紅い超高速サーキット:F1 2015 第12戦 イタリアGP

投稿者: | 2015年9月8日

 F1ヨーロッパラウンドの最終戦、イタリアGPが行われました。舞台はもちろんモンツァ・サーキット。ミラノ郊外にあるオールドサーキットの一つで、超高速のレイアウトが特徴です。コーナー数はわずか11、スロットルの全開率は80%以上、平均速度は240km/hを越えます。当然エンジンパワーがものを言うコースであり、スパのベルギーGPと合わせてパワーサーキット2連戦となります。

 モンツァの特徴と言えばもう一つはフェラーリのホームレースであること。大都市ミラノから交通の便が良いこともあって、サーキットには大勢の観客が押し寄せますが、そのほとんどが紅いフェラーリグッズを身につけた人達。俗にティフォシとかフェラリスタと呼ばれる人々です。フェラーリは今シーズンからベッテルを迎え、マシン開発にもある程度成功して好調さを取り戻しつつあり、そのホームレースは昨年以上の盛り上がりを見せたことはテレビ画面からも伝わってきました。

 さて、今回はそんなイタリアGPで残念な結果に終わった3人を敢えて取り上げてみたいと思います。

「僕はすべて正しく操作した」 キミ・ライコネン

 今シーズンフェラーリに移籍してきたベッテルに対して、結果が今ひとつ振るわないと言うことで、一時期はチーム内での立場の悪化が伝えられていましたが、ここ数戦のパフォーマンスには十分な説得力があり、来年1年間の契約延長が伝えられたばかり。フェラーリドライバーとしてモンツァを経験するのは彼にとっては初めてではないわけですが、今回は特に好調で、予選ではベッテルを押さえてフロントロウを獲得することができました。

 スタートとその後の駆け引きがとりわけ上手いライコネンとフェラーリの組み合わせと言うこともあって、ティフォシ達の期待も盛り上がる… はずでした。

 しかしレッドシグナルが消えてもライコネンのマシンは動きません。やっとのろのろとスタートした頃にはほぼ全てのマシンがコントロールラインを通過した後でした。

 スタートに関するレギュレーションが変更され、スタート時のクラッチの調整は全てドライバーに任されるようになっています。テレビ放送でもクラッチミートに失敗したのではないか?と、ドライバー責が疑われていましたが、それにしては彼のマシンはピクリとも動かずにアンチストールに入ってしまった点が解せません。

 いずれにしろ文字通りあっという間に最下位に落ちたライコネンのレースはそこで終わったかに思えました。しかし幸いにも新型のパワーユニットのおかげで、十分な戦闘力のあるフェラーリのマシンの力を持ってすれば、ポイント圏内に返り咲くのにそれほど時間はかかりませんでした。

 しかしさらに解せないことが起こります。それはピットインのタイミングです。明らかにタイヤを消耗しタイムが落ちきってもなお、ステイアウトの判断をしたチームの考えていたことが解せません。結局ライコネンに無線で催促されるまで、ピットインしないといけないことを忘れてたとしか思えないような対応でした。この判断の遅れでどれだけのタイムをロスしたことでしょう。

 それでも最終的に5位に入ったことを褒めるべきなのか、本当はウィリアムズに届くはずだったと考えるべきなのか? いやそもそも表彰台を楽々とれたはずだったわけで、ライコネンにとってはフラストレーションのたまるイタリアGPとなってしまいました。

「僕にはあきらめるという選択肢はない」 ニコ・ロズベルグ

 もはやチャンピオン争いは決したと考えた方が良いのでしょう。もともと崖っぷちだった彼のレースはノーポイントに終わってしまいました。

 今シーズン初めてアップグレードされたメルセデスのパワーユニットは、ハミルトンがノートラブルだった一方で、彼にはトラブルが発生し、予選にも使うことができず、急遽旧スペックに戻さざるを得なくなった上に、そのバックアップの旧スペックのパワーユニットは、既にカナダからスパまで走りきってライフを終えていると言っても良いポンコツでした。

 予選ではフェラーリに前に出られてしまった中で、レース終盤にベッテルに追いついたあたりまでは良くやっていたと思います。あともうちょっとでもしかしたら、2位に入れたかもしれなかったのですから。これだけのハンディを負った中でそこまでできれば、チャンピオンシップで差は広がるとしても、まだ自信を保つことができたでしょう。

 しかしポンコツのパワーユニットは結局、全開率80%のモンツァを走りきることはできず、残り2周というところで炎を上げて止まってしまいます。人事は尽くしたわけでロズベルグには何の非も後悔もないはず。

 ハミルトンとは50ポイント以上の差がついて、むしろベッテルの追い上げを気にしないといけない状態になってきました。それでも上に引用したような前向きなコメントは、ハミルトンが口にするのとは違った本気度を感じます。

 それは昨シーズンの最終戦でERSを失ったまま最後まで走りきったロズベルグの姿を覚えているからでしょう。もうちょっとハミルトンをイラつかせて欲しいと思います。

「他のマシンが僕らをオーバーテイクするのは簡単だが、互いにオーバーテイクするのは難しいので、面白かっただろう」 ジェンソン・バトン

 この翻訳文だけではややわかりづらいですが、要するにバトンとアロンソが乗るマクラーレン・ホンダは他のチームからはオーバーテイクされるばかりだが、マクラーレン・ホンダ同士でお互いにオーバーテイクの応酬をしたら楽しかっただろう、ということです。

 レース終盤にそういう状態になりかけたところで、アロンソのパワーユニットに問題が発生し、そのままあっさりとリタイアしてしまったので、バトンの期待が叶えられることはありませんでした。バトンはそのことを残念がっているようです。が、これって皮肉と受け取るのが正しいのではないでしょうか?

 ベルギーに続きパワーサーキットなのでホンダには不利とは言われていましたが、それにしても… という成績です。アップデートしてパワーは改善したと言われていましたが、相対的には他のパワーユニットと差が開いてしまったのではないかと思えます。

 前回のアロンソのコメントもそうでしたが、全体的に二人のドライバーのコメントが自虐的で冷淡になってきた気がします。以前はもう少し前向きな雰囲気が合ったのですが。それが何を意味しているのか、心配なところです。

再びアジアへ

 F1は再びアジアへやってきます。次回は2週間後、シンガポールGPです。大都会のナイトレースで、公道サーキットなのでこれまでとは打って変わって、低速のテクニカルコースとなり、勢力図は少し変わるかもしれません。そしてシンガポールが終わればいよいよ鈴鹿が待っています。

カテゴリー: F1