今年もF1日本グランプリを観戦するために三重県の鈴鹿サーキットまで行ってきました。F1日本GPは今年で34回目の開催ですが、そのうち鈴鹿で開催されたレースを数えると今年はちょうど30回目となる節目の年です。
私自身がF1を現地観戦するのはこれで13回目。うち12回は鈴鹿で開催されたレースですから、ちょうど4割は通ったことになります。そう思えばずいぶん回数を重ねてきたものです。
さて、そんな鈴鹿で30回目となる今年のF1グランプリも木曜日に現地入りして、ピットウォークから楽しんできました。これから数回に分けて例年通り、大量の写真を中心にF1観戦記をお届けしたいと思います。
まずは木曜日のピットウォークの様子から。グランプリ・ウィーク初日は台風25号に先立ってやってきた秋雨前線によってシトシトと雨が降っていました。過去12年の経験からこの程度の雨はどうって事ありません(^^;
始発の新幹線に乗って名古屋で近鉄に乗り換え、白子駅から三重交通のバスに揺られて1年ぶりの鈴鹿サーキットへ到着したのは、午前9時頃です。低く垂れ込めた分厚い雲からポツポツと雨が降ってきていました。
例年通りメインゲートで入場時にピットウォーク参加券(兼サイン会抽選券)をもらい、メインストレートからピットロードへ向かいます。
日本GPのタイトルスポンサーは過去フジテレビだったりエミレーツ航空だったりしましたが、今年はホンダになりました。今までそうじゃなかったのが不思議なくらいです。
組み立てられてゆくF1マシン
ピットウォークと言ってもピット内に自由に入れるわけではなく、規制線の張られたピットロードからピット内を遠巻きに眺めるだけ。とは言え、すでに各チームともメカニックがマシンの準備を始めており、ファンには堪らない光景が溢れています。
これまでの経験から、トップチームは比較的空いている早い時間のうちに見ておいた方が良いということで、真っ先にメルセデスへやってきました。黒基調の渋いピット内では着々と作業が行われていました。
そして3強の一角にして、来年からホンダのパワーユニットを搭載することで、ますます日本では人気が出るであろうレッドブル。こちらはもちろん青基調で統一されており、奥に巨大なモニターが設置されているのも去年から変わっていません。こちらもメカニック達が寄ってたかって色々作業しています。
こうして見ると華やかなレースの裏では非常に多くの人が働いていることが分かります。だからドライバーが何かにつけてチームへの感謝を言うのは、ただの決まり文句ではなく、本心からなのだろうと思います。
で、今年からホンダを積んでいるトロロッソ。レッドブルのBチームであり中堅チームと言うこともあって、どんなに控えめに言っても昨年までは人気が高いとは決して言えなかったのですが、さすがに今年は大人気です。
この今年版のチームシャツのレプリカを着ているファンもすでに沢山いました。私も欲しかったのですが… 高かったので今年は諦めました。来年「レッドブル・ホンダ」のシャツを買いたいと思います。
レッドブルと対照的に閑散としていたのがマクラーレン。ピット内も何となく寂しく見えたのは思い込みでしょうか?
ホンダと袂を分かち今年からルノーをのパワーユニットを積んでいますが、結局のところ成績はパッとしません。老舗トップチームの貫禄はいつ戻ってくるのやら…。
老舗と言えばウィリアムズも同じです。こちらも今シーズンはかなり低調です。が、ウィリアムズは毎年ピットが綺麗というか、統制が取れているというか、成績の悪さを感じさせない明るさと老舗の貫禄が十分に残っています。
ちなみに画面下にぼやけている横帯は何かというと…
規制線のテープです。各チームともそれぞれのチームカラーのテープを用意してあるのですが、ウィリアムズは無地ではなくちゃんとこういう細かいところまでロゴを入れ、デザインしてあるところが気が利いてるなと思います。
ピンク色のイメージがすっかり板に付いたフォースインディア。今シーズン途中にオーナーが交代し、来年はどんな名前とどんなカラーリングのチームになるのか? 資金難に陥ってもマシンは速いのがすごいです。
F1と言えばヨーロッパ文化が色濃いわけですが、ハースはアメリカのチーム。中堅チームの中ではかなり良い位置にいます。
ホイールハブとブレーキまわりが丸見えですが、ディスクはカーボン製、キャリパーには”brembo”のロゴが見えます。ハースは一時期ブレーキで苦労していましたが、最近は問題なくなったのでしょうか。
ちなみにF1マシンのホイール径は昔からたったの13インチなんですよね。そんな小さなローターで300km/h以上で走るF1マシンを一瞬にして停めるのは大変なことです。ホイールサイズについては大径化の議論もされているようですが、ロープロファイルタイヤを履いたフォーミュラマシンというのもなかなか想像しがたいです。
さて、フェラーリはどうなっているのか?と言うと… 実はピットウォークが始まってもしばらくはシャッターを閉じたままでした。ようやくシャッターが開いた時にはこの人だかり。まったく近づけず写真を撮るどころの騒ぎではありません。しばらくウロウロしていましたが、人の波は途切れることがないようなので諦めました。
そもそもマシンの前にわざとリアカウルを立てかけたりして、チームはなるべくマシンの写真を撮られまいとしているようでした。他のチームは開けっぴろげなのに、ただの素人ファン相手にそんなに警戒しなくても!と言う感じです。フェラーリらしいと言えばらしいのですが。
レッドブルのピットイン練習
ピットウォークでは運が良いとピットイン(とタイヤ交換)の練習をしている様子を見ることができます。今年もレッドブルの練習風景が見られました。
これは意味のある練習なのか、あるいはファンサービスなのか微妙なところではありますが。
他のチームはマシンの組み立て作業中のところ、レッドブルのリカルドのマシンだけ、一見全体が組み上がったかのような姿で外に出ています(実際はまだ完成してないはず)。
そしてここもやはりすごい人だかり! そりゃそうですよね、いつもテレビの画面でしか見たことのない、2秒ちょっとの神業的タイヤ交換が目の前で行われているのですから。
とは言え、やってることは結構原始的で、20mくらい手前からマシンを人力で押して行って…
規定の位置にマシンが到達して停止したら、ヘルメットを被ったメカニック達がワーッと群がり、ジャッキアップしてタイヤを交換する… という作業をやっています。
コクピットには恐らくステアリングを保持し、ブレーキを踏む役のメカニックが乗っています。とは言えエンジンはかかってないので、通常のブレーキやステアリングをそのまま使ってるかどうかは分かりません。
これを何度か繰り返してやっていました。実際の作業スピードを維持するための実戦練習と言うよりは、全体的な役割やルーチンの確認、信号システムの動作確認みたいな感じではないかと思います。
そもそも作業するメカニック達もヘルメットを被ってるだけで、チームシャツに短パン姿のままですし、雰囲気も和やかでリラックスしてるようでした。
ウィングなど細部を観察する
ピットウォークでは他にも色々ファン的には興味津々なものがあちこちに転がっています。テレビの画面でレースを見ているだけではよく分からないウィングなどの造形もじっくり観察できます。
ハースのノーズコーンとフロントウィング。いやいや、すごいですね、こんなことになってるとは知りませんでした。一体何枚の羽根から出来ているのでしょうか? 分割した方がダウンフォースを発生する総翼面積が増やせると言うことなんですかね。もちろん、レギュレーションとドラッグと重量とのバランスだとは思います。
ルノーもなかなかの出来映えですね。
来年フェラーリに移籍するシンデレラ・ボーイ、ルクレールが素晴らしい成績を収めているのも、ザウバーのマシンが当初の下馬評よりもずっと出来が良いおかげもあるはず。特に空力は現代F1マシンにとっては欠かせない要素です。
ノーズコーンはシンプルな形状で芸がないようにも見えますが、ウィングはその他のチームに負けず劣らず複雑な形状です。
フロントウィングと言えば、毎年トロロッソのディスプレイが格好良いのですよね。今年も上下2段の専用ラックに綺麗に収まっていました。
見ている角度が違うせいかもしれませんが、他のチームに比べると分割数がやや大人しいようにも見えます。しかしエンドプレート周辺の細かい形状はかなり複雑で、もはや何が何やらよく分かりません。ここまで苦労して作ってあるものが、接触などで外れてしまったら、走行に大きな影響が出ることは想像に難くありません。
フロントウィングだけでなく、以前は一枚の巨大な板だったリアカウルは、いつの間にかコマ切れのパーツに分かれていました。これが作業性のためなのか、空力のためなのかはよく分かりません。
ザウバーはこんな感じで左右それぞれ2枚ずつ+トップカバーの計5枚のパネルで構成されているようです。他もだいたい同じ感じかと思います。
気合いの入ったファン達
他人のことを言うのもなんですが、鈴鹿ですごいのはファン達のコスプレというか、衣装というか小物に凝ってるというか、とにかくすごい仮装をした人達が沢山います。これは一説には鈴鹿(というか日本GP)独特の文化だそうです。
このアイルトン・セナは去年も大人気だった人でしょうか? 昨年はマクラーレン仕様でしたが今年はウィリアムズ仕様に変わっていました。
特にすごいのはかぶり物。色んなバージョンが見られますし、年々工作精度というか「どこで作ったの?」と驚くような本格的なかぶり物が増えてきました。
特にこのトロロッソ兜はすごいです。マシン全体を象り、ドライバーが乗っていてハローまで付いてるという芸コマぶり。塗装もすごい綺麗!
で、ガスリー版とハートレイ版を1つずつ、チームにプレゼントしていたようです。大受けでした。
同じ人が制作したものなのか、アロンソもこの通り気に入ったようです。やはりこういうのは”Only in Japan”のようですね。
ドライバー達を間近に見る!
例年木曜日はピットウォークだけでなくコースウォークも行われています。が、数年前は東コースを丸々一周できたのが、昨年は2コーナーまでになり、今年はメインストレートからピット出口付近までに制限されていました。
それよりも木曜日のお昼近くなると、何人かのドライバーがコースチェックに出てきます。目の前でF1ドライバーを見ることができる貴重なチャンスです。
3強チームのドライバー達は、基本的に限られたイベントでしかファンの前に姿を見せない中で、ベッテルだけは昔から必ず木曜日にコースウォークに出てきてくれます。今年も先陣を切って現れました。
しかもにこやかに手を振ったり。昔はサインなどには応じてくれたそうですが、最近はさすがにそこまではしてくれません。ただでさえ警備の人がつきっきりで、ファンの群衆が暴走しないようにしているのに、そんなこと始めたら大変な騒ぎになりますからね。
サインはしてくれないものの、小さな子どもを見つけると近づいていき、何かポケットから取り出してて手渡していました。カードか何かのようです。あらかじめサインがしてあるのかもしれません。ベッちゃんは本当に良いヤツですね。
次に現れたのはフォースインディアのオコン。もしかして目線キタ!?
来年のシートが決まっていませんが、浪人させるのはもったいないくらいのドライバーです。彼も毎年必ずコースチェックに出てくる一人です。
私の真横で絶叫していたおじさんがあまりに必死なのに吊られて、苦笑いしながらサインしにやってきました。オコンも良いヤツです。
ザウバーのドライバー2人も同時に出てきたのですが、これまたすごい人だかりでルクレールは撮り逃してしまいました。
でもエリクソンはなんとか抑えました。巨額の資金を持ったスポンサーがいるらしく、小林可夢偉がいた時代からシートをずっと守ってきた彼も、来年の動向はどうも怪しい雲行きのようです。成績はまったくパッとしませんが、なかなかイケメンでそこそこ人気があるようです。
そしてスタッフと見間違えそうなほどカジュアルにプラプラ歩いてきたのはウィリアムズのシロトキン(ですよね?)。今年のルーキーであまり顔を見慣れていないですし、ドライバーオーラがなくてちょっと半信半疑でした。でも多分シロトキン見間違いありません。
彼は初めて鈴鹿を走ると言うことですから、コースチェックは欠かせないはず。
そしてルノーに移籍して成績もパッとせず、ちょっと周囲に埋もれてしまった感のあるサインツJr。近寄れずノーファインダーで撮ってみたら何とか写ってました。
ということで、雨が降っていたためか全体的にコースチェックに出てくるドライバーは例年よりも少なめだったように思います。私が見逃しただけで他にもいたかもしれませんが、写真を撮れたのは以上5人だけでした。
その他
ピットウォークでは他にも色々なものが見られるので、本当にいくら時間が合っても足りません。
例えばセーフティーカーのメルセデスAMG GT R。これも各チームのマシン達と一緒に世界を巡ってる車両です。
さらにピット内だけではなく、国際映像を撮影するクルーも、サーキット中に機材を設置しています。これがそのカメラ。グラスバレー製のカメラにキヤノンのレンズが付いています。レンズには4Kの文字も見えます。
その他、細かいものを全部紹介したいところですが、永遠に終わらないのでここらで止めておきます。
そして一般のピットウォークが終わり、鈴鹿市内の小学生達がピットウォークしているのをグランドスタンドから眺めながらお昼ごはんを食べて、ゆっくり過ごします。チケットを持たずにグランドスタンドには入れるのは木曜日だけなので、いつか写真とか忘れてゆったりとここで観戦するのも良いな、とか想像しつつしばし休憩。
チーズ入りの松阪牛カレーと、ジョニーウォーカーで作ったハイボールを頂きました。このハイボールの美味いことと言ったらありません。いや、本当にビックリしました&良い気分になりました。
今年こそは当たる気満々でいたドライバーサイン会にはまたしても外れてしまいましたが、今年もたっぷりとピットウォークを楽しむことが出来て満足です。
さて、台風の直撃は避けられそうですが、秋雨前線の活動がちょっと心配なグランプリ・ウィークエンドは、翌金曜日からはいよいよフリー走行が始まります!(続く)