7月下旬に始まったディーザー広告で予告されていたニコンの新しいミラーレスカメラが8月23日に発表されました。実に60年以上の歴史をもつ伝統のFマウントに代わり、これからの時代のフルサイズ・ミラーレス機に最適化された新マウントを採用したZシリーズです。プレス向け発表会の模様はネット中継するという力の入れようで、ニコンの社運を賭けた意気込みが伝わってきました。
そんな力の入った新製品発表から間もない先の週末、東京の渋谷で「ニコンファンミーティング 2018」なるイベントが行われました。もちろんこれも事前にアナウンスされていたもので、事実上一般消費者向けへの「Zシリーズ」発表お披露目会です。今回の東京を皮切りに、今後11月にかけて全国の主要都市でも開催される予定となっています。
さて、ニコン自身の力の入れように対し、ネット上のカメラクラスタはこのZシリーズを巡ってザワザワとしていました。そして私の観測範囲ではなぜか今回発表された「Z 7」と「Z 6」およびニッコール Zレンズとロードマップなどに関し、なんとなく否定的な論調の意見が多く感じられ「ニコンはかけられる期待値が高くて大変だな」と他人事のような態度を取っていました。
でも実は心の奥底ではちょっと動揺していました。これすごいストライクなカメラだったらどうしよう?と。そう遠くないうちに店頭に並ぶはずですが、店頭で心を打ち抜かれるのは非常にまずいです。そして逆に周囲のネガティブな意見の通り、実物に触れて「こんなのダメ」と納得出来れば楽かもしれません。カメラは理屈(だけ)ではなく、ファインダーを覗いてシャッターを切った感触が好みに合うかどうかとても重要と思っています。
ということで、ニコンちゃんに相談しに… じゃなくて自分の手でZシリーズを触って確かめてみるために、ちょっとニコンファンミーティングに潜入してみることにしました。
私はペンタックスを使うようになる前はフィルム時代からずっとニコンを使っていた過去があります。それにニコワンも使っていたし今はD500がある! ニコンファンを自称する資格はあるはずです(A^^;
ニコンファンのふりをする
事前にTwitter上でニコンちゃんがつぶやいていた「土曜日より日曜日、午前中より午後遅い時間のほうが空いてるよ!」という情報に従い、日曜日の午後2時頃に会場に到着しました。会場は渋谷のはずれにあるベルサール渋谷ファーストです。実は最初間違えてベルサール渋谷ガーデンのほうへ行ってしまいました。渋谷駅を挟んで完全に反対側です…。渋谷はアウェイ過ぎて苦手です。
何とかたどり着いたファンミーティング会場。涼しい日で助かりました。もちろん会場内はエアコンかかってますが、まぁ、アレですから。ニコンファンの熱気がすごいですからね。
入場はもちろん無料。でも受付でカタログ一式とこんなシールを渡されます。持っているカメラとレンズと一言を書いて、肩や胸に貼ってくれと。なにそれ小っ恥ずかしいじゃないですか! と言いつつ、素直に従います。ペンタキシアンとしては踏み絵を踏まされた感じですが、まぁいいでしょう。ここではD500ユーザーになりきることにしましょう。コメントは適当ですからあまり突っ込まないでください。
あ、あと熱中症対策でしょうか。小さなペットボトルのお水ももらいました。気が利いてますね。
そしてもう一つ、正方形の付箋も渡されたのですが、そっちにも何かメッセージを書いて、会場入り口にあるボードに自由に貼って行ってくれとのこと。2日目の午後でしたからいくつかのボードにはすでにたくさんのコメントが並んでいました。
でも、さすがに似非ニコンファンとしては、なにも激励の言葉が浮かばなかったので付箋は勘弁してもらい、何も書かずに入り口を通り過ぎました(スミマセン)。
展示物を一通り眺める
さて会場内に入ってみれば、予想通りニコンだけのCP+みたいな感じです。一通り製品展示があって、超望遠体験コーナーや新製品のハンズオンコーナー、そしてセミナーステージなどなどが並んでいます。まずは自由にブラブラと会場内を回りながら、静態展示物を見てみました。
もちろん展示物もほぼZシリーズ一色です。
ですが、それだけだとこうしたひな壇はサマにならないので、DシリーズとFマウントレンズ、コンパクト機や双眼鏡まで、一応オールニコンが勢揃いしていました。でも大砲クラスを除いた簡易版ですね。スペースの都合でしょうか。ちなみに間違ってニコワンが並んでないか探してみたのですがありませんでした。DLもありません(あたりまえ!)。
そして別のディスプレイには、今後順次発売になるZシリーズのボディ2機種と、レンズ3本、そしてマウントアダプターが鎮座しています。
ところで、こんな感じで下から照明当てるディスプレイはCP+などでも良くみますが、見た目はともかく写真向きではありませんね。会場内ではSNS投稿を推奨する看板も立っていましたが、これじゃぁ現地ですぐにまともな製品写真を上げるのは無理じゃないかと思います。もうちょっと写真写りを考えたディスプレイをしても良いのではないかと思います。むしろ製品写真を拡散されるのを嫌がってるように感じます。
閑話休題。まずはボディをじっくり見ましょう。左が初号機となる45Mピクセルの超高画素センサーを搭載した「Z 7」で、右が標準的な24Mピクセルのセンサーを搭載した「Z 6」です。こちらは2ヶ月遅れで11月発売予定だそうです。ちなみに両機の外観上の違いはロゴだけだとか。
なお、機種名の”Z”と数字の間にはスペースが入るのが正式な表記のようです。なのでこのエントリーでもその表記に準じますが、そのまま文章内にベタうちすると変な感じなので、とりあえず括弧でくくってみます。それはそれで変なのすが… なんでこんな面倒な表記にしたのでしょうか?
再び閑話休題。最初に発売されるZマウントレンズはニッコールZ 24-70mmF4 Sという小三元相当の標準ズーム。しかも沈胴式で味気ない外観ということもあって、普及クラスのキットレンズかと思えば、単体では結構いいお値段します。一方ではそんな外観とは裏腹にナノクリ・コーティングを採用するなど、画質には隅々まで相当こだわってるそうです。
そして右はZマウントのボディにFマウントレンズを取り付けるためのマウントアダプターFTZ。膨大なFマントレンズを市場に送り出したニコンにとって、Zシリーズを成功させるためには欠かせない非常に重要な戦略製品のはず。
Z 7 / Z 6 ボディにはボディのみ、レンズキットといった当たり前の構成に加え、マウントアダプターのみ同梱のキットなども販売されるそうです。しばらくはFマウントレンズをそのまま流用する!というユーザーも一定数以上いることは想像に難くありません。
さらに「Z 7」ボディや標準ズームとともに、9月中に同時発売されるレンズがもう一本あって、それが左側の35mmF1.8です。これも解放F値抑えめで普及クラスっぽいのですが、味気ない外観といいお値段であることは24-70mmF4と一緒。
そしてやや遅れて発売されるのが右の50mmF1.8です。昔ながらの標準レンズですかね。前玉の大きさなども含め、この35mmと50mmのF1.8コンビは外観がそっくりすぎて見分けが難しそう。
そしてこちらが発売未定ながらロードマップに載っていて、2019年に発売が予定されているレンズのうち3本のモックアップが並んでいました。
真ん中の巨大なレンズは、ある意味Zマウントの象徴的レンズと言える58mmF0.95ノクトです。ただしこのレンズMFだそうです。一説には、この巨大レンズのフォーカス群を駆動できるモーターが搭載できないのだとか。さもありなん… F0.95開放でMFするのは、ミラーレスといえどもなかなかシビれそうですね。
さらに左は広角ズームの14-30mmF4。これ小さくて良さそうなレンズですよね。こういう広角ズームって絶体に必要だと思います。
そして右が大三元の中核となる24-70mmF2.8。Fマウント版よりは少し全長が短い気がしますが、そこそこの大きさがありそう。これも液晶パネルが付いてますが、距離目盛が表示されるのでしょうか?
製品外観以外に、こんな分解構造の展示もありました。左側(前側)からマウント部、フォーカルプレーンシャッター、撮像素子と手ぶれ補正ユニット、メイン基板にバックパネルとなっています。
ニコン初のボディ内手ぶれ補正ユニットは、もちろん5軸を実現するための磁気駆動式で、コイルはL字型に配置されて小型化されています。最大5段分の補正効果がある辺りはMFT勢を除きほぼ他社と横並びですが、実力はどうなのでしょうか?
カットモデルもありました。上が「Z 7」と24-70mmF4で、下はD850と24-70mmF2.8です。レンズについては明るさの違いがあるので仕方がありませんが、ボディの大きさの違いは際立っています。
それにしても、レンズの構造部をどうして隠しているのでしょう? 鏡胴構造やズームの機構設計、組み立てなどになにか企業秘密があるんですかね。隠されるとかえって気になります。
その他にも、マグネシウム合金製のZシリーズのボディ骨格なども置いてありました。比較的小さいボディにあって、グリップ部からマウントを支える前面パネルなどの一体構造を見ると、強度や剛性という点ではかなりしっかりしていそうです。大径マウントと相まって全体の機械的な信頼性や精度はかなり高いのではないかと期待できます。
右は硝材の展示です。ニコンは光学ガラスの製造から一貫して社内で行っている、数少ない(ほぼ唯一?)のカメラメーカーだと聞いたことがあります。ニコンミュージアムも入り口にいきなりガラスの巨大なインゴットが置いてありましたっけ。
さて、もう一つ気になるモックアップが置いてありました。それがこのバッテリーグリップです。「Z 7」や「Z 6」は、そこそこ気合いの入ったスペックでお値段も良い感じなのに、メモリーカードがシングルスロットだったりして色々手を抜いたように見えるところが見え隠れし、特にその辺に文句を言ってる人が多いように思います。バッテリーグリップが最初から用意されていないことも、そのうちのひとつです。
このモックアップ展示を見て、なんだやっぱりあるんじゃん、最初から出せば良いのに… と思ったのですが、これ良く見ると本当にただのバッテリーグリップであって、縦位置グリップではないんですよね。いやいや、このサイズでそんなのアリなのかな?とちょっとこれには心配です。ボディ底部にはそもそも接点がないそうですが、実は無線で繋がるとかそういう裏技が隠されていて、実物は縦位置シャッターボタン付きで出てくるかも… なんてことはないか。
「Z 7」と「Z 6」およびレンズ関係の静態展示はだいたい以上です。
レンズロードマップ当含め、各製品の詳細な仕様や特徴については公式WEBサイトをどうぞ。
「Z 7」に触れてみたファーストインプレッション!
さてこのイベント最大の目玉は、ガラスケースに入ったZシリーズのカメラやボディを眺めることではなく、実機に触れて試すことが出来るという点にあります。実働状態でハンズオン可能なボディは「Z 7」のみで「Z 6」は私が見た限りにはありませんでした。レンズも9月発売の24-70mmF1.4と35mmF1.8、マウントアダプターFTZを介したFマウントレンズのみで、50mmF1.8他のニッコールZも実機はなかったと思います。
マウントアダプターFTZ + AF-S Nikkor 24-70mmF2.8E ED VR + Z 7
まず触ってみたのはマウントアダプターFTZ付きの「Z 7」です。ニッコールZ付きのハンズオンコーナーは長蛇の列でしたが、なぜかマウントアダプターFTZ付きの方がガラガラでした。みんな、あんなにFマウントレンズとの互換性を求めていたのに、なんでこんなに人気ないの? と訝しく思いつつ試してみます。
こんな姿です。ニッコールの24-70mmF2.8は他社とは違うレンズ構成を採用しているせいで、こんなに長いんですよね。まるで望遠レンズみたいです。「Z 7」の小さなボディにマウントアダプターFTZを介して取り付けると、その長さがより際立ちます。でも、実際にこういう組み合わせで使われることも多いのではないかと思います。
比較的大柄なレンズのせいか、マウントアダプターは意外なくらいに存在感がありません。まるでボディの一部、マウント部の出っ張りとして最初からあったかのよう。ぐらつくような感覚もゼロです。この状態でFマウントミラーレスって言い張っても通用しそうな一体感でよく出来ています。
私の手ではグリップの深さや大きさも十分で、指先がつっかえることもなく、フロントヘビーなわりにかなり自然に構えることが出来ました。
発売まだあとたったの2週間前とは言え、データ持ち帰り自由と言うのはなかなか太っ腹だなと思います。ただしデータを持ち帰りたい場合は記録メディアのXQDカードは自分で持ち込む必要があります。私は幸いD500のために買ったXQDカードを持っていたので、心置きなくZ 7に差し込んできました。
ソニー SONY XQDメモリーカード 64GB QD-G64E J
- 出版社/メーカー: ソニー(SONY)
- 発売日: 2006/06/15
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サンディスク SDXCメモリカード 64GB Class10 UHS-IIエクストリーム プロ SD UHS-IIカード SDSDXPK-064G-JNJIP
- 出版社/メーカー: サンディスク
- メディア: エレクトロニクス
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ちなみにXQDカード、SDXCのUHS-IIと比べて言うほど高くないです… と言いたいところでしたが、50%増しか…(A^^; でも、読み出し速度はともかく、上の2枚で比べると書込速度はXQDのほうが倍速いわけで、D500で使っていても本当に速さを実感します。「Z 7」みたいな超高画素機ではこのクラスじゃないと快適に使えないかもしれません。
ただ、そうは言ってもD850やD500のようにデュアルスロットは欲しかったですね。そうすれば他のカメラとのSDXCカードの使い回しも出来るし、RAWとJEPGの振り分け記録で色々整理しやすいし、あるいはプロの人達にとっては冗長記録は死活問題という話もありますし。
SDXCスロットを追加することで、どのくらいボディサイズにインパクトがあるのか分かりませんが、小型化のために捨てたと正当化できるほど実際にボディが小さいわけでもなく、縦位置グリップの件も含め、基本的な部分はしっかり抑えておいて欲しいところです。と言うか、XQDを採用したことは良いとして、シングルスロットで良しとした辺りはニコンらしくない割り切りだな、と思います。
さて、これが「Z 7」で撮ってきた写真です。目の前に用意されていた静物撮影ブースをそのまま撮っただけです。カメラの設定は… 良くチェックしないままとにかくシャッター切ってしまいました。
AFはマウントアダプターを介してるとは気付かないくらいスムーズに動作するし、シャッター切った感覚も違和感ありません。このFマウントの24-70mmF2.8をDシリーズのボディで使ったことないので比較できないのですが、私的にはこれだけ自然に動けば十分じゃないかと思わせるだけのスムーズさでした。
次にちょっと思いついてテレ端にズームし、わざと絞り込んでシャッター速度落としてみました。と言っても1/30sec程度なので普通に写って当たり前かと思いますが、何をしたかったかというと手ぶれ補正もちゃんと効いてるよな〜と言う確認がしたくて、やりきれずに中途半端になってしまったもの。一応載せておきます。
マウントアダプターFTZを介してIS付きFマウントレンズを使った場合について、商品ページには以下のように書かれています。
VR機構を搭載しているCPUレンズでは、レンズのVRとカメラ内VRが共働し、三軸の手ブレ補正が使用可能です。この場合、レンズ側の手ブレ補正スイッチ(ON/OFF)が優先されます。
つまり、2軸はレンズ内のVR機能を使用し、+1軸(ロール軸まわり)のみボディ内手ぶれ補正を使う、と理解してるのですが真偽は不明です。シフトブレ補正の+2軸が使えないのは、もしかしたらFマウント経由では距離情報が伝わらないのかもしれませんが、そうするとAEにも影響が出そうですがどうなんでしょう?
さらに思いついて高感度を試してみました。これでISO6400です。全然普通ですね。ちなみに以降含めて「Z 7」で撮ったカットは全てカメラ内JPEG保存ですから、NRやレンズ補正も適宜かかっているはずです。
さらに1段上げてISO12800。拡大するとざらついてきて、エッジが曖昧になり始めているのが分かりますが、普通に観賞に耐えるしプリントしても問題なさそう。
ならばということで、さらに上げてISO25600。前の2枚と比べるとやや崖を越え始めたと言えるかもしれません。
なるほど、D850が超高画素のわりに高感度も優秀と言うことで、それとほぼ同等のセンサーを使ってると思われる「Z 7」がこのくらい普通にこなしてしまうのは、もう今の時代なら当たり前と言うことなのでしょう。特殊な用途でない限り、実用上ここまで使えたらほぼ問題ないと思います。
なお、ここまで貼った写真の下に表示されているとおり、マウントアダプターZを介しても最近のFマウントレンズならExifもちゃんと記録されます。
ニッコールZ 24-70mm F4 S + Z 7
さて、せっかくここまで来たらやはりZマウントネイティブのニッコールZレンズも試しておかないと、という気分になったので、改めて隣の長蛇の列に並んでみることにしました。だいた40分くらい並んだと思いますが、ちょうど行列の横でミニセミナーをやっていたので、それを見ていれば十分に暇つぶしできました。偶然とは思いますがいい会場レイアウトだったと思います。
さて、こちらが標準ズームキットとも言えるニッコールZ 24-70mm F4 Sを取り付けた「Z 7」です。さすがに先ほどよりもかなりコンパクト。そして軽いです。
ただねぇ、やっぱり色気が足りないですよね。沈胴解除もロックはなくて強いクリック感があるだけ。とは言え、一手間余計なことに変わりはありません。個人的にはあまり沈胴式レンズは好きではありません。写りが良いしAFもしずかで早いというのは分かるのですが。
さて、こちらもまた目の前にあった静物ブースをそのまま撮ってきました。照明が十分あるのでISO100で撮れます。これでズーム位置は47mmくらい。絞りもF4解放のままなので中途半端に前後がボケてしまいました。
これがテレ端70mm。近距離ですしF4でもそこそこボケます。
先ほどは撮らなかったISO3200はこんな感じ。これこそ本当に本当の「常用可能」と言うやつではないかと思います。
EVFに関する感想
スペック的に連写機ではないのは承知の上で、作例とは別にEVFの表示の具合とか気になったので連写モードを試してきました。「Z 7」では通常の高速連写では5.5コマ/秒となりますが、この場合AFもAEも連動しますし、メカシャッターもちゃんと作動します。連写中のEVF表示はシャッター切った瞬間ブラックアウトしますが、時間的にも一瞬だし表示の流れというかつながりはまぁまぁかと思います。
次に拡張高速連写モードに設定すると、速度は9コマ/秒まで上がりますがAEが最初のコマの状態で固定になります。この場合は電子シャッターに切り替わるのか、EVFはブラックアウトしなくなり、ほんの一瞬のフリーズするようになります。ただポストビューを表示しているのではなく、露光中のみプレビューで固定し間をライブビューでつないでる感じでした。
単純にカメラを左右に振りながら試してみましたが、やはり表示の不連続さと遅れが気になります。ただし動体や連写のことを考えなければ、EVF自体は倍率が高いおかげもあって、非常に見やすくて高精細であり、これまで見てきたEVFの中では一番自然で美しいのではないかと感じました。暗所や炎天下で明るさやコントラストがどうなるか?があとはポイントかと思います。
シャッターフィール等を含めた総合的な感想
さて、あとミラーレス機で気になるのはシャッターを切った感触ですが… これは素晴らしいと感じました。何というか、キレと柔らかさのバランスが絶妙。ミラーショックはもちろんないしシャッターショックもほとんど感じません。一方で明らかな電子音でごまかしてることもなく、全体的な手触りとして40万円のカメラの風格はあると思いました(※もちろん個人の感想です)
ボディの剛性感やバランスもいいしホールディングも小さいなりによく出来ています、操作系もDシリーズとは大きく変わっていながら、基本的なところは直感的に分かります。ただ、前後ダイヤルがちょっとデザインされすぎているというか、スッと指を出したところに必ずなくて、いちいち目視確認してしまうと言うことが何度もありました。その辺は慣れの問題ならいいのですが。
ということで、全体的に細かい機能やらなにやらよりも、EVFやシャッターフィールや手触りなどなど、感覚的な部分で違和感がなく、むしろよく出来てるなーというのが、偽らざるファーストインプレッションまとめです。うん、かなり気に入りました。シングルスロット問題やらなんやらは、まー許してやるか、という気分です(A^^;
最後にD500と並べてみました(D500についてるレンズについてはまたいずれ報告いたします…)。
D500は一眼レフとしてもわりと大柄な方ですが、このくらいのサイズ感の差はこの程度です。でも撮像フォーマットは2倍大きいと考えればかなりコンパクトではあります。ファインダーもシャッターまわりもまったく違う機構のカメラでありながら、似た感触に仕上がってる辺りは、さすがニコン風味の味付けがしっかりしていると思いました。
ファンミーティングその他の風景
最後に「Z 7」以外の様子をまとめておきます。
まずはこいつです。ある意味Zシリーズと並んで私的に興味があったもう一つの新製品です。フレネルレンズを使って超小型化された500mmF5.6の超望遠レンズ。いやいや、これ本当に小さいです。最大径は200-500mmF5.6と同じくらいで、長さはむしろ短いくらい。重量に至っては200-500mmよりも約500gくらい軽くてたったの1.5kgしかありません。
D850と組み合わせても片手で軽々と振り回せます。これはすごい! 200-500mmでもだいたいの場合500mmを中心に使うとなれば、そこは割り切ってこれ一本の方というのもアリだという気がしてきました。
とは言え問題はお値段。純正調望遠ズームにしては激安の200-500mmに対し、こちらは開放F値控えめとは言え、それなりに大砲級ということで実売価格も40万円以上となっています。欲しいような気はするのですが、おいそれとは手が出ません…。
「Z 7」のハンズオンに関しては私が体験してきた静物ブースコーナー以外に、説明員付きのカウンターや、モデルさんを自由に撮れるコーナー、あとは逆に「Z 7」を使ってスタジオセットでプロフィール写真を撮ってもらえるコーナーなどもありました。それぞれ待ち行列があって、全てに並んでる余裕はなかったので他はパスしてきました。
こんな大ステージや、この1/5くらいのミニステージもあって、ニコンの開発者やプロカメラマンなどが色々なテーマでセミナーを行っていましたが、どれも時間も合わなかったのでちょっとずつ立ち聞きしてみただけです。
各種メディアや雑誌、CP+などでもおなじみの写真家、上田晃司さんがミニステージを終えたところ。「Z 7」の作例撮りを担当されていたようです。さすが人気者で、終わってからみんなに取り囲まれていました。
作例パネルの展示コーナーは隅っこの方にちょこっとあっただけ。ちょっと残念な感じです。思わずその機材が欲しくなるような、それさえあれば自分でも撮れるような気になる作例をじっくり見てみたいですよね。そういうのはステージで撮影した写真家に語ってもらう、という方針だったのかもしれません。
あと、ひっそりと展示されていたのがこのF2。ニコンお得意の過去の栄光にすがる展示… という単純なものではなくて、これは植村直己スペシャルの改造版F2だそうです。ボディの傷などを見ると、実際に使用されたものなのでしょう。外装はチタン製でストラップも含めて細かい部分が植村直己氏の要求に沿って改造されており、その技術やアイディアは後の製品にも生かされてるそうです。「過去の栄光」とか揶揄してしまいスミマセン。ニコンブランドはこうした積み重ねで培ってきたものなんですよね。
ということで、大した内容ではありませんでしたが、ニコンファンミーティングへの潜入レポートおよび「Z 7」に触ってみたよ報告は以上です。
で? 買うの?
いいえ、買いません。今すぐは(A^^;
インプレに書いた通り、細かいスペックよりも全体的な手触りがとても気に入ったのは事実ですが、それは何というか、今持ってる機材を全てなげうって乗り換えたいと言うほどではなく、今後ペンタックスのKシリーズに万が一のことがあったり、いよいよ全体的に一眼レフが終了してしまった時に、心置きなく乗り換える先が出来て良かった! というところでギリギリ留まってる感じです。まぁ買わない、買えないという理由のほとんどは値段というのは偽らざるところですが。いずれにしても冒頭に書いた心配は何も解消してないかも(^^;
何というか、ニコンが60年の時を超えてマウント変更に踏み切り、一眼レフからミラーレスへと舵を切った初めてのカメラとして、私的には「ほぼ期待通りの出来映えである」し「欲しい!」と素直に評価しておきたいと思います。
XQDシングルスロットとか、文句言いたくなるところはもちろんあるのですが、だから全部ダメ、Zシリーズ終了というほど致命的ではありません。逆にスペックは素晴らしくてお買い得だけど、実際手にしてファインダー覗いてシャッター切ると心の底から萎えてしまうカメラよりはずっとマシだと思います(※個人の好みの話です)。
なので、このシリーズが順調に伸びていって、普及機からもっとハイエンド機まで、さらにボディもレンズも選り取り見取りに育っていくことを楽しみにしたい思います。いつかタイミングか巡ってきて、縁があったら買います!多分… 今のところそんな気持ちです。
おまけ:フルサイズ・ミラーレスは続々と登場する?
Zシリーズの発表以降、各社からの意図的か意図的ではないのか分からない、刺激的なリークが続いています。間もなく開催されるフォトキナに合わせて出てくるのでしょうか?
噂の筆頭はこれでしょう。というか、ここ数日中に正式発表されるのかも。ニコンの永遠のライバルキヤノンがぶつけてくるEOS R。ボディはちょっと遠慮気味のスペックのようですが、レンズラインナップからは気合いが入っていることを覗わせます。ただEOS Mマウントのやる気のない展開とは違ったものになるのか、ニコン同様に次世代の社運をかけた製品になるのか、キヤノンの本気度も近々分かってくるものと、楽しみです。
それからこれ。MFT陣営のパナソニックが独自マウントでフルサイズ機を出す?って俄には信じられませんが、これもまたフォトキナで発表されるとの噂。本当だとしたら色々心配ですが楽しみでもあります。選択肢が増えることは良いことです。昨年末からGX7 Mark IIを使ってみて、意外にパナソニックのカメラは手に馴染むことが分かってきたので、ひょっとするとまたクラッときてしまうかも。
この分野を一足も二足も先に走ってきたソニーも黙ってないでしょう。今年後半から来年のCP+までは「フルサイズ・ミラーレス」がひとつのトレンドになるかと思います。
一眼レフ原理主義のペンタキシアンなりに高みの見物(低見?)を決め込んで、百花繚乱を楽しみたいと思います。