酔人日月抄

東京下町に暮らす写真とPENTAXとスキーと時代小説とお酒とプジョーを愛するある男の日常

2012年F1第7戦 カナダGP

 前回のモナコGPはちょうど海外出張中でイタリアにいました。日曜日はもちろんオフ。ミラノからモナコまでは電車を乗り継げば行けそうな場所だったので、いっそのこと夢のモナコGP現地観戦!と一瞬思ったりしたのですが、やはりチケット等いろいろ不確定要素がありすぎるので、結局モナコGP現地観戦は諦めて、帰国してから録画観戦しました。もうだいぶ過去の話なので、モナコGP観戦記は割愛します。

 ということで、モナコGPでは今シーズンの6戦目にして6人目の優勝者が誕生し混戦模様が続いています。このカナダGPはもう7戦目とあって、ここらでどこかのチーム、あるいはドライバーがタイヤの使い方に関して一歩抜け出すことで、シーズンの趨勢が見えてきてもおかしくない頃です。しかし今回もまたタイヤのおかげで波乱が生じ、7人目の優勝者が誕生することとなりました。

「タイヤを本当に労っていた」 ルイス・ハミルトン/マクラーレン

 気分屋でムラがあって安定性に欠け、暴れん坊キャラもほぼ定着し、マクラーレンの中でもバトンの方に評価が集まっていた中で、今回の突然の復活劇。特にタイヤ管理が苦手と言われていたのに、今回ばかりはコメントにある通り、タイヤを上手く使いこなしました。

 勝利の分かれ目は2回のピットストップ。1回目はタイミングの妙でヴェッテルの前に出たものの、同じくタイミングを上手くつかんだアロンソには前に出られてしまいます。しかし、暖まりが悪いピレリタイヤに手こずるフェラーリの様子を冷静に見極めて、アロンソのアウトラップ中に早々とオーバーテイク。見事に1回目のピットストップでトップを奪い取ることに成功しました。

 そして2回目のピットストップ。ハミルトンとマクラーレンはセオリー通りの2回ストップ作戦を敢行しただけ。でも結果的にはその手堅い作戦のおかげで勝つことができたと言えます。チェッカーまでステイアウトを選んだベッテルとアロンソの奇襲作戦に惑うことなく、自分のペース、作戦を最後まできっちり守り切ります。

 結局他の二人のタイヤは最後まで持たずにタイヤライフの終焉(いわゆる「崖」)を迎えたというのは幸運だったかも知れません。あるいは他の二人もほぼ同じタイミングで2回目のピットストップをしたとすれば、どうなっていたでしょうか? プレッシャーに耐え、複雑な状況をしっかりと理解し、タイヤをコントロールした上でできる限りのことをした結果の優勝。もちろん序盤から終盤まで一貫して周回ペースが安定して速かったのも事実。今回は久々に元チャンピオンらしい見事なレースでした。

 でも、バトンとハミルトンの結果がここまで大きく違ったというのは、やはりマシンやセッティングの方向性、タイヤの使いこなしという点で、まだまだ不安定であることの現れではないかとも思います。なのでこれでハミルトンも復活した... とは言い切れないのが今シーズンの面白くも難しいところです。

「ギャンブルが実を結ばなかった」 フェルナンド・アロンソ/フェラーリ

 フェラーリはいくつかのアップデートの末にここ最近本当に強さを増してきました。マッサもポイントが取れるようになったし、アロンソに至っては優勝争いが十分に出来るまでになったのですから。でも今回のレースでは、絶好調なハミルトンの前では尋常な勝負では敵いそうになく、誰もがアッと驚くギャンブルに打って出ます。

 1回目のピットインでアロンソ始め多くのドライバーが、オプションからプライムへ(あるいはその逆へ)スイッチしたのを見て、フジテレビの若手アナウンサーが放った「これで1回ストップの可能性が出てきましたね」という言葉に、解説者(と多くの口うるさいF1ファンたち)は「そんなわけ無いだろ!」と思わず突っ込んでいましたが、奇しくもあのアナウンサーの予言は当たったことになります。

 それもはちろん当初から予定した奇襲ではなく、2回目のストップタイミングを迎えた時点でひねり出した作戦に違いありません。その辺の判断は、突っ込みを入れた解説者が言い訳がましく説明したとおりで、1回目のピットストップのアウトラップでハミルトンに抜かれてしまったこと、ロータスが50周近くをプライムタイヤで走っていることなどを見て、優勝するための賭けに出たのでしょう。

 残念ながらその賭けにアロンソは負けてしまいまい、優勝できなかっただけでなく3つもポジションを失うという大きな代償を払うことになりました。ピレリタイヤのライフを頼りにするというのは、終わってみれば分の悪い賭けだったのでしょう。でもそこまでギャンブルに出たのは、未だマシンへの自信と信頼のなさの表れのようでいて、実は勝利への拘り、すなわちチャンピオンシップを戦えるという手応えの裏返しのような気もします。

「終わった後に分析してすべてを知ることは簡単だ」 セバスチャン・ベッテル/レッドブル

 せっかくのポールポジションを生かし切れず、1回目のピットストップで3位までポジションを落としてしまうと言う、ある意味グズグズのレース。今シーズンは一度の優勝があるものの、全体的には予選も決勝も目立たないような気がします。とはいえポイントランキングではトップからたったの3ポイント差で3位につけており、3年連続チャンピオンを狙うには十分な成績を残しています。

 さて、スタートにも成功し、ポールポジションからトップでレースを開始しながらもそれを守り切れなかったのは、ひとえにペース不足と言わざるを得ません。1回目のピットインまでにハミルトンやアロンソに対して十分なギャップを稼げませんでした。彼のレース戦略は、ハミルトンの猛追から逃げるようにして1回目のピットに入った時点で破綻していたのでしょう。

 そして問題はやはり2回目のピットイン。アロンソが優勝を狙って賭に出たのに対し、ベッテルは何のための賭に出たのでしょうか? 3位を守るためなら上位二人の動向は無視すれば良かったはず。むしろペースが上がらずグズグズしている間に、後ろからやってくる1回作戦組とのギャップが足りなくなり、入るには入れない状況だったのではないかと思います。

 いずれにしても消極的な理由だっただけに、賭けに負けてしまったあとの始末は迅速でした。結局タイヤが持たないことが分かった時点ですぐにピットイン。残り数周でしたが、最後までぼろぼろのタイヤでステイアウトし続けたアロンソをも結局オーバーテイクすることが出来、ポジションを1つ落としただけで済みました。

 それ以上に、アロンソに対してポイント差を詰めることが出来たのは大きかったかも。チャンピオンシップ的には、今回の結果は「損して得を取った」ことになるのかも知れません。

 小林可夢偉は9位に入りましたが、チームメイトのペレスは3位表彰台。同じ1回作戦でしたがタイヤを使う順番が違っただけ。可夢偉も基本的にペースは良かったのに、ピットアウト後にフォースインディアに引っかかってしまって万事休す。どうも運が少し足りないようです。今となっては誰も9位では満足しません。それは本人も同じはず。

 さて次は来週末、今年2回目のスペインでのレース。バレンシア市街地サーキットで行われるヨーロッパGPです。景色は綺麗だけど毎年単調なレースが繰り返されるんですよね。でも、可夢偉が2年前に素晴らしい結果を残した地でもあり、期待したいところです。