- 作者: 森村誠一
- 出版社/メーカー: 角川春樹事務所
- 発売日: 2009/11/01
- メディア: 文庫
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先日とあるテレビ番組で、キッザニアの様子をレポートしていました。そこでレポーターがとある親子にインタビューしていたのですが、5歳は超えてないと思われる男の子に「将来何になりたい?」と質問したところ、すかさず大きな声で「新選組!」と叫んでいました。後ろでお父さんはがっくりうなだれて崩れ落ちていました。
その子が何を見て新選組に憧れたのかは分かりませんが、しかし新選組には老若男女問わず多くの人を引きつける何かがあるようです。幕末史に突如出現し、明治維新の行方に大きな影響を及ぼした農民出身の殺人集団。彼らはいったい何だったのでしょうか?
推理小説で有名な森村誠一氏は、時々史実に基づくドキュメンタリータッチの歴史小説を書いています。「忠臣蔵」とか「虹の刺客」とか。今作も一人一人の関係者や、関連する資料を丁寧にひもといて、事実に基づいて再構成された時代小説です。もちろん、小説的脚色はされていますが。
550ページオーバーの文庫本上下巻からなる超長編で、とても読み応えがありました。他の小説で断片的に知っていた幕末史に関する知識がかなり肉付けされた気がします。なるほど、そう言うことだったのか、と。
しかしこの本から読み取れる「幕末史」から感じられたことは、「明治維新とは単なる国内の政治権力争いによるクーデターであり内戦だった」というものです。新しい日本を創るという理想やロマン、大義はほとんど感じられず、結果的に日本の分裂や植民地化は避けられたけれども、その後50余年かけて戦争と破壊へと向かっていく国の基礎が、明治維新ですでに作り出されてしまったのではないか?と思ってしまいました。
そう言う意味で、とてもがっかりする小説だった、とも言えます。
さて冒頭に書いた「新選組の何が人を引きつけるのか?」について、森村誠一氏なりの解釈は以下のように書かれています。
歴史の中で彼らがどんな役目をつとめたのか、歴史のピラミッドの頂点である現在から振り返る者にとっては、すべては「過ぎたこと」である。
むしろ壮大な時代錯誤の中で精いっぱい暴れまくった新選組が、歴史の中で生彩を失わないのは、未来を拒否し、頑なに過去ばかりを見つめていた彼らの一徹さが、新しいものだけを追いかけている高速回転の現代にあって、ふと郷愁を呼ぶからであろうか。郷愁とは過去を振り返るところにあり、過去一途の新選組と通底するものがある
うん、なるほど。「時代錯誤」と「郷愁」。この二つの言葉は新選組を良く表していると思います。
【お気に入り度:★★★☆☆】