酔人日月抄

東京下町に暮らす写真とPENTAXとスキーと時代小説とお酒とプジョーを愛するある男の日常

K-3のインターバル合成機能を使って東京の星空を撮る

 先日東京駅丸の内口の夜景を撮っていた時に、初めて多重露光を試してみたのですが、その際にK-3には多重露光に関わる様々な機能が搭載されていることを今更ながら発見しました。多重露出やインターバル撮影は珍しい機能でも手法でもありませんが、普通は滅多に使うものでもありません。K-3はその辺りを一歩進めて色々面白い機能が搭載されており、ちょっと使ってみたくなりました。

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 中でも特に気になったのが「インターバル合成」というモード。これはペンタックスのカメラではK-3で新たにサポートされた隠れた新機能です。この機能があるのを発見して、ピンとひらめきました。これはもしかしたら「東京でも星を写す」ことができるはずだ!と。

インターバル合成機能を設定してみる

 PENTAX K-3のインターバル合成機能はドライブモード一覧からアクセスします。ドライブモードと言えば、一コマ撮影、連写連続撮影、セルフタイマー、露出ブラケットくらいは時々使いますが、それ以外にもこのメニュー一覧には、ミラーアップ、多重露光、インターバル撮影など多くの機能が並んでいます。

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 「多重露光」と「インターバル撮影」はK-5でもできましたが、K-3ではこの二つの機能を足し合わせた「インターバル合成」という新しいモードが追加されています。これはインターバル撮影をしながら、画像をカメラ内で自動的に合成してくれる機能です。しかも合成方法は「加算」、「平均」に加えて「比較明」が選べるようになっています。

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 合成方法の「比較明」とは「比較明合成」のこと。以下は私の理解ですがその辺を説明してみます。

 「加算」は単純に各画素データごとに加算していく方法で、最も単純で簡単ですが、合成によって明るさがどんどん上がっていってしまいます。10%ダークグレーも10回加算すれば100%全白になってしまいます。簡単ではありますが数枚の合成までしか使えません。

 次に「平均」各画素ごとに平均値をとっていく方法。明るさが変わらない10%グレーは何回重ねても10%グレーですが、そこに90%ライトグレーが表れても、間を取って50%グレーになると。単純加算のように明るさが上がり続けることはありませんが、合成を重ねるほどコントラストが下がっていくのではないかと思います。

 そして肝心の「比較明合成」は、合成する画像の各画素ごとに、輝度の高い方のデータを採用するというもの。合成を重ねていくうちに輝点だけがどんどん加算され残っていくことになります。この機能を使うと東京のような都会の中でも、街の夜景と共に星の軌跡を写すことができるのです。

 というアイディアは「特別企画:今年の冬こそ星空写真に挑戦! - デジカメ Watch Watch」という記事を読んで勉強しました。インターバル撮影ができれば、とにかく素材となる写真を撮っておいて、比較明合成の作業はPhotoshopなどで後処理することもできます。ですが、それをカメラ内で自動でやってくれるならこんな楽なことはありません。

 ということで、以下、K-3の「インターバル合成」のその他設定項目を見ていきましょう。

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 「開始トリガー」は「即時」と「時刻指定」が選べます。「即時」はシャッターを押したらすぐに撮影開始されます。「時刻指定」は設定時刻が来たら自動的に撮影が始まります。もちろん普通は「即時」で問題ないわけですが、一枚目のブレを抑えるためにはボディのシャッターボタンはあまり使いたくありません。しかし、残念ながら「インターバル合成」モードでは、FLUカードによるリモート撮影も、赤外線リモコンも使えませんでした。ケーブルレリーズがあった方が良いと思います。

スクリーンショット 2014-12-27 21.24.06.jpg
 「途中経過保存」にチェックを入れておくと、シャッターが切れるごとにその時点での合成画像が、それぞれSDカード上に保存されるようになります。つまり、100枚合成に設定した場合、100回シャッターが切れると共に合計100枚の画像が保存されます。撮影後Lightroomに取り込んでサムネイルを見ると上のスクリーンショットみたいなことになります。

 ここで、例えば50枚目の画像は50回目に撮影された生画像ではなく、1〜50枚目を合成した結果の画像です。なので、別途後処理合成も試してみる、ということはできません。しかし、撮影の最後の方で意図しないものが映り込んでしまった場合など、最悪でもその直前までの結果が得られるようになります。SDカードとHDDを激しく消費しますが、保険の意味でONしておくことにしました。

 ちなみに、基本設定とも言える「撮影間隔」と「撮影枚数」ですが、「撮影間隔」の設定にはちょっと注意が必要です。というのは、この時間は露光時間、処理時間、カードへの書き込み時間を含んでいるということ。シャッタースピードを5秒に設定したら、5秒の露光時間にその他の処理時間を含め、およそ6秒以上に設定しないといけません。「撮影間隔」の設定可能範囲は2秒〜24時間、「撮影枚数」の設定可能範囲は2枚〜2000枚まで。インターバル合成には十分だと思われます。

実際にやってみた設定

 ということで、以下に今回私が試行錯誤してとりあえずやってみた設定を書いておきます。ちなみレンズはHD DA20-40mmF2.8-4 Limitedを使いました。レンズはワイドの方が良いので迷ったのですが、明るくて最新の設計で扱いやすいということで、このレンズにしました。

設定項目 内容
露出モード マニュアル
シャッター速度 0.8秒〜2.5秒(明るさに応じて。地上の風景に対しややオーバー目に。もちろん、場所と時間帯、レンズなどによる)
絞り F2.8というか開放(暗い星まで写すには有効口径を稼いだ方が良いような気がしたため。点像記録ではないので収差は目をつぶる)
ISO感度 400〜1600(なるべく暗い星まで記録するためにやや高めに)
ホワイトバランス とりあえずAUTO
記録フォーマット とりあえずJPEG(RAWも設定可能。合成後のRAWとは?)
フォーカス マニュアル(ライブビューでしっかり合わせておく)
レンズ補正 すべてOFF
手ぶれ補正 OFF(三脚に乗せるので不要というか合成するためには動いたら困る)
ノイズリダクション すべてOFF(星を消さないように)
撮影間隔 3〜5秒
撮影回数 100〜500回

 本来間違ってる部分もあるかもしれませんが、とりあえず今回はこんな設定にしました。「補正」と名の付くものは、何となく悪さをすることがあるような気がしたのですべてOFFしてあります。ノイズリダクションも星を記録するには良くなさそうなのでOFF。その一方でISO感度を高めにしていますが、比較明合成でも合成する過程で実質的に時間方向のノイズリダクション効果が得られるので、ノイズの問題はありません。ただ、あまり感度を高くし過ぎて、合成元画像の質が下がったらそれはそれでダメと思われます。

 ガチの星空写真はピント合わせが難問と聞きますが、都会の風景入りなら無限遠のハッキリした目標物には困らないので、ピント合わせはかなり楽です。AFで合わせておいてそのままMFに切り替えるもよし。一応最終的にライブビューで拡大してピント確認しました。最近のAFレンズは本当にオーバーインフまで回るんですよね。

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 ということで、とにかくやって見ましょう。私の持ってる三脚は携帯性重視でやや心許ないやつなのですが、風もない穏やかな日だったので、何とかなりました。擬似的ではありますが、かなりの長時間露光になるので本当はしっかりした三脚が必要です。ストラップはブレの原因になりそうなので脚に結びつけました。何なら外してしまった方が良いかも。

東京スカイツリー


 さて、既にトップ画像で結果の一部をお見せしていますが、以下改めて撮影結果です。幸いこの12月後半は月齢がかなり若い(月の影響が少ない)上に、東京では良く晴れた日が続いています。せっかくなので東京らしいものを地上の風景として入れたいわけですが、私の場合、当然のように東京スカイツリーを選びました。近いし格好いいですよね。

 撮影場所は浅草の隅田川護岸。東武線の鉄橋の脇で、墨田区役所やアサヒビールのビルをフレームに入れず、シンプルにスカイツリーだけ撮ってみることにしました。方角的には東を向いています。東京の明るい夜空ではあまり目立った星は見当たりませんが、何とかなるでしょう。

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 まずは最初の一枚目です。つまりは未合成のリアルな写真。こんな感じの写真を500枚撮ってすべて比較明合成することになります。シャッター速度は0.8秒、ワイド端絞り開放でISO800です。撮影間隔は3秒に設定し、枚数は500枚です。星はほとんど写ってるようには見えません...。

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 ですが100枚も経過するとこんなになります。星の軌跡もちゃんと記録されてます。これでもう十分かも!

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 200枚経過。空とスカイツリーは良いのですが、隅田川の川面が大変なことになってきました。川の上は暗いようでいて、船が時々通りますし、街灯りをキラキラ反射するので、比較明合成でも合成を重ねていくと、一面光の海になってきます。

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 300枚合成。合成を重ねても星が増えていくことはありません。線が伸びていくだけです。もちろん、点では見えなかった星が線になることで見えてきます。

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 400枚になりました。川面だけでなく東武の鉄橋も首都高も光の筋で埋め尽くされます。そして真ん中を横切ってる赤い点線はヘリコプターと思われます。

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 そして設定した500枚に達しました。3秒×500枚で25分です。思ったよりも星は動くものですね。そしてヘリコプターの軌跡がさらに増えています。

 ちなみに良く拡大してみると、星の軌跡は点線とまでは行きませんが、滑らかではありません。この辺りはシャッター速度と撮影間隔を色々微調整する余地があると思います。そして、最初のシャッターは手でそっと押したのですが、やはりそのときにブレてしまっているようです。レリーズ必須です...。

 その他、スカイツリーや鉄橋などは動かず、あまり明るさも変わっていないはずですが、合成を重ねるうちに塗りつぶされてしまい、質感などは全くありません。HDRもそうですが、なんだかウソっぽい感じになっています。なるほど、こういうことになるのか...

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 そしてもう一枚。少し場所を移して吾妻橋の袂へやってきました。アサヒビールのビルなども入れて魚眼で撮ってみました。シャッター速度は1秒、絞りはF4、ISO1600に上げてみました。同じく3秒間隔で500枚の合成です。

 こっちの方が面白いことになるかと期待したのですが... 思ったほどでもありません。写ってる星の数が減ってしまったように思います。レンズ選びも色々向き、不向きがありそうですね。こうなると逆に少し望遠気味でアップにしたスカイツリーの背後に星の軌跡、なんていうほうが面白かったかも。適当に選んだHD DA20-40mmはちょうど絶妙なレンズだったかもしれません。

東京ゲートブリッジ


 味を占めてもう一カ所行ってみました。というか、本当のところは先にゲートブリッジで撮ったのでした。なので、こっちの方が色々試行錯誤中のものです。

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 まずは普通にに撮ってみた一枚。普通に綺麗ですね。ただ星を写すにはまだ少し明るいので、もう少し暗くなるのを待ちつつ、露出値を合わせるべく試し撮りを重ねます。真っ暗になるよりも少し青みが空に残っていた方が仕上がりは綺麗に見えますので、ホワイトバランスなども弄ったりしつつ、設定を探ります。そして、大体良い時間になって、設定も詰まってきたらいよいよ撮影開始。

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 これがトップに貼った画像と同じもの。シャッター速度は2秒。撮影間隔は3秒で250枚合成の結果です。本当は500枚に設定していたのですが、最初は綺麗に晴れていたのにだんだんと西の空から雲が流れてきたので、電源を切って途中で止めてしまいました。小さな雲のかたまりが流れていくだけでも、比較明合成していると全面雲に覆い尽くされてしまいます。そしてこの辺りは船がほとんど通らないので、海はそれっぽく残っていて綺麗ですね。

 そして左側には羽田を離陸した飛行機の軌跡が写ってます。ただし、ずっと長時間露光しているわけではないので、見ての通り細切れになってしまいます。これを面白いとみるか、残念と見るか...。


 前置きでも紹介したとおり、SDカードには途中経過の画像がすべて残されています。それを使うとタイムラプス風な動画ができるかも?と思いついてちょっとやってみました。iMovieで簡単に作れます。1枚0.1秒でコマ送りするとこんな感じになります。インターバル合成で最終画像が出来上がっていく過程が見られます。飛行機の軌跡が時々引かれていき、星の軌跡はじわじわと伸び、雲がだんだん広がってきます。もっと動きがあった方が良いと思いますが、こういうのも楽しめるわけで、なかなか面白いです。

 ちなみにK-3にはインターバル合成とは別に、動画モード時にカメラ内でインターバル動画(=タイムラプス動画)を4Kで記録する機能もあります。そっちを使ってみるのも面白いかも。

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 お次は少し目先を変えて、若洲海浜公園の航路標識灯台。背景の遙か遠くにある街灯りはほぼ都心方面です。寒い中じっと30分近い撮影が終わるのを待つのが辛くなってきたので、回数を100回に減らしてしまいました。ちょうど北西の方面を向いているので、星がぐるっと円を描く様子がそれでもわかりますね。やっぱりもっと長い時間撮れば良かったです(^^;

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 そして最後にもう一枚、東京ゲートブリッジ。今度は逆側から。撮影を終えて帰りがけに、こっちから撮るとどうなるんだろう... と、急遽100枚合成追加しました。これは3秒露出で4秒間隔撮影です。なので、飛行機の軌跡の切れ目が短くなっています。ここも船は来ませんが、海面は街路灯が反射して妙なことになっていますね。

 話は変わりますが、この若洲海浜公園、2020年の東京オリンピックでセーリング会場が建設されるという計画がありましたが、対岸の葛西臨海公園共々、競技会場建設の計画は中止になりました。このほのぼのとした海辺の公園がこのまま残ると分かって、何となくホッとしました。

 ということで、インターバル合成機能でちょっと遊んでみました。ちなみに電池の持ちを心配していたのですが、結果的に500枚合成を3回以上、合計2000カットくらいは普通に撮れました。よほどのとがない限り電池は心配なさそうです。予備が一個あれば完璧。それにしても、とにかく撮影に時間がかかるのが大変なのですが、どこか他にも良い場所を見つけてやってみたくなります。

 インターバル合成はもちろんPENTAX K-3だけの独自の機能というわけでなく、他メーカーでも同じことができるカメラはたくさんあるようです。PENTAXブランドのカメラに限ると今のところK-3のみで、K-5シリーズとK-50、Q7/Q-S1はインターバル撮影(999枚まで)はできるので合成は後処理でやれば同じことは可能です。K-S1とK-30以前のカメラではそもそもインターバル撮影ができません。 むしろGRのように一眼レフやミラーレスでなくても、インターバル合成をサポートしているカメラもあります。

2014年12月29日訂正
 ご指摘頂いて調べたところ、K-5シリーズ、K-50、K-30、K-01、K-r、K-7、K-20D、Q-S1、Q7、Q10、Qは999枚までのインターバル撮影機能が搭載されています。K-S1、K-x、K-mとK-200D以前のカメラはインターバル撮影機能自体搭載されていません。

 都会の風景と一緒に撮ると、インパクトはありますが何かウソっぽくなる面もあって、こういう写真は好き嫌いがあるでしょう。もちろん星降るような田舎に行って、前景など入れずに星の軌跡だけを撮るのにも十分使える機能だと思います。

関連エントリー(2014年12月29日追記)

 さらに完成度を上げるべく、後処理を加えてみました。