酔人日月抄

東京下町に暮らす写真とPENTAXとスキーと時代小説とお酒とプジョーを愛するある男の日常

逆髪

逆髪―土御門家・陰陽事件簿〈4〉 (光文社時代小説文庫)

逆髪―土御門家・陰陽事件簿〈4〉 (光文社時代小説文庫)

八卦見の孫七は、縁談がある女の手に不吉な卦を見たことが原因で、ならず者たちに暴行される破目に陥る。男たちは、次に女が来たら卦は大吉と変えて言えと脅して去った。それを近くで聞いていた土御門家の触頭・笠松平九郎が跡を尾け、一人を捕捉する。だが、男は頑として口を割ろうとしないため、報奨金をつけた馬引きで正体を暴こうとするが…(表題作)。

Amazon.co.jp: 逆髪―土御門家・陰陽事件簿〈4〉 (光文社時代小説文庫): 澤田 ふじ子: 本

 昨年来読み始めた「土御門家・陰陽事件簿」シリーズの第四巻です。第三巻から少し時間が経ってしまいましたが、久しぶりに続編を読みました。主人公は土御門家の京都触頭、笠松平四郎。舞台は江戸時代の京都です。

 陰陽師が主人公とはいえ、このシリーズはファンタジーではありません。むしろ反対にものすごくリアルな人間の物語ばかりです。しかも武士や朝廷、寺社ものではなく、市井の商人や庶民の間に起こる事件を扱っています。京都を舞台にした小説はたくさんありますが、京都の下町、町民の姿を描いた小説は割と珍しいと思います。

 所々に京都の町の構成や行政の仕組みが解説されていたりして、なかなか面白いです。江戸の街作りにも様々な事情や知恵が生かされていましたが、京都は歴史があって皇居があっただけに、特殊な事情が数々あり、その影響が当然街作りにも出ていたようです。

 過去の三巻ではそれぞれに、笠松平九郎と掛け合いをする人物が登場し、彼/彼女に関わる物語が各巻ごとの背景のストーリーを構成していました。しかし今作では新たな人物は登場せず、第三巻で登場した謎の浪人、小藤左兵衛が引き続きキーの人物となっています。彼はこのままレギュラー入りするのでしょうか?

 が... なぜか今作はどうにもしっくり来ない物語が多かったように思います。展開は相変わらず面白いのですが、落ちがどうにも読めないというか、理解しにくいというか。澤田節には変わりは無くて、私自身が最近わかりやすい本ばかり読んでいたせいかもしれません。この余韻たっぷりで綺麗でキレのある終わり方にポカーンとしてしまうことばかり。

 いや、"綺麗"というのは必ずしも結末が美しいという意味ではありません。むしろどちらかというと、ハッピーエンドを信じて安心して読んでいられる類の小説ではないのです。そんな中でも最終話の「朱蛇地獄変」は格別です。何とも救いようのないおぞましい物語です。なのになぜか美しいと感じてしまうところが不思議です。

 【お気に入り度:★★★☆☆】