予選は約1時間(Q1落ちする下位チームならたったの18分!)決勝レースも鈴鹿の場合は1時間40分程度ですから、実にグランプリウィークエンド3日間におけるF1マシン走行の半分以上の時間はフリー走行が占めているということになります。
レースや予選のような緊張感あるバトルや、ギリギリの本気アタックはあまりないかもしれませんが、写真を撮るには絶好のチャンスであり、テレビでわざわざ見ることはなくても現地観戦するファンには人気のあるセッションです。
ということで、金曜日から土曜日にかけての3回のフリー走行の様子を一気にまとめてレポートします。
今年も「カメラマンエリア」のチケットを購入
例年通り今年も「カメラマンエリア」のチケットを購入しました。これは鈴鹿のF1日本GP独特のチケットで、決まった席がない代わりに、コース内に設定されたいくつかの「カメラマンエリア」に自由に出入りできるというもの。もちろん「カメラマンエリア」はどこも基本的に写真撮影向きの絶好のロケーションにあります。また、持ち込める機材への縛りもほぼありません(一般席では26cm以上の長さのレンズは禁止されています)。
また、今年は鈴鹿のF1日本GP30周年記念と言うことで、いつもの紙チケットではなく、プラスチック製のアニバーサリーチケットが販売されました。購入時に好きなチームのデザインを指定することが出来ます。
同行友人の分も含めて4枚手配しましたが、左からトロロッソ、レッドブル、メルセデス、フェラーリです。ストラップ付きで相当コストがかかってると思いますが、記念にもなるし雨にも強いし、なかなか良いチケットです。毎年これにして欲しいです(A^^;
フリー走行1回目:鈴鹿随一の人気撮影ポイント、逆バンクDスタンド
観戦&撮影場所は大人気スポットの一つ、逆バンクのDスタンドにしました。S字を抜けて逆バンクに進入してくるところが見所&撮影ポイントです。ダンロップコーナーの方は観覧車に向かってバックショットも撮れるのですが、目線が高いので観覧車と絡めるのはちょっと難しいです。なので進入してくる右側に集中して撮りました。
最初はDスタンド最上部にあるカメラマンエリアから撮ってみました。コースにも近く、スタンドの最上部とはいえども比較的視線がコースに対して低いのが特徴です。
逆バンクコーナにアプローチするフォースインディアのセルジオ・ペレス。ハローの隙間からこっちに首を傾けてコーナーの先を見ていることがよく分かります。
彼ももうベテランの域に入ってきましたが、シンガポールGPでの大暴れは記憶に新しいところです。その後かなり怒られたらしくロシアGPでは大人しかったですが、鈴鹿ではどうでしょうか。
ちょうど一瞬日が射した瞬間にやってきたザウバーのマーカス・エリクソン。ルクレールの活躍の影にすっかり隠れてしまっています。
ハローは結構大きくて角度によってはドライバーのヘルメットがよく見えなくなってしまいますが、ドライバー目線でははあまり気にならないというのは本当でしょうか。上を見ることはないから問題は正面の支柱だけなんでしょうね。
イン側の縁石に少し乗って走り抜けていくのは、ホンダ・パワーユニットを搭載するトロロッソのピエール・ガスリー。来期はリカルドの抜けたレッドブルのシートを埋めることになっています。ここまでの成績だけでなく、ホンダのパワーユニットに対する知見も買われたのかもしれません。
シャッター速度は1/80secまで落としてみました。ピントと流しの芯がドライバーよりやや後にずれてしまった気がしますが、まぁ私的にはOKカットです。縁石が良い感じに入って、このポイントから一番格好良く撮れるアングルではないかと思います。ちょとリアタイヤが欠けてしまいましたが、750mm相当の超望遠で画面にきっちり収めておくのはなかなか難しいです。
さらに近づいてくるとマシン全体をフレームに収めることはまったく出来なくなってしまいますが、構わずシャッターを切り続けました。これも1/80secですが、私の腕ではこの辺が限界です。
フェラーリのキミ・ライコネンは恐らく世界中どこに行っても一番人気があるF1ドライバーだと思います。日本でもそれは変わりません。
さて、金曜日はメインスタンド以外自由席なので、撮影場所を変えるために敢えてカメラマンエリアを抜け出して、Dスタンドの最下段へ移動してみました。
ハースのロマン・グロージャン。彼も感情の起伏が激しいドライバーですが、Twitterとか見てるととても面白くて陽気で良いヤツなので、わりと好きなドライバーです。
さて、この撮影ポイントすごさが伝わるでしょうか。ただでさえ低いDスタンドですが最下段まで下りるとこんな感じになります。S字の出口から逆バンクに向けて下り坂になっているので、マシンのフロア下を抜くことが出来るのです。アマチュアが普通に入れるポイントからこれが出来る場所は非常に貴重なので、Dスタンド最下段はレース写真クラスタにはとても人気があります。
28番のトロロッソ・ホンダをドライブしているのは、ブレンドン・ハートレー。ガスリーの活躍に対しまったく結果が出てないドライバーでちょっとかわいそうなくらい。ニュージーランドのドライバーというのも珍しいので、是非生き残って欲しいのです。
フロア下が抜けるのはほんの一瞬のことですが、そうでなくてもフロントとリアのタイヤがほとんど同じ高さに写るとか、他では撮れないアングルで撮れるので興奮してしまいました。それにマシンまでの距離も比較的近いので、500mmF5.6でも背景がボケてくれます。F1で背景をぼかすというのは、やってみたいことの一つでした。
現在のF1界で一番の暴れん坊と言えばこの人、ハースに乗るケビン・マグヌッセンかもしれません。ラフなドライビングでいつも物議を醸していますが、不思議と重いペナルティを受けたり、チームに見限られることが(今のところ)ありません。スレスレの線を攻める狡賢さがあるのでしょう。
さて良いことづくめのようなこの撮影ポイントには、実は重大な欠点があります。それは金網。それもごく一部を除いて二重の金網になっています。目の前の金網は何とかなりますが、もう一枚は通路を挟んで数メートル先にあるのでとても厄介です。このマグヌッセンのカットも、少し金網の影響があってコントラストが低いというかハイライトがフレア気味に感じます(Ligtroomの「かすみの除去」でかなり補正しています。)
再びブレンドン・ハートレー。これも何となくモヤっとしてるのは金網の影響であって、レンズとかカメラとか腕のせいではありません。
被写体との距離の関係もありますが、とにかく絞りはできるだけ開けて金網はボケの中に溶かしきるしかありません。ですが絞りを開ければ逆にシャッター速度が落とせなくなってしまいます。この日は曇っていたおかげでF5.6でもISO100で、タイヤが回る1/400sec程度に抑えられたのでまだ良かったです。晴れていたりもっと明るいレンズを開放で使う場合は、NDフィルターが必須となります。リヤホルダーがある大砲級のレンズなら良いですが、この500mmPFや200-500mmF5.6は95mm径のフロントフィルターしか付けられないので厄介です。95mm径のNDフィルターは、画質的に良い製品がほとんどありませんから。
なおDスタンドはコースまで非常に近いので、超望遠がなくても十分に撮れます。むしろクリップ付近を駆け抜けるF1マシンは、近すぎて500mm単焦点ではどうにもなりません。200-500mmでもD500では多分ワイド端はちょっと足りないでしょう。なのでここはタムロンの便利ズームに付け替えて100mm(換算150mm)でちょっと撮ってみました。どアップばかりじゃなくてこういうのもちゃんと撮っておきたいですよね。
ということで、90分のフリー走行1回目が終了しました。お昼ごはんを取りしつつ、午後の2回目に向けて移動します。
フリー走行1回目:西コースの端の端、スプーンコーナーへ
F1日本GP観客数の減少に従って西コースのスタンド指定席は昨年から廃止され、今では「西コースチケット」という名でほぼ自由席扱いになっています。その中にも一番良い場所にカメラマンエリアが設定されています。
パノラマ写真を撮り忘れたのですが、眺めはこんな感じ。200Rから続くゆるいカーブを抜けてきたところから、スプーンカーブ全体でが一望できます。
写真撮影的にはやはりコーナーへ進入してくるところがメイン。独特の形状をもつ複合コーナーならではの雰囲気が写真にもあらわれるので、ここもまたカメラマン的に人気があるポイントです。
上はすっかりF1へのモチベーションをなくしてしまったかのようなフェルナンド・アロンソ。下は逆にF1へのやる気を保ち続けるキミ・ライコネン。どちらもリアが流れてドリフトしそうに見えてきます。
データを見ると分かる遠い、思い切りシャッター速度を落としてみましたが、このくらいで安定して撮れるようになりたいです。この2枚は闇雲に撮った中で奇跡的にヘルメットが(まぁまぁ)止まってただけです。
恐らくこのまま今年のチャンピオンを決めるであろう、メルセデスのルイス・ハミルトン。見ていてもそのスピードとマシンのキレ、ラインの無駄の無さがよく分かります。とくにスプーンカーブはそう言ったマシンやドライバの違いがよく分かります。
で、写真的に一番美しいのはやはりバックに縁石が良い感じに絡んでくるこの辺りかと思います。難しい複合コーナなのでF1マインのライン取りと速度の変化をカメラで追いかけるのも大変です。
これも1/40secで抑えた一枚で、トップにも貼ったわけですが、多分今回のF1日本GP全体を通してのパーソナルベストな一枚だと思います(まだ全部チェック終わってないですが)。
ハースのロマン・グロージャン。1/40secでは歩留まりのあまりの悪さにちょっと日和って1/60secまで戻しました。
スプーンカーブも十分にコースまでの距離が近いので、やってくるマシンを追いかけているとあっという間に500mm単焦点ではフレームアウトしてしまいます。が、やはり先ほど同様に気にせずドライバーのヘルメットだけに集中してシャッターを切り続けました。連写が速くてバッファもたっぷり、カードへの書き込みも早いNikon D500は本当にこういう場合に楽だし頼りになります。
一番近くを通過する際は500mmではこんな状態になります。ミラーのせいもありますが、やはりこうなるとハローは邪魔に感じられますね…。
リカルドは今年限りでレッドブルを飛び出し、来年はルノーワークスへ移籍します。一説にはホンダのパワーユニットが信じられなかったからと言われていますが、それはたくさんある要素の一つに過ぎないというのが本当のところでしょう。勝つ力がある数少ないドライバーの一人なので、是非ホンダをドライブして欲しかったです。
さて、ここでもまた場所を移動してみることにしました。Dスタンドと同様にもっと低い位置から撮れるポイントがスプーンカーブにもあります。
こんな感でスプーンカーブへ繋がる短いストレート部分を真正面に見るポイントで、フロア下が抜けるほどではありませんが、極浅い角度でコース上を捕らえることが出来ます。
このカットで先頭を来るのはトロロッソのブレンドン・ハートレー。後のフェラーリはランキング2番手に付けるセバスチャン・ベッテル。さらに後にいるメルセデスは多分バルテリ・ボッタスと思われます。
スプーンへ向かって飛び込んでいくマクラーレンは、ストフェル・バンドーン。せっかく老舗チームでデビューを果たしたのに、チームの最低迷期に当たってしまいまったく結果を残せていません。そのせいもあって、来年のシートは危ぶまれています。本当に不運のドライバーです。
ちなみにこのポイントにも当然然金網があるのですが、その一部に撮影用のカメラホールが開いており、そこを通せば金網の映り込みを気にすることなく撮影できる貴重な撮影ポイントです。だいたい同時に8人くらいが撮れることができます。ほとんどの人は撮影場所をローテーションしてるので、待っていればすぐに空きはできます。
私も次の人に譲るために長居はせず、適当なところで切り上げて元の場所に戻りました。というか、思ったほど面白い写真が撮れる場所でもなかったので…(A^^;
わずかな火花を上げて走り抜けていくフェラーリはセバスチャン・ベッテルのマシン。
全体にブレブレで失敗写真になってしまいましたが、ベッテルよりも多めに火花を上げているのはトロロッソのピエール・ガスリーです。バイブレーションの問題があって、2回目のフリー走行は終了間際になってようやく出てきました。
スプーン周辺はもともと火花発生ポイントでもあるのですが… 昨年や一昨年と比べると、火花の出方はかなり減ってしまった気がします。レギュレーションが変わったのか、あるいはマシンデザインのトレンドが変わってきたのか? 見た目には火花が上がる方が格好良いので、復活させて欲しいです。
フリー走行3回目:S字コーナー全体を見通せるCスタンド西端
フリー走行3回目が始まった時間帯はまだ曇っていましたが、時折雨が降ったかと思うと逆に晴れてきたり、金曜日よりもさらにめまぐるしく変化する空模様です。そして強い風が吹き荒れていて、空力に頼る割合が大きい現代F1マシンには厄介な条件だったようです。
さて、フリー走行3回目の観戦&撮影ポイントに選んだのは、Cスタンドのカメラマンエリアです。2コーナー出口からS字全体にわたって広がるCスタンドの端っこにあります。ここも昨年は来ていないのでやってくるのは久々です。
このポイントで狙うのは”Fly Emirates”看板流しです。ほぼ水平に走ってきますし、1/125secでもこのくらい流れてくれるので色々撮りやすいです。
この16番のザウバーに乗るのはシャルル・ルクレールです。今年一番の注目株となったルーキー。このザウバーで期待以上の成績を上げたおかげで、来年は堂々のフェラーリドライバーに抜擢されました。
1/80secまで落としてみるとさらに良い感じになります。横方向の流し撮りなので、あまり芯を気にすることもないので成功させやすいです(と言ってもこのカットは止め切れてないですが ^^;)
このウィリアムズをドライブしているのは、カナダの大富豪の息子ランス・ストロールです。一説にはその財力を生かして、シミュレータではなくあちこちのサーキットを借り切って息子に練習させてるとか。マシンは違うとしても、この鈴鹿も実はすでに走り込んでたりするのかもしれません。
さらに今年フォースインディアの財政危機を救って新オーナーになったのもストロールの父。と言うことは来期はフォースインディアに移籍するのか? それとも??
同じ写真ばかり撮っていると飽きてくるので、たまには遠く2コーナーの方を撮ってみたのですが… もっとシャッター速度落として全体を流さないとダメですね。来年以降の課題にしてたいと思います。
逆にエミレーツ航空の看板は見えなくなった手前に突っ込んできたところを撮ってみたりもできます。
今回のエントリーで初めて登場したルノー。27番はニコ・ヒュルケンベルグのドライブするマシンです。ルノーと言えば黄色というイメージがありましたが、いつの間にかどちらかと言うと黒の面積が増えてきました。財政難に陥ったロータスを買収し、どん底から再スタートしたチームですが、さすがにワークスだけあって徐々にですが力を付けてきています。
そしてこのマクラーレンがやってくると一瞬ルノーと混同してしまいそうになります。マクラーレンは黄色と言うよりはオレンジなのですが。
しかしマクラーレンは本当にどうしちゃったんでしょう? 車体に入るスポンサーロゴも少なくて非常に寂しい状態です。
リカルドのバイザーは雨または曇り仕様のままなのか、かなり色が薄くてほぼ透明です。なのでリカルドの鼻と目がちょっとだけ見えていますね。
フリー走行3回目は終了間際にヒュルケンベルグのクラッシュで赤旗中断となり、そのまま再開することなくセッション終了となりました。ヒュルケンベルグ自体にはまったく怪我はありませんが、マシンはこの通りの状態。2時間後に始まる予選を前にしたこのセッションでのクラッシュは御法度なのですが、大至急修復するしかありません。これからルノーのメカニックは大忙しです。
ということで、計3回のフリー走行はようやく終了しました。今回は色々な撮影ポイントを体験できてとても面白かったです。
さてこのあとの予選はまたまた場所を変えてじっくり観戦&撮影することにします。このまま晴れが続くと良いのですが、ちょっと雲行きは怪しくなってきました(文字通りの意味で)。(続く)
使ったカメラとレンズ
使用したカメラとレンズは、事前に下記エントリーに書いた通り、Nikon D500 + AF-S NIKKOR 500mm f/5.6E PF ED VR を使いました。
一脚も使わず手持ちで撮りました。とにかくこの軽さは”正義”です。疲れ知らずで腕が痛くなることもありませんでした。それは撮影結果にも良い影響を及ぼしているはず。また、条件的に激しい逆光や強力な点光源などもなかったので、PFレンズの弱点であるフレアに出くわすこともありませんでした。AFや手ぶれ補正も良い感じでしたが感想まとめはまた別途書きたいと思います。
ちなみに発売後1ヶ月も経っていないのに、同じレンズを手にした人を両手でも数えられないほどたくさん見かけました。やはり超望遠を必要としている層には確実に刺さるレンズなのだと思います。
ただし、組み合わされるボディは意外なくらいにD500は少なくて、ほとんどフルサイズだった気がします。鈴鹿で750mm相当のみでは確かにちょっと長すぎるんですよね。もちろん長さが生きるシーンも確実にありますが。となると、このクラスのレンズに組み合わせるにはD850がやはり理想の一台だな、と思いました。
- 出版社/メーカー: ニコン
- 発売日: 2016/04/28
- メディア: エレクトロニクス
- この商品を含むブログ (1件) を見る
ニコン AFSVRPF500 5.6E AF-S NIKKOR 500mm f/5.6E PF ED VR
- 出版社/メーカー: Nikon
- メディア: エレクトロニクス
- この商品を含むブログを見る