- 作者: 畠中恵
- 出版社/メーカー: 文藝春秋
- 発売日: 2010/03/01
- メディア: 文庫
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江戸は神田、玄関で揉めごとの裁定をする町名主の跡取りに生まれた麻之助。このお気楽ものが、町の難問奇問に立ち向かう。ある日、女好きの悪友・清十郎が「念者のふりをしてくれ」と言ってきた。嫁入り前の娘にできた子供の父親にされそうだという。本当の父親は一体誰なのか。
ここしばらくイマイチな読後感の本ばかり読んでいましたが、久々のヒット作に出会いました。それがこの畠中恵さんの「まんまこと」です。
畠中さんの小説はハードカバーで出たときにほとんど読んでいると思っていたのですが、このタイトルには見覚えがありません。念のためその場で手に取り開いて出だしを数ページ読んでみたのですが… うん、これは未読に違いないと確信。畠中作品の新作を思いがけず見つけた喜びに(心の中で)小躍りしてしまいました。
この紹介文にあるように、主人公は町名主の跡取り麻之助とその悪友達。相変わらず畠中さんの描く登場人物は面白くて魅力的です。小説的演出にまみれていながらも、その嘘くささが全く気になりません。個人的には若旦那をはじめとした「しゃばけ」シリーズの登場人物の面々よりも、こちらの麻之助たちの方がずっと好きになってしまいました。
そんな面白い登場人物達が活躍するストーリーは、畠中さんらしくちょっとしたミステリー調。そして遠山の金さんというか、大岡越前的でもあります。
この小説の重要なポイントは「町名主」の制度にあります。市井もの時代小説には「名主」という人が時々出てくるので、その言葉は知っていたのですが、それがどんな役目を負った人々だったのか知りませんでした。そういう意味で珍しいテーマを扱った時代小説でもあります。
江戸の町人達の「世間的には些細だけど当人にとっては重要な事件」を中心として、名主制度を背景にして展開していく物語は、とても気楽に読めて面白いのです。名主の跡取りなのに、お気楽で放蕩息子の麻之助、生粋の女たらしの清十郎。この二人の掛け合いで始まる出だしを読んだだけで、すぐにこの小説の世界に引き込まれてしまいます。
嬉しいことにこの「まんまこと」もシリーズ化され、すでにハードカバーでは第二巻が発行されているそうです。文庫になるのを待ちきれるかどうか自信がありません。
【お気に入り度:★★★★☆】