春のアジアシリーズの後半戦、中国GPが行われました。開幕直後の3週間のブランクは長くて待ち遠しいレースでした。上海のサーキットは近代的な設備で、中国の勢いを感じさせるようですが、観客の入りは今ひとつで、コース外周の無人スタンドの風景は中国GPの風物詩になりつつあります。それでも韓国GPよりはずっと状況は良いようですが。
中国GPと言えば例年結構荒れたり白熱したレースになることが多いのですが、それはティルケらしさが一番出ているとも言われるコースレイアウトとも無関係ではないようです。あとは天候などなど。果たして今回もある意味「予想外の」展開、結果となりました。
「レースペースを更に改善する」ニコ・ロズベルグ/メルセデス
これがニコにとっての初ポールにして初優勝と聞くと何だか意外な気もします。トップドライバーとしてその腕は誰もが認めていながらも、これまでレースでも予選でも2位以上の成績を残していませんでした。気がつけばもう「若手」とも言い切れないキャリアを築きつつあります。
遅咲きのドライバーは他にもたくさんいます。現役で言えばバトンがそうかもしれません。無勝のままフェラーリのファーストドライバーに抜擢され絶大な人気があったジャン・アレジは結局生涯成績は1勝だけでした。ニコの今後はいったいどうなるでしょうか?
今年のメルセデスのマシンは「ダブルDRS」と呼ばれる機構を搭載し物議を巻き起こしています。そのおかげ(そのせい?)かどうかわかりませんが、過去2戦のメルセデスは、予選では速いけどレースではそうでもない、という結果しか残せませんでした。
そしてまさに同じ展開になるかと思われた今回の中国GP。予選ではニコはアタックするタイミングが良かっただけで、思いがけずポールを手に入れただけ、と思っていました。しかしレースになってみれば、昨年までのベッテルのように危なげない独走逃げ切り。今回のメルセデスはレースペースもトップクラスで、過去2戦と見違えるような見事で完璧なレースとしか言いようがありません。
レース後の嬉しそうなニコも様子も良かったですが、早々にリタイアしてしまったシューマッハまでもが、ピット内で満面の笑みでソワソワしていたのが印象的です。メルセデスにはもしかしたら3年くらい前のレッドブルのような雰囲気があるのかも?と思えてきます。ということで、次のレースと言わず、今シーズン、メルセデスには要注目です。
もしかしたらシューマッハにも運は巡ってくるかも知れません。自分のことのように喜んでいたあの姿は、その予感が本人には一番よく分かっているからなのかも。
「やっぱ悔しいわな!!」 小林可夢偉/ザウバー
レースの結果は10位。かろうじて1ポイントをゲットしました。しかし、そんな微妙なレース結果よりも、小林可夢偉は今回の中国GPで二つの大きな結果を残しています。
一つは予選。今まではQ3まで残れれば御の字という感じでしたが、今回はQ3で「戦える」状態でした。結果はニコとマクラーレンの2台に続いて4番手のタイム。しかもハミルトンのペナルティのおかげで、レースは3番グリッドからスタート。ジャンプスタートが得意で、レースが上手い小林可夢偉には大きな期待がかかりました。
しかし肝心のスタートで遅れた上に今回もタイヤ戦略が当たらず。終盤にチームメイトのペレスをオーバーテイクしなければ、ポイント圏外に落ちてしまうところでした。悪くても6位くらいかな?と思っていただけに、期待外れで何もかもが上手くいかなかったレースと言えます。
そんな中、しかし小林可夢偉は40周目にファステストラップを記録しているのです。これが二つ目の大きな結果です。ファステストラップは公式にレース結果として記録されるものであり、普通は優勝争いに絡むくらいじゃないと記録することは出来ません。しかも20年前に中嶋悟が記録した時ような、大雨の荒れたレースではなく、終始ドライでリタイヤもほとんどないレースでした。そこでファステストラップを取ったというのは、非常に大きな意味ある結果だと思います。
つまり、小林可夢偉とザウバーのマシンには、予選でセカンドロウをとり、レースではファステストラップを取れるだけのポテンシャルがあったということ。しかしレースは歯車が完全に狂ってしまいました。結果、最大限まで戦って取った1ポイントではなく、取れるはずの多くのポイントを失って1ポイントしか残らなかった、というのが今回の小林のレースと言えそうです。
次戦に再度期待です!
「最初の2戦よりも一歩前進した」 フェリペ・マッサ/フェラーリ
確かに細かいことを言えば13位というリザルトは今季のベストなのですが、もはやフェラーリとしてはリタイヤするも13位で終わるも同じようなものでしょう。そもそもはどうしようもないマシンがダメなことは分かっているわけです。なのに前戦でアロンソが優勝してしまったりするので、状況がややこしくなり、マッサへの風当たりも相当強くなってきています。
アロンソでさえも今回ばかりは9位スタートで9位に滑り込むのがやっとでした。そう考えれば12位からスタートしたマッサが13位で終わったのは、実際悪くないレースだったのかも知れません。しかしそういうことではなくて、マッサにはアロンソのように隙を突いて優勝するかも?といった期待感はゼロなのが問題なのでしょう。2008年の魔法はもう賞味期限が切れました。
チャンピオンになり損ねた2008年頃は、本当に彼は素晴らしいスピードを持っていました。しかし今回フジテレビの実況でもマッサは完全に障害物として扱われていました。見ている多くのファンが同じように思っていたことでしょう。
まったく期待感の持てないドライバーほど見ていてつまらないものはありません。仮に誰かに変えたところで、問題のダメなマシンに代わりはなく、結局結果は出ないかも知れません。でも、期待が持てる新しいドライバーが走らせるフェラーリの方が、よほど見ていて面白いはずです。
誰も独走しない荒れたシーズン序盤も珍しい気がします。今シーズンはチャンピオンシップの予想がまったく立てられません。いったい怒鳴っていくのでしょうか? 混戦になったおかげで中段チームにも表彰台どころか、優勝のチャンスが出てくるなら、近年まれに見る面白いシーズンになるのかも知れません。
次は今週末。昨年は政情不安でキャンセルとなったバーレーンGPです。今年は強行するようですが、政情不安は収まったわけではないようです。危険を冒してまで開催するものなのかどうか疑問がありますが、無事に恙なく行われることを願いたいと思います。