東日本大震災が発生して以降、関東地方を中心にした東日本の広い地域で電力供給が不足しています。計画停電実施という現実は、私たちが無意識に依存してきた電気というインフラの重要性と、その危うさを浮き彫りにしました。そして「電気がないとこの社会はどうなるのか?」という、今まで考えたことがない恐ろしい現実を突きつけています。
また、例えば私の住む東京における節電という行為自体は、東北太平洋沿岸の被災地支援に直接供するものではありません。しかしながら、節電を日々心がけることで、ライフラインをはじめとした生活基盤を失ってしまった被災地の人々への理解、心遣いや共感、継続的な感心を私たちに強く呼び起こすという意味で、被災地支援と全く無縁ではないと思います。そして復興後の私たちの社会のありかたを考える上でも重要な問題を投げかけています。
と、いつになく真面目に書き出してみたものの、この後に続く内容がそれほど大したことでは無いので、とても恐縮なのですが… 今回はふと思い立って、自宅にあるパソコンの消費電力を測ってみることにしました。いつもPCは漫然とつけっぱなしにしてしまいがちなのですが、これって結構電気使ってるはずです。ですが実際どのくらいなのかを知りません。普通のテレビくらい? 冷蔵庫並み? いや、電子レンジ使いっぱなしレベルだったりして?
具体的な数字が分かれば、PC使用に関わる節電の重要性やその方法というのも、なにかアイディアが沸いてくるかもしれません。
ということで、まずはとあるところから、ワットチェッカーなる機械を拝借してきました。コンセントとプラグの間にこの測定器を挟むと、そのラインで消費されている電力値(Watt)が表示されます。測定器としての精度が高いとは思えませんが、おおよその目安にはなるでしょう。
PCの構成
まずは測定対象となるPCは以下の通りです。いずれも自作のデスクトップ機が2台です。
1号機 | 2号機 | |
---|---|---|
CPU | PhenomII X6 1090T(6core 3.2GHz) | PhenomII X4 905e(4core 2.5GHz) |
M/B | ASRock 890GX Extream3 | Foxconn A7DA-S |
GPU | AMD890GX Internal | AMD790GX Internal |
Memory | DDR3-1333 8GB | DDR2-800 8GB |
SSD | RealSSD C300-256G | VERTEX 120GB |
HDD | WD20EARS(2TB),WD10EADS(1TB) | WD10EADS(1TB) |
DVD | LG GH24NS50 | NEC ND-4550A |
Power Unit | Antec TruePower650 (650W) | SevenTeam ST-620PAF(620W) |
Monitor | EIZO L-997-R | HP ZR22w |
1号機はAMDの6コアCPUを搭載。このCPUはTDPが125Wもあるパフォーマンス重視型。一方2号機のCPUは4コアですが、TDPが65Wに押さえられた低消費電力版です。M/Bに使われているチップセットは世代が違いますが、いずれもグラフィクス内蔵品を使用し、ビデオカードは別途搭載していません。
メモリーはいずれも8GB搭載ですが、1号機はDDR3の4GB-DIMMx2枚、2号機はDDR2の2GB-DIMMx4枚とという違いがあります。ストレージ関係は両機ともシステムドライブはSSD、データドライブがHDDとなっています。HDDは5400rpmの低消費電力型で、1号機は2台合わせて3TB、2号機は1TBを1台のみ積んでいます。
あと、表には書いてありませんが、2号機はUSB接続の地デジチューナー(バスパワー動作)を搭載してテレビが視聴できるようになっています。
本体測定結果
上記のような構成のPCで、ワットチェッカーにより消費電力を測ってみた結果、以下のような数字が出ました。まずはモニターを除くPC本体のみの計測結果です。
1号機 | 2号機 | |
---|---|---|
電源OFF | 0W | 2W |
スリープ | 3W | 4W |
Windows7起動中 | 140W (peak) | 110W (peak) |
Windows7起動後(Idle) | 82W | 74W |
Firefox起動 | 120W (peak) | 96W (peak) |
Prime95(CPU全負荷) | 193W | 128W |
TV視聴 | N/A | 80W |
いずれもOSはWindows7の64bit版です。AMDのCPUは負荷に応じてクロックと電圧をコアごとに制御する、Cool’n’Quietと言う省電力機能が搭載されています。ですので、Windows起動後のアイドル状態では、CPUは800MHzほどの低クロック、低電圧で動作しているはず。一方Prime95というソフトウェアを走らせると、全コアの負荷が100%に張り付き、CPU的には全速力で動いている状態です。
で、結果についてですが… 1号機は思ったより低いなというのが正直な感想です。いや、2号機が意外に電気食ってるとも言えるのかも。いずれも全速力で回した場合は60W以上の差がつきますが、これはほぼCPUのTDPの差(125Wと65W)とも言えます。普通に使う範囲内では100W前後と言うのは、思ったほどで大きな数字でははありません。TV視聴もそれほど負荷は高くないようです。
スリープ中はメモリーには通電している状態ですが、この3〜4Wという数字はどう解釈して良いのかわかりません。家電の待機電力と比べると高いと考えた方が良いのかも。使わないときはシャットダウンするに越したことはありません。
それよりも2号機は電源OFF時しても2Wという数字が表示されたのが解せません。電源OFF時のUSB給電はいずれも切ってあります。ですので、これは電源ユニットの特性に関係がありそうです。2号機の電源はアクティブPFCが入っているので、その辺が関係してたりするのかも。と言っても、今は電力供給力不足が現在の問題ですので、PFCが入ってることはトータルで見て良い事なはず?
液晶モニター測定結果
さて、上記の数字にはモニターが含まれていませんでしたので、別途モニターの消費電力を測ってみました。結果は以下の通りです。
1号機(L997) | 2号機(ZR22w) | |
---|---|---|
スタンバイ | 1W | 0W |
ON (バックライト100%) | 50W | 30W |
ON (常用時) | 34W | 24W |
ON(バックライト0%) | 18W | 12W |
L997は21インチスクエアのUXGA、ZR22wは21.5インチワイドのFullHDです。いずれもDVI-Dで入力しています。L997は今となっては旧世代のLCDモニターですが、ZR22wは今時の製品です。インチサイズは似たようなものですが、アスペクト比の違いからL997のほうが表示面積は大きいです。バックライトの明るさは、私が自分で使いやすい明るさに設定してあります。L997常用時は26%、ZR22wは74%です。
結果についてですが、少し小型で設計の新しいZR22wはL997よりかなり低消費電力です。その差は約30〜40%。画面サイズ以上の大きな差がつきました。ZR22wのスタンバイ時0Wというのは、実際には測定限界以下という意味です。
参考データ:モバイルノートPC
ここで参考までに、手持ちのノートPCを測ってみることにしました。モデルはThinkPad X40という古いB5サイズのモバイル機。1スピンドルでCPUはPentium Mの超低電圧版1.1GHz、メモリーはDDR-333で1.25GB搭載、無線LAN内蔵、XGAの12インチLCD、標準搭載の1.8インチHDDはSSDに換装済みです。という、現在のPCとはかなり違っていて、あまり参考にならないかも知れないモデルですが、念のため。
ThinkPad X40 (2371-BRJ) | |
---|---|
ACアダプタのみ | 0W |
電源OFF | 0W |
電源OFF(充電中) | 28W |
スリープ | 15W |
WindowsXP起動中 | 32W |
Windows起動後 (Idle) | 31W |
Firefox起動 | 35W |
Prime95(ファン動作) | 37W |
充電中と表記のない項目は、全て電池は100%充電済みの状態です。ですので、充電のための電力は含まれていないはず。また、電源オフで充電中に計った数字は、電池容量は80%程度であったと思われますが、これは電池残量によっても変わるかもしれません。液晶のバックライトは最大にしています。
さすがに動作中の消費電力は、自作デスクトップ機と比べると圧倒的に低く、モニター1台分程度に収まります。CPU負荷による差はあまりありません。ちなみに電源OFF時の数字にはちょっとからくりがあります。
電源OFF時に0Wという結果は当たり前に思えるのですが、実はシャットダウン直後や、あるいはACアダプタをつないだ直後は、PCが起動していなくても、電池が満充電であっても、15W程度の消費電力を示すのです。これは充電回路が電池の状態をチェックしてるのでしょうか? その後時間とともに少しずつ消費電力は低下していき、1時間くらい経過すると0Wに落ち着くようです。
ちなみにスリープ時の消費電力も非常に大きいですが、もしかしたらこれも1時間くらい放置すると数W台まで落ち着いたのかも。デスクトップPCのスリープ時と比べても、あまりにも数字が大きすぎる気がします。
これらの現象がノートPC全般で一般的かどうかについては、全く分かりません。あくまでもThinkPad X40の一例として見ていただいた方が良さそうです。少なくともこのPCの場合、使用していないときはACアダプタごと抜いておく方がいいようです。
まとめ
ということで、ここから考察できることはいっぱいあります。電力セーブのためには「こうするべき」という結論も導けそうです。用途によりますが、節電のためにはノートPCを使えというのが、一番正しい結論なのは動かしようがありません。
デスクトップPC、しかも自作機について言えば、パーツは厳選することでかなり低消費電力化はできそうです。また、モニターのブライトネスを調整するだけでも10W単位の効果があります。私の設定(L997で26%)は別に我慢しているわけではなく、それが一番見やすいから。ノートPCと違って最近の据置型液晶モニターはブライトネス100%のままでは明るすぎるものがほとんどだと思います。
私の2台のPCの場合、外付けグラフィクスを使ってないこともあって、1号機もCPUさえ低消費電力版に変えてしまえば、2号機並みにすることはできそう。あとはHDD2台というのをどうするか? バックアップ用は外付けで必要な時だけ使うのがいいかも。
そして意外に大きく効果があるのは液晶モニターですねぇ。L997は気に入っているのですが、やはり最新のモデルというのは消費電力の点でも優位なのでしょうか。とりあえずモニターのスタンバイタイマーを短く設定して、こまめに消すようにしたいと思います。
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大変興味深いデータです。こういうのを数字で確かめたくなるのは電気屋(?)の性でしょうか。
あの小さいCPUで昔の電球1個分近くの電力を消費しているのが、いつまで経っても実感として湧きません。
はい、測ってみないと分かった気にならないのは職業病でしょうかね。測っただけで分かった気になるのもアレですけど。
10数ミリ角の半導体で100W以上を消費するCPUのエネルギー密度は、原子炉並みなんて言われたこともあったように記憶しています。まもなく空冷の限界を迎えるとか。i486以前のCPUなんてヒートシンク無しでも動いていたのに。さすがにまずいと思ったのか、最近は新CPUの重要な性能指標の一つに「低消費電力」が上げられるようになってきました。