今年で最後となる新興国グランプリの草分けレース:F1 2017 第15戦 マレーシアGP

投稿者: | 2017年10月4日

 F1は終盤戦を迎え、9月中旬より秋のアジア連戦が始まりました。初戦はナイトレースで有名なシンガポールGP、そして先週末はマレーシアGPが行われました。

 マレーシアGPと言えば、以前は春先に開催されていましたが近年はフライアウェイ戦が整理されてシンガポール、マレーシア、そして日本のアジア連戦は秋にまとめられました。とはいえアジアの中でも中国はいまだ春開催のままなのですが。

 さてそのマレーシアGPも今年で19年目を迎えるそうです。バーニー・エクレストンが進めてきたF1の新興国進出の草分け的存在であり、舞台となるセパン・インターナショナル・サーキットは、F1のために建設されたと言っても過言でなく、その後、各国で量産されることとなったヘルマン・ティルケ設計の元祖みたいなサーキットです。

 それがなんと今年で開催終了となると言うではないですか! ペトロナスという巨大スポンサーもいる中でなぜ?と思って調べてみると、どうやらマレーシア政府がF1から手を引いてしまったそうです。その主な理由はやはり開催権料の問題とのこと。高騰してしまったF1開催権は、もはや開催地にとって経済的に正当化できる範囲を超えてしまった、と言う点ではオリンピックみたいな問題なのかも知れません。

Max Verstappen / Red Bull RB12 / 2016年 日本GPKONE1204.jpg
 残念ではありますが、最後のマレーシアのレースを楽しむこととしましょう。

「ルイスがトラクションに苦労していることがわかった」 マックス・フェルスタッペン

 レース序盤4週目のオーバーテイクは実に見事でした。実際のところ今回のレースではフェラーリとレッドブルのペースは、明らかにメルセデスを上回っていたはずなのに、予選ではハミルトンの一発の集中力とメルセデスPUの予選モードにやられてしまった感じです。

 しかしレースペースでは明らかにレッドブルかフェラーリに分があるだろうと言われていたので、この流れは予想されたとは言え、いきなり4週目にやってくるとは思ってもいませんでした。

 中見出しに引用したコメントは続きがあって、それは…

・・・そこにつけこんで、すべてのバッテリー・パワーを使って彼を抜いた。ルイスがチャンピオンシップ争いをしているので、あまり多くのリスクを冒さないことがわかっていたので、一か八かやってみた。ルイスを抜くとすぐに、その後はレースをコントロールできるとわかった

 というもの。これが今回のレースでフェルスタッペンが勝った要因の全てを表していると思います。ハミルトンのマシンは序盤にバッテリーチャージに専念し回生パワーが十分にないのを見抜いただけではなく、さらにはハミルトンはきっと接触のリスクを冒してまで、厳しいブロックはしてこないだろうというところまで読み切って、思い切ってインに突っ込みます。

 何かと暴れん坊的なイメージがあるフェルスタッペンですが、こういうレースの勘の良さはさすがレッドブルに抜擢されるだけのものがあります。

 今シーズンは不運やミス、あるいはマシントラブルによってリタイア率が高く、チームメイトのリカルドに完全に成績で負けていますが、サーキットでの人気の高さが示すとおり、レッドブルとF1にはなくてはならない一人になりつつあります。

 願わくば、2019年には彼がホンダのロゴを付けていると良いのですが。

「今週末キミと僕がトラブルに見舞われても、マシンがよいので期待が持てる」 セバスチャン・ベッテル

 ずいぶんと前向きで楽観的なコメントです。実際のところ、予選を走れないと決まったときもサバサバとした感じだったし、彼的にはそろそろチャンピオンシップの行方について覚悟が付いてるのかも知れません。絶対にそうは言わないと思いますが。

 しかし今回のマレーシアと前回のシンガポールは、フェラーリとベッテルにとってはメルセデスに勝てる可能性の高い、非常に重要なレースでした。それを二つとも落としてしまったのは、つまりそういうことなのではないかと思います。

 シンガポールは天候要因… というよりはやはりベッテル自身のミスだったと思います。そして今回はマシンの問題。ここに来てこんな重大な信頼性の問題を引き起こすとは、フェラーリらしくありません。いや、あるいはこのタイミングでこうなるところが、ここ数シーズンのチーム力を結局のところ表しているのかも。

 それにしても、ベッテルは最後尾スタートから良く追い上げました。15台抜きを演じてもう少しで表彰台に届きそうだったのですから。ライバルのハミルトンとしては、もう少し突き放せるはずだったのにと、フェルスタッペンにもう少し抵抗しておけば良かったと、後悔しているかも知れません。

 それよりもフェラーリ的に残念だったのはライコネンです。いや多くのF1ファン的に、と言った方が正しいでしょうか。メルセデスの不調と、ハミルトンのコンサバな戦いぶり、そしてレッドブルの速さを見ていたら、本来なら自分が勝てたと思ってるはず。そして実際にフェラーリのマシンにはその力があったはずです。

 今回ばかりはチームオーダーの余地もなかったはずだし、もしかしたらフェルスタッペンとの壮絶なバトルに発展したかも。久しぶりにアイスマンのキレッキレの走りと、”Leave me alone! I know what I’m doing!” に続く名言を聞いてみたいものです。

「レースのフィニッシュ順位には自信がなかったので、今日7位になったのは素晴らしい結果だ」 ストフェル・バンドールン

 夏休み明けから俄に盛り上がっていた来年のパワーユニット問題は、結局マクラーレンがホンダとの契約を解消することで決着がつきました。もちろんその主な理由は、この3シーズンに渡るホンダのパフォーマンスと信頼性不足、特に今シーズンの出来が異常に悪いことにあります。それにマクラーレン自身はもちろん、特にアロンソの堪忍袋の緒が切れてレッドカードを突きつけた、ということになります。

 パワーユニットもマシンも、すでに来シーズンの開発が始まってるところかと思いますが、これでホンダはマクラーレンの言うことをいちいち聞かなくて良くなったし、情報の提供も最小限に絞るのでしょう。そしてアップデートも最小限にすると明言しています。それはすなわち、早くもマクラーレンホンダは消化試合に入った、という意味かと思っていました。今後のレース結果は期待できない、と。

 特にセパンはパワーの必要なサーキットで、ホンダには不利と思われていました。なのに蓋を開けてみれば予選ではドライコンディションの中、2台揃ってQ3に残るという健闘を見せます。しかしそういうことはこれまでにもありました。予選の一発だけならタイムが出るけど、レースペースは全くない、と。アロンソがぶち切れたベルギーのように。

 しかしアロンソより前の7番グリッドからスタートしたバンドールンは、レース全体を通してメルセデスPUを搭載するフォースインディアやウィリアムズと対等に渡り合い、スタート順位と同じ7位を維持したままチェッカーを受けました。

 これはホンダにとっても、新人バンドールンにとってもすごいことです。ライコネンがいなくなっただけで、ライバル勢がリタイアしまくったわけでも、誰かが自滅したわけでも、雨が降ったわけでもないのに、ウィリアムズ2台とフォースインディアの1台には勝ったのですから。

 これはホンダ本来の力が出た結果なのか、マクラーレンのマシンが良いおかげなのか、たまたま上手くタイヤと路面状況がスイートスポットにはまっただけなのか分かりませんが、この調子で来シーズンにつなげ、マクラーレンとアロンソに「失敗したかも?」と思わせつつ、再来年に向けてレッドブルに「うちにもそのPU下さい」と言わせられるように頑張ってもらいたいです。

いよいよ日本GPウィークエンドの始まり

 マレーシアGPと日本GPは間を開けずに連戦となります。つまり今週末はもう日本GPが開催されるのです。フリー走行は金曜日からですが、鈴鹿サーキットにおける各種イベントは木曜日から始まります。

 ということで、毎年毎年良くも飽きないものだと自分でも思いますが、今年も鈴鹿へ出かけて、生でF1を体感してこようと思います! もちろん写真も撮ってきます。

カテゴリー: F1