FUJIFILM X-H1にケチを付けて手放すきっかけとなったのは百里基地。そう、D500への乗り換えが正しい決断だったかどうかを確認するには、百里基地へ行って戦闘機を撮ってみるしかありません。
しかし気温が35度を超えるような真夏に一日炎天下にいる訳にはいかないし、秋にならないと無理かな?と思っていたところに、東京地方の飛行機写真クラスタにとっては重大なニュースが飛び込んできました。「百里基地にアグレッサー部隊がやってきた!」と。
毎年3月頃にやってくるのは年中行事ですが、真夏のこの時期にやってくるのはあまり前例がないそうです。ずっと前から撮ってみたいと思いつつ、タイミングが合わずに撮り逃してきたアグレッサーとなれば、無理してスケジュール調整したり、熱中症にかかるリスクを冒して炎天下に飛び出していくモチベーションとなります。
そしてD500の本格的テスト&慣熟にはこれ以上の被写体はありません。ということで百里基地へ出かけてきました。
灼熱の百里基地
小松基地をホームとしている飛行教導群、通称アグレッサー部隊が百里基地へひょっこりやってきたのは、連休明けの火曜日7月17日のことでした。そんな情報を仕事中にネットで見つけてしまい、そこから全力でスケジュール調整。できれば翌日すぐにでも行きたいと思ったものの、そうも行かず木曜日の19日に都合を付けて、早朝から百里基地へ展開してきました。
関東地方は連日の猛暑日で、その暑さは衰える気配を見せません。百里基地がある茨城県小美玉市もさぞかし暑いことでしょう。遮るものがない炎天下に一日中いるのは熱中症のリスクが高まります。ありとあらゆる暑さ対策をし、覚悟して行ってきました。
高気圧に覆われて基本的に晴天の予報なのですが、茨城県などの内陸部は霧や雲が湧きやすく、ピンポイント予報では曇り時々晴れ、午後は雷雨の可能性ありとのことでした。空気はどことなくどんよりして、あまり透明度も高くなさそう。写真的にはあまり良い条件ではないかも?とやや心配です。
朝一は自販機前へ
F-4で練習
真っ先に上がってきたのはT-4でしたが、周囲の面々含めほとんど誰も反応せず。みんなT-4の扱いが酷すぎます。私も結局空にカメラを向けることはありませんでしたが、D500にまだ慣れていないこともあって、アグレッサーが上がってくる前に練習しなくては!と思い当たりました。
そこでちょうどやってきたのがRF-4EJの2機編隊。良かった、いきなりアグレッサーにぶっつけ本番では色々心配でしたから。そうでなくとも引退が間もないファントムIIですから、これはこれで今のうちにたくさん撮っておかなくてはなりません。
続いて何機かF-4EJが上がってきました。RF-4EJは離陸後ひねることはほとんどありませんが、F-4EJは時々グイッとひねって背中を見せてくれます、うむ、噂によるとアグレッサーは強烈なひねりを見せるそうですが、その動きについて行けるでしょうか?心配です。
いよいよ目当てのアグレッサー登場
時刻は午前9時になりました。周囲の同業者達の動きも慌ただしくなり、スタンバイする人が増えてきました。航空無線を聞いてる人達の動きを見ていればだいたい情勢は掴めます。ということで、間もなくアグレッサーが上がってくるようです。
キター! 最初に上がってきたのは白黒迷彩を施した#081です。翼端からヴェイパーを引いて思い切りひねってきました。背中丸見え!すごい!
続いてやってきたのは新色らしいオレンジと茶の迷彩を施した#082です。「ミノカサゴ」とか「バラ肉」とか、変なあだ名が付いているそうです。ド派手ですね。
3番目はブルーベースの美しいカラーリングの#090です。いわゆる「スホーイカラー」ですね。これ良いですよね。しかしエアインテーク付け根から少し出ているだけで、ヴェイパーはあまり発生せず。湿度はかなり高いので期待してたんですけどねー。ひねりがまだ本気ではないのかも?と言いつつ、かなりの角度で背中見せてくれています。
そして4機目は緑ベースの迷彩塗装を施した#083です。翼端のヴェイパーが他よりも激しく出てるなーと、思ったらそこから急激にひねったと思った瞬間、ドバッと翼面が真っ白になりました。秒間10コマで撮っていてもほんの数カットしか写っていませんでした。ちょっとブレちゃいましたが、まぁ仕方ありません。
それにしても空はスッキリ晴れ渡ってるわけではなく、雲の状態によって、めまぐるしく光の加減が変わります。この4枚もかなり雰囲気が異なりますが、ほんの数分の間に撮ったものです。
ちなみに「アグレッサー(Aggressor )」とは何かというと、模擬敵部隊のことです。つまり、これら派手な迷彩塗装を纏ったF-15DJで構成された「飛行教導群」は、戦闘機パイロットの訓練において、敵機役をする部隊です。航空自衛隊のパイロットの中でも精鋭が担当しているそうです。
敵機役だからスホーイカラーになっていたりするわけですね。するとミノカサゴは何を想定しているのでしょうか? いずれにしても今回百里にやってきたと言うことは、老兵F-4EJを擁する301飛行隊および302飛行隊の訓練を行っているのでしょうか?
アグレッサーに続いて、尾白鷲マークの302飛行隊のF-4EJも豪快にひねりながら離陸していきました。F-4EJパイロットはベテランが多く、時に模擬空戦でF-15に勝つことがあると言うことですが、今回はどうなのでしょう? 結果を知ることは出来ませんが、とにかくがんばれ!
戻り狙いで北門へ
民間機の離発着を見たりしている間に、なんの前触れもなくいきなりアグレッサーが戻ってきました。まずは緑迷彩と黒白迷彩の2機が離陸準備をしている501飛行隊のRF-4E/EJの前を横切り着陸してきます。以前はF-15とF-4のコラボは当たり前に見られた景色ですが、今となっては貴重となってきました。
ちなみに黒白は背中のエアブレーキを立てていますが、緑は立てていません。この辺の差はどういう判断なのでしょうかね。
ミノカサゴとスホーイも戻ってきます。こちらもエアブレーキの状態が異なっていますね。なお、確実に抑えるためにはシャッタースピードは上げたいところでしたが、着陸時は速度が遅いですし、急な進路変更もないので、ここは敢えてほんのり流し撮りに挑戦してみました。
ちなみに真夏の空港は滑走路上の空気がメラメラと揺れていて、望遠レンズでまともな写真を撮ることはできません。着陸シーンといえども滑走路面に近づくほど陽炎の影響で細部はボロボロですので、拡大して見ないことをお勧めします。
さて、アグレッサーの4機が降りてきたところで、離陸準備をしていたRF-4Eが離陸していきます。洋上迷彩カラーの#901も健在。スホーイカラーとは異なりますが、このブルー系の塗装はやはり綺麗ですね。
そしてなにげに興味なさげにやり過ごしてしまうT-4もちゃんと撮ってきました。時々運が良いと手前の滑走路に降りてきてくれます。これだけ近いと空気の揺らぎの影響も抑えられますが、APS-Cに200mmではちょっと長過ぎで、T-4クラスの機体じゃないとなかなか収まりません。
午後に向けてアラートハンガー前へ
…と思っていたら、あれれ? こっち側に着陸してくるではないですか。なんと、お昼を挟んでランウェイチェンジしてしまったようです。フライトレーダーで確認しても、成田や羽田など近隣の大きな空港は南風運用のままですが、ここ百里基地(茨城空港)だけ北風運用への変更。風は東から吹いていていずれにしろ穏やかです。もしかしたらここは基地であるが故に、近隣への騒音対策としてこの程度の風の場合は、午前午後で振り分けるみたいなことをしているのかも?と思ってしまいました。
午後だいぶ遅くなってから動き出したアグレッサー部隊。今回も4機でしたが、午前中とは2機が入れ替わり、グレー主体の大人しい迷彩柄の#098と、デザート迷彩の#096が新登場。これで今回飛来した6機を全て抑えることが出来ました。
そして午前に続き再び登場した白黒迷彩の#081。滑走路上はメラメラで酷い状態ですが、近いとまだ何とか見られる状態ですね。
そしてもう一機はおなじみスホーイカラーの#090。アフターバーナーを炊いて離陸していきました。本当はこっちに飛んできて欲しかったのに。そしてこれだけ遠いと滑走路上の熱気でほぼ写真になりません。サムネイルでもボロボロです。
F-4EJのこう言うシーンも格好良いのですけどね。炎天下の上にエンジン排気が残った状態では…
そのままアラートハンガー前で戻りを待つ
一回の訓練は普通一時間以上かかるはずなのですが、なんとこの日の午後はわずか50分ほどで戻ってきました。しかも基地上空を一度ハイパスすることもなく、いきなり降りてきたので慌ててしまいました。なお、この2機は後輪が接地してからエアブレーキを使っていました。
対してこの2機はこの通り、アプローチ段階からエアブレーキ使用。
と言うことで、初めてのアグレッサー撮影は終了です。離陸シーンの2回目が撮れなかったのが残念ですが仕方ありません。また次回百里に訪れた時に駆けつけたいと思います。出来れば涼しい時期が良いですね。
F-4EJ ファントムIIはいつまで見られるのだろうか?
でも幸いここ2年くらいの間に何回か百里基地に通って、それなりにたくさん撮ることができました。
そしてこの尾白鷲のマークも見納めです。302飛行隊がF-35Aにスイッチする時には、現在のレギュレーションに合っていないこのマークも変更されるそうですから。
百里基地レポートの度に書いてますが「ファントム無頼」を思い出しますね。
Nikon D500の使い心地
でまぁ、こうして高速でひねりながら進路を変えつつ飛び去っていくアグレッサーも何とか追えましたし…
1/250sec程度の簡単な流し撮りもそこそこ問題なく出来たし… まぁ期待通りの出来でした。もちろん反省点は多々あるのですが、それは全て私の問題です。
いまだAFポイントのモード設定をどうするべきなのか定まっていないのですが、いずれにしろピントに問題がないというのはすごいことです。さすが動体スペシャル機。そして安定して10コマ/秒でシャッターが切れていき、ほとんど息継ぎしないというのもすごいです。
もちろんフレームアウトしたり、ブレたりした失敗カットも大量生産しますが、当たりコマが得られる可能性も上がります。
ということで、機材に頼る、しかも実績のある確実な定番機を使うという選択は、とりあえず正しかったと思います。楽しいかどうかは別にして。
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レンズもなかなか良いと思います。ズームリングの回転角も今回はあまり気になりませんでした。このクラスになると動体を追いながらズームしてる暇はそもそもないですから。
なお、この日の百里基地では多くのアマチュア達に交じって、「ヒコーキ写真テクニック」などの作例撮影でも有名な洲崎秀憲さんの姿を見かけました。どんなカメラとレンズでも素晴らしい写真を撮る洲崎さんですが、今回はPENTAXのDA560mmF5.6(通暁ゴロゴロ)を使っていました。ボディはよく分からなかったのですが、K-1かK-1 IIだったと思います。
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いや、洲崎さんと張り合っても仕方ないのですが、それでも本当にあの素晴らしい写真を、自分もよく知っているペンタックスのカメラで撮ってるんだ!という現実を見ると、改めて思うところが色々あります。
それよりも、ここにペンタックス機を持ってきていない自分は本当にペンタキシアンなのか?とちょっと反省してしまいました。ニコンに流されて、カメラ任せに撮っていて良いのか?と。
いや、良いと思ってはいるのです。だって、仕方ありません。こんなに楽なんですから。
なので、やっぱりK-3 IIIに期待しています。D500はそれまでの繋ぎと思っています。でもはやくしてくれないと、色々深みにはまってしまいニコンから足が抜けなくなってしまうかも(A^^;