「冬桜ノ雀」と「隠居宗五郎」:佐伯泰英

投稿者: | 2009年6月15日

 佐伯泰英さんの人気シリーズものを2冊読みました。居眠り磐音シリーズは29巻目、鎌倉河岸捕物控シリーズは14巻目です。特に居眠り磐音シリーズはほとんどここで紹介してきませんでしたが、もちろん過去28巻全て読んでいます。鎌倉河岸捕物控のほうも然り。これらはほとんど純粋に(良い意味で)娯楽小説に徹しているだけあって、それぞれ特につらつらと書くほどの感想文もありません。が、せっかく読んでいるものなので、読書記録として書き留めておきたいと思います。

○居眠り磐音 江戸双紙29 冬桜ノ雀
 磐音はおこんと結ばれて佐々木道場の主となり、西の丸様の覚えもめでたく、豊後藩も立ち直りつつあり、弟子達もたくましく育ち、当初このシリーズの中心をなしていたストーリーの数々はすっかり落ち着いてしまいました。残っているのは田沼意次と松平定信による、江戸城内の政争くらいのものです。

 29巻目となるこの「冬桜ノ雀」でも、磐音の周囲で様々な事件が勃発し、のっぴきならない状況に追い込まれますが、もちろんそこは磐音の人柄と人脈と剣の腕で、バサバサと悪者をやっつけ解決していきます。ちょっとイリュージョンが入ってきましたが(A^^;
 ともかく、読後のスッキリ感は相変わらずなのですが、何となくシリーズを通して流れる、バックグラウンドの筋というか、物語の行方というものが失われつつあるようです。このまま尻すぼみになるのか?あるいはまた大事件が勃発するのか…。

 一時はおこんさんが亡くなって、奈緒さんと寄りを戻すのではないかと思ってた時期もあったのですが、それももはやなさそう。でも、このままの調子で何事もなく、磐音とおこんが老夫婦になるまで続けて欲しいです。

 ところでアレですね、そろそろもしかしたら生まれるかもしれませんね。3巻ほど後に。今作を読んでいてそんな気がしました(^^;;
 お勧め度:★★★★☆ (水戸黄門化してきたかも)

冬桜ノ雀 ─ 居眠り磐音江戸双紙 29 (双葉文庫)

冬桜ノ雀 ─ 居眠り磐音江戸双紙 29 (双葉文庫)

 

○鎌倉河岸捕物控<十四の巻> 隠居宗五郎
 こちらは相変わらずタイトルがほとんどネタバレとなっています。前回の十三の巻「一人祝言」で晴れて夫婦となった、金座裏の十代目若旦那、政次としほ。九代目の宗五郎は金座裏を取り潰すことなく、無事に隠居することができました。まだ未熟な若旦那を見守る、隠居の宗五郎。さて、生まれ変わった金座裏にどんな事件が持ち込まれるのか?
 この鎌倉河岸捕物控シリーズは、佐伯さんのシリーズものにしては、ストーリーが少し重くて込み入っていたのですが、この十四の巻に至っては、まるで居眠り磐音シリーズよ読んでいるかのような展開になってきた気がします。事件は次から次へと発生して、金座裏の面々は相変わらず忙しく飛び回っているのですが、なんとも物語が小粒になってしまったようです。

 で、以前から感じていたように、私にはまるで政次という主人公の人間味が分かりません。磐音ばりのスーパーヒーローで、何事も完璧にやってのけ、誰からも慕われ崇め奉られるのですが…。磐音はそのキャラクターがすんなり受け入れられるのに、政次にはイマイチ白けてしまう部分があります。

 この手の小説にぐちぐち言うのは野暮と分かっているのですが、ヒーローものだけにヒーローに入れ込めないのは致命的です。この調子だと、このシリーズはどこかでリタイアしてしまいそう…。

 お勧め度:★★★☆☆ (捕り物としてのストーリーはとても面白くて楽しめます)

隠居宗五郎―鎌倉河岸捕物控〈14の巻〉 (時代小説文庫)

隠居宗五郎―鎌倉河岸捕物控〈14の巻〉 (時代小説文庫)

 

「冬桜ノ雀」と「隠居宗五郎」:佐伯泰英」への2件のフィードバック

  1. アマグリ

    もはや何巻まで読んだか分からず、同じ巻を買いそうになりました。磐音。
    まだ始めの頃、ストーリー展開を想像して盛り上がった頃が懐かしいです。
    もうすぐ生まれそうだね。

  2. Hi

    ○アマグリさん、
    同じ巻を読んでもそうとは気づかないかもしれません。

    今となっては、このまま唐突に終わってしまう、という説が有力になってきましたね。それも含めてこの先がある意味楽しみです。

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