酔人日月抄

東京下町に暮らす写真とPENTAXとスキーと時代小説とお酒とプジョーを愛するある男の日常

江戸三大祭りの一つにして三年に一度しか行われない富岡八幡宮の水掛け祭りを撮る

 お盆前後のこの時期はお祭りの季節です。私が生まれ育ち今までも暮らしている東京東部の下町にある深川の八幡様こと、富岡八幡宮のお祭りも毎年この時期に行われます。この富岡八幡宮のお祭りは、神田明神の神田祭、日枝神社の山王祭と並んで、江戸時代から面々と受け継がれてきたもので、江戸三大祭りの一つとされていますが、この深川のお祭りの場合、大規模な例大祭は三年に一度しか開催されていません。

 その江戸三大祭りを指して「神輿深川、山車神田、だだっ広いが山王様」と言わるように、この深川のお祭りのクライマックスはなんと言っても氏子町内会53基の御神輿が連なって約8kmのコースを練り歩く神輿連合渡御です。猛暑の季節のことですが、その御神輿の行列には沿道から水を掛けるのが習わしとなっており、別名「水掛祭り」の異名もあります。延々と続く御神輿の行列に途切れることなく水が掛けられる姿はとても勇壮かつ壮観で、担ぎ手はもちろん沿道の見物人もずぶ濡れになりながら楽しめるお祭りです。

 神輿連合渡御が行われる三連休中は、町内は朝から晩まで常に神輿が練り歩き騒然としていました。特に神輿連合渡御本番の日曜日は日の出とともに、威勢の良いかけ声と太鼓の音が鳴り響き、早朝からとても寝ていられる状態ではありません。だったらいっそのこと祭りを楽しむしかない!ということで、私は担ぎ手になる勇気はないものの、いつもカメラを持って御神輿の行列を撮り歩くようになって20年以上が経ちました。

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 なので今回もたくさん写真を撮ってきたので、このお祭りの勇壮さが少しでも伝わればと思い、撮ってきた写真を紹介していきたいと思います。

 御神輿の数は毎回少しずつ変動しているような気がするのですが、今回は53基が参加しました。基本的には各町内会ごとに一基ずつ御神輿を持っています。

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 並びは固定ですがどこが列の先頭になるかはその時々によって変わります。今回は木場五丁目が先頭で古石場二丁目が最後です。そして深濱は町内会ではなく、昔あった漁業協同組合の御神輿で必ずトリを務めると決まっています。

 この連合渡御の順番表は3月の時点で既に発表され、各町内に張り出されていました。そこから5ヶ月くらい掛けて次第に準備が整い、雰囲気が盛り上がってきます。

水飛沫に煙る御神輿


 さて、深川のお祭りと言えば、まずはとにかく水飛沫と御神輿です。御神輿には非常に繊細な細工が施されてますが、あんなに激しく水を浴びて大丈夫なのかと心配するほど大量の水を浴びまくります。

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 大量の水を浴びる御神輿の姿は美しいです。もはやどこにピントが合うか分かりませんが、出来るだけ高速シャッターでとにかく撮りまくると、偶然面白い写真が撮れていたりします。水の表情は面白いですね。

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 水掛はこうしてバケツから人海戦術で掛けたりしています。ちなみに水は即席の巨大なプールを作ってあったり、トラックの荷台に水を張って巨大なプールを作ってあったり色々です。もちろん、こんな手の込んだものではなくて、各個人個人が小さなバケツや洗面器、ホースや水鉄砲なでで掛けるのもありです。

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 一番ど派手なのは、こうした消火栓からの放水。地元の消防団の人が日頃の訓練の成果を披露するというか、これ自体が訓練の一貫なのか、高圧のホースから大量の水を空に向かって噴き上げています。

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 ですから担ぎ手はびしょ濡れになるとか、そういう生やさしいものではなくて、もうほとんど水の中を進んでいるかのような状態。暑い夏ならではの趣向ですかね。

担ぎ手の人々


 このお祭りの主役はもちろん御神輿の担ぎ手を初めとした参加者の人達です。

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 この深川のお祭りでは、その道のプロと呼ばれる人達を廃し、基本的に氏子の町内に住む普通の人達が御神輿を担いでいます。だから入れ墨を入れそれを見せびらかしているような人はいませんし、妙な雰囲気になったりすることはなく、男性だけでなく女性も担ぎ手としてたくさん参加しています。

 神輿が見所のお祭りは都内にもありますが、この富岡八幡宮の神輿連合渡御がそれらとは違ってほのぼのした雰囲気なのはこうしたわけがあります。そしてそれを維持するために多大な努力が払われいてると聞いています。

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 御神輿一基を巡幸させるのには、担ぎ手だけでなく先導役とかいろいろな人が関わっています。ちなみに水を掛けて良いのは御神輿とその担ぎ手達だけ。それ以外の人達に水を掛けてはいけません。

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 水を掛ける側も闇雲に水を撒くのではなく、その辺のことはしっかり分かってやっています。とある大きな水掛場ではちゃんと監督者がいて「冗談でも総代や先導に水を掛けたりしないように」と、注意していたりしました。

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 担ぎ手の人達はそれぞれ各町内会ごとのユニフォームと言うべきお揃いの法被で揃えています。この神輿連合渡御が仮装行列になってしまわないように、きちっとしたドレスコードがあるそうです。締めるところを締め、時代に合わせて変えるところは変え、ほどよい案配で伝統の継承に心配りがされています。

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 そして祭りを盛り上げているのは沿道の観客の力ももちろんあります。午後の永代橋通りはこの状態。片側三車線の幹線道路はこの日ばかりは人で埋め尽くされてしまいます。江戸時代には富岡八幡宮のお祭りの見物客が殺到したせいで永代橋が落ち、多数の死者が出るという大事故まで発生しました。

 観客は年々増えているような気がします。今回はここ5回くらいの中では、体感的に最も人出が多かったように思いました。この調子だと写真を自由に撮るのはもう無理かな、と諦めてしまうような状態でした。

見所ポイント筆頭は永代橋、ただし大混雑...


 ここで御神輿連合渡御の見所ポイントを紹介します。

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 一番人気があるのは恐らく永代橋を背景に眺めるあたり。隅田川の東岸の門前仲町側で、永代通りがやや南にカーブするところです。消火栓からの放水ポイントもあって水飛沫に煙る姿も撮れます。以前は普通に撮れたのですが、今回は脚立が並び幾重にも人垣というかカメラマンが並んでいてかなり難しい状態でした。隙間からやっと何枚か撮っただけで退散しました。

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 永代橋は上下合わせて5車線の幅があります。その車線の運用状態を示す○×の表示板は、通常の道路運用状態のままになっていました。望遠レンズによる圧縮効果もありますが、それにしてもこの辺は本当にすごい人出でした。

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 いっそのこと永代橋の上まで行ってしまうと逆にちょっと空いています。無理矢理東京スカイツリーと御神輿を一緒に撮ってみたり(A^^;

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 穴場は朝早い時間帯。御神輿は富岡八幡宮の鳥居前を出発し、氏子地域を反時計回りに回ります。午前中は江東区を縦に貫く大門通を真っ直ぐ上がってきますが、この辺の沿道は基本的に地域住民しかいません。なので御神輿を間近に見られるし写真も撮り放題。東京スカイツリーを絡めるのも永代橋より良いかもしれません。

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 連合渡御する53基の御神輿の中で最大の深濱の神輿。もともとはこの地域の漁協の御神輿でしたが、漁協は既に実態はなく御神輿だけが残っています。そして数十年前から使われている大漁旗とともに練り歩く姿は名物になっています。御神輿が大きすぎて一部順路は担いでいけないため、途中トラックに乗せられて移動する唯一の御神輿です。

差せ!揉め!


 御神輿はわっしょいわっしょいと担がれて街を練り歩きますが、要所要所で刺したり揉んだりします。「差す」というのは高く持ち上げること、「揉む」のは腰ぐらいの高さまで落として、御神輿を大きく揺らすこと... と個人的には理解していますが、細かくはもっとしっかりした定義があるのかも。いずれにしてもそんな御神輿の「差し」や「揉み」も見所の一つです。

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 これが「差し」てる状態。この時一斉に「差せ〜!」と声が上がります。担ぎ手の息が合ってないと御神輿が大きく傾いたりして危険ですから、こういうのもちゃんと練習しているのでしょう。御神輿の周囲には指示を出す指揮者のような役目の人が何人かいて、その人達が担ぎ手達の動きと御神輿の進む方向などをコントロールしています。

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 刺してるときは御神輿が高々と上がるので、とても壮観。遠くからでもよく見えます。

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 この瞬間、担ぎ棒を高々と上げる人々の手のドアップがとても大好きで、やたらに写真を撮ってしまいました。最も迫力があって超格好良いです。

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 主要な水掛場や、各町内の御神酒所、橋を渡るときなどは差すのが慣例となってるようです。トップに貼ったのと同じ御神輿ですが、この町内会では刺すと同時にオレンジ色のヒモをみんなでグルグル振り回していました。

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 これは御神輿を揉んでるところ。こうして一瞬を切り取ると、大きく御神輿が担いで崩落してるかのようですが、みんな息を合わせてゆっさゆっさと巨大な御神輿を揺らしています。こういうのは動画の方が良かったかも。

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 揉みと差しはセットで行われることもあります。大きく揉んだ最後に、高々と差しつつ、勢い余って神輿が宙を舞います。小さな御神輿でも数百キロはあると思うのですが。

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 フワッと浮くのはほんの一瞬。これも息を合わせないと出来ない芸当。先に書いたように担ぎ手はみんなその辺の普通の人達ですが、見事なくらいに統率がとれています。

一応動画も撮ってみた

 スチルばかりでは何なので、時代の流れに合わせて動画もちょっとだけ撮ってみました。

 だいたいこんな感じです。前半と後半は御神輿を差しているところ。最初に映ってる御神輿は女性ばかりが担いでいますが、この直後に全て男性に入れ替わりました。背の高さ(肩の高さ)の問題があるので、こうして男女で担ぐタイミングを分けてる御神輿も多いです。

 ちなみにかけ声もこの深川のお祭りでは「わっしょい!」と決められており、それ以外は使われません(ただし深濱だけ例外があるそうです)。「わっしょい!」というのはベタすぎるようでいて、深川のお祭りにとってはそれなりの由緒があるかけ声です。こういった決めごとは下らないことのようでいて、色んな面で質と雰囲気を保つのに実はとても重要なことだと思います。

次回は2020年!


 ということで、朝8時から午後3時くらいまで御神輿を追いかけて写真を撮りまくってきました。東京では天気の悪い日が続いているお盆期間ですが、この御神輿連合渡御の日だけは奇跡的に好天となったのも神様と人々の願いの力のおかげかも。

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 なお、三年に一度の富岡八幡宮の例大祭は毎回有明のビッグサイトで行われるコミケと日程が重なります。特にお祭りのために永代通りや清洲橋通りを始め広範囲で、交通規制が行われるため、いろいろと大混雑します。日曜日だけでコミケは20万人、富岡八幡宮のお祭りは30万人を動員すると言われ、この一日で江東区南西部に50万人が集まるのだから大変なことです。

 そして富岡八幡宮の例大祭の次回は、コミケではなく東京オリンピックの開催期間に完全に被ることになります。オリンピックとの同時開催に関してはなぜか江東区が乗り気なのですが、当の富岡八幡宮や七つある神輿連合会はどう思ってるのかよく分かりません。あるいは警察やオリンピック委員会的にはどうなのでしょうか? 複雑な思惑が入り乱れているのかも。

 私個人としては、オリンピックとの同時開催は避けて、一年ずらせば良いのに、と思っています。神事とは言え過去に開催年をずらしたことは何度もあります。何と言うか、オリンピック関連のイベントやアピールに絡めて、このお祭りを利用するようなことのほうが氏子地域に住む一人としては納得いきません。

 ちなみに最近、富岡八幡宮は後継者問題がこじれて、神社本庁から脱退するなど運営に関してゴタゴタしています。神社本庁は右翼系政治団体の日本会議との関わりが強いですから、そんな団体からは脱退して正解だと思いますが、何しろ相手が相手ですから政治的な問題への波及は避けられないかも知れません。なんだかイヤな話ばかりですね。

 ま、どうなるにせよ次回を楽しみにしたいと思います。いつかは担ぐ側に回ってみた言うという思いは、またもや持ち越しになりました。肩や腰などからだがボロボロで、到底御神輿を担げる状態にないのですが(A^^;


使ったカメラ


 今回カメラはK-1に望遠ズーム、K-3IIには標準ズームをつけて2台体制にしたのですが、結局セレクトした写真はほとんどがK-1+望遠で撮ったものでした。いずれにしても大量の水飛沫が飛び交う中、カメラやレンズがびしょ濡れになるのは避けられません。しかし防滴仕様のペンタックス機なら、特にカバーをしなくても問題ありません。

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 なお、今回撮影途中に間違ってISO6400に設定してしまいまった瞬間がありました。スマートファンクションダイヤルを知らないうちに回してしまったのだろうと思います。絞りは開け気味に設定していたので、シャッター速度が追従できず2段ほどオーバーに撮れていたのですが、RAWファイルだったこともあって、思い切りアンダー目に現像してみたら、白飛びはほとんどしておらず、そこそこ見られる状態に救済できました。しかもノイズもほとんど感じられません。もちろん妙なコントラスト感でダイナミックレンジの狭さは見られるのですが、それでもISO6400でこれだけ映ってしまう最近のデジタルカメラはすごいな、と思いました。

過去の御神輿連合渡御のエントリー