジ優先モード(DR)か、あるいは高感度低ノイズ優先モード(SN)に自動的に切り替わります。ダイナミックレンジ拡大モードと低ノイズモードの場合は、画素混合が行われるらしく、撮影解像度が半分になります。つまり600万画素相当になるわけですが、A4程度のプリントなら問題ない解像度と思います。
ちなみに絞りはちゃんとした光学絞りが内蔵されており、開放からF11まで1/3EVステップで設定可能です。コンパクトさを優先したカメラは本物の絞り機構を持たず、2段階あるいはNDフィルター併用が多いなかで、これだけ幅広い絞り設定が可能なのは素晴らしいと思います。
FUJIFILM X-S1, EXR Auto, 1/500sec, F6.4, ISO100, AWB, DR100%, Landscape(HR), 19mm
今はもう散ってしまいましたが桜の木が紅葉最盛期を迎えていた頃。ワイド端から少しズームした標準域。このあたりの描写性能の安定感は抜群です。
FUJIFILM X-S1, P Auto, 1/280sec, F6.4, ISO100, -0.7EV, AWB, DR100%, Velvia, 158.6mm
都内のとある紅葉の森。テレ端の実焦点距離は158.6mmという中途半端な数字になっていますが、これでフルサイズ換算624mm相当の画角。わりと強力なレンズシフト式光学手ぶれ補正が入っておりこの長さでも安心してシャッターが切れます。画面の中央付近は銀杏の葉っぱの形が分かるくらい解像してます。が、もちろんセンサーのサイズと画素数なりではあります。
FUJIFILM X-S1, EXR Auto, 1/500sec, F5.6, ISO640, AWB, DR200%, Landscape(HR), 118mm
赤く色づいてきたハゼノキ。小型センサーとは言え超望遠域になると実焦点距離も100mmを超えてくるので、F5.6くらいでも距離差のあるシーンなら背景は綺麗にボケます。なにも珍しくはないし、特別な写真でも何でもないですが、簡単にこういうことができてしまうことが楽しいです。EVFを覗いてるだけでもいちいち「おー!」と感心してしまいます。望遠好きにはたまりません。
FUJIFILM X-S1, EXR Auto, 1/250sec, F5.6, ISO200, AWB, DR100%, Landscape(HR), 74.7mm
清澄庭園の池の亀。岩の上に上がって甲羅干し中でしょうか。遠く離れたところからでもズームして簡単に小さな動物も狙えます。
FUJIFILM X-S1, EXR Auto, 1/300sec, F5.6, ISO100, AWB, DR100%, Landscape(HR), 122.6mm
上とは違う場所から違う亀さんたちですが、もっとズームすればもっと大きくなって、テレ端まで行けばかなりゾクゾクするような亀のドアップになりそうです。
FUJIFILM X-S1, EXR Auto, 1/250sec, F5.6, ISO160, AWB, DR400%, Standard(DR), 109.3mm
FUJIFILM X-S1, EXR Auto, 1/250sec, F5.6, ISO160, AWB, DR200%, Standard(DR), 158.6mm
野良猫なんてお手の物です。懐いていなくても警戒圏の外からドアップで撮れます。いや盗撮という意味ではなく、相手はちゃんとこっちに気づいています(^^;
FUJIFILM X-S1, EXR Auto, 1/500sec, F3.6, ISO100, AWB, DR400%, Landscape(DR), 6.5mm
子供が投げる餌に群がるユリカモメとカルガモ。壮絶なバトルが繰り広げられます。この中で餌を見事にゲットできるのは一羽だけです。空中戦が出来るのはユリカモメだけ。カルガモは落ちてきたもの狙いです。このカットは珍しくほぼワイド端。池端からローアングルで水上にカメラを突き出し、チルト液晶を使ってみましたが、結局はほぼノーファインダーで闇雲にとって見ただけとなりました。
FUJIFILM X-S1, EXR Auto, 1/950sec, F5.6, ISO400, AWB, DR200%, Standard(HR), 158.6mm
トップに貼った奴とほとんど同じですが、やはりこうしてドアップも可能。飛んでいる鳥を捕らえるのはほぼ無理ですが、こうして佇んでいる奴なら、まさしく600mm級の世界がいとも簡単に撮れてしまいます。これが出来るのはこういった高倍率ズーム機か、もっと高価で大げさなレンズ交換式カメラだけですから。
FUJIFILM X-S1, P Auto, 1/850sec, F8, ISO200, AWB, DR200%, PROVIA, 158.6mm
空港に行けばこの通り。ANAのBOEING 767機首部のドアップ。機体全体はどうでも良くて、どこもかしこも切り取ってみたくなります。
FUJIFILM X-S1, P Auto, 1/600sec, F7.1, ISO200, AWB, DR200%, PROVIA, 158.6mm
中国国際航空のAirbus 321。AFモードに関しても一眼レフのように、レンズ脇にモード切替レバーがあって、コンティニュアスAFに設定可能です。旅客機は動きもそれほど早くないとはいえ、タイムラグやAF時の画面フリーズ、レリース時のブラックアウトがあるこの手のカメラで撮るのは、やはり一眼レフと比べるとなかなか骨が折れます。が、流し撮りするつもりで丁寧に追いかけつつシャッター切れば問題ありません。
FUJIFILM X-S1, P Auto, 1/450sec, F7.1, ISO100, AWB, DR100%, PROVIA, 158.6mm
D滑走路から離陸していくBOEING 747。第二ターミナルからだと624mm相当でもこのくらい遠いです。が、とりあえず撮れてしまうところがすごいです。残念ながら空気の揺らぎでメラメラになってしまっていますが。超望遠で遠景を狙うには空気の状態も気にしないといけないですね。
ということで、全体的に「超望遠すげー」としか書いてない気がしますが、それが素直な感想なのは間違いありません。ともすると超高倍率、超望遠ズームという飛び道具に特化して他の部分ではエクスキューズが多く、普通に使い道の少ないカメラだと思い込んでいたのですが、少なくともこのX-S1はそういうことはなく、非常に真面目に本気で作られた、超高倍率・超望遠ズーム機であることが実感できました。操作性もXシリーズのそれにならい、肝心のレンズもワイド端からテレ端までしっかりと使えますし、超解像ズームもいざというときには役に立ちそう。唯一の懸念はその大きさと重さです。やはり普段何気なくカバンに入れておけるものではありません。そういう意味では写真を趣味とするような人にこそぴったりくるような気がします。
方や2倍ズーム、もう片方は26倍ズーム。センサーサイズが違うとは言えこの差は如何に?と思ってしまいます。ボディのボリューム感はAPS-C一眼レフであるK-3とほとんど同じ。高さはX-S1のほうが高いくらいです。
X-S1は登場から既に2年が経過し、ややスペックが古くなってきました。いえ、レンズもボディもこのままで、センサーをEXRから最新の2/3インチX Tran CMOS IIに載せ替えたX-S2の登場に期待したいところです。あと個人的にはもう少しスマートなデザインだとなお良いのに、と思います。