怒涛のレース集中月間となった7月、4回目のレースは2年ぶりに開催されたドイツGPです。ドイツGPは2008年以降ホッケンハイムとニュルブルクリンクで隔年開催ということになっています。メルセデスの母国であり、ドイツ人ドライバーも多い中で、昨年開催されなかったのが不思議なくらいなのですが、昨年の開催権を持っていたニュルブルクリンクの財政難が関係しているようです。ただしいつものことですが、魑魅魍魎が跋扈するF1界のことですから、実際のところ裏で何が起きていたのかは分かりません。
さて、今年はホッケンハイムでの開催とななったわけですが、このサーキットについて語ると、必ず以前のオールドコースの素晴らしさと、新レイアウトの比較の話になってしまいがちです。
空撮映像に見える、うっすらと残るオールドコースの痕跡から分かるように、コースの半分、森の中を駆け抜けるハイスピード区間は廃止され、独特のラインを描くパラボリカとコース幅もエスケープもたっぷりあるヘアピンに作り直され、ごく普通の平凡なサーキットになってしまいました。
Sebastian Vettel / Ferrari SF15-T / 2015年 日本GP
さて、今年参戦しているドイツ人ドライバーは3人。そしてもちろんメルセデスにとっても地元のレースとなります。イギリスGPのような地元ドライバー優勝による、サーキット全体が大興奮の展開になったのでしょうか?
「スタートで大きなホイール・スピンをした」 ニコ・ロズベルグ
このシーンは何度目でしょうか? いやハミルトンとごっちゃになってるかもしれませんが、とにかく今年のメルセデスはスタートで失敗してばかりというイメージがあります。
ただし今回はポールポジションのロズベルグが失敗した一方で、チームメイトのハミルトンは完璧なスタートを決めました。いずれにしても彼は何とか手にしたポールポジションを生かすことはなく、レッドブルにも抜かれて4番手まで落ちてしまいます。
少し前だったらレッドブルなど軽くオーバーテイク出来るはずでしたが、今はそれもままなりません。ハンガロリンクと違って、ここはDRSも良く効くし、オーバーテイクし放題のヘアピンもあるというのに。
挙句の果てには無理をして、オーストリアと同じペナルティを受けてしまいます。ただし今回はアウト側に押しやられたフェルスタッペンは、不用意にターンインすることなく、接触は避けられました。
最高のマシンを持っていて、母国の声援の後押しがあって、予選ではポールまで取ったのに勝てないとどころか、表彰台にも上がれないとなると、彼は本当にレースが下手糞なんだな、と思います。
プレッシャーがかかってくるとますますとっちらかって自滅するの癖は変わっていないようです。この様子だとやっぱりロズベルグはチャンピオンになれる器じゃないんだなぁ、と思います。
「ブレーキロックなんてしてない」 ルイス・ハミルトン
スタートを決めて余裕のレースをして4連勝目。当然レース後は上機嫌でノリノリのコメント連発でしたが、前日の予選後の不機嫌さは際立っていました。久々にあの憮然とした顔、取り付く島もないコメントを見た気がします。
それは勝てると思って望んだ予選で、最後の最後にヘアピンの進入でブレーキロックさせてしまい、タイムロスをしたせいで取れるはずだったポールをロズベルグに奪われてしまったためと思われます。
自分のミスがよほど気に入らなかったのか、インタビューで「タイヤをロックさせてしまいましたね」という質問に「そんなことはない」との返事。いや、世界中が白煙を上げる様子を見てたから!
ハミルトンに弱点があるとすれば、この感情の激しい浮き沈みではないかと思います。怒り、やる気を失ったときのモチベーションの低さは、ラフなドライビングにつながることがあり、やはり自滅につながりかねません。
絶好調の影で、心配している関係者は意外に多いのかも。
「この結果を受け入れることはできない」 セバスチャン・ベッテル
母国どころかほとんど地元といってもいいホッケンハイムではなぜか勝ったことがないベッテル。彼もまたプレッシャーに弱いのか?と言えば、今回に限ってはそうではありません。フェラーリが遅すぎるのです。
予選ではメルセデスの圧勝は規定路線として、レッドブルにセカンドロウを押さえられ、一発のスピードでも完全に負けていることを露呈してしまいました。しかしここ数戦のフェラーリの言い訳は「レースペースは速い」だったはず。
レースペースで言えば、むしろレッドブルは圧倒的に速いはずのメルセデスと十分に勝負ができた一方で、フェラーリの2台はまったく表彰台争いに絡むことが出来ません。つまりは、レースペースでも完全に3位の座に落ちてしまったことがハッキリしたわけです。
これはもはや地元だからとかそういう次元ではなく、ベッテルにとっては由々しき事態です。相対的な力関係では昨年よりも後退してるのですから。
ビッグチームだけあって、マシン開発は進んでいるようですがどうにも成果が出ていないようです。それに加え、レース戦略もかなりお粗末な状況であることが、今回のレースでは国際放送で全世界に暴露されてしまいました。
ベッテルは「反抗する」というよりは「呆れている」と体で、チームの指示を「No!」と否定すること数回。特にレース終盤、単独走行中に「アンダーカットするからピットに入れ!」という指示に対し「誰をアンダーカットするって?」と冷静に問い詰め、その結果「ステイアウトしろ」とやり合っていたのは、滑稽を通り越して、フェラーリは大丈夫なのか?と心配になってきます。
F1は夏休みへ
連戦が続いた7月が終わり、F1は夏休みに入ります。次のレースは約1ヵ月後の8月28日、ベルギーGPとなります。スパの例年通りレースは見所たくさんになるはず。とても楽しみです!