酔人日月抄

東京下町に暮らす写真とPENTAXとスキーと時代小説とお酒とプジョーを愛するある男の日常

イニシエーション・ラブ:乾くるみ

イニシエーション・ラブ (文春文庫)

イニシエーション・ラブ (文春文庫)

 

  珍しく時代ものではなく現代小説を読んでみました。と言うのも、友人からの強い勧めがあったから。とはいえ、なぜお勧めなのか?どんな話なのかは全く聞かされず、自分でも調べずに全く予備知識を持たない状態で読み始めてみました。この小説が、ある意味ミステリーであるとも知らずに。

 ミステリーと言っても、何か事件が起きてその謎解きをしていく... という類のものではありません。何も考えずに漫然と読んでしまうと、ミステリーも何もなくそのまま物語は何となく終わってしまいます。

 物語のジャンル的には、青春ラブストーリーみたいな軽い乗りのものです。20歳前後の登場人物達の、微笑ましい(そして懐かしい^^;)恋愛の駆け引きを中心に進んでいきます。ただし時代設定は非常に古く、約20年前の1980年代後半です。語り口は軽妙でとても読みやすい小説と感じました。若いとは言え男と女の物語であるからには、ドロドロしたものもたっぷりあります。でも、何というかどこにでもありがちな、普通の恋愛小説...
 ...と、思っていたら大間違いでした。

 読み進めるに従って、何とも言えない違和感を感じてはいたのですが、それは気を入れて読んでいなかったせいか、またはストーリーの組み立てが下手くそなだけではないか?と勝手に納得していたのですが、最後の20行くらいで突然「はぁ?何この展開!」となり、最後の2行で「何じゃこりゃ!?全然話が違うだろ!!」となってしまいました。いったい自分は何の物語を読んでいたのか? それが全く分からなくなるほど、全てがひっくり返されてしまいます。

 この本の"ミステリー"とは、作者が巧妙に仕掛けたストーリー展開の罠に読者が気づくかどうか?という点にあるようです。その謎に気づくか気づかないかによって、全体としてのストーリーは全く変わってしまいます。しかも、謎に気づかなかった鈍い読者には、最後の最後になって「大ハズレだよ!」と、目の前に突如突きつけられると。

 途中でその仕掛けに気づくのは女性に多いのかもしれません。ウブで純真な男性(=私^^;)は全く途中の罠に気づきませんでした。で、結局どうやってそれを知ったかと言えば、読後にネットの解説(ネタバレ)サイトを読んで、本当はどういう物語だったのかを理解しました。ちょっと邪道ですが、再読して再挑戦する気力もなかったので。

 で、謎を全て知った上での感想ですが... まぁ、仕掛けというか、ストーリーの組み立てとしては目新しくて面白いとは思いますが、あまり好きになれません。仕掛けに手が込み過ぎているわりに、結局は帽子からハトが出てくるだけのありふれた手品を見せられたような感じです。"読者を騙す"ことに力が入れられすぎているというか何というか。

 ↓以下、ネタバレを含みますので、白文字で書いてあります。未読で興味を持った方は飛ばしてください。それ以外の方は、文字選択して反転させてお読みください。

 マユが実は二股かけるようなしたたかな女性であり、辰也がどうしようもないバカ男だというのもまぁ、良いんじゃないでしょうか。でもこの二人に対して夕樹くんが純粋すぎて、あまりにもかわいそうですね。全く救われないし。その後どうなったのか知りませんが。続編があったりして?
 で、結局マユにできちゃった子供は謎のままなんでしょうか。単なる避妊の失敗? せっかくだからあれは本当は夕樹の子供だった、くらいぐちゃぐちゃなら更に面白いと思ったのですが、時制的にどうやら違うようです。


 ということで、本当は10行くらいで感想終わらせようと思ったら、意外にたくさん書いてしまいました(A^^; 好きではないけれども色々語りたくなる小説です。

 お勧め度:★★☆☆☆ (暇つぶしにどうぞ。3時間あれば読み切れると思います)