FinePix F600EXRには「ぼかしコントロール」という撮影機能があります。F600EXRのように、小さなセンサーに暗いレンズしか持たないコンパクトデジカメでも、一眼レフ(に大口径レンズをつけた場合)並のボケを擬似的に得るための機能です。最近は特に珍しいものではなく、多くのコンパクト機が同様の機能をサポートしています。これ、2年くらい前に使っていたF70EXRで気に入っていた機能で、昨年みんぽすさんから借りたF550EXRでももちろん試してみました。
ということで、後継機となるF770EXRが発表されたばかりで今更感はありますが、F600EXRではどのくらいこの機能が進化していて使えるものなのか、試してみることにしました。
この「ぼかしコントロール」は、1回の撮影につきピント位置を変えながら複数回(2回または3回)シャッターを切り、ピントの合った主要被写体とボケた背景を合成して1枚の写真を作る、というものです。原理は単純と言えば単純ですが、実際の処理はなかなか手が込んでいるようです。
F70EXRでは「ぼかしコントロール」を使って撮影しようと思っても、「背景がぼかせません!」という警告が出て撮れないことが多々あったのですが、F550EXR/F600EXRではほとんどの場合撮影可能で、滅多に警告が出ることはなくなりました。恐らく画像処理エンジンの性能が向上し、主要被写体の認識能力が上がったためと思われます。
「ぼかしコントロール」撮影時の液晶画面表示はこんな感じ。ぼかし状態がリアルタイムに見られるわけではありません。設定可能なパラメータは「ぼかし強度」だけ。1〜3までの3段階で、数字が大きい方がぼかし効果が大きくなります。
あとは、ピントを合わせたい被写体にAFポイントを合わせてシャッターを切るだけ。状況によって2枚連写かもしくは3枚連写となります。画像処理で合成されますので、カメラを動かさない(あるいは被写体が動かない)ようにしなくてはなりません。
さて、以下は同じ条件で、ぼかし強度を変えながら撮ったカットの比較です。
ぼかし強度:3,(ISO400, 1/27sec, F3.5, 24mm相当)
一番上は「ぼかしコントロール」処理前の何もしていないカット。条件的に近接撮影で距離差があるので、背後の液晶モニターはもともと少しボヤけています。そしてぼかし強度を上げていくにしたがって、明らかに効果が強くなって行くのが分かります。ぼかし強度3ではカメラの”PENTAX”のロゴもボケています。でも、ボケと言うよりはソフトフォーカス気味な気もします。
次に、別のシーンで使ってみたカットをいくつか並べてみます。と言っても、すべて似たような草花の写真ばかりですが。それぞれ処理前と処理後の2枚ずつ載せてみます。
ぼかし強度:2,(ISO400, 1/640sec, F6.0, -0.7EV, 290mm相当)
望遠側で撮ったものですが、左上の葉っぱがまるごとボケました。背景は暗く沈んでいて分かりにくいですが、木の幹などもやはりボケています。でもなんか全体的に妙な感じです。
ぼかし強度:3,(ISO800, 1/420sec, F4.7, 62mm相当)
今度はマクロ領域です。これは上手く主要被写体とそれ以外の背景が認識されて、自然でそれっぽくなりました。でも、元々背景はぼけていますし、この程度か… という気がしなくもありません。
ぼかし強度:3,(ISO800, 1/210sec, F4.7, 62mm相当)
これもマクロ領域。ですが失敗例といえるのかも。背景はまったく変わらないけど、前ボケだけ作り込まれてしまいました。でもむしろなんかこれ良いです。ちょっと気に入りました。
ということで、効果のほどは「なるほど」… な面もあるのですが、どうも全体的に不自然な感じが拭いきれません。単純にフィルタでぼかしているわけではなく、ピントをずらしたカット、つまり本当にレンズのボケを使っているはずですが、画像処理っぽさがありありと残ってしまう感じがします。まぁ、お遊び機能の域を出てないな、と。
FinePix F70EXR, ぼかしコントロール,(ISO200, 1/480sec, F3.3, 27mm相当)
F70EXRの時は「ぼかしコントロール」機能自体、使うのが初めてで珍しかったせいか、その仕上がりに感動した記憶があるのですが、どうもF600EXR世代になって、撮影可能条件が広がった代わりに、あまり背景ぼかしに向いていないカットや、背景と主要被写体の認識が難しいカットでも、画像処理できるようになってしまったのが、不自然さも感じる一因ではないかと推測します。
仕上がりを過度に期待するのではなく、偶然の産物で面白い写真になるかも?程度の気持ちで使うと、残念感はそれほどないと思います。F600EXRでは処理前のオリジナルも同時記録することができるので、気に入らなければなかったことに出来ますし。