酔人日月抄

東京下町に暮らす写真とPENTAXとスキーと時代小説とお酒とプジョーを愛するある男の日常

こいしり

こいしり (文春文庫)

こいしり (文春文庫)

町名主名代ぶりが板についてきた麻之助は、ついに祝言をあげることに。けれど花嫁を迎えに出ようとしたその時、悪友・清十郎の父が卒中で倒れてしまう。堅物の父・源兵衛から「かつて訳ありだった二人のおなごの境遇を確かめて欲しい」と頼まれた清十郎は仰天し―大人気「まんまこと」シリーズ第二弾。

Amazon.co.jp: こいしり (文春文庫): 畠中 恵: 本

 ついに、ようやく「まんまこと」の第二巻が文庫で発売されました。と言っても、畠中恵さんの作品は似たようなひらがなタイトルばかりでかなりの数になってきており、中には単行本で読んだものもあったりして、本屋さんの文庫新刊コーナーでこの本を見つけたときに「はて?これは読んだことあったっけ?」としばらく自信が持てなかったりしました。ちなみに、つい先日しゃばけシリーズの最新刊「ころころろ」が文庫で発売になっていますが、こちらも読んだのかどうか判然とせず、まだ買っていません(A^^;

 でまぁ、ブログの過去ログを辿れば、何を読んで何を読んでいないかは分かるようになっているわけで、この本はもちろん初読です。そして「ころころろ」は2年以上前にハードカバーで読了済みでした。自分が読んだ本も覚えてないのか?と言われそうですが、畠中恵作品は非常に面白くて大好きなのですが、あまりにも娯楽寄りということもあって、シリーズ全体でどんな話だったかは覚えているのですが、2年も間が開くと各巻一つ一つがどんな物語だったかは、かなり記憶が怪しくなってしまいます。それもこれらのシリーズの特徴と勝手に思っています。

 それはさておき、今作「こいしり」ですが、町名主の跡取りの若者、高橋麻之助とその悪友達が織りなす、時代もの青春ドタバタコメディ&ミステリーです。しゃばけシリーズはファンタジーに寄りかかってる部分が多分にありますが、こちらのシリーズはれっきとした人間ドラマ。そして畠中作品の常としてやはりミステリー仕立てなのです。同心や岡っ引きは出てこないので、捕り物というわけではないのですが、日常その辺で起こるちょっとした謎の事件を解き明かしていきます。

 町名主は江戸時代の一つの社会福祉および治安維持のための仕組みだったわけで、そこに主人公を据えるという着眼点はありそうでなかったプロットではないかと思います。お上に訴え出るほどのことではない民事事件を扱う町名主という立場は、町人達の間に起こるちょっとした事件を扱うにはピッタリな場です。

 今作でも麻之助のお気楽ぶりは存分に発揮されていて、小説内では「町名主の跡取りがあれで大丈夫なのだろうか?」と周囲から心配されているのですが、関係ないところからそれを眺めている読者から見れば、面白い上に粋でとても魅力的な人物です。自分もこのくらいの余裕を持ちたいものだと憧れさえ感じます。そんな麻之助の嫁取りが今作の一つのテーマ。タイトルの「こいしり」とは「恋知り」と字を当てるのでしょうか? そんなベタな恋愛物語ではありませんが、畠中さんらしい男女の愛情が実にさりげなく語られていて、読んでいてとてもホッとすること請け合いです。

 個人的にはこのシリーズ、しゃばけシリーズよりも好きです。ドラマ化にも向いてると思います。で、第三弾がすでに単行本で発売されているそうなのですが、なんと重大なネタバレがこの本の帯に書いてありました。読んでないから分からないのですが、これ、いいのだろうか? 解説で次作を紹介する一文の中でも、そこまでは触れてないのに...。

 【お気に入り度:★★★★☆】