- 作者: 宮部みゆき
- 出版社/メーカー: 文藝春秋
- 発売日: 2010/02/10
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はじめに、この小説はミステリーものですが、以下、直接内容に触れるようなネタバレはしていないつもりです。が、私の感想に紛れて、ストーリーの"雰囲気"を想像させるような言葉が含まれている場合があります。
未読で本作に興味のあり近々読む予定がある方はご注意ください。興味が持てるかどうか迷ってる方、どんな本なの?と単純に興味がある方は、以下読んでいただければと思います。
映画化もされて宮部みゆきさんの代表作の一つとなっている「模倣犯」の続編。いや、続編というのは本当は正しくなくて、「模倣犯」事件の解決に関わった重要人物で、ルポライターの前畑滋子が主人公となり、再び不思議な事件に取り組む物語です。しかし、今作の中で起こる事件と以前の事件には直接の関わりはありません。
なので「模倣犯」を読んでいなくても、ストーリーは十分に楽しめます。でも、行間に込められた奥の意味というか、空気を感じるには、やはり今作の前に「模倣犯」は読んでおくべきかと思います。という自分も「模倣犯」を読んだのは4年前のこと。何となくは覚えているものの、詳細はほとんど忘れたまま、この本を読み始めてしまいました。
で、「模倣犯」同様に、あっという間に、完全に物語の世界の中に引き込まれてしまいました。500ページ超級の文庫本二冊という分量でありながら、わずか三日で読み切ってしまったほどです(私にしてはかなり速いペースです)。
寝る前に開いてしまうと、切りに良いところが見つからず、かといって途中でやめると先が気になって眠れない…。精神安定のための読書とはかけ離れています。それくらい楽しめました。
「楽園」の意味は終盤に明らかにされます。が、それはやや言葉が多すぎて、個人的には「ふ〜ん」程度の感想しか持てません。それよりもずっしり来るのは次のような言葉です。
人生が外側から破壊される瞬間を目の当たりにしたと、彼女は言った。言葉の意味も彼女がそう感じた理由も、滋子にだってよくわかる。でも、今は敢えて、それは間違いだと言いたい。破壊は一瞬で終わるものではないのだ。続くのだ。ずっとずっと、壊れ続ける。
これが本当なら、犯罪や事故の被害者にとって、こんなに怖いことはありません。いや、ある意味加害者にとっても…。
「模倣犯」もミステリーとしてのストーリー展開は存分に楽しめたのですが、読了してみるといくつか納得のいかない点がありました。今作はかなり地味な内容で、しかしその地味な事件をこれだけ盛り上げる筆力に感心しつつ、しかしやはり納得のいかない点はいくつもあります。このモヤモヤ感はむしろ宮部みゆき作品の特徴なのかも。
というか、いずれにしてもこの物語は救いようがありません。あまりにも悲しすぎます。謎は解けるし、決してバッドエンドではないのですが、「悲しい」という感情は最後まで引きずります。必ずしも小説的なウルトラC(死語!)による大団円が良いというわけではありませんが、継続的な破壊は止められないという、知らなくても良かった現実を突きつけられたまま置き去りにされてしまった気分です。
【お気に入り度:★★★★★】