PENTAX K-x/K-5でテザー撮影

投稿者: | 2012年1月16日

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 「テザー撮影」とは「連結撮影」と一般的に訳されるそうですが、要するにPCとデジタルカメラを接続して、PC側から様々なコントロールをしつつ撮影する方法を指しています。ニコンやキヤノンでは「リモート撮影」と呼ばれ、純正のソフトウェアが配布(または販売)されています。
 一方、ペンタックスでは「PENTAX REMOTE Assistant」という名の純正ソフトウェアがあったそうですが、K-7以降のカメラはサポートされないままアップデートが停止し、現在はすでに配布自体がが行われていません。また、汎用的なテザー撮影機能を持っているアドビのLightroomも、当然のようにペンタックス機はサポートされていません。

 しかし、とある個人が自力で開発した”PK_Tether“というフリーウェアを使うと、最新のペンタックス機でもテザー撮影ができます。サポート機種はK200D, K10D, K20D, K-7, K-x, K-5, K-rとなっています。ちなみにこのアプリのアイコンは左上に貼ったようなもの。K-7/K-5の撮影モードダイヤルの意匠となっています。芸が細かいですね。

 ということで、面白そうなのでちょっと試してみました。ただし、このソフトウェアには一切の動作保証もサポートもありません。使用は自己責任となっています。

セットアップと実行

 セットアップは簡単です。カメラを付属のUSBケーブルでPCに接続して、カメラの電源をON。PC側でマスストレージとして検出されたら、”PK_Tether.exe”を実行するだけ。アプリが起動すると自動的にカメラを検出して接続されます。なお、この時カメラ側にSDカードが挿入されている必要があるそうです。PK_Tetherと接続しても、同時にカメラはマスストレージとして認識されたままです。

PK_Tether_0

 カメラとの接続に成功すると上のような画面になります。ウィンドウ内の右側、”Settings”エリアにカメラとレンズ名が表示され、各パラメータ選択用のボタン類が有効になり、右上に”Disconnect”ボタンが表示されれば接続に成功しています。左側の”Photo”および”Photos in camera buffers”エリアにはこの時点では何も表示されません。

何ができるのか?

 こうなると、ライブビュー画面がウィンドウ内に表示され、すべての撮影作業がPCで出きるのか?と思いがちですが、そうではなく、フレーミングなど構図を決める作業はカメラのファインダーで行う必要があります。PK_Tether側からオートフォーカスを作動させるこは出来ますが、ピントの確認もファインダーで行う必要があります。詳しくは後述しますがライブビューは基本的に使えません。

 PK_Tetherから制御できるのは、(撮影モードにもよりますが)絞りとシャッタースピード、ISO感度、ホワイトバランス、露出補正、フラッシュモード、フラッシュ補正、ドライブモード、記録サイズ、記録フォーマット、JPEG品質設定など、基本的な撮影機能となっています。

PK_Tether_2

 このスクリーンショットは試しにISO感度を選択しているところ。ちゃんとカメラがサポートしている感度が選択肢に現れます。ISO-AUTOに切り替えることも可能です。

 ただし露出モード、AFモード、AFポイント、測光モードはカメラ側で設定する必要があります。この辺についてはカメラによって動作に差があるので、これも別途後述します。

 また、現時点で試してはいませんが、インターバル撮影やバルブの制御、ブラケティング(カメラ内蔵の機能ではなくアプリ側で制御)も可能なようです。そして右下に”Camera debug mode on”というボタンがありますが、何が起こるのか分からないので触っていません。

撮影

 そして最後にカメラのシャッターボタンか、もしくはPK_Tetherの”Shutter”ボタンを押せばシャッターが切れ、撮影が完了します。下のスクリーンショットは撮影パラメータを変えながら5枚ほど撮影した状態の画面です。

PK_Tether_3

 セーブ中の画面表示。セーブ中はプログレスバーが出ますがJPEGなら一瞬で終わります。書き出された画像はバッファ画面から消えていきます。セーブする前はPK_Tether上で要らない画像を消したりすることができます。”Auto save”にチェックをあらかじめ入れておいた場合は、撮影すると同時に自動的にPC内に書き出されていきます。

 なお、PCに書き出される画像のファイル名は”IMGPxxxx.jpg”ではなく、”DCIM_xxxx.jpg”という名前が付きます(JPEGの場合)。カメラ内のSDカードカードには何も保存されません。撮影データはUSBを通じてPCに送られるだけとなります。

出来ないこと

 バグであったり、制限事項であったり、色々と出来ないこともたくさんあります。今回はK-5とK-xを接続してみたのですが、細かいところで動作に差がありました。

K-5の場合(F/Wバージョン:1.12)

  • 接続中も背面および右肩ともにカメラ側の液晶表示はされる。ただし右肩の液晶のバックライトは不規則に点滅する。
  • 右肩の液晶の撮影可能枚数の部分には”Pc-S”と表示される(下の写真参照)。背面液晶の撮影可能枚数の部分には”9999″と表示される。

 DSCF1605

  • 接続中もメニュー操作は可能。変更した設定はPK_Tetherに反映される。逆にPK_Tetherで変更した設定もカメラ側に反映され記憶される。
  • 撮影モード、測光モード、AFモード、AFエリアモードなど、ハードウェアスイッチは使用可能。切り替えるとPK_Tether上に即時に反映される。
  • ライブビューは一応動作する。ただしライブビュー状態でPK_Tetherからシャッターを切るとカメラはフリーズする。ライブビュー中でもカメラ側でシャッターを切ると正常に撮影できるらしい(未確認)
  • 動画モードは使えない。(フリーズする)
  • フリーズすると電源も切れなくなり、電池を一度抜く必要がある。

K-xの場合(F/Wバージョン:1.02)

  • 接続すると背面液晶は消灯する。MENUボタンもINFOボタンも反応しなくなる。
  • 露出モードダイヤルを回すとPK_Tetherに即座に反映される。しかし上記の理由により、AFモード、AFエリアモード、測光モードなど、MENUから設定する必要のある機能は変更出来ない。
  • PK_Tether上で変更した設定はカメラ側にも反映されそのまま保存される。
  • ライブビューは全く使えない。カメラ側のLVボタンを押すと、ミラーアップとともに静止画が表示されてそのまま即フリーズ。
  • 動画モードは使えない(フリーズする)
  • フリーズすると電源も切れなくなり、電池を一度抜く必要がある。

 私が試した範囲では概ね以上のような動作が見られました。インターバル撮影や連写はしていません。セーブしてバッファを開放することなく8枚以上の撮影をすると、フリーズ等の現象が起きるという報告もあります。

所感

 さて、このアプリが何に使えるかというと… 個人使用で言えば室内での”物撮り”かと思います。PC側で操作して撮影すると言うよりは、撮影は基本的にカメラで行いつつ、撮影データをSDカードではなくPCにダイレクトに保存するというような意味合いで。しかも保存前にバッファ上のデータをPC画面上で拡大して、ピントやブレの確認ができ、必要なカットだけ保存することができます。K-xはカメラ本体の操作に色々制限が出ますが、K-5だとそういう使い方が普通にできそうです。
 いや、今まで通り普通に撮って、SDカードをカメラから抜いてPCに差し込むのと、どちらが手間が少ないか?と考えると微妙なところかも知れませんが。

 そういえば、先日読んでいたCESにおけるPENTAX関係者のインタビュー記事に、このテザー撮影ソフトの話が出てきました。
  参考リンク:Pentax interview: We’re open to working with third-party developers
 正直何のこっちゃ?と思っていたのですが、なるほど、こういうことだったのかと納得しました。このPK_Tetherはペンタックスとは無関係な個人が、リバースエンジニアリングか何かをして勝手に作ったアプリですが、少なくともここまで動くと言うことは、カメラ側であらかじめそういう機能がサポートされていると言うことになります。K20Dまでは公式アプリがあったのですから当然ですけど。

 実際のところ、APS-C一眼レフを使うアマチュアにはあまり需要がないのかも知れませんが、645Dなど使用してスタジオ撮影する分野では非常に便利なソフトウェアなのでしょう。それでも最終的には、PCのアプリ上でライブビュー画像を確認ができれば使い道はいっそう広がりそうです。PCでのライブビューはキヤノンではすでに当たり前のように実現できている機能です。645Dはともかく、ペンタックスではカメラ側が対応していても、単にアプリ開発が間に合ってない(あるいは全くしていない)のでしょう。確かに、どうしても必要な機能ではないですけど、できると色々と使い道がありそうです。

DCIM_0000
PENTAX K-x, DA35mmF2.4AL, 1/15sec, F2.8, ISO200, +0.7EV, AWB

 最後に、何でもない写真ですが、K-xをPCにつないで、PK_Tetherを使ってシャッターを切り、PCに直接保存した一枚です。

 ということで、使用方法は簡単ですので、ペンタックスのデジタル一眼レフをお持ちの方は、一度試してみる価値があるかと思います。ただし、このソフトの使用は完全に自己責任であることを再度強調しておきます。カメラを壊してしまう可能性はゼロではありません。