伊賀流忍者と松尾芭蕉の故郷 伊賀上野城を散歩する

投稿者: | 2017年10月30日

 もうかなり前のことになってしまいましたが、F1日本GPが終わった日曜日はすぐに東京に帰らず、翌日の体育の日はせっかくなので観光してくることにしました。三重県の観光地と言えば伊勢、志摩、鳥羽などなど色々ありますが、やはり私にとってはまずは百名城のあるところが最優先です。

 三重県内の百名城は松阪と伊賀上野の二カ所。一日あればレンタカーで両方とも回ることは出来ますが、今回はF1観戦後で疲れもあると言うことで、半日で伊賀上野城のみ見に行くことにしました。

 伊賀と言えば忍者です。その歴史は織田信長と切っても切れない関係にるそうですが、とりあえず私が知っているのは、徳川家康の「伊賀越え」と「服部半蔵」の活躍です。そしてそこから着想を得たと思われる「忍者ハットリくん」も我々世代には忘れられません。

 さらに江戸時代の旅人にして俳人としても有名な松尾芭蕉は、かの有名な「奥の細道」の旅に出るまで、江戸は深川の隅田川沿いに住んでいました。なので、私の暮らす地元には芭蕉庵の跡地に博物館があるなど、とても松尾芭蕉に馴染みが深いのですが、実は彼の出身地は江戸ではなくてこの伊賀上野です。健脚で全国を旅して歩いたことも含め、芭蕉は忍者だった説もあるほど。

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 そんな数々の忍者伝説を生んだ伊賀上野はどんなところなのでしょうか? 近鉄白子駅前でレンタカーを借り、一路三重県の内陸部を目指します。

忍者がお出迎え

 亀山から名阪国道を奈良方面へしばらく走っていくと、伊賀上野の市街地に到着します。鉄道の場合は関西本線の伊賀上野駅から伊賀鉄道(ってのがあるんですね)に乗ると、城跡のすぐ近くまで行けるので、車だけでなく鉄道でのアクセスも便利です。そして全国の多くの城跡がそうであるように、伊賀上野城も市役所のすぐ横にありました。

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 駐車場のすぐそばにあった「だんじり会館」にはこんな車が停まっていました。なにこれカッコイイ(^^)

 この車が停まっていたのは、伊賀上野城を中心に整備された上野公園入り口のすぐそばにある「だんじり会館」という施設の前です。「だんじり」と言えば大阪の岸和田のだんじりを思い浮かべますが、この伊賀上野市にも古くから伝わる「だんじり祭り」があるそうで、ここはその博物館になっています。天守閣と忍者博物館にも入れるセット券をここで買うのがお得です。

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 で、この「だんじり会館」には多くの家族連れが押しかけて列を作っていたのですが、その目当ては実は「だんじり」ではなくて↑これ。忍者コスプレの貸衣装屋がこのだんじり会館内にあるのです。特に子ども達には大人気で、大人用の忍者衣装ももちろんあるのですが、一家揃って忍者コスプレするという家族はあまりいませんでしたが、ただし、大人だけのグループでもボチボチ着替えてる人達はいました。いえいえ、私は見るだけにしておきます。

 なのでこの先、伊賀上野城や忍者博物館に行くと、従業員だかなんだか分からないくらいたくさんの忍者に出会うことになります。

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 さて、早速伊賀上野城の天守閣へ行ってみましょう。公園内は城跡らしく苔むした石垣と深い森に囲まれて良い雰囲気です。そして早速忍者が歩いていますw

松尾芭蕉生誕300年を記念の俳聖殿

 気持ちの良い散歩道を進んでいくと、天守閣へ出る前に何やら変わった建物が目の間wに現れました。

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 それはこんな姿をしています。一見してすごく古いものではないなと思ったのですが、それもそのはず、これは松尾芭蕉生誕300年を記念を記念して建立された俳聖殿という建物で、昭和17年に建てられたものだとか。丸い屋根が特徴的ですが、この形は笠を被った芭蕉の旅姿を模したものだそうです。国の重要文化財に指定されています。

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 そのすぐ近くにはこんな良い感じの門もありました。周囲の壁は途切れており、門としての役目は既に果たしていないようですが、特に説明書きがなく、どんな由緒のある(のかないのか?)門なのか分かりませんでした。恐らく俳聖殿に関わるものだと思われます。

現在の伊賀上野城は模擬天守

 さて、先へ進みましょう。

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 俳聖殿からさらに天守方面を目指します。さすがに城ですから高い位置に立てられたと見え、地味に上り坂が続きます。

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 ということで、ようやく天守全体が見渡せる広場にやってきました。立派な三層の天守が聳えています。その前の広場にはきっと本丸があったのでしょう。

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 石垣のまわりはぐるっと桜の木が植えられています。ここもまた春は綺麗なお花見ポイントなんでしょうね。石垣マニアには石垣がよく見えないと不評かも知れませんが。それはさておき、階段を登って中に入ってみます。

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 中はこんな感じでいろいろな展示物が並んでいます。撮影禁止の表示は見当たらなかったので、シャッター切ってきました。

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 うわぁ、襖が顔ハメになってるwww… と思ったらその上の柱には怪しい人がいます。ほほぅ、この城にはセキュリティ上の問題がありそうです。

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 鎧や兜などが並んだ展示ケースの上にも怪しい人影が… いや、どんなところにでも入り込む忍者がすごいのか。というか、すごい目立っていてバレバレですけど。

 ということで、城跡というとその地域を治めた武家の歴史が展示された硬派な博物館になってることが多いですが、伊賀上野城は全体的にエンターテイメントに振れてるような感じです。これはこれで面白いです。

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 で、そんな中にも忍者コスプレした人がウロウロしていると…

 なお、天守の中を見物してて気になったのは、この建物が木造であることです。江戸時代以前の現役当時のまま残る現存天守は姫路城始め12城ありますが、ここ伊賀上野城はそれには含まれていません。昭和初期に建てられた大阪城始め、昭和30年代に各地で再建された城は、当時のいろいろな事情から全てコンクリート製です。そして平成になってからは櫓や長屋の再建に当たって、現役当時の建築様式を再現した木造が増えてきていますが、現時点で天守が木造再建された例はなく、恐らく白河小峰城の三重櫓が最大の建物だと思われます。

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 ではこの伊賀上野城は何なのか? と言えば、これは昭和初期に地元の国会議員が私財を投じて建てた模擬天守なのだそうです。藤堂高虎が関ヶ原の後に建てた5層の巨大な天守は、すでに幕末の地震で倒壊して失われています。現在の天守はそれとは全く関係なく、時代考証されて再現されたものでも何でもないので、正確には「伊賀文化産業城」と呼ばれているそうです。

 熱海城と同じ… は言い過ぎかも知れませんが、そんな成り立ちの城も時代を経て歴史を積み重ねれば立派な文化財となっていきます。ですから、これはこれで良いのではないでしょうか。

 なので歴史遺構を見るという観点で言うと、伊賀上野城見物のハイライトはこの天守ではなく、城郭の西側に残る内堀と高石垣です。その高さは30mほどあって、大阪城の石垣にも匹敵すると言われている巨大なものだそうです。石垣マニアならば是非見ておくべきところではありますが… なんとそれよりも気になるものがあるのと疲労が溜まっていることもあって、なんと高石垣はパスしてしまうと言う、城ファンにあるまじき行動を取ってしまいました。(また2周目する時に来ます!)

忍者博物館

 で、高石垣よりも見たかったものは何かと言えば、忍者博物館です。これも城址公園内にあります。やっぱり伊賀上野と言えば忍者ですよねぇ。

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 この建物は現役時代のまま残っていた伊賀流忍者屋敷を移築したものだそうです。噂に聞いていた、というかテレビで見たことしかない様々な仕掛けが実在した証となっています。何気ないこの和室だって、なんか良く見るといろいろ不思議な感じがします。左右の襖はどうなってるの? 右の斜めの壁は何? みたいな。

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 屋内になるそういった様々なしかけは全て現役の忍者(自称)が説明してくれました。浦安のテーマパーク並に迫真の演技です。

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 子ども達は興味津々で真剣に聞いていますが、これが結構子供だましではなく、大人達もグイッと引き込まれていきます。説明のお兄さんは急に隠れたり、と思ったらあらぬところから出てきたり、なかなか面白いショーです。

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 例えばこれ。隠し戸というほど隠れていませんが、だからと言ってこの戸を開けるのは一工夫が要るのです。何気なく足下に落ちている葉っぱがヒント。そんなことは露知らず、ここを通れると思ってやってきた敵は、この袋小路に追い詰められてしまうことになるとか。

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 襖の敷居が外れ壺やら短刀やら色んなものが出てきます。最後は床から飛び出してきた短刀(のおもちゃ)をいきなり目の前に突きつけられた男の子が、仕込みじゃないかと思うくらい見事な悲鳴を上げるという落ちが付いて、忍者屋敷ツアーは終了。うん、これは伊賀上野に訪れた人はみんな一度見ておくべき、と思いました。

 そのほか、本当にいた忍者にまつわる様々な資料が展示されていて、なかなか面白い博物館でした。忍者は外国人にとても人気があると聞いたことがありますが、ここ忍者博物館はまだあまり知られていないのか、観光客は全て日本人のようでした。インバウンド効果が及んできたら大変なことになるんじゃないかと思います。

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 ということで、いろいろと端折ってしまった半日遠足でしたが、百名城スタンプをしっかりゲットできたので満足です。これで18個目です。今年中に20個まで集めたいと思っているところです。

日本100名城に行こう 公式スタンプ帳つき

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