京都よりも古い1300年の都 奈良で国宝を訪ね歩く(前編)

投稿者: | 2017年4月27日

 先の週末に奈良に行ってきました。奈良と言えば日本人なら誰もが学校で教わった通り、平城京に都が置かれていた奈良時代の日本の中心地です。私の大好きな江戸時代や大河ドラマで良く扱われる戦国時代などは問題にならないくらい昔ですし、1000年の都と言われる京都と比べてもさらに数百年古く、およそ1300年前の遺跡、史跡、国宝や文化財などが溢れている、とても魅力的な古都です。

 世界的観光地となっている京都と何かと比較されることも多いですが、都だった時代が古くて短いせいか町としての規模も小さく、京都とはまたひと味もふた味も違った魅力があるのが奈良と言われています。

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 実は、私にとっては奈良に行くのは今回が初めてです。修学旅行などでもなぜか縁がなくて一度も訪れないまま大人になってしまいました。教科書に載っていたこともほとんど忘れてしまい、事前知識はほとんどまっさらな状態ですが、突然何かに呼ばれたかのように行ってみることにしました。

 と言うことで初めての奈良ですので、そうは言っても一度は耳にしたことのある超有名どころを中心に一泊二日で巡ってみることにしました。

なにはさておき東大寺

 往路は日曜日の早朝、新幹線に乗って一路京都を目指しました。そこから近鉄に乗り換えて奈良へ。特急に乗れば京都から奈良までは30分ちょっとです。

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 JR奈良駅と近鉄奈良駅はかなり離れていますが、東大寺や奈良公園など観光の中心部へのアクセスは近鉄のほうが便利なようです。

 その近鉄奈良駅前には行基上人の銅像がひっそりと建っています。奈良時代の僧侶で東大寺の大仏造立の中心人物。奈良の仏教文化発展に大きな影響を与えた人だそうです。

 これから奈良の寺院を見て回るには、まずはこの行基上人へお参りしておきましょう。

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 ということで、何はなくともまずは東大寺を見ておきましょう。

 東大寺の境内は非常に広大です。しかも若草山の斜面に広がっており、駅のある市街地からはひたすら上り坂。ですから、いきなり駅からタクシーで東大寺の最深部まで上がってしまうことにしました。そこから山を下りつつ、見物することにしましょう。…というのは何度も通っているという奈良好きな知人から事前にアドバイスをもらってありました。

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 さて、タクシーでたどり着いた山の上には二月堂、三月堂(法華堂)、四月堂と言ったお堂が並んでいます。

 特に三月堂内部には不空羂索観音立像をはじめ国宝の仏像が11体も納められており、すべて実物を見ることができます(撮影は禁止)。そしてもちろんこれらの建物自体も国宝です。

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 次に二月堂の舞台に上ってみました。創建当時の建物が一部に残る三月堂に対し、二月堂は何度か焼失しており、現存の建物は江戸初期のものだそうです。その火災の一因ともなったのが、現在でも行われている「お水取り」です。この行時が旧暦二月に行われるので二月堂と呼ばれているそうです。

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 二月堂は舞台からの眺めが素晴らしくて、思わずパノラマ写真にしてしみました。こうして晴れている日には奈良の街が一望できます。京都の清水寺のように断崖絶壁ではなく、なだらかな丘の上に立っているので、高度は感じませんがこののんびりした風景がまた奈良らしいです。

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 この階段は「お水取り」で巨大な松明が駆け上るあの階段です。二月堂が斜面の上に建っていることがよく分かります。こんな狭いところで、重さ40kgにもなるという巨大な松明を掲げるのですから、何百年に一度は火事になることもあるだろうと納得していまいます。

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 さて二月堂を後にして、大仏殿を目指して下って行きましょう。境内の中央参道ではなく、脇の裏参道を行きます。ここは土塀に囲まれた静かな坂道で、とても風情があります。

奈良の大仏様に初めてお参りする

 東大寺と言えば大仏。鎌倉の大仏様へは何度も訪れたことがありますが、奈良の大仏様にお参りするのは初めてです。

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 現在は回廊などが修復工事中なので、正面の中門から入場出来るようになっています。この中門からの眺めはこんな感じ。さすがにここは大人気スポットで人が多いです。そして、この大仏殿の大きさに圧倒されます。

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 人の大きさと見比べてもらうと、この建物がいかに大きいかがよく分かります。少し前までは、世界最大の木造建築物だったそうです。しかしこれとて、江戸時代中期に再建されたもので、奈良時代に建てられたオリジナルはこの1.5倍の幅があったそうです。これはすごい!

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 この大仏殿は柱の構造が特徴的。江戸中期に再建された時点で、すでに柱となる木材は手に入れることが出来なくなっていたため、芯となる木材を檜板で囲い、鉄釘と銅輪で締めて柱としています。

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 そしてこれが奈良の大仏様こと盧舎那仏像。この大仏様も何度か火災に遭ったり、野ざらしになっていた時代もあり、何度も修復を繰り返して今の姿があるわけですが、一部は奈良時代のオリジナルが残っているそうです。大仏殿内部は他のお堂内部と仏像と違って撮影可能です。

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 大仏殿の中には盧舎那仏以外にも脇を固める如意輪観音や虚空蔵菩薩が置かれてる上、奥の隅左右には広目天立像と多聞天立像(上の写真)があります。これらはいずれも江戸時代に造られたもので、天平時代の大仏殿創建時にどのようになっていたかは謎だそうです。

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 修学旅行生が大挙して見学していました。恐らく中学生です。それぞれのクラスに付いた解説員の方が大声で説明していたので、おかげで一緒にそれを聞くことが出来ました。

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 東大寺の境内はとにかく木がたくさんあります。中にはこうして遅咲きの桜も残っていました。他にも桜の木はたくさんありましたが、ほとんどは散っていました。2週間くらい前はさぞ綺麗だったことでしょう。

奈良公園で鹿と戯れる

 さて、奈良と言えば鹿。神様の使いとされ大切にされています。が、この鹿さん達は飼育されているのではなく野生だとか。てっきりどこかで管理されてるものだと思っていました。

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 大仏殿の周辺から興福寺にかけてはそこら中にいます。ちなみに天然記念物だそうです。そんなに臭いもなくて綺麗でかわいいですね。

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 完全に人馴れしています。まったく警戒心ないどころか、鹿せんべいをもらえると分かっているので、むしろ寄ってくる状態。逆に人や設備に悪さをすることも滅多にないようです。糞をそこら中にしてるくらいでしょうか。いずれにしても写真も撮り放題で、動きものんびりしているので、街中でノラ猫さんを撮るより簡単かも。

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 奈良の鹿だと分かるように、南大門をバックに撮りました。ちなみに創建時の南大門は倒壊したそうで、現在のものは鎌倉時代の建築です。

 というか「再建」と言われているものが、いちいち平安時代、鎌倉時代あるいは室町時代だったりするので、時間の感覚が狂います。大仏殿のように江戸時代に再建したと言われると「なんだ、ずいぶん新しいな」と思ってしまいます。そういった部分も奈良の魅力の一つなのでしょう。

再建修復中の興福寺で仏頭と阿修羅像に出会う

 南大門を出て国立博物館を通り過ぎると、概ね平地になります。出発地点の近鉄奈良駅に近づいてきましたが、その市街地近くにあるのが興福寺。ここは藤原氏が権勢を誇った時代のお寺で、創建は奈良時代よりさらに古い非常に長い歴史のあるお寺です。

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 しかし東大寺と比べると古くから残っているお堂は限られています。この写真に写っている東金堂と五重塔はいずれも室町時代の建築物。興福寺は長いなりに波乱万丈の歴史があって、特に最近では明治維新の廃仏毀釈の際にかなり荒廃し、最後は土地を売却し、これらのお堂や五重塔も取り壊し寸前まで行ったそうです。本当に廃仏毀釈はどうかしています。明治政府の犯した悪政の一つだと思います。

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 興福寺に伝わる多くの国宝指定された仏像類は、通常すべて国宝館に集められているのですが、現在は国宝館を改修中のため、銅造仏塔や阿修羅像など、主要なものが東金堂と仮講堂に移されて公開されていました。

 特に阿修羅像などは規制線が張られそれなりの警備はされていましたが、それらの非常に貴重な仏像の本物が、ガラスケースにも入らずすぐ目の前に置かれていて、細部までよく見えました。こうして多くの国宝の数々を間近で見せてもらえるのもまた奈良の良いところです。

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 北円堂と南円堂の近くには枝垂れ八重桜が綺麗に咲いていました。

 興福寺では現在、本来の本堂である中金堂の再建工事が進められています。中金堂は実に過去7回も被災焼失した不運の建物で、江戸後期に仮で建てられたお堂が老朽化して取り壊されて以降、更地になっていました。発掘調査により出てきたオリジナルの礎石の位置と規模に合わせ、8回目の再建を現在行っており、完成は来年の予定だそうです。

 1400年近くに及ぶ歴史、それも神話ではなく本当にそれだけの歴史を持つ遺跡的な寺院に、再建された真新しい中金堂が立つ姿は是非見て見たいと思います。

皇室御用達の奈良ホテルで高級コース料理

 さて、初日の国宝巡りはこのくらいにして、ホテルにチェックインししばし休憩。そして夕食に出かけることにしました。普通なら町をぶらぶらしながら適当にレストラン化居酒屋に入るところも旅の楽しみですが、今回は訳あって夕食は予約済みです。

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 その場所はと言えば、もともと興福寺の大乗院があった場所に明治後期に建てられた奈良ホテルです。このホテルは西の迎賓館とも言われ、天皇陛下はじめ皇室の方々、世界中からやってきた要人、有名人が奈良を訪れた際に泊まるホテルです。この旧館は木造二階建ての瓦屋根で、明治に開業したときのまま現役で使われています。

 今宵の夕食会場はこのホテル内のレストランです。

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 フランス料理のコースで、前菜からスープ、魚料理と出てきましたが、全部紹介すると大変なことになるのでざっくり割愛し、この写真はメインディッシュは国産和牛のフィレのフォアグラ乗せです。いわゆるロッシーニと言うのでしょうか。お肉は非常に小さいですが、猛烈に美味しかったです。それにしても高級ホテルの高級レストランだけあって、ホスピタリティというかサービスは完璧でした。

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 窓の外には興福寺の五重塔が見えます。夕暮れの奈良を眺めながらの贅沢な食事でしたが、あまりの高級感に久々に緊張しました(A^^; ちなみにこの写真は最後のデザートです。見た目にも美しいです。

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 食事後は奈良ホテルの中を少し見学して回りました。ここはロビーの一室で、隅っこの方にあるアメリカ製のピアノが置いてあります。このピアノはアインシュタイン博士など、このホテルに宿泊した数多くの有名人が弾いたものだそうです。このロビーはもちろん現役で使われていますがピアノは一応触ってはいけないことになっています。

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 玄関を入ってフロントのあるスペースは、吹き抜けになっています。いちいち格好良いです。

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 ということで、残念ながら奈良ホテルに宿泊するわけではないので帰ることにしましょう。この玄関も多くの有名人が出入りした歴史ある玄関で、ホテル内部にはこの玄関で撮られた写真がたくさん展示されていました。ちょっとした博物館のようでした。

 東大寺や興福寺の1300年に及ぶ歴史と比べると、時間感覚はかなり違いますが、このホテルもまた奈良の歴史が感じられる空間です。

最後は夜景散歩

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 奈良ホテルからの帰り道は夜の奈良を散歩することにしました。この「荒池」は治水のために豊臣秀吉が命じて作らせた人工の池だそうです。秀吉の時代、すでに1000年の古都だった奈良の遺跡の一部を水に沈めるとはなんと野暮な!と、かなり否定的な論調の説明板がありました。

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 ということで、再び興福寺にやってきました。境内は人がおらずひっそりとしています。五重塔はこんなに綺麗にライトアップされているのに。


 良いお天気に恵まれた1日目の日程は終了。2万歩近く歩き回りました。翌日もさらに奈良の古い遺跡、国宝を見て回る予定です。

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