- 作者: 米村圭伍
- 出版社/メーカー: 徳間書店
- 発売日: 2011/08/05
- メディア: 文庫
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両国広小路で大人気の孔雀の見せ物小屋でひとりの侍が大騒ぎを起こしていた。風見藩の榊原数馬だ。海棠藩江戸藩邸で、家老の妹・奥田波乃をめぐり、恋のさや当て真っ最中の冷飯食い・一色冬馬と中老の嫡男・鳥羽新之介は数馬にいきさつを聞いた。藩邸で飼っていた白孔雀の血をひく孔雀が盗まれ、探しにきていたという。その孔雀はご上覧予定だった。冬馬と新之介に孔雀探索の命令が…。
独特の軽妙な語り口と、少しぶっ飛んだキャラクターが登場し、時にどぎつい下ネタを連発することで一部に人気の米村圭伍さんの新作文庫書き下ろしです。「ひやめし冬馬四季綴」シリーズは確か最初の一巻目を買って読んだはず。ずいぶん間が空いたようだけど、二巻目が出たんだ… と思ってそのまま中身も確かめずにお買い上げ。今すぐには思い出せないけど、読んでいるうちにどんな話だったか思い出すだろうということで、読み始めました。
果たして読み出してみれば、鳥刺しが得意なとある小藩の武家の次男坊の一色冬馬… という主人公の人物設定は覚えているのですが、それ以外のプロットがまったく思い出せません。なんで江戸にいるんだっけ? この人は誰? あの人は?? といった具合。それでも要所要所に説明は入るし、主要なストーリー自体は独立していて分かりやすくてそれなりに楽しめます。でも、どこまで読んでも以前読んだはずの話が思い出せないのが不思議でなりません。
と思って調べてみれば、私が読んだのは「桜小町」というこのシリーズものの第一巻。なにやら結末に納得がいかなくて憤慨しているようですが、はて何だったっけ?とやっぱり思い出せないのも困ったものですが、それはさておき、その後Amazonを調べてみると、実はこの「桜小町」と、今回読んだ「孔雀茶屋」の間に、第二巻として「ふくら雀」という別の本がすでに発行されていました。
なるほど、今作の背景となる重要な出来事は全てこの第二巻で発生していたようです。となれば仕方がありません。またまた読む順番を間違えてしまったようです。
しかし今回の物語、なかなか面白いお話しでした。タイトルの「孔雀茶屋」というのは、そのまんまで孔雀を見ることのできるお茶屋さん。動物園は無かったと思いますが、海外から連れてきた珍しい動物を見せる見世物小屋や茶屋というのは結構あったのでしょうか。稀少な動物にはお金も絡んでそれだけで騒動の種となるには十分すぎます。
そして他の米村作品と関わりがないかと思われたこのシリーズにも、懐かしい人物が登場したりします。従来同様に滑稽なコメディ調でありながら、消えた孔雀の行方を捜すミステリーでもあり、テンポ良く展開するスピード感のある娯楽小説です。その一方で将軍家を巻き込んだ武家の仕来りや面子や、長屋の貧乏人達の暮らしぶりなどなど、時代小説としてのポイントはしっかり押さえてあって安心して読めます。
【お気に入り度:★★★☆☆】