酔人日月抄

東京下町に暮らす写真とPENTAXとスキーと時代小説とお酒とプジョーを愛するある男の日常

2011年F1第14戦 シンガポールGP

 ヨーロッパでのレースを終えたF1は再びフライアウェイラウンドへ。春先の中国、マレーシアに続きアジアシリーズの3戦目となります。今年で4回目の開催となるシンガポールGPの特徴は、何と言っても唯一のナイトレースであること。しかもアジア随一の摩天楼きらめく大都市の市街地コース。煌々とコースを照らす明かりはまるで光の川のような幻想的な光景で、その中をF1マシンが爆音を立てて走る姿は、まさに人間の技術と文明と文化の粋を集めたという言葉がぴったりです。
 しかもシンガポールのコースは市街地らしくクネクネと小さな直角カーブの連続で、平均速度がハンガリーよりも遅く、レース時間が制限いっぱいの約2時間と、カレンダー中で最も長い耐久レースとなります。(ちなみに平均速度が最も遅いモナコGPは総走行距離が短い)
 さて、ベッテルのチャンピオンはここで決まってしまったのでしょうか? 今回のレースの一番のポイントです。

「今日チャンピオンを取るかどうかは重要ではなかった」 セバスチャン・ベッテル/レッドブル

 レース後のインタビューで言われていたように、スタートからチェッカーまで、ピットイン時を含めて実際に一度もトップを明け渡すことなく走りきった、今シーズン初のレースとなりました。追いかけるライバルたちがタイヤを労るために、積極的にアタックできない中で、ラップリーダーの利を最大限に生かし、ペース調整しながらの余裕の勝利。
 今回、ベッテルがチャンピオンを手にするためには、やや複雑な条件があったわけですが、上のコメントは、ベッテル自身は誰がどのポジションにいればどうなる... と言った細かいことは気にせず、とにかく勝つことだけが今回の目的だった、という趣旨のものです。「昨年のアブダビのように」と続けており、とにかく雑念を払ってレースに集中していたと強調しています。真偽はともかくあるべき姿はそうだった、と言うことなのでしょう。
 そしてさらにこのコメントには「次の鈴鹿のレースでは、さすがの僕でも(どうすればチャンピオンになれるか)分かるくらいはっきりしている」という続きがあります。そう、次のレースではベッテルは1ポイント獲得すれば、他のドライバーの結果に関わらずチャンピオン決定です。

「現実的にこれ以上の結果は望めなかっただろう」 ジェンソン・バトン/マクラーレン

 実に落ち着いた大人のコメントです。レース中ずっとタイヤをケアする必要があり、猛烈なアタックを開始したのはスーパーソフトを履いた最後の短いスティントだけ。1周あたり1秒ずつというペースでベッテルに追いすがりますが、時すでに遅し。セーフティーカーが入って、ベッテルとのギャップがチャラになったところでも、チャレンジすることはまったく出来ませんでした。
 タイヤを労りつつと言う点では同じだったはずのハミルトンや、フェラーリ勢、あるいはウェバーと比べて、堅実にポジションを確保し2位に入ったレースの上手さはさすがバトンと言えます。しかし...
 今回のレースの結果、チャンピオン獲得権を持っているのはベッテルとバトンだけになりました。しかしバトンがチャンピオンを取る条件は非常に厳しく、残り5戦で全戦優勝かつベッテルが全戦ノーポイントとなった場合だけです。
 となれば、チャンピオン取りは諦めたかのような大人のコメントを残すのもしかたがない所でしょう。チャンスがないなら無理に仕掛けない、と言うのはバトンの「アグレッシブさにかける」という欠点でもある一方、「安定性抜群」という長所でもあるわけですから。

「僕らのマシンはパフォーマンスの面で3番手だ」 フェルナンド・アロンソ/フェラーリ

 このコメントに対しては、「うん、知ってた」と言うのが、都合のいいファンの大方の意見かと思います。タイヤにやさしいフェラーリ、とは言われますが、いくら熱帯のシンガポールとはいえ、夜のレースは日光が差さない路面はそれほど熱くはないのでしょう。路面温度が足りなければタイヤがグリップせず滑って痛んでいく... と言うことなのでしょうか? トップチームの中では特にタイヤの痛みが早くて苦しんでいるように見えました。
 予選も5番手で、そこそこいいスタートを切ったものの、レースを終えてみれば結局4位。久々に大暴れしてドタバタしたハミルトンには追いつかれなかったものの、マシンのスピード的には明らかにレッドブルとマクラーレンに及ばないようです。しかもかなり差は大きそう。しかし幸いなのは4番手につけているメルセデスとの差もかなり大きいこと。安定の単独3位と言ったところです。
 昨シーズンは後半でどんどんと調子をあげてきて、最後はチャンピオン獲得寸前までいったアロンソとフェラーリですが、今年は時折いい傾向を見せることがあり、1勝することはできましたが、今回のレースでチャンピオン獲得の可能性は完全に潰えました。

ハミルトン大暴れ、可夢偉ちぐはぐ

 上記3人の他にチャンピオン候補だったのは、ウェバーとハミルトン。ウェバーは相変わらずスタートで失敗し、その後はいいレースをするもののの、もはや優勝争いが出来そうな力はありません。そしてハミルトン。アグレッシブなスタイルは賛否両論ですが、今回は悪いところばかりが出てきました。アグレッシブさを失わずにもっと頭のいいレース運びが出来ないものでしょうか? ゴールできないのであればいくら速くても意味がありません。
 小林可夢偉は今回も予選から何一つかみ合わず。チームのミス、自分のミス、そして不運が積み重なりパッとしないレースとなりました。特にセーフティーカー中のピットインタイミングのミスは決定的でした。ベルギーの時よりもさらに。あれがなければペナルティを受けることもなく、もう少しいい結果が望めたのではないかと思います。

 次のレースはいよいよ鈴鹿サーキットで開催される日本GP。10/7フリー走行、10/8予選、10/9決勝です。

 なお、シンガポールGPのリザルトはこちらです。