奈良に行く前に読み直しておくべきだった:「天平の甍」など最近読んだ本4冊

 最近の読書記録です。行ってきたばかりの旅先に関係する小説を読み直す、というのは、最近お気に入りの旅の思い出を追体験する方法です。3月に沖縄旅行から行ってから「太陽の子」を読み直したのに続き、先月末に初めて奈良を訪れたのをきっかけにして、奈良に関する小説を思い出し、改めて読み直して見ることにしました。

天平の甍:井上靖

天平の甍(新潮文庫)

天平の甍(新潮文庫)

天平の昔、荒れ狂う大海を越えて唐に留学した若い僧たちがあった。故国の便りもなく、無事な生還も期しがたい彼ら――在唐二十年、放浪の果て、高僧鑒真を伴って普照はただひとり故国の土を踏んだ……。鑒真来朝という日本古代史上の大きな事実をもとに、極限に挑み、木の葉のように翻弄される僧たちの運命を、永遠の相の下に鮮明なイメージとして定着させた画期的な歴史小説。

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最近の読書記録:髪結い伊三次と鼠と反知性主義

 ここ3ヶ月ほどすっかり読書記録をつけるのをサボってしまいました。しかし読書をしていなかったわけではなく、それなりにいつものペースで読んでいました。このまま読書カテゴリーをフェードアウトさせるのも勿体無いので、約3か月分まとめてここで記録しておこうと思います。

 この間読んでいたのは宇江佐真理さんの「髪結い伊三次シリーズ」の続きと、赤川次郎さんの「鼠シリーズ」最新刊、そしてやや毛色が変わって森本あんり氏の「反知性主義」といったあたりです。

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 ちなみに最近はすべてKindle版を買ってPaperwhiteで読んでいます。とても便利でもはや紙の本には戻れない、と思う一方で、実感として紙の本を買っていたときより本を読むモチベーションが下がったな、と思います。感想文を書かなくなった理由もその辺にありそうです。何ででしょうね?

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再びKindleアプリの使い心地を検証する:鼠、危地に立つ/赤川次郎

IMG_0049.jpg 今年のお正月に手に入れたiPad AirにはKindleアプリを入れて、遅ればせながら電子書籍デビューをしてみたわけですが、長年慣れ親しんだ文庫本から移行するのはなかなか億劫で、無料で配布されていたいくつかの短編小説で初体験して以降、そのまままた読書は紙の本に戻っていました。読みたい本がKindle化されてないというのが一番の大きな理由ですが、そもそもお試し版の時代小説をKindleアプリ読んだときの感想が今ひとつだったせいもあります。時代の潮流に乗って「電子書籍バンザイ!」となるはずだったのに。

 「半七捕物帳 お文の魂」のエントリーでも少し触れましたが、もう少し詳細にKindleアプリの使い心地を分析してみたいと思います。もちろん以下は私の勝手な主観です。

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あっという間に読み終わる上質な娯楽時代小説:鼠、狸囃子に踊る/赤川次郎

鼠、狸囃子に踊る (角川文庫)

鼠、狸囃子に踊る (角川文庫)

女医・千草の下で働くお国は、お使いの帰り道に奇妙な光景に出くわした。林の奥の誰もいない場所で、お囃子が響いている。すぐさま“甘酒屋”の次郎吉に知らせるが、「番町の七不思議の一つ、『狸囃子』だぜ」と取り合ってもらえない。一方で、狸囃子の噂は、瓦版に載ったために江戸中の評判になる。仕方なく、様子を見に行くことにした次郎吉だったが、そこで囃子方の矢七の姿を見かけて…。大人気痛快時代小説、第7弾

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鼠、剣を磨く

鼠、剣を磨く (角川文庫)

鼠、剣を磨く (角川文庫)

  • 作者: 赤川次郎,宇野信哉
  • 出版社/メーカー: 角川書店(角川グループパブリッシング)
  • 発売日: 2012/12/25
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次郎吉の目前で娘が腕を斬られた。娘は峰といい、奉公先の主人と通じ、その妻の恨みをかって襲われたのだった。峰の父は、娘の不貞に激怒するが、浪人暮らしの父を思い手当てをもらっていたことを知り、言葉を失う。そして、一度は断った「ある仕事」を引き受ける決意をした。それは、武士としてのプライドを捨てるものだったが…。

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鼠、夜に賭ける

鼠、夜に賭ける (角川文庫)

鼠、夜に賭ける (角川文庫)

  • 作者: 赤川次郎,宇野信哉
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  • 発売日: 2012/10/25
  • メディア: 文庫
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“鼠”こと次郎吉が酒を飲んでいた店に、抜身を手にした男が入ってきた。どうやら人を斬ってきたらしい。男は「しくじった…やり直しはできん。俺はもう終りだ。けりをつける」と言い残すと、刀で首を斬って自害した。一方、騒ぎに巻き込まれた店で働く娘おようは、自害した男が落としたあるものを懐に忍ばせ、家路を急いでいた―。盗賊・鼠小僧が悪をくじく痛快エンタテインメント時代小説。絶好調のシリーズ第4弾。

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鼠、影を断つ

鼠、影を断つ (角川文庫)

鼠、影を断つ (角川文庫)

  • 作者: 赤川次郎,宇野信哉
  • 出版社/メーカー: 角川書店(角川グループパブリッシング)
  • 発売日: 2012/08/25
  • メディア: 文庫
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なじみの小料理屋で飲み、寝入ってしまった次郎吉。おかしな気配に気がついて目を覚ますと、隣家から火の手が上がっている!次郎吉の機転で延焼は防げたが、火元の家に住んでいた母と幼い娘が焼け出された。火事の原因は不明。さらに母子の周辺に見え隠れする怪しい人物たち。何かあると感じた矢先、今度は小料理屋が火事に―。人情篤い盗賊・鼠小僧こと次郎吉が悪と闘う痛快時代小説シリーズ。ますます絶好調の第3弾。

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鼠、闇に跳ぶ

鼠、闇に跳ぶ (角川文庫)

鼠、闇に跳ぶ (角川文庫)

八幡祭りで賑わう夜。大川に架かる永代橋が落ちた!あまりに大勢の人出で、橋が重みに耐えられずに起きた事故だった。だが犠牲者の中にひとり、肩口に大きな刀傷のある女がいた。殺しか―?いわくありげな女の正体と事件の真相を鼠が追う!昼の顔は“甘酒屋の次郎吉”と呼ばれる遊び人。しかし夜になれば江戸の正義を守る盗賊・鼠小僧。庶民の味方“鼠”が活躍する痛快時代小説シリーズ第2弾。

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鼠、江戸を疾る

鼠、江戸を疾る

鼠、江戸を疾る

 行きつけの本屋さんで次に読む本を物色していたところ、この本が目にとまりました。お、浅田次郎だ!と思ってそのまま買ってしまったのですが、後にさて読もうか、と開いてみてびっくり。浅田次郎ではなく赤川次郎だった… とがっかりしたのもつかの間。でも、このタイトルだったらいずれにしても買っただろうな、と納得してそのまま読み始めました。
 期待していなかったせいもあって、と言っては失礼かも知れませんが、これがものすごく面白いのです。読みやすさも手伝ってあっという間に読了。久々にすっきりと清々しい読後感の良い娯楽小説を読んだ気がします。登場人物の台詞を中心に物語が進んでいく独特の文章スタイル。ちょっと芝居がかったそれらの台詞は、とても格好良くて、歯切れが良くて、それでいて状況をしっかり説明していて、ドラマの映像を見ているかのようにスピード感があります。
 タイトルからも分かるように、物語の題材は江戸時代に現れた伝説の泥棒、鼠小僧です。伝説を伝説としてとらえ、史実にとらわれずに存分に小説的脚色を加えられ、再構成された鼠小僧次郎吉。この物語の中では「甘酒屋」という通称で呼ばれ、小袖という頼りになる妹とともに暮らしています。冒頭部で次のように自己紹介しています。

 見渡す限りの、この屋根の下には、江戸町民の喜怒哀楽が、日々の暮しがあるのだ。その一つ一つに思いをめぐらせ、ささやかな家族の幸せを見るのが、次郎吉は何よりも好きだった。
 武士の名誉だの意地だの、そんな下らないものとは関わりない、名もない人々。
 自分もその一人に過ぎない。
 ただ違うのは、自分が<鼠>という名を持っていること。−−自分で名のったのではないが、いつしか人にそう呼ばれるようになったのだ。

 巨悪の懐に潜り込み、盗られても良いものだけを盗り、困っている貧乏人を助けるという鼠小僧の義。その仕事ぶりをストレートに物語にしただけではなく、ちょっとひねってミステリー仕立てになっているところが、赤川次郎氏らしいと言えるのかも(と言っても、彼の作品はほとんど読んだことがありませんが)。
 浅田次郎氏の本と間違えたときには、天切り松のようなスカッとするヒーローものを期待していたのですが、実際その期待は見事に叶えられたと言えます。
 この本は赤川次郎氏初の時代小説だそうです。今後に是非期待してしまいます。この鼠シリーズも三毛猫ホームズなみのシリーズ化してくれたらと思います。
 【お気に入り度:★★★★★】