今時のデジタルカメラはWi-FiやBluetoothと言った無線通信機能を搭載し、撮影済み画像をそのままスマートフォンやタブレットに送信できることが当たり前というか、なくてはならない必須機能になっています。それはコンパクトカメラでも最新のミラーレス一眼でも一眼レフでも同じで、当然ながらPENTAXブランドのカメラも、現行機種は全てWi-Fi接続機能を搭載しています。ということで、めでたしめでたし…
…と言いたいところですが、実際にそのWi-Fi接続機能がちゃんと使えるかどうかは、カメラ側だけでなくスマートフォン/タブレット側のアプリの出来に大きくかかっています。アプリが使いづらいとまったく役に立たないのがカメラのWi-Fi接続機能であり、そうなるとカメラ自体の評判も落とすことになりかねません。
そして、PENTAX機用のImage Syncは、これまでなかなかに評判の悪いアプリで「こんなもの使い物にならん!」という低評価があちこちから聞こえてくる状態でした。そんなImage Syncは、今年のCP+で今年春のリニューアル予定がアナウンスされ、実際には大幅に遅れて8月末にAndroid版が、9月末にはiOS版が新しくなってリリースされました。
アプリ名は「Image Sync」のままですが、バージョンがV2.0になりました。UIも一新された新Image Syncで、ようやくK-1/K-1 IIのWi-Fi機能をまともに使えるようになったのでしょうか?
なお私はiOSユーザーですので、以下は私が持っているiPhone Xと10.5インチiPad Proと、カメラはPENTAX K-1 Mark IIまたはK-1改を使用した場合の話です。環境依存もあるかもしれませんし、そもそもAndroid版はまったく事情が異なると思われます。
Image Sync 2.0への道
Image Syncは2015年春に発売されたPENTAX K-S2とともに登場し、その後もRICOH GR2やPENTAX K-1など、リコーイメージングから新発売されるカメラは全てImage Syncに対応してきました。
私が初めてImage Syncに触れたのは2016年春の手にしたPENTAX K-1から。その時一通り試してみて以下のような記事を書きました。
この時すでに悪評は聞いていたのですが、実際やってみるとそんなにボロカスに言われるほど悪くはないかな?という感じでした。ただ、他社のWi-Fi接続機能と比べると、安定性もレスポンスも操作性もかなり劣っていたと思います。
特に長押しで転送メニューを出す操作性の悪さと、転送にかかる時間の長さには辟易していました。それ以外にもあるのですが、まぁ古いことはあまり蒸し返さないようにしましょう。
それがK-1発売から2年経った今年、V2.0にメジャーバージョンアップしたというのだから、期待せずにはいられません。
しかし… ↑この公式ページの「新着情報」履歴を見ると分かるように、9月下旬にリリースされたImage Sync V2.0のiOS版は、品質というか動作の安定性に重大な問題があり、10月になると一時公開停止になるなど散々な状況にあります。そして10月22日に修正版のV2.0.1がリリースされました。
ということで、以下の内容は現時点で最新版であるV2.0.1のiOS版を使用しています。
接続手順
接続手順はV1.0と特に変わりはなく、また、K-1/K-1 IIの場合はNFCやBluetoothも搭載していない純Wi-Fiのみなので、かえって単純で分かりやすいです。簡単にまとめると…
- カメラ側でWi-FiをONにする(初回接続時はSSIDとパスワードを確認しておく)
- スマホ/タブレット側のWi-FiをカメラのSSIDに接続する
- Image Syncを起動する
- カメラ内画像のタブを選ぶ
これだけです。何らかの理由で手順2.のWi-Fi接続に失敗している場合、ImageSyncを起動して4.の手順を終えても↓このような表示になります。
このリストは逆に言うと現在Image Syncが対応しているカメラ一覧でもあります。このリストから自分が使っている機種名をタップして選ぶと、接続方法に関するヘルプが表示されます。
K-1/K-1 IIの場合だとこんな感じの表示になります。メニューからWi-Fiをオンする方法や、SSIDとパスワードの確認画面についてのヘルプとなっています。Wi-Fi接続が確立しない場合はこのヘルプに従って、再度設定を確認しましょう。
カメラ内画像一覧を表示する
カメラとスマホを接続して一番やりたいことと言えば、撮影済み画像の転送です。「インスタ映え」という言葉もだいぶ使い古され、消費され、揶揄を含む意味も帯びてきましたが、それでもやはりSNSと写真の関係は絶つことができません。絶景や貴重な一瞬が撮れたらすぐに自慢したいところです。
ということで、Wi-Fi連携ソフトとして一番重要な機能である撮影済み画像の転送を試してみます。
画面下の「カメラ内画像」をタップすると左のような画面になります。このときカメラ側もSDカードへのアクセスランプが断続的に点灯し、カードから読んだデータをスマホに送ってる様子が分かります。読み込むスロットは画面左上の数字アイコンで選ぶことができます。
私は通常スロット1にDNG形式のRAWファイルを、スロット2に縮小したJEPG画像を記録しています。スロット1のRAW画像一覧を表示すると「RAW」という文字が各コマにオーバーレイされ(中)、JPEGの場合は特になにも表示されません(右)。同一スロットにJPEGとRAWを混在記録している場合は、ファイル形式が一目で分かりやすいです。
ですが… いきなりですがこのアプリの一番の問題は、この画像一覧の読み込みにあると思います。上に並べたスクリーンショットの例で言うと、実はRAW画像を記録したスロット1の画像一覧はすぐに表示されるのですが、JPEG記録したスロット2に画像は、表示されるまでに分単位で待たされることになります。その時間は、記録されている画像数やJPEGのサイズに依存するようです。
私の運用ではJPEGはあくまでもリファレンスおよびSNS用なので、サイズはSのNORMAL画質で記録しています。しかしやはり「カメラ内画像」を選んでから、一覧が表示されるまでに感覚的には1〜2分ほど待たされます。これはちょっと長すぎるのではないかと思います。
【2018年11月18日 追記】
どうやら画像一覧の読み込みが遅いのは「スロット2」限定のようです。試しにSサイズのJPEGを記録したスロット2のカードを一度引き抜いて、スロット1に刺し直してからWi-Fi接続してみると、たしかに画像一覧はすぐに表示されることが確認できました。ちょっと手間はかかりますが、じっとスロット2の画像が表示されるのを何分も待つよりは、画像転送時にカードを差し替える方が実用的な気がします。
なお、画像一覧表示は10.5インチのiPad Proだと↑このようになります。iPhone Xでは一行あたり4枚でしたが、iPadでは横7枚表示となります。しかも画像と画像の隙間がかなり大きく取ってあって、ちょっとスペースがもったいない感じ。一画面あたりの表示枚数が多くて一覧の見通しは良いのですが、一枚一枚の写真は良く見えないのが難点です。
あと、このカメラ内画像一覧表示では横位置表示は出来ず縦固定です。
画像の選択と転送
さて、何とか一覧表示が得られたら写真を選択しスマホ/タブレットに転送します。V1.0ではこの作業が猛烈に操作しにくくて不評でしたが、改善されたでしょうか?
転送するのに一番手っ取り早い方法は、画像一覧から写真を一枚選んで表示し(左)画面右下の転送ボタンを押して転送する方法です。転送中は画面上にプログレスバーが表示されるので、どの程度転送が進行しているか確認できます(中)。そして転送が完了すると余白に簡単な撮影データが表示されます(右)。転送しないと表示されないという謎仕様です。しかもISO感度はバグってるみたい。
一枚拡大表示の状態からは画面下のナビゲーションボタンまたはフリック操作で画像の順送りも出来るので、一覧表示は飛ばしてパラパラと一枚ずつ確認しながら気に入ったものは転送するという使い方に向いています。
また、拡大表示することなく、一覧表示状態から転送したい写真にマークを付けていき(左)、一括でまとめて複数枚転送するということも可能です。その際、画面下には全選択/全解除ボタンもあるので、とりあえず撮影済み画像は全てスマホ/タブレットに移し、選別などはそちらでやるという使い方も可能です(中)。
転送中は選択した画像ごとに転送割合が%表示されるので、どこまで進行しているのか分かりやすいです(右)。
ですがまぁ、この辺のことは基本中の基本であり「普通に出来て当たり前」と言えるでしょう。その普通で当たり前がなかなかV1.0は厳しかったところなので、改善されてようやく普通になった、と言ったところかと思います。
しかし、操作は普通になったとは言え、結局のところ画像の転送に非常に時間がかかるという問題はやはり残ったままでした。これはもはやアプリ側の問題ではなく、カメラ側の問題なのではないかと思えてきます。しかしWi-Fiですからね… 何をどうするとこんなに遅くなるのだろう?と不思議に思えます。昔ながらのUART通信でももっと早く送れると思います。
どのくらい遅いかと言えば、例えばSサイズ(4224×2816ピクセル)のNORMAL画質で記録したJEPGの場合、ファイルサイズは約3MBほどですが、一枚転送するのに約7〜8秒程度かかります。K-1 / K-1 IIのLサイズのFINEは20MBほどあるので、転送に約30秒もかかってしまいます。これはあまりにも遅いです。
さらにDNG形式のRAWはiOSがサポートしているので、JPEGと同じようにiPhone/iPadに転送し、カメラロールで扱うことが出来るのですが、ファイルサイズは40MB以上あってその場合はなんと1枚あたり90秒ほどかかってしまいます。RAWは一覧表示が速いのですが、これでは使う気になれません…。
リモート撮影
カメラのWi-Fi連携において、画像転送とともに重要な機能がリモート撮影です。とは言え、私はあまりこの機能を使うことはないのですが、一応一通り見ておきましょう。
リモート撮影時の画面はこんな感じです。撮影モード、カードスロットと記録形式、電池残量や各種設定状況などなど一通りの撮影情報が表示されています。グリーンボタンもあるし、AFポイントはタッチで選択可能。絞り優先時なら背堀やISO感度、露出補正やホワイトバランスなど、当然この画面上から変更が可能です。
ライブビュー表示のフレームレートやディレイなどもごく普通な感じで、使いやすいです。
なお、画像転送モードは縦位置固定でしたが、リモート撮影モードは横位置にも対応しています。ライブビュー画像が大きく表示されるのでiPhone Xのように縦長の画面を持つスマホでは、こっちの方が圧倒的に便利です。
撮影情報表示もこんな感じです。
三脚に設置したりした場合や、自撮りというか記念写真などには便利な機能かと思いますが… まぁ、今後も使うことはないかと思いますが、出来ると言うことは確認しておいて損はないかと思います。
安定性…
さて、Image SyncがV2.0になって一番問題になっているのは、アプリ自体の安定性です。V1.0はここまで不安定ではなかったのですが… この点は明確に悪化したと言えます。
V2.0がリリースされた後しばらくしてから、以下のようなコメントがリコーイメージングから出されました。
次回のリリースにより転送機能の不具合は大きく改善される見込です。
なお、アプリのバージョンに関わらず、現在以下の条件において、アプリの強制終了が発生することが確認されています。
-お使いの端末に大量の画像(約500枚以上)が保存された状態で、Image Syncでカメラ内画像のサムネイル読み込み中に10枚以上の画像を一度に転送すると転送中もしくは転送直後にアプリが落ちてしまう。
上記の症状が発生する場合は、以下の方法をお試しください。
-1度に転送する枚数を10枚未満にしていただく、またはサムネイルの読み込み完了をお待ちいただいてから転送を開始する。
これらの現象に対し、最新版のV2.0.1で「大きく改善する」とされていましたが、少なくとも私の環境ではV2.0もV2.0.1も安定性に関してはそんなに大きくは変わっていないように感じます。
特に撮影画像転送を何枚か繰り返していると、確実に落ちるという状況は変わらず。複数枚選択して一括転送してもあまり変わりはなく、何枚目かに必ず落ちてしまいます。撮影済み画像全転送なんてこのアプリでは絶体無理だと思います。
上記メーカーのコメントによると、スマホ側に保存されている画像の枚数にも関係しているようですが、今時スマホには普通に大量の写真が入ってるわけで、ちょっとこの制限というかバグはひどいなと思っているところです。
ちなみにAndroid版についてはなにも言及がないのですが、これはiOS版だけの問題なのでしょうか?
総評【2018年11月18日 修正および赤字部分追記】
色々グダグダと書いてきましたが、最後に良いところ悪いところをまとめておこうと思います。
- 良いところ(V1.0から改善したところ)
- 画像選択がやりやすくなった
- 転送の進行状況が分かりやすくなった
- イマイチなところ(V1.0とあまり変わってないところ)
- 画像転送に時間がかかる
- 悪いところ(V1.0から悪化した?)
カメラ内画像の一覧表示に時間がかかりすぎる(特にJPEG)- スロット2は画像一覧読み込みに時間がかかりすぎるので使えない
- 落ちる。何枚か転送してると確実に落ちる。
こんな感じです。正直なところ、もしV1.0とV2.0のどちらかを選べるとしたら、私は操作性の悪さを我慢してV1.0を選ぶかも。
とりあえず、一覧表示と転送に時間がかかることの対策としては、スロット2に記録するJPEG画像はXS(1920×1280ピクセル)までサイズを落としてみようかと思います。そうすれば待たされる時間についても我慢できる範囲になりそうです。
ただしそれも私がRAW現像派だからできることであって、JPEGしか使わない人にとっては画像サイズやクオリティをそうそう簡単に落とすわけにいかないでしょうから、とにかく忍耐強く待つ以外に回避策はありません。しかし待ちに待った結果、アプリが落ちてしまう… なんてことを体験してしまうと、もはやこのアプリを二度と使う気にならない、となる可能性が大ですけど。
私のようにRAWとJPEGの分離記録をしている場合は、スロット2の一覧表示が遅すぎる件は非常に問題です。上記したとおり画像転送時だけスロットを差し替えるか、あるいは分離記録せずに、スロット1にRAWもJPEGも同時記録してしまった方がまだ良いのかも…? スロット2は予備のカードホルダーとして割り切るしかありません。
また選択した画像の転送自体に時間がかかることの対策としては、記録するJPEG画像のサイズをXS(1920×1280ピクセル)までサイズを落としてみようかと思います。そうすれば待たされる時間についても我慢できる範囲になりそうです。ただしもともとJPEGしか使わない人にとっては画像サイズやクオリティをそうそう簡単に落とすわけにいかないでしょうから、とにかく忍耐強く待つ以外に回避策はありません。
しかし待ちに待った結果、アプリが落ちてしまう… なんてことを体験してしまうと、もはやこのアプリを二度と使う気にならない、となる可能性が大ですけど。
それは詰まり、ペンタックスのカメラにはWi-Fi機能は入っていないも同然と言うことになってしまうんですよね。Wi-Fi連携は撮影時や画質にはほとんど関係ないおまけ機能ではありますが、これで良いというわけには行きません。
とにかく画像転送に特化したシンプル機能で良いので、この手のアプリとして一番基本的な安定性とレスポンスを改善したV2.1に期待したいと思います。転送画像の遅さがカメラ側に起因しているなら、今後出るかもしれないK-1 IIIやK-3 IIIでは是非その辺も改善して欲しいです。
なお、Twitterで以下のようなサードパーティ製アプリがあることを教えてもらいました。試してみてまたレポートしたいと思います。