7月1日金曜日の午後になって急に飛び出してきたこのニュースには本当に驚きました。PENTAXがHOYAに買収されたのは2008年のこと。買収に当たってカメラ事業の取り扱いについてゴタゴタし、なんとかブランドと事業を維持することにはなったものの、カメラ事業は明らかにHOYAの中核事業から外れ、収益もあまり良くない不要なお荷物。当面カメラ事業を続けるけれども今後は力を入れていく気はないし、いずれは売却する意思があることが公言されていたような状態でした。
そんな不遇の扱いを受ける中でも、K-7/K-5やK-m/K-x/K-r、そして645Dと言った意欲的な製品開発は続けられ、老舗ブランドは名実ともに生き延びてきました。シェアは低いながらも、カメラ市場ではそれなりの存在感があり、リストラ効果もあって経営的にも黒字転換を果たし、この規模でもカメラメーカーとして存続できることを証明して見せたところで、いよいよHOYAは満を持してPENTAXの売却を発表。その相手はなんとリコーでした。
まずは公式発表として、HOYAおよびRICOH両社のプレスリリースを貼っておきます。
HOYA株式会社:
PENTAX イメージング・システム事業の譲渡に関するお知らせ(PDFファイル)
株式会社リコー:
リコーによるHOYAのPENTAXイメージング・システム事業の買収合意について
売却先の噂
HOYAに買収されてからの数年間、PENTAXの売り先については色々噂がされていました。根拠のあるものもないものも含めて。最悪のシナリオはこのまま買い手がなく力尽きて消えてなくなってしまうこと。それ以外では、海外(韓国?)の電機メーカー、あるいは中国あたりの投資グループに売られてしまうとか、カメラを手がけている国内の大手電機メーカー(S?, P?)に売られてしまうとか。中でも具体的に名前が出たものでは、JVC・ケンウッドがPENTAXを買うという噂もありました。これも火があった煙だったのかどうなのか分かりません。
ビジネスの現場、大人の事情で色々言われる一方で、単なる一ユーザーの目線、それも一人のPENTAXファンとしての勝手な希望的観測からすれば、リコー(あるいは富士フィルム)が買収してくれれば良いのに、と思っていました。老舗のカメラメーカーで、きまじめでちょっとニッチ向けな製品作りではPENTAXに通じる部分もあり、そしてデジタル一眼レフを手がけていないだけに、Kマウントシステムに価値を見いだし、将来にわたってKマウントのレンズやカメラの開発を続けて新製品を出してくれるのではないかと。
リコーはBtoBを中心にした売り上げ2兆円規模のOA機器メーカーにして、経営状態も安定した優良企業で買い手としても全く不足はないのですが、いくらカメラが会社黎明期からの伝統ある事業だとしても、HOYA同様にコンシューマーはもはやリコーにとっての注力事業ではないと思っていたので、本当にリコーがPENTAXを買収すると聞いて喜ぶと同時にとても驚きました。
ペンタックス株式会社の復活?
実際にどのような手順でPENTAXがRICOHに買収されるか、そして今後どのようにしていくのかについては、↓この記事に色々と興味深いことが書かれており、妄想を呼び起こします。
HOYAとリコー、ペンタックスブランドの譲渡について会見 :デジカメWatch (2011年7月1日)
このHOYAとリコーの共同記者会見についてのレポートによると、現在はHOYA社内に取り込まれているPENTAXデジタル・イメージング事業部を新会社を設立してそこに移管、その新会社の株式を全てリコーに売却するとのことです。またリコーはこの子会社をリコー本体に取り込むのではなく、子会社のまま維持し、それどころかリコーのデジタルカメラ事業もその子会社に移管する計画があるとのこと。子会社の詳細は決まっていませんが、これはまさしくカメラを主力事業とするペンタックス株式会社の復活と言えるのかも。ただし、独立経営の上場会社ではなくリコーの100%子会社として。
しかもこの記者会見で明らかになったことには、リコーはコンシューマーから撤退するどころか強化を考えており、その手段としてPENTAXを買収し、カメラ事業の強化を図ると言うことです。それが成功するしないはともかく、KマウントをはじめとしたPENTAXの資産を使って本気でカメラ事業をやっていくというのは、PENTAXマニアとってはまるで夢のような話です。少なくともHOYA社内で冷や飯を食べているよりはいい結果が得られるはず。
しかし、PENTAXもリコーもデジタルカメラのシェアで言えばかなり下位の方にいます。両社合わせていきなりトップとか3位になるというような、数の力をあてにした合併ではありません。弱者連合の場合1+1=2にならないこともリスクとしてあります。また、老舗同士ではお互いにプライドが高くて、社内で目標を一つにできないなど、うまく補完し合えないと言った心配もあります。危機感を共有し、お互いのシナジー効果(一度言ってみたかった言葉 A^^)が発揮できるよう祈りたいと思います。
RICOH × PENTAX
リコーとPENTAXが一体になって、今後どんな製品が出てくるのか?それがユーザーとしては一番気になるところですが、そのヒントとなるようなことを上記の記者会見でリコーの社長さんが言っています。それは「レンズ交換式カメラに注力していく」と「PENTAXが持つ645D, K, Qの各マウントは維持していく」そして「リコーが持っているGXRについてはノーコメント」というもの。
まず、Kマウントのデジタル(一眼レフ)カメラは現在のまま開発が進められると言うことで一安心。もちろんPENTAXブランドを維持して欲しいですが、なんだったらRICOHブランドでも構わないと個人的には思います。645Dについても然り。また先週発表されたばかりのQについても、予定通り発売されるようです。というか、買収交渉時にこの製品はすでに織り込み済みだったのでしょう。
むしろこの話を聞いて心配になるのはリコーファンの方ではないでしょうか? CXなどのコンパクト機についてはいいとして、レンズ交換式ではないGR Digitalはどうなるのか? そしてGXRはどうなのか?
これらの製品がビジネスとしてうまくいっているのかどうかは分かりませんが、少なくともカメラ分野におけるリコーブランドの中核をなしている製品であり、一定の非常に熱烈なファンを持っていることは事実。弱小ながらもPENTAXに価値があるように、これらのリコーがリコーたる由縁の製品にも大きな価値があるはず。今後GRD4は出るのか?GXRのユニットは継続して発売されるのか、今後が心配です。
とりあえず、KマウントあるいはQマウント(なんなら645D用の)用のGRレンズとか、GXR用 のQマウントユニット辺りを出してくれないかな?と期待および妄想しています。いや、私はGXRは持っていないのですが、GXRをベースにKマウントレンズも使えるレンズ交換式カメラなんてのが出たら、欲しくなってしまうかも。
なお、PENTAX製品は色々持っているので、今回はその代表としてK-5 Limited Silverの写真を貼ってみました。RICOH製品は… CaplioやGDR2など色々使っていたことがあるのですが、残念ながら現時点で手元にないので、フィルム時代の名機、GR1を代表としてその写真を使いました。PENTAX買収記念で、こいつにも再度フィルムを通してみたいです。
確かに、リコーユーザーにとってはいいニュースではないかもしれませんね
GXRもマウントとして数えるとマウントを4つも抱えることになりますからGXRはこのままフェードアウトという危険性もはらんでいますし。
そうなんですよね、全体的にPENTAX資産の処遇についてはとても前向きな発言ばかりだったようなのですが、現行RICOH機については明確な方針が示されなかったように思います。PENTAXを引き継ぐだけでなく、どうやってRICOHとPENTAXの良いところを掛け合わせていくのか、そこが今後焦点になりそうです。
GXRはどうでしょうね。ある意味何でもできるユニット形式は、こういう場合に強いかも知れません。