今年のF1レースカレンダーをよく見ていなかったのですが、今年からヨーロッパラウンドに新しいレースが追加されていました。それが先週末に行われたオーストリアGPです。場所はレッドブルリンクですが、古くからのF1ファンには旧A1リンクと言えば、何となく覚えがあると思います。
前回オーストリアGPが開催されたのは2003年のことですから実に11年ぶり。A1リンクがレッドブルリンクと名前を変えていることからも分かるとおり、今や押しも押されぬチャンピオンチームとなった、レッドブルがその開催誘致に尽力したであろうことは容易に推測がつきます。
バレンシアで開かれていたヨーロッパGPに代わって割り当てられたレースで、当然ながらレッドブルチームのホームグランプリとなります
波乱の予選を経て、スタートしたレースは、展開が読めずに見ていてとても面白いものでした。ハミルトンの追い上げも素晴らしかったし、トップを奪い返し、それを守り切ったロズベルグのレースも見事でした。しかしポイントリーダーを争うこの二人の後ろで繰り広げられたレースには、なにやら「残念」感がいつになく多かったように思います。
「3位と4位はチームにとって素晴らしい結果だ」 ヴァルテリ・ボッタス/ウィリアムズ
さて今回のレースの見所は、なんと言っても予選でフロントロウを独占したウィリアムズがメルセデスとどう戦うのか?と言う点にありました。結果的にウィリアムズは完敗してしまったわけですが、どうやらチームとしては端からメルセデスと戦う気はなかったようです。
マッサはスタートをうまく決め、ボッタスはオープニングラップでロズベルグを抜き返し、ワンツーを保ったままレースを進めていきます。メルセデスを引き離す余力はないけど、うまくやれば、少なくとも1台はメルセデスの前にとどまることは可能な雰囲気がありました。
しかし最初のピットストップではロズベルグに2台まとめてアンダーカットを許し、2回目はハミルトンのアンダーカットにボッタスはなぜか反応せず。コース上では戦ってるように見えて、戦略では直接戦うことを避けていたようです。無理にメルセデスと戦ってタイヤや燃費戦略でリスクを負うのを恐れていたのでしょう。
低迷が続いているとはいえ、一時代を築いた名門チームなのですから、もっと勝ちにこだわって欲しかったと、一F1ファンとしては思います。
「これもゲームの一部だ」 セバスチャン・ベッテル/レッドブル
またもやベッテルのマシンには深刻なトラブルが発生しました。なんとか復帰できたとはいえ、いきなり周回遅れになってしまったのではレースになりません。
前戦で見事な初勝利を飾ったリカルドは何とか完走し、ポイントを獲得しました。チーム内の争いで言えば、ベッテルはまたもや予選でもポイントでもリカルドに差をつけられたことになります。
しかしそれ以上に問題だったのは、レッドブルのホームレースにおいて、今シーズン最悪の結果だったこと。予選ではレッドブルBチームのトロロッソにも負けてしまうと言う有様です。
信頼性とスピードの問題は、本当にルノーPUだけの問題なのか?疑問に思えてくるレース内容でした。優勝したかと思えば次のレースではグダグダになるという不安定さは、マシンの開発の方向性もしっかりしていないことの現れではないかと思います。
「戦略は間違っていたと思う」 小林可夢偉/ケータハム
マルシアにも明らかに後塵を拝し、一人負けの状態に陥りつつあったケータハムですが、今回の予選では可夢偉が何とかチルトンの前に出て、また再び戦える状態になってきたかもしれないことを感じさせました。
しかし… オプションタイヤでスタートし、ビアンキをもオーバーテイクし、14週目にプライムタイヤにスイッチと、順当な2回ストップ作戦を行うと思いきや、なんと残りの50週以上をそのプライムタイヤで走りきると言う、無謀な1ストップ作戦に突然変更してしまいます。
結局レース終盤、完全にタイヤを使い果たした可夢偉は、順当に計画された1ストップ作戦を敢行するビアンキを押さえきれるはずもありません。
いったい何のための1ストップ作戦へのスイッチだったのか謎が残ります、このチームの判断には可夢偉も相当不満があるようです。どう考えても順当な2ストップ作戦をしていた方が良かったと思えますし、事前に1ストップ作戦にスイッチするにしても、50週以上のスティントを走りきれとは、あまりにも無謀すぎ。
ケータハムには、マシン開発だけでなく、レースオペレーションに大きな問題があるようです。弱小チームであるからこそ、一番重要なところなのに。1ポイントへの道のりは長そうです。
「だったらパワーをくれ」 キミ・ライコネン/フェラーリ
ただでさえ凡庸でイマイチなフェラーリのマシンですが、さらにライコネンにとってはドライビングスタイルと合っていないらしく、どうにも結果が出ません。合っていない上にそもそもパワーもグリップも不足している跳馬を駆り、奮闘するライコネンに、ピットからは「前納マシンを捕らえろ」的な、ありがちでのんきな指令が飛び、その無意味な無線にすかさず返された言葉がこれです。フェラーリのレースのやり方、スタイルもあまりライコネンには合っていないのではないかと思います。
次は来週末、イギリスGPです。伝統のシルバーストーンでは今年のマシンはどんな走りをするのでしょうか?