色々な経緯があって、今年の6月にニコンD500を手に入れたわけですが、このカメラは動体専用という位置づけなため、最初に買ったレンズは超望遠ズームのAF-S Nikkor 200-500mm F5.6E ED VRでした。すでに飛行機撮影に何度か使ってみてだいたい期待通りの威力を発揮してくれているのですが、それにしてもD500に使えるレンズが200-500mmが一本しかないという状態は、あまりにも超望遠に偏りすぎています。ワイド端が100mm相当くらいまであれば諦めもつくのですが、いくら飛行機を中心としたある程度の用途限定カメラ&レンズとは言え、もう少し短いレンズも必要かと思います。
何しろKマウントと違って、現行レンズが山ほどあるFマウントのことですから、単に200mm以下のレンジをカバーするズーム、という条件を設定するだけでも、選択肢が色々ありすぎてなかなか決められずにいました。しかしそろそろF1日本GPも目前に迫ってきましたし、色々割り切って決断することにしました。
手に入れたのはタムロン製の超高倍率ズーム、16-300mm F3.5-6.3 Di II VC PZ MACRO(Model B016)です。フルサイズ換算で24mm相当からスタートする18.8倍ズーム。テレ端は200mmに留まらず300mmまでカバーしており、だいたいのことはこれ一般で済んでしまいそうな超便利ズームレンズです。この手の無茶なレンジを持った高倍率ズームこそ、メジャーマウント&サードパーティ製レンズの醍醐味でもあります。
レンズ選びの経緯
ウジウジと数ヶ月にわたって悩んでいた経緯を全て書くと、とてつもなく長くなるのでできる限り短くまとめておきます。まず大前提はFUJIFILM X-H1一式を手放してマップカメラにポイント貯金してあった8万円弱の原資で賄えることと、焦点距離は200mm以下でなるべく広いレンジをカバーすること、です。
実は、ただレンズが欲しいと思ってるわけではなくて、とりあえず直近でイメージしている使用シーンがちゃんとあります。それはF1日本GPの木曜日に行われるピット&コースウォーク。
昨年までこのイベントではPENTAX K-1にDFA★70-200mmF2.8を主に使っていました。なにしろ画質は超最高だし重さも気にならないのですが、現場にいるともうちょっとレンジがワイド側にもテレ側にも広ければ… と思う瞬間もあります。K-1くらいの画素数があればトリミング前提でテレ側は何とかなりますが、D500は20MピクセルのAPS-Cですから、あまりトリミングに頼りたくはありません。
Nikon 望遠ズームレンズ AF-S DX NIKKOR 55-300mm f/4.5-5.6G ED VR ニコンDXフォーマット専用
- 出版社/メーカー: ニコン
- 発売日: 2010/09/02
- メディア: Camera
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となるとこの辺の望遠ズームが真っ先に頭に浮かぶのですが、これだとワイド端がフルサイズ換算で80mmちょっとなので、やっぱりもの足りません。かなりお安いのでさらに標準ズームを買い足すという手もありますが、それはそれで面倒だしなんかイマイチ面白みに欠ける選択です。
ということで、ここはやはり標準域までカバーする高倍率ズームから選ぶことにしました。F値が暗くなり大三元/小三元クラスのレンズとくらべて、画質がかなり落ちるのは織り込み済みです。とにかくD500の特徴である「どんな場面でも即座にシャッターが切れる」を優先したいと思います。
Nikon 高倍率ズームレンズ AF-S DX NIKKOR 18-140mm f/3.5-5.6G ED VR ニコンDXフォーマット専用
- 出版社/メーカー: ニコン
- 発売日: 2013/08/29
- メディア: Camera
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純正レンズ派の私が第一候補に挙げたのがこれ。ただテレ端がちょっと短いんですよね…。いや、実用上は多分十分なのですが。
Nikon 高倍率ズームレンズ AF-S DX NIKKOR 18-300mm f/3.5-6.3G ED VR ニコンDXフォーマット専用
- 出版社/メーカー: ニコン
- 発売日: 2014/04/24
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ならばこれでしょうか? 18mmスタートの16.7倍ズームはサードパーティ顔負けの便利ズームです。ただ、こいつは最短撮影距離が遠いです。いや、そんな条件挙げてなかったじゃないかと言われてしまいそうですが、標準域をカバーするからには、最短撮影距離は気になります。
ニコン純正には18-200mmというレンズもありますが、ちょっと設計が古そうなのとやはり最短撮影距離が遠すぎます。
SIGMA 高倍率ズームレンズ Contemporary 18-300mm F3.5-6.3 DC MACRO OS HSM ニコン用 APS-C専用 886554
- 出版社/メーカー: シグマ
- 発売日: 2014/10/30
- メディア: エレクトロニクス
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なら純正は諦めてこれにする? このレンズは使用してる人が知人友人にも何人かいて、実力はだいたい確認済み。うーん、でもシグマのレンズはズームもピントリングも、ニコン/ペンタックスとは逆回転だし、発色もあまり好きじゃないんですよね。
TAMRON 高倍率ズームレンズ 16-300mm F3.5-6.3 DiII VC PZD MACRO ニコン用 APS-C専用 B016N
- 出版社/メーカー: タムロン
- 発売日: 2014/04/24
- メディア: エレクトロニクス
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ならばタムロンの超高倍率ズームはどうだっけ?と思って調べてみたら、このレンズを見つけました。テレ端300mmは前二つのレンズと同じとして、なんとこいつはワイド端が16mmじゃないですか! 高倍率ズームではありそうでなかった24mm相当からの便利ズーム! しかも最短撮影距離が40cmを切っています。お値段も他と比べると安いくらい。サイズもコンパクトで良いことづくめ。
ということで、久しぶりのサードパーティ製レンズ、K-7時代以来久々の超高倍率ズームに手を出してみることにしました。
実物を確認する
さっそく手元に届いた実物を見てみましょう。
箱です。まるでリコー製品かと思うような、薄いグレーベースの化粧箱です。
中身はこんな感じ。レンズ本体に前後キャップ、そして専用フードのみとシンプルです。レンズポーチみたいなものは付属しません。基本的に付けっぱなし用のレンズですからね。
外観はこんな感じ。フィルター径は67mmと扱いやすいサイズで、前玉は大きく、後玉は小さいというのはこの手のズームレンズでは標準的です。全長はワイド端で99.5mm。シンプルな円筒状に見えますが、実際はズームリング部がほんの少し絞られています。重量は540gです。
レンズ構成は12群16枚で、特殊ガラスが3種類計4枚、非球面レンズは2種類計4枚使用されており、なかなか豪華な光学系。最短撮影距離は全域で39cmで、最大撮影倍率は1/2.9となっています。この近接の強さが製品名に”MACRO”の文字が含まれている由縁です。
マウント周囲には一応シーリングがしてあって、簡易防滴構造となっているのもポイント高い部分。その効果は未知数ですけど、ちょっとした小雨で雨粒がパラパラと付くくらいは気にすることなさそうです。いずれにしろあまり耐候性という点では無茶しないようにしましょう。
マウント部を良く見ると絞りレバーが見えていますので、いわゆるEタイプ相当の電磁絞りには対応しておらず、機械絞りとなっています。まぁ、使う側にとってはどうでも良いことです。ちなみに絞り羽根は7枚で、2段絞ったところまでは円形を保つとされています。
開放F値は3.5-6.3と大きく変動しますが、各ズーム位置でどのように変化するか、実動作で調べてみました。ファインダー表示を見ながらズームリングを回し、開放F値が変化したところでシャッターを切って、Exifに記録されてるレンズ焦点距離を記録していったものです。ズームリングの操作加減で多少の誤差は含んでると思いますので、参考値としてご覧ください。
開放絞り値 | 焦点距離 |
---|---|
F3.5 | 16mm〜 |
F3.8 | 26mm〜 |
F4.0 | 30mm〜 |
F4.5 | 44mm〜 |
F5.0 | 52mm〜 |
F5.3 | 70mm〜 |
F5.6 | 86mm〜 |
F6.0 | 125mm〜 |
F6.3 | 185mm〜300mm |
まぁ、18倍を超える倍率のズームですから、こんなものでしょう。こういうスペックのレンズですし、出来れば絞りF8くらいまで絞って使いたい感じです。望遠域はそれなりに背景や前景がボケるはずですが、ボケ味とか気にするレンズではありません。
マウント脇には二つのスイッチがあります。一つはAF/MF切替スイッチ。AFは製品名にもあるとおりPZD(Piezo Drive)という静音かつ高速な超音波モーターを搭載しています。また、AFモードでもピントリングを回せばMFすることも可能です。
もう一つのスイッチが手ぶれ補正のON/OFF。タムロンの光学手ぶれ補正はその性能に定評があるので、かなり期待できるはず。なお特にモード切替のようなものはありません。
左がワイド端。この状態でロックすることが出来ます。そして実右がテレ端。2段の鏡胴がここまで伸びてきます。この姿はかなり頼りなく感じますが、少なくとも新品の状態ではまったくガタを感じさせません。
ズームリングも適度に重くしっとりした操作感。特に途中でトルク変動も感じないので操作は上々です。
Nikon D500に取り付けてみると、見た目にも手にした感じもバランスは上々です。大きさ的にもワイド端に固定してる限りは、普通の標準ズームかと思うようなコンパクトさで、まさか300mmまでカバーしてるようには見えません。
AFの動作は非常にスムーズで高速ですが、実際には無音と言うことではなく、カチャカチャとしたギア音のようなものがかすかに聞き取れます。手ぶれ補正も本当に強力で、ファインダーを覗いていると「粘っこさ」を感じるほど。わずかなフレーミング修正がやりづらくて仕方ありません(一応褒めてます^^;)
18.8倍ズームを体感してみる
さっそくD500に取り付けてみたところで、まずはその18.8倍ズームの威力を確認してみましょう。羽田空港の第2ターミナルから駐機中のB777を撮ってみました。
▼ 16mm(フルサイズ換算24mm相当)
▼ 35mm(フルサイズ換算53mm相当)
▼ 70mm(フルサイズ換算105mm相当)
▼ 200mm(フルサイズ換算300mm相当)
▼ 300mm(フルサイズ換算450mm相当)
いやー、すごいですね18.8倍ズームの威力。テレ端にすると、出発準備をしているパイロットがコーヒーを飲んでいるのはもちろん、腕時計の文字盤まで読み取れてしまいます。
ただ、私はそれなりに超望遠域には慣れているので、テレ側の伸びに驚くと言うよりは、ワイド側にズームしていったときに「こんなに画角が広くなるのか!」と、そっちの方が印象深く感じます。
飛行機その他を撮ってみた
まずは望遠レンズ的に使ってみましょう。滑走路上の離着陸シーンはこの通り。APS-Cに300mmのテレ端があれば、羽田空港の展望デッキから撮る分にはまったく不足はありません。手ぶれ補正も横にカメラを振ってることを正しく検知している(=流し撮り検知)ことががよく分かるし、レリーズする瞬間のセンタリング動作も特にこのレベルなら気になりません。AFにも厳しいシーンではないので問題なし。
それなりに綺麗に写っていますが、拡大して隅々を確認すると、やはり高倍率ズームなりの画質だな、ということは隠しようもありません。今回は絞りF8で撮りましたが。ディテールは曖昧でぼんやり滲んでいるし、コントラストの大きいエッジ部に発生する色滲みもかなり目立ちます。まぁ、でも全体的なバランスを考えたら悪くありません。こんなものだと納得出来る範囲です。
こうして見ると一端の超望遠風味です。超望遠で風景撮るのも面白いですよね。
もちろん、こうして標準域で空港の雰囲気を抑えるのもアリ。というか高倍率ズームだから出来ることで、200-500mmではこういうの撮れませんから。
そう言えば羽田空港の展望デッキには、なぜか雀が沢山いるんですよね。人慣れしていて結構近寄ってきます。食べ物狙いでしょうか。じっとこっちを見つめて「なんかくれないの?」と言われてるような気がしました(^^;
暑かったのでしばし室内に避難。第二ターミナルには外に出なくてもガラス張りの室内展望スペース「FLIGHT DECK」があります。写真撮影には向きませんが、見物にはとても良い場所なので結構人気があります。
出発ロビーとか、空港は室内も被写体の宝庫なんですよね。このあたりも超望遠馬レンズだけでは撮れません。
さて空港はこのくらいにして、近所の散歩にも持ち出してみましょう。
綺麗に光芒が出ていますが、あまり逆光には強くなさそうです。これも仕方ないところかと思います。
立派なシロガネヨシ。もうすぐ秋ですね。見てるだけで涼しげです。周囲は結構雑然としたところににょっきり生えていたのですが、これだけズームレンジがあると一部を切り取るのも自由自在。と言ってもまだまだ余裕はあって、これで165mmです。
かと思えばワイド端で写す広い青空! これもまた秋の深い青!
ちなみに、サードパティ製レンズなのでJPEG記録の場合には自動歪曲補正が効かないのですが、RAWで撮ってLightroom Classic CCで現像する場合は、レンズプロファイルを当てることが出来ます。今回撮影したファイルは、すべてRAWで撮ってLightroomで現像したものです。
ちょっと思いついて電車を流し撮り。1/125sec程度ですが、まぁまぁ何とかなります。いえ、あまりこういう方面には使わないのですが、いつでもどこでもやろうと思えば出来るというのは、この手の便利ズームの特権ですね。しかもこれもまだまだ余裕があって185mmくらいです。普段はめったに300mmテレ端を使うことはなさそうです。
やっぱり望遠好きには高倍率ズームは魅力です。24mm相当の広角から、こういうのまで一本でカバーできるのだから、多少の滲みや色収差は何でもありません。ボケ味とかもどうでも良いかも。
ちなみに先日エントリーした、ニコンファンミーティングのレポートの写真も、全てD500にこの16-300mmを付けて撮ったものです。
暗い室内ですが強力な手ぶれ補正のおかげで問題なく撮れていますし、マクロと言うほどではないですが近接撮影も十分にこなします。これまた300mmまで使うことはないのですが、ズームレンジの広さも助かります。
とりあえずFマウントシステムはこれで完成
ということで、ニコンD500用のレンズは、このタムロン16-300mmと、ニッコール200-500mmの2本でとりあえず完成しました… と思っているところです。この2本で16mmから500mmまでをカバーしているのだから、実用性という点では十分です。面白みはあまりないのですが、Fマウント沼にはまるのが怖いので、この辺で踏みとどまりたいというのが裏の気持ちとしてあります。
いずれにしても、今年のF1をこのセットで出かけてみて、どういう結果が得られるか分かりませんが、それ以降のことはまたその時考えたいと思います。
Nikon 望遠ズームレンズ AF-S NIKKOR 200-500mm f/5.6E ED VR
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TAMRON 高倍率ズームレンズ 16-300mm F3.5-6.3 DiII VC PZD MACRO ニコン用 APS-C専用 B016N
- 出版社/メーカー: タムロン
- 発売日: 2014/04/24
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