アメリカでCESが行われ、月末にはCP+を目前に控えたこの時期はカメラの新製品発表ラッシュとなります。今のところ昨年ほどの「大物」は少ない気がしますが、それでも続々と各社の新製品が明らかになりつつあります。そんな中ペンタックスからも「MX-1」という名のカメラが登場しました。明るいズームレンズを搭載した高級コンパクトカメラです。
機種名やそのロゴ、そして全体が醸し出すデザインの雰囲気から判断するに、フィルム時代の一眼レフの名機、MXをイメージしているようです。ボディの上下カバーは、当時のMXやその他一眼レフで使われていた真鍮製で、ボディの角は大きく面取りされています。革張りの風味も古い一眼レフ風。色もシルバーとブラックが用意されています。
でもこれは「一眼レフカメラ」でもなければ、いわゆる「一眼カメラ」でもありません。フィルム一眼レフのMXを明らかに意識しているはずなのに、一眼レフの一番の特徴であるペンタ部すらなく、つまりよく見るとどこもMXに似ていないのです。もちろん中味はただの高級コンパクト機。でもなぜかMXを思い起こさせます。
名機MXをこうやって自己パロディ商品に使ってしまうのは勿体ない気もしますが(ME当たりにしておけば良かったのに^^;)、全く違う分野のカメラにこういうレトロデザインを被せてくる当たりは、鼻につきやすい懐古趣味のど真ん中を外してあって、むしろ気が効いてる企画だなとさえ思えてきます。
しかしそのデザインも、画龍点晴を欠くと言うべきか、玉に瑕と言うべきか、残念な点があります。せっかくMX時代の一眼レフカメラのフォルム合わせ、角を切り落とし、カバーに真鍮まで使うとう拘りの見せているというのに、それを台無しにするかのように背面液晶が大きく出っ張ってしまっています。特に左背面の角のスペーサーは見てられないほどの雑な処理。
これが機能性に徹した道具としてのカメラであるなら、厚みが増えて多少格好悪くなるくらいのことは可動液晶の便利さに対するトレードオフとして理解できます。でも、このカメラのデザインコンセプトではあり得ない… と残念に思えてしまいます。
外見はさておきその中味はと言えば、撮像素子は1/1.7型の1,200万画素裏面照射型CMOSセンサーで感度はISO100~12800。センサーシフト式の手ぶれ補正付き。レンズはフルサイズ換算で28-112mm相当の4倍ズーム、開放F値はF1.8-2.5。チルト可能な背面液晶は3インチの92万画素、ポップアップ式のストロボ付きで、2軸の電子水準器まで内蔵しています。モードダイヤルと背面電子ダイヤルに加え、露出補正の専用ダイヤルが用意されるなど、高級コンパクト機としては機能的にも非常にそつなくまとまっています。
実はこれらのスペックやレンズまわりの機構をよく見てみると、すでに市場に出回っているOLYMPUSのXZ-2とそっくりだったりします。両製品(あるいは両社)がどういう関係なのかは知りませんが、何らかの形で基本的な設計を共有しているのは確かでしょう。メーカーの異なる兄弟機というのはコンパクト機では往々にして良くあることです。そういう意味ではデザインのために可動式液晶を使わないという選択肢はなかったのかも知れません。
さて、あれこれ私が心配(?)するまでもなく、このMX-1は日本では発売されないとの噂があります。CP+までに国内発表されなければ恐らくそうなのでしょう。でもそんなことってあるのかな? 国内向けは普通の外装でRICOHブランドでGX300として出るとか? それだったら可動液晶も気にならないし、よほど欲しくなるかも。
それよりも、この新しい1/1.7インチの裏面照射CMOSセンサーが搭載されたQマウント機はいつ頃出るのでしょうか? CP+ではそちらに期待したいと思います。