酔人日月抄

東京下町に暮らす写真とPENTAXとスキーと時代小説とお酒とプジョーを愛するある男の日常

FUJIFILM X20の使い心地

 みんぽすさんよりお借りし、1ヶ月にわたって試用してみたFUJIFILM X20(←リンク先はいきなり音が出ますのでご注意ください)の感想をまとめておきたいと思います。FUJIFILMのXシリーズは、X-Trans CMOSセンサーなど最新かつ独自の技術を使う一方、ダイヤルオペレーションや光学ファインダーなど伝統的な操作系も取り入れるなど、「写真を撮る歓びを喚起する」ことをコンセプトとしています。最新作X20はその中でもコンパクトなボディにそのXシリーズとしてのエッセンスが凝縮された、ある意味一番Xシリーズらしいカメラではないかと思います。

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 一眼レフのサブカメラとして、いや、いざとなればこれ一台で何でもこなせる柔軟性と、ポテンシャルを持ったカメラとして、とても期待できます。


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高品位なボディ

 私がお借りしたのはブラックボディでしたが、ボディ外装の丁寧な仕上げはX-Pro1にも劣らないのではないかと感じました。手触りは良いし剛性あってしっかりしているし、ダイヤルはもちろんボタン類の操作感も非常に良くできています。私は個人的にあまり気にしないのですが、ストラップの取り付けも三角環方式ですし、「手にする喜び」の演出はほぼ完璧と言えそうです。

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FUJIFILM X20, F4, 1/340sec, ISO200, -0.67EV, PROVIA, 7.1mm レンズの沈胴機構とズームリングに電源ON/OFF機能を持たせたこともよく考えられていますが、レンズキャップの付け外しで微妙にOFFポジションから動いてしまうことが良くありました。クリック感を強めることは操作性の面で一長一短があるとは思いますが、ちょっと気になった部分ではあります。

 大きさは一般的なコンパクトカメラとしてはかなり大柄で、ほかにはあまり例がないサイズ感です。いえ、ニコンやキヤノンのコンパクト機の最上位機種はこのくらいなのかも。しかし重量はそれほど感じず、鞄に入れていても、肩からぶら下げていても、そして実際手にして写真を撮っていても、「小さいカメラだな」と感じます。デザイン的にボディの厚みが薄く感じるせいでしょうか。

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 モード&露出補正の2ダイヤルや、機械式レリーズ穴のついたシャッターボタン、ホットシューなど、ともするとレトロ路線に感じるXシリーズのなかでも、綺麗にまとまったボディで機能美を感じます。

超高画質

 X20のセンサーは2/3インチ、1200万画素のX-Trans CMOS IIが使われています。2/3インチというサイズはコンパクトカメラの中ではかなり大きい方ですが、画素数はわりと控えめです。そしてこのセンサーには像面位相差AFセンサーも埋め込まれているという意欲作です。

 「コンパクトカメラにしては」そこそこ綺麗に写るだろうとは思っていましたが、実際に写真を自分で撮ってみて、その超高画質ぶりにはとにかく驚かされました。いえ、掛け値なしに本当に「こんなに写るんだ!」と感心したカメラは久しぶりです。

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FUJIFILM X20, F4, 1/340sec, ISO200, -0.67EV, Velvia, 7.9mm 撮影機能は非常に多彩で、FinePixシリーズでサポートされてるような機能は一通り網羅されているのですが、メニューデザインと構成がX-Pro1に準じた仕様となっていることもあってか、あまり深い階層から特殊なフィルター機能などを呼び出す気にはなれません。
 結局はJPEG記録のままアスペクト比だけ3:2に設定し、露出モードは絞り優先かプログラムモードに、ダイナミックレンジやその他のパラメーターはほとんどオートのまま使い続けました。いじるのはフィルムシミュレーションと露出補正のみというシンプルな使い方が一番しっくりきます。

 高感度時のノイズの出方も自然で穏やか。ただし詳細に見るとやはり大きなフォーマットのカメラのようにはいきません。しかしISO400以下の常用感度域で十分に光のあるシーンでは、ブラインドテストをしたら本当にAPS-C機あたりとは見分けをつける自信がありません。そのくらい綺麗に写ります。

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 これはX-Trans CMOSの性能はもちろんですが、画像エンジンとレンズなど基本的な絵作りが丁寧になされてるが故ではないかと勝手に想像しています。何はともあれ、このサイズでこれだけの絵を生み出すという点が、X20の一番の特徴ではないかと思います。

光学ファインダー

 X20で写真を撮る上でとても重要な役割を果たすのが光学ファインダー。前機種のX10までは普通の実像式ズームファインダーでしたが、X20ではなんと透過液晶を組み込み、撮影情報が表示されるようになっています。光学ファインダーにここまで手をかけるFUJIFILMの心意気には本当に驚かされると同時に、光学ファインダー派としては拍手喝采したい思いです。

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FUJIFILM X20, F9, 1/950sec, ISO100, -1EV, PROVIA, 28.4mm 表示されるのはAFフレーム、露出モードと絞り値、シャッタースピードなど。露出情報が出ると言うだけで実用性は格段によくなります。ただしX-Pro1などのようにパララックス補正はされず、ある程度撮影距離が近くなると警告マークが点灯します。

 ビューファインダーですのでAFフレームは見えてもピントが本当はどこにあってるか見えないし、露出値がわかってもその結果どの程度の明るさの写真にになりそうなのかはわかりません。十分距離が離れていても画面の隅については勘と運に任せる部分も出てきます。それでも光学ファインダーにはEVFや背面LCDによるライブビューでは得られないものがあります。

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 ただ... 光学ファインダーもEVFもないのに無意識に覗こうとしてしまうカメラというものがあります。デザインや全体の醸し出す雰囲気がそうできているのだと思います。もう最近は慣れてきましたが、私にとってはPENTAX Qがそうでした。覗きたいのに覗けないのはそれはそれで残念なことなのですが、一方でこのX20は、せっかく光学ファインダーがついているのに、なぜか無意識に使っているとライブビューばかり使ってしまい、意識しないと光学ファインダーを覗くことがありませんでした。

 特にこれと言って説明できる理由はありません。感覚的なものなのだと思います。小さなフォーマットのカメラなので視野が小さいのが、残念な気持ちになるのかもしれません。

マクロ

 ここからはX20の気に入らなかった点です。一つ目はマクロ撮影。ワイド端ではレンズ前1cmまで近寄れるスーパーマクロがあるなど、マクロ撮影についてはそれなりに意識されているはずです。が、どうにも気に入りません。

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FUJIFILM X20, F4, 1/750sec, ISO200, PROVIA, 26.6mm なぜなら明るい4倍ズームがせっかくあるのだから、やはりマクロはどちらかというとテレ側を使いたくなるのです。しかしテレ端の最短撮影距離はマクロモード時でも50cm。換算112mmの画角と考えればそこそこ近寄れるような気はしますが、ワイド側とのギャップ、そしてコンパクトなカメラである、という感覚からすると、50cmと言う距離は果てしなく遠く感じます。

 ズームリングを回しながらフレーミングを考え、この辺かな?と思ったところでシャッターボタンを半押しすると、AF枠が赤くなりピントが合いません。何度かやり直すうちに「近すぎるのか?」と気がつき、少し後ろに下がったり、ズームを戻したりしてピントが合うところを探します。そしてようやくAF枠が緑になったところでレリーズ。でも、それって最初に撮りたいと思った写真ではなくなっています(ズームに頼るダメな写真の撮り方というのはこの際さておき(A^^;;)。

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FUJIFILM X20, F5, 1/680sec, ISO100, PROVIA, 16.7mm そしてもう一つ、そろそろ絶滅するかと思っていたマクロ切り替えがあるところも気に入りません。スーパーマクロと併せてAFレンジに関する設定は3ポジションもあるのです。マクロモードの謎はX-Pro1でもありました。マクロ域では光学ファインダーが役に立たないから、明確に使い分けを意識させるためにあるのかとも思いますが... それなら光学ファインダーに警告表示するだけで良いと思います。それで失敗写真を撮ってしまっても、カメラのせいにする人はいないでしょう。このX20を使うような人であれば。

シャッター

 もう一つ残念に思ったのはシャッターです。具体的にはシャッタースピードの上限が、解放時に1/1000secまでしかいかないことです。絞っていくと1/2000sec程度までは行くようです

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FUJIFILM X20, F2.5, 1/280sec, ISO400, PROVIA, 7.1mm これはレンズシャッターの宿命でもあり仕方がないのでしょう。しかしせっかく解放F2〜2.8のレンズを積んでいても、明るいところではほとんど使えない、ということになります。2/3インチということもあり、絞りを開けて背景をぼかすような使い方はそもそも間違っているのかもしれません。でも... やりたくなりますよね。フルサイズやAPS-Cには敵わなくても、1/2.3インチよりはずっとぼけやすいやすいのですから。

 比較するのはフェアじゃないかもしれませんが、PENTAX Qはレンズが小さいこともあって機械シャッターで1/2000secまで、電子シャッター併用で1/8000secまで使えますし、さらにNDフィルターも内蔵されていてON/OFFが選べます。いえ、X20のレンズを眺めていると、どちらも難しそうなのはわかるのですが...。

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FUJIFILM X20, F3.6, 1/1200sec, ISO100, PROVIA, 28.4mm 詰まるところ、桜や梅の季節だったのが災いしたのかもしれません。小さな花をテレ端でアップにし背景をなるべくぼかそう... といった撮影にはまったく向いていませんでした。

まとめ

 ということで結論です。X20に対する期待は良い意味でも悪い意味でも裏切られました。

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 「良い意味」というのは、画質の面で思った以上にポテンシャルを持っていること。これは本当に驚きました。PENTAX Qは確実に超えていますし、APS-Cや(持っていませんが)マイクロ4/3などとも十分に渡り合える気がします。このセンサーと画像処理エンジンで、より小型なXF2とか、あるいは新たな超小型レンズ交換式カメラ(Qマウント!)なんかあると良いなぁ、と妄想してしまいます。

 「悪い意味」というのは、ネガティブに感じた部分も書かせてもらいましたが、それらの欠点そのものと言うよりは、結果的にオールラウンダーではない、と私的には感じられたこと、です。それは単に期待していたのとは違った、というだけであって、とても尖った特徴を持つという点ではX-Pro1にも通じるところがあり、Xシリーズのカメラとして当然なのかもしれません。

 このカメラを持って旅行... 特に海外旅行なんか行ってみたいと思いました。旅先でスナップを撮る、記念写真も撮れる。そして時間があればじっくり写真を撮ることも楽しむ... という場合にはこんなに心強い味方となるカメラはないのではないかと思います。ちょっと今回はこの1ヶ月という試用期間では、すっかり味わい尽くすには奥の深すぎるカメラだった、と結論づけておきたいと思います。

ファーストインプレ:FUJIFILM X20 開梱 (2013年2月25日)
実写レビュー1: X20と散歩 (2013年2月27日)
実写レビュー2:X20で撮る蔵王温泉の旅 (2013年3月10日)
番外編: 焼鳥 よつは 2周年 (2013年3月12日)
実写レビュー3: 梅は咲いたか桜はまだかいな (2013年3月15日)
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