読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

酔人日月抄

東京下町に暮らす写真とPENTAXとスキーと時代小説とお酒とプジョーを愛するある男の日常

スタートダッシュの重要性:F1 2016 第3戦 中国GP

F1

 今シーズンは過去最大の全21戦が予定されるとともに、カレンダーも一部変更され、いつも開幕直後に行われていたマレーシアGPが秋に移され、逆に秋に行われていたロシアGPが春に移されました。アジアツアーは秋に統一されているなかで、上海で行われる中国GPだけが相変わらず春のこの時期に取り残されています。

 さて、ぐるぐると渦を巻いたかのような特徴的なレイアウトをもつ上海のコースは、タイヤに厳しいことでも有名です。ラップタイムも1分40秒を超える長さであり、新予選方式との相性はかなり悪いと思われていましたが、それを確認することは結局ありませんでした。

 二転三転した新予選方式に関する話し合いは(一応の)決着を見たらしく、今回の中国GPから旧予選方式に戻されることになりました。セッションの最初のほうは様子見をするドライバーが多いという問題は残ったものの、終了間際に次々にタイムが更新されて、めまぐるしく順位が入れ替わるスリルは戻ってきました。やはりこれが正しい予選の風景だと思います。

 特にQ3の最後、圧倒的なタイムを早々にたたき出したロズベルグに対し、フェラーリの2台がどこまで迫れるか?に注目が集まる中で、伏兵(でもないですが)リカルドが横からフロントロウを攫っていく... という予想外の展開に、予選はやはりこうでなくっちゃ!と思わせるに十分な内容だったと思います。

「今日ほどよいバランスのマシンに乗ったことはない」 ニコ・ロズベルグ

 最終的には「ポール to ウィン」となりましたが、全周回を完全制圧したわけではなく、今回もまたスタートで出遅れ、オープニングラップから数周はリカルドを追いかける展開となりました。ただ、メルセデスとレッドブルのスピード差は歴然で、長いバックストレートですぐにトップを奪い返します。

 不利に働いたはずのセーフティカー導入も難なく乗り越え、あとはひたすらトップを独走。2位以下では激しいバトルが繰り返される中、一人何も起きずにただひたすらマシンをチェッカーまで運ぶだけのレースとなりました。

 テレビの解説者の言葉によれば、予選では久々にロズベルグの本気のアタックが見られたが、レースでは今回もまた本気は見られなかった、とのこと。なるほど、確かにそうかもしれません。

 これで昨シーズンから6連勝、今シーズンは開幕から3連勝となりました。過去、開幕で連勝を重ねたドライバーはほぼ確実にチャンピオンを手中に収めています。レッドブル時代のベッテル然り、ブラウンGP時代のバトン然り、その前に遡れば、シューマッハやハッキネン、セナやマンセルなどなど、最初から勝ちまくって逃げ切ったチャンピオン達に思い当たります。

 一方でもちろん、後半戦に大逆転したチャンピオンもいます。ベッテルの初タイトルやライコネンなどもそうでした。

 結局のところ、3連勝してもなおロズベルグがこのまま今シーズンを制圧する、と信じているファンは多くないようです。彼が今後乗り越えなくてはならない試練は、ハミルトンが完全復活し、本気のトップ争いをせざるを得なくなったときに訪れます。

「追い上げながらかなり楽しいバトルをした」 ルイス・ハミルトン

 ディフェンディング・チャンピオンであるハミルトンにとって、この開幕3戦は散々な結果となっています。その中でも今回の中国GPはワーストだったといえるでしょう。マシントラブルにより予選を走れず、最後尾からスタートしたら、クラッシュに巻き込まれてマシンにダメージを負ってしまい、踏んだり蹴ったりの展開です。

 それでもメルセデスと彼自身の底力でなんとか7位まで追い上げ、ポイントを取ることは出来ました。下位チームをオーバーテイクしまくったのは事実ですが、ウィリアムズあたりになるとそれもままならない上に、終盤には同じような境遇に陥ったライコネンに前に行かれてしまうなど、レース内容には相当ストレスがたまったはずです。

 それでも以前とは違って無線で「もうリタイアしよう」と言いだすこともなく、レース後に猛烈な不機嫌さを見せることもなく、前向きなコメントを残すあたりの大人ぶりはいったいどうしたことでしょう。

 まさか今シーズンを諦めてるはずはありませんが、まだまだロズベルグごときはひっくり返せるという、余裕なのでしょうか?

「1周目に起きたことは結局レーシング・インシデントだ」 セバスチャン・ベッテル

 ポールポジションどころかフロントロウも取れなかったフェラーリ勢には苦難のレースとなりました。そのハイライトはなんと言ってもスタート。上海独特の右へ回り込んでいくコーナーに一気になだれ込んでいくスタート直後は、接触事故が起こらない方が不思議と言えるような状態になります。

 そこで真っ先に被害を受けたのがフェラーリの2台。イン側に飛び込んできたクピアトに驚いたベッテルは、アウト側から切り込んできたライコネンと接触してしまいます。フェラーリの2台はマシンを壊し、順位も落とし、レース戦略が大きく崩れます。被害の大きかったライコネンも不幸中の幸いでリタイアせずに済みました。

 ベッテルはこの接触に焦って心乱されたのか、レース中から無線を通じてずっとクピアトを非難していましたが、結局はレーシングアクシデントだったことを認めたようです。確かにクピアトはオーバースピード気味ではありましたが、ベッテルはライコネンのことばかり気にしていて、イン側を見ていなかったのだろうと思います。そして同じように、オーバースピード気味で1コーナーに突っ込んでしまったライコネンは、不用意にイン側にに切り込みすぎたようにも思います。

 それでもフェラーリの2台は最大限のリカバリーをし、ベッテルは2位、ライコネンはハミルトン同様にほとんど最下位まで落ちてしまったところから、最後は5位まで挽回することができました。今シーズン初めて2台揃ってポイントを取れたことで、皮肉なことにチームとしてはこの開幕3戦で一番良い結果を得たことになります。

 彼らの予定通りにレースが進んでいたら、ロズベルグを本気にさせることが出来たかどうかは分かりませんが、もう少しレースの様相は変わっていただろうと思います。こう言っては何ですが、フェラーリのドタバタのおかげで、今回のレースは面白くなったのだと思います。

次回はロシアGP

 と言うことで、冒頭にも書いたように次戦はいきなりロシアGPです。昨年までは鈴鹿の後に行われていたレースですが、今年はこの時期の開催となります。タイヤ戦略の幅が少ないコースですが、その分各チーム、各マシンのレースペースの差が如実に見えてくるかもしれません。