太平洋戦争で失われた名城:広島から福山へ城跡を巡る

投稿者: | 2016年8月30日

 もうすぐ終わってしまうはずの夏を惜しんで(ウソです。早く終わって欲しいです^^;)2泊3日の旅に出かけてきました。というか8月下旬は毎年「焼肉の日(=8月29日)」を祝う宴会が神戸で行われるので、それに出席することが一番の目的なのですが、せっかく関西へ行くならということで、宴会が行われる夜以外は神戸を中心に近隣各地を観光して回ることにしています。

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 出発は平日の金曜日。早朝に羽田発の飛行機に乗ってまずは一気に広島へ飛びました。今年のテーマはずばり「城巡り」です。広島城と福山城がこの日のターゲット。そして広島へ来たからには原爆ドームも見てきました。

広島城

 広島空港についたらすぐにバスに乗って広島駅へ。広島市街の中心部は路面電車が縦横に走っているのでそれを利用してまずは広島城へ。と、言っても微妙に路面電車では不便な場所にあって、1号線から9号線に乗り換えて裁判所前をテクテク歩いていきました。さっそく暑いです。

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 ということで、広島城へ到着。東側の堀を渡り裏御門跡から入りましょう。東京はグズグズしたお天気でしたが、広島は快晴で猛暑です。この中歩き回るのはつらいかも…。

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 まっすぐ進んでいくとなにやら礎石の遺構が。本丸跡か何かかと思えば、なんと明治時代にこの地に設置された日本軍の大本営跡だそうです。なんだ…。 とがっかりしつつ、このフォントを選んだセンスはどうしたことでしょう?

 というか、明治から昭和初期にかけては、全国の城址の多くが軍の施設になっていました。城とはすなわち軍事施設ですから正しい跡地利用ではあります。しかしそのせいもあって多くの城址は破壊されつくしたわけです。

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 さらに進んでいくと天守が次第に見えてきます。広島城の天守は現在の公園で言うと北西の隅っこ、堀沿いにあります。そしてそのすぐそばに、オリジナルの礎石が移設されていました。

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 天守閣へやってきました。現在の天守は三代目で、昭和33年に建てられたもの。この時代の再建天守はすべて鉄筋コンクリート造りです。

 広島城の歴史はざっとWikipediaを読むだけでも波乱万丈です。もともとは豊臣秀吉時代に中国地方の雄、関が原で西軍総大将に担がれた毛利輝元が築城し、その後徳川の時代に入って福島正則が代わりに主となります。ちょうど今年の大河ドラマで盛り上がっているあたりの時代です。

 が、福島時代も長くは続かず、まさにこの広島城の整備普請を巡って徳川幕府と対立し、広島を追われてしまいます。その後新たにこの城の主となったのが浅野長晟。以後明治維新まで広島は浅野家が支配します。

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 維新後も紆余曲折がありつつも広島城の天守は国宝に指定され保存されてていましたが、昭和20年8月6日朝に一瞬にして倒壊しました。もちろんあの原爆によってです。コンクリート造りの原爆ドームは残骸が残りましたが、爆心地から1kmにあった木造の広島城はひとたまりもありません。

 その後仮造りの二代目天守が一瞬建てられたそうですが、上記のとおり改めてコンクリートで作り直されたのが現在の三代目。

 石垣は爆風にも熱線にも耐えて、ほとんどが残っていたそうです。

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 さて、そのまま南へと歩き、二の丸跡へやってきました。堀の中に出島のようになっている一角。ここには平成6年に木造で復元された櫓や門があります。

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 中を見学することができます。壁には再建時の様子を説明したパネルがかかっていたり、鯱の復元品や出土した瓦などが所狭しと並んでいて、雑然とした感じ。展示品はどこかにまとめて、建物内はシンプルにしたほうが良いのに。

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 太鼓櫓の中。中も忠実に再現されています。照明も最低限に留めてあって中はかなり薄暗いです(写真は明るく写ってますが、実際はかなり薄暗いです)。こっちは模型がドンとおいてありましたが、なかなかいい雰囲気でした。

原爆ドーム~平和記念公園

 広島城の二の丸を出て南へ向かいます。この辺りには路面電車は走ってないのでこのまま歩きましょう。約1kmくらい行けば平和記念公園があります。広島を訪れたら、ここは立ち寄らざるを得ません。

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 公園に入る前にそのすぐ脇に最近完成したばかりの「おりづるタワー」へ。7月からプレオープンしていますが、グランドオープンは9月だそうです。

 行ってみたかったのは13階にあるこの展望台。木造風で屋根があるもののガラス張りではなく三方が吹き抜けています。猛暑の中歩いてきて汗だくだったのでしばし涼みました。カフェバーもあってアイスカフェラテを飲みながら休憩です。

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 この展望台からは眼下に原爆ドームと平和記念公園、広島の街を見下ろすことができます。いままでなかった景色ですね。今後ここは原爆ドーム見学の定番スポットになるのではないかと思います。入場料が結構高いのですが、その価値があるかどうかは人によって違うかも。私的には気に入りました。

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 12階はガラス張りでエアコンが効いた展望フロア。この一角に「グランド・ゼロ」と表示されたコーナーがあります。そのものずばり、爆心地を望むことができる場所。説明板によれば、この写真で窓の外にボケて写っている青いビルの手前あたり上空が爆心地だそうです。今は普通にビルが建ち並んでいます。

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 さて、十分涼んだところで散歩再開。原爆ドームの真下まで行ってみましょう。

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 広島を訪れて原爆ドームを見るのは実はこれが2回目。世界的にも有名すぎて、原爆ドームについては写真も物語りもあちこちに溢れていますが、実物を間近に見るとやはりいろいろ感じるものがあります。

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 平和記念資料館も見てきました。爆心地から2.75kmの範囲の被害状況を再現したジオラマです。原爆ドーム含めコンクリート造りの建物はポツポツと原型をとどめています。手前の四角い堀に囲まれた部分が広島城。この通り何もかも消えてしまったことが分かります。

 展示物はこういったものに限らず、何とも言葉にも出来ない、写真も撮れないようなものが溢れていて、分かっていたつもりでもショックを受けます。

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 その後慰霊碑にお参りしてきました。なるほど、ここでオバマ大統領は演説したのか、と。その内容にはいまだ賛否がありますが、ここを訪れて何も感じない人はいないと思います。立場上言えること言えないことはあるとして、心の中に一人の人間として思ったことはあるだろうと信じています。

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 さて再び路面電車に乗って広島駅へ戻りましょう。広島は他にも見所や食べ処が山ほどあるはずですが、今回は城巡りが目的で時間がありません。本当は宮島も行きたかったのですがそれもまた次回!

 ちなみに広島の路面電車は関西系のICカードは使えますが、関東系のSUICAとPASMOは使えません。なので今回は一日乗車券を買って乗りましたが、トータルで赤字だったと思います。ただ、小銭を用意したりせず気軽に乗れるので、旅行者には便利です。

福山城

 広島駅に戻るとお昼を過ぎていました。ここから新幹線に乗りますが、まだ神戸には向いません。その前に福山で途中下車しました。

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 目的はもちろん城。福山城は福山駅のすぐ目の前にあります。駅を出たらすぐお城。素晴らし立地です。が、堀はほとんど埋められてしまっています。しかし、はるかに見上げる高い石垣は健在です。

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 新幹線上りのホームから真正面にお城が見えますが、その一角に何気に見える伏見櫓は、京都南部にあった伏見城から移築されたもので、オリジナルのまま失われずに残っている建物です。全国的に見ても城郭を構成する建造物としては最古の部類だそうです。ただし移築元の伏見城とは豊臣秀吉が晩年をすごした時代のものではなく、そのあとに徳川が再建したものです。

 伏見櫓は近づくと逆に良く見えなくなってしまいますが、新幹線ホームから眺めるのが一番よく見えるかと思います。

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 伏見櫓に向かって長い階段を上っていくと、ちょっとした枡形があって筋鉄御門があります。これも築城当時から現存するものだとか。城は天守ばかりではありません。こうして一部でも建物が残ってるのは素晴らしいことです。

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 門をくぐって本丸跡の広場へ。正面に天守がありますが、これはコンクリート製の復元天守。福山城も昭和20年までは天守が現存しており国宝に指定され保護されていましたが、広島への原爆投下から2日後、8月8日の空襲で消失してしまいました。

 山陽道沿いに並ぶ、広島、福山、岡山の貴重な三城はいずれも戦争末期の空襲で消失してしまいました。他にも有名なところでは名古屋城なども戦争で失われています。本当に残念ですし腹立たしいことです。ですが、太平洋戦争以上に戦国時代以降の城郭の多くが失われたのは、実は明治時代だったりします。それについてはまた別途。

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 閑話休題。天守の中は博物館になっています。福山城自体は戦国時代ではなく江戸時代になって築城された比較的新しいもので、平和な時代を過ごしてきた不戦の城です。福島正則の改易のあと、水野勝成によって建てられました。

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 天守展望台からは遠くまで見通せます。この日は特に天気が良かったので瀬戸内海まで良く見えました。恐らく天然の小さな山を利用した城郭かと思いますが、ビルなんかない時代は本当に眺めが良かったのだろうと思います。

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 なにやら城跡には似つかわしくない風流な建物がありました。これは「湯殿」だそうでオリジナルはやはり伏見城から移築されたものだそうです。オリジナルはやはり消失しているので、今あるのは再建したもの。これはちゃんと木造で造ってあるっぽいですが、見られるのは外観のみです。

百名城スタンプラリー 71 & 73をゲット!

 今年になってから百名城スタンプラリーをやってます。記念すべき一個目は一番近い江戸城に行きました。そのまま数ヶ月放置してしまいましたが、忘れていたわけではありません。近場はいつでも行けると思って、かえって行かないんですよね。

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 ということで、今回広島県内の二城のスタンプをゲットしました。広島城のスタンプは通常は仕舞ってあって、言うと出してくれる状態で管理されていました。試し押し用の紙もくれたり、広島城は73番です!と教えてくれたりしてとても親切。

 福山城のスタンプは普通に誰でもいつでも押せる場所に置いてあったのえすが、強く押しすぎたのかインクがたっぷりで、潰れてしまいました。ま、かろうじて字は読めるからいいか。100回もスタンプを完璧に押すのは難しそうですね。試し押し用の捨て紙を持ち歩いた方がよさそうです。

 あと、百名城スタンプ以外に、オリジナルのスタンプが数種類置いてあることが多くて、間違えないようにしなくてはなりません。

旅は続く

 さて、山陽道沿いの瀬戸内海沿岸には他にもたくさんお城がありますが、今日のところはここまで。福山から再び新幹線に乗って新神戸を目指します。(続く)