ファイナルラップ直前に突如打ち切られた前代未聞の時短レース:F1 2014 第4戦 中国GP

投稿者: | 2014年4月22日

 シーズン開幕フライアウェイ連戦の最後を飾るのは中国GP。例年通り上海で開催されました。盛り上がってるのか盛り上がってないのかイマイチ分からないレースですが、終盤のアジア連戦から外されつつも、今回でもう11回目。特徴的なコースレイアウトも、すっかり見慣れた風景となってきました。

 メルセデスの一人勝ちで迎えたこのサーキットは、フロントタイヤに厳しく、現行カレンダー中で最も長いバックストレートをもち、燃費には優しいという特徴を持ったサーキットです。

 これまで圧倒的な強さを見せてきたメルセデスは、ここでも当然のごとく強さを見せます。そもそもロズベルグが2年前に初優勝した地でもあり、メルセデスとは相性が良いのではないかと思われます。

「不思議なことにタイヤは全然問題ない」 ルイス・ハミルトン/メルセデス

 彼にとっては良い思い出も悪い思い出も、両方あるこの上海ですが、今回は完璧な勝利を収め、これでマレーシアから3連勝。いまや完走すれば優勝という状態です。2007年の最悪の思い出では、タイヤ戦略に失敗してリアタイヤを使い果たし、ピットロードの入り口でクラッシュしてしまいました。と言うことは、当時のマシンにとってはリアタイヤに厳しいサーキットだったと言うことなのでしょうか? レイアウトや舗装は大きく変わっていないように思いますが、今年のマシンにとってはフロントタイヤに厳しくなってると言うことは、レギュレーションやマシンの進歩によってもたらされた変化なのでしょう。

 スタートで使ったソフト側のオプションタイヤは、デグラデーションが大きく、長くは使えないと言われていました。実際フリー走行のレースシミュレーションでもそういう結果が確認されていたはず。しかしなぜかレースになると、ハミルトンのマシンはほとんどタイムが落ちることもなく周回を重ねます。実際、ドライバーから見てもドライブしやすい状態を保っていたようです。

 信頼性もパワーがある上に、タイヤもうまく使いこなしてしまうとなれば、これは手が付けられません。ドタバタの予選とレースを戦ったロズベルグをも全く寄せ付けずに圧巻のポールtoウィンでした。今シーズンの主役となることは間違いなさそうです。

 間違って55週目の終わりに振られたチェッカーフラッグを見て、ハミルトンは「後もう1周だよね?」と無線で確認して走り続けましたが、幻と消えたファイナルラップは結果的にウィニングラップとなりました。タイヤ、燃料、後続のギャップを考えても、彼の優勝においてはレースが54周だろうが56周だろうが、些細なことでしかありません。

「この表彰台はステファノに捧げるべきだと思う」 フェルナンド・アロンソ/フェラーリ

 ドメニカリが中国GPの直前に突如首になったことについて、こういう優等生的なコメントがアロンソの口から発せられると、嫌みが感じられません。と言っても、素直に言葉通り受け取れると言うことではなくて、むしろその逆。

 ドメニカリの解任をアロンソが望んでいて、そして実際に何か行動を起こしたという噂が本当であっても不思議はないし、去って行ったドメニカリに対し「表彰台を捧げる」というのは、心にもないことを言ってると言うよりは、むしろ「分かってくれよ」という意味だと深読みしたくもなります。

 それもこれも、チャンピオンを取り返すため。そこにかけるアロンソのひたむきさはよく分かりますし、アロンソは間違いなく現役ドライバーの中で一番力がありそうなのに、ドライバーとして一番脂が乗った時期を、チームとマシンに恵まれずに過ごしていることの不運さはかわいそうでもあります。

 ここ上海はフェラーリにはいくらか向いているサーキットとはいえ、表彰台に入るとは思いませんでした。レースが上手いアロンソらしさが垣間見えましたが、それで得られるのが3位がやっとという現状が、ことの深刻さを表しているようです。

「セブとの関係はこれからも変わらない」 ダニエル・リカルド/レッドブル

 開幕戦の地元オーストラリアGPの2位が剥奪されたことを始め、速さを見せているのに結果を得られていないリカルドですが、今回のレースもメルセデスとは全く戦えず、フェラーリにも先を行かれてしまい、結果だけを見ればいまひとつピリッとしない4位に終わりました。

 しかしチームメイトのベッテルに対する優位は完璧に見せつけることとなりました。予選で勝ったことはもちろんですが、ほぼ同じタイヤ戦略なのに、ベッテルに道を譲らせることとなった事件は注目に値します。ベッテルは自分の不調がよく分かっているためか、渋々ながらもラインを開けました。結果チェッカーまでに20秒の差が付いたことはさらにベッテルを驚かせ、リカルドを喜ばせると同時に困惑させる結果です。

 リカルドも上に引用したようなコメントを残しているくらいですから、チーム内の空気は穏やかではないのかも知れません。「これからも変わらない」というのは、自分はナンバー2であると言いたいのか、ベッテルの政治的な介入は許さない、ということなのか。昨シーズン最終線で「今このときのことを良く覚えておこう」とチームに向かって言った、ベッテルの言葉が思いされます。

「10位争いだったら話は別」 小林可夢偉/ケータハム

 オフィシャルが誤ってチェッカーフラッグを予定よりも早く振ってしまったことにより、56周だったはずのレースが(そして実際56周走ったのに)54周終了時点のポジションが公式記録となったことは、ほとんどのドライバーには影響を与えませんでしたが、唯一そのとばっちりを受けてしまったのが我らが小林可夢偉です。マルシアのビアンキを最終ラップでオーバーテイクしたのに、それはレース結果に反映されないこととなりました。

 しかし本人は極めてさばさばしているようです。それは17位争いはチャンピオンシップに影響はないし、公式記録にはならなくても素晴らしいオーバーテイクを決めたことは事実であり、国際映像にも映ったのだから良しとしよう、ということなのでしょう。

 残念ですが小林可夢偉らしさが出たレースでしたし、明らかにエリクソンとの格の違いを見せつけているので、今後に期待が持てます。そして近々、本当にポイントをかけて10位争いをする姿を見たいものです。

 フライアウェイ4戦はこれで終了し、F1が3週間ばかりお休みとなります。次は早くもヨーロッパラウンドの始まり。まずはスペインGPからです。

カテゴリー: F1

ファイナルラップ直前に突如打ち切られた前代未聞の時短レース:F1 2014 第4戦 中国GP」への2件のフィードバック

  1. ayanolog

    なんかいろいろ不思議なレースでしたよねー。それにしても今年ほどチーム内ドライバー同士の関係がピリピリしてるチームが多い年も珍しいような。面白いんだか面白くないんだかよく分からない今年のF1です…

  2. hisway306

    id:ayanologさん、コメントありがとうございます。
    スタートから色々ありましたし、経過も予想通りなこともそうじゃないことも一杯あって、確かに不思議なレースでした。
    ひとつのチーム、一人のドライバーが開幕数戦を圧勝するシーズンも実は久々です。妙なマシンの姿、音、そしてレギュレーションもよく分かってないところが多くて、どうもまだ今年のF1には慣れないです。
    今回知ったのですが、今年はギアレシオも変えられないんですね。モナコとモンツァで同じギア使うなんて、そりゃ大変だって素人でも思ってしまいます。

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