ロシアGPからアメリカGPまでの3週間、F1界は大きな動きがありました。いや、私が小林可夢偉ファンだからそう見えるだけで、実際のF1界にとっては、最下位グリッドの弱小チームが消えていくのは「良くあることの一つ」に過ぎないのかもしれません。
そうは言っても寂しくなりすぎたグリッドを埋めるために、FIA肝いりで2010年に参戦を実現させた3つの新チームが、結局5年持たずに消えていくとすれば、F1の運営には何か大きな問題があるのだろうと思います。
久々にグリッドに付くマシンは20台を切り、今回アメリカGPには18台のみの参戦。この18台だって安泰ではなく、あと2,3チームが消えたとしても、パドックで驚く人は少ないのでしょう。
それにしてもテレビ画面を見ていて思ったのは、アメリカ人はモータースポーツが本当に好きなんだなぁ、ということです。アメリカの文化とはややずれがあるF1ですが、やはり自動車大国なのでここでのレースはF1にとっても重要なことです。アメリカ人もアメリカ資本もない状態ですが、レースウィークで延べ24万人と、以前の日本GP並の観客数だったそうです。この盛り上がりがちょっとうらやましいと思いました。
「ひどい気分だ」 ニコ・ロズベルグ/メルセデス
ポールからスタートして、途中でハミルトンにコース上でオーバーテイクされ、2位でフィニッシュするのは今年何度目でしょうか。この結果から言えることは、予選で一発の速さはあるけれども、レースペースが悪い、ということになります。
それがドライバーとしての特性なのか、セットアップの方向性がそうなのか? 恐らく後者なのだと思いますが、それが好みだからと言うよりは、全体的にハミルトンに対して余裕がなく、苦し紛れにポールを取りに行くしかない、という状況なのでは?と予想します。
この流れを実力で変えるのは難しそうです。作戦で裏をかくとかそういうのもニコは苦手そう。となるとハミルトンの自爆待ちでしょうか。しかしハミルトンは鈴鹿の悪天候も制したし、テキサスのブレーキトラブルも乗り越えました。あとは何かスキャンダルでも…
「特別な気持ちだ」 ルイス・ハミルトン/メルセデス
ロズベルグとは対照的に、最近はフロントロウに並びさえすれば、何をしても勝ててしまうハミルトンは笑いが止まらないことでしょう。もはや多少予選で失敗しても負ける気はしないのではないかと思います。
今回は金曜日にブレーキトラブルが出て、マシンのセットアップが完璧に出来たとは言いがたい状況だったはず。しかしレースでは素晴らしいペースを見せました。
ポイント差はこれで24ポイント。残りは2戦。しかし最終戦が(バカげた)ダブルポイント制なので、最大75ポイント差が付く可能性があり、まだチャンピオンの行方は予断を許しません。ポイントを得ることよりも失わないことが重要となります。
そういう守りのレースが彼に出来るのかどうか、そこが勝負となるでしょう。ハミルトン自身、2007年と2008年の記憶があるでしょうし、2010年にはアロンソの件もあります。混戦のシーズン、最終戦は波乱がおきやすいものです。
「満足している」 ダニエル・リカルド/レッドブル
スタートで大きく出遅れたはずなのに、終わってみれば表彰台に上っているという、レースの上手さが相変わらず光りました。
昨年、ウェバーの後継にリカルドが決まったとき、レッドブルはオーストラリアには何かしがらみがあるのかと疑いましたが、少なくともそれだけではないし、ましてや持参金などは関係なく、本当にちゃんとドライバーの能力を見てドライバーを起用している数少ないチームの一つだと思います(というか、レッドブル自身がリカルドのスポンサーなわけで)。
それはともかく、パワーユニット的に圧倒的にメルセデスが有利な中、出来の悪いルノーでウィリアムズ2台に勝ててしまうのだから、リカルドの上手さだけでなく、レッドブルのマシンの素晴らしさが今回もまた証明されました。
それは結局ベッテルが今年のマシンに適応することなく、今シーズンを終えそうだと言うことと対比しても感じられます。
チャンピオンシップ・ポイントで2位以上に上がれる可能性はなくなりました。ボッタスとの3位争いに専念することになるのでしょう。
そういう意味で、今回のアメリカGPの表彰台は、今シーズン全体を総括するシーンだったとも言えそうです。
残りは今週末のブラジルと、その2週間後のアブダビを残すのみ。ブラジルまではケータハムとマルシアの欠場は決まっています。アブダビで再びグリッドに20台以上のマシンが並ぶ可能性も少ないようです。
小林可夢偉はそんな中、シート探しのために一応オースティンを訪れていたようですが、なぜか大金を持つエリクソンや、その他ペイドライバー達が次々にシートを決めつつある状況を見てると、このままでは苦しそうです。
持参金の目安は20億くらいのようですが… 一過性のブームとバブルはあったものの、経済状況によらず、そういう無駄金(!)がF1に常に流れ込むような成熟度は日本のモータースポーツにはまだないと諦めるほかありません。