雨上がりは飛行機撮影の絶好のチャンス! 成田空港近くのさくらの山で翼端渦を狙う

投稿者: | 2018年6月30日

 飛行機の写真を撮るには晴れてる日を狙うことがほとんどだと思います。スカッと晴れた青空を背景に光を一杯に浴びて飛んでいく機体が一番美しいですから。でも写真的には少し背景に雲があった方が面白くなったりもするわけで、つまるところ空にカメラを向ける以上、光線状態や天候は飛行機撮影にとっては非常に重要なファクターを占めています。そういう意味では、雨の日は飛行機写真的にはオフシーズン… かと思えば実はそんなことはありません。

 飛行機写真の大家と言われる方々の素晴らしい作品を見ていると、やはり凡人には思いつかないようなシチュエーションで撮られたものが多く、中でも悪天候を逆手に取ったような作品は少なくありません。そう、雨こそ絶好の撮影チャンスであるわけです。とはいえ、私自身はやはり良く晴れた日にしか空港へは行ったことがありませんでいした。

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 先週の日曜日はちょうど朝まで降っていた激しい雨が上がり、午後には一機に晴れに転じるという予報が出ていました。せっかく手に入れたNikon D500で今までと同じような写真を撮っても面白くないと思い、敢えて雨の中クルマを成田に向けて走らせ、天気の変わり目を狙ってみることにしました。

 悪天候や天気の急変時に何か起きそうといえば成田空港です。湿気が高いだけでもヴェイパーが派手に出るだろうし、低い雲の隙間から一瞬太陽が差し込んだりするのも良いし、さらには成田で良く見られるという翼端渦なんかに出会えたら最高だな!と(A^^;。

 そういう捕らぬ狸の皮算用はだいたい幻に終わることが多いわけですが、今回は見事期待通りの翼端渦に出会うことが出来ました! これもNikon D500のおかげ!と言ってしまうのはちょっと違いますが、いずれにしろファインダーの中で起きた一瞬の現象をよく写し止めてくれました!

まさかの北風運用

 さて、まず向かったのは定番撮影スポットのさくらの山公園です。成田空港A滑走路の北端に位置する公園で、飛行機見物&撮影には絶好のローケーション。自然も豊かでトイレや売店、駐車場も整備されて環境も良いところです。ただし、公共交通機関によるアクセスはあまり良くありません。

 さて、ここで霞ヶ浦方面から旋回して南風に向かって着陸くる飛行機が、低く垂れ込めた雲を切り裂いてくる姿を勝手に期待していたのですが、現地に着いてみたらなんとこの日は滑走路が逆向きに運用され、さくらの山公園上空は離陸機が通過していました。

 もちろんそんなに珍しいことじゃないのですが、周囲にいた同業者達も「今日の風だと今すぐランチェンしてもおかしくないけど、羽田との絡みもあるしねー」みたいな会話をしていました。なるほど…。

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 こんな感じです。雨上がりですが滑走路上はやはり陽炎でメラメラでした。上空はそれほど問題なさそうです。一部雲切れて青空も覗いていたりして、狙い通りの天気の変わり目です。

 着陸機を狙うなら滑走路の反対側にある「ひこうきの丘」に移動しようかとも思ったのですが、さくらの山周辺の雲の状態がなかなか良さそうなので、しばらくここで撮ってみてダメそうなら移動することに。

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 LCCのA320は軽い上に離陸性能が良いので、さくらの山上空に達する頃は、かなり高度を稼いでいます。そしてまだ残っているどんよりした雲を掠めていきます。

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 頭上を過ぎた飛行機が飛んでいく北の空はまだこんなに分厚い雲の壁があり、そこに突っ込んでいく瞬間もD500の秒間10コマ連写に頼ればばっちり。

 さて、ここまでは分厚い雲に突っ込んでいく飛行機の姿は撮れましたが、狙っていた翼端渦とかヴェイパーとかは、発生しません。んー、やっぱりそんなに簡単には出会えないか… と諦めかけていたとの時チャンスが到来しました!

翼端渦を撮る!

 これまではLCCのA320やB737ばかりでしたが、滑走路の向こうに離陸スタンバイしているのはB777クラスの大型機です。これは離陸とは言えかなり低いところを飛んでいくでしょうから、もう少し違った姿が見られるかも?と期待してしまいます。

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 滑走路上はやはり少し雲が切れてきました。翼からヴェイパーは上がりませんが、エンジンファンはかなり水蒸気を発生させていることが分かります。飛んできた大型機は、アリタリア航空のB777-200ERで、スカイチームの特別塗装機です。ローマかミラノ行きと思いますが、かなり燃料を積んで重たそう。

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 頭上を過ぎて後ろ姿を見送る方向になると、先ほど同様一転して分厚い雲に覆われています。翼の上面からは派手にヴェイパーを上げ、翼端からも少し引きずってるようです。B777クラスの機体になると色々迫力が出てきます。

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 そしてさらに遠ざかっていく姿を見送っていると… 分厚い雲を抜けてさらに遠くの青空の切れ目に現れました。APS-Cの500mmでもこのくらい遠いのですが、何か起こりそうな予感がして諦めずに追い続けます。相変わらず翼上面にはヴェイパーが発生しています。翼により気圧が下がり揚力が発生してる証拠ですね。

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 そして来ました! 右翼側にクルッと雲が渦巻きを作り始めます。これはまさにあれですね、翼端渦!

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 D500のファインダーの中でこの渦巻きを確認し「キター!!」と喜びながら、秒間10コマで連写し続けました。まわりにいた同業者達も「出た!出たー!」と叫んでいます。そして早々にカメラを卸してしまった人が大慌てしてるのも何となく分かりました。

 ちなみに翼端渦とは、その名前の通り飛行機の翼の端っこで引き起こされる、気の渦巻きです。後方乱気流の正体でもあるわけですが、この渦巻きは飛行機が空を飛ぶ原理に通じる重要な現象であると同時に、ドラッグの原因(いや結果か?)でもあります。最近の飛行機の翼端にウィングレットが立っているのは、この翼端渦の発生を小さくして、ドラッグを減らす目的があります。

 B777-200ERはウィングレットもウィングチップも装備されていない大型機ということで、比較的派手な翼端渦が発生しやすい飛行機です。今回まさにその威力を見ることができました。

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 さて、続いてやってきたのはこれまた比較的大型機で、フィリピンはセブパシフィック航空のA330-300です。ですが、この機体はウィングレット付き。どうなるでしょうか?

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 ウィングレット先端からかなりハッキリした翼端のヴェイパーを引きずって行きました。これも可視化された翼端渦です。そして左翼側で周囲の雲を巻き込んでうっすらと渦を作っているのが分かります。

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 そのままズボッと雲に突っ込んでいきました。

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 その直後、機体は見えなくなりましたが、雲が左右からぐるっと巻き込んで渦を作ったのが見えました。翼端の渦は必ず下から上に巻くので、先ほどのNBオンラインの記事にも出てきたとおり、左は時計回り、右は反時計回りになって打ち消し合ってます。実物を見てなるほど!と改めて感心してしまいました。

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 A滑走路の北側はこんな感じでちょうど良い位置に雲が漂い、切れ間から青空が覗くという好条件がしばらく続きました。そしてその後やってきた中国東方航空のA320も派手なヴェイパーを上げつつ雲に向かっていきます。

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 そして、やや控えめながらやっぱりクルッと渦を巻きました!

超巨人機A380がやってくる

 そして滑走路上に現れたのは、現時点で世界最大の旅客機A380です。しかもこれまでお目にかかったことがないアシアナ航空の機体です。こいつが巻き上げる翼端渦はどんなものなのか、期待が高まります!

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 離陸してきました。ソウル行きなのでそんなに燃料は積んでいないのかもしれませんが、そうはいってもこの巨体ですから、A320などと違ってたっぷり滑走し、かなりゆっくりと上がってきます。

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 雲の切れ目で一瞬青空と太陽の光を浴びて超綺麗。ちなみにこれで260mmまで引いてますが、APS-Cですし相手は巨体だし、しかもかなり低いところを通過するので機首を切り取るのがやっとです。

 なお、260mmという中途半端なズーム位置にしたのはわざとではなく、Nikkor 200-500mmはなぜかズームリングの回転角が非常に大きく、シャッター切りながらテレ端からワイド端に一機にズームするのが難しかっただけです。実際超望遠ズームを手持ちで使ってると、支えるのがやっとでズームしてる余裕はあまりないので、これでも良いのですが、もう少しクイックになれば良いのにと思います。

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 さて、先ほどまでヴェイパーでまくりだった当たりにさしかかりましたが… うむ、翼上面にうっすらとモヤがかかってるくらいですかね。

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 その後雲に突っ込んでいきましたが、残念ながら結局渦巻きは見られませんでした。残念!

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 ということで、雲の状態や湿度などなど、微妙な条件が変わってしまったらしく、その後の離陸機はあまり面白い状態にはなりませんでした。それにしてもこのJIN AIRのカラーリングはすごいですね。こんなどんよりした中でも、キラキラしています。晴天の下ではどんな風に写るのやら。

 

ひこうきの丘に移動してみる

 さて、結局ランウェイチェンジも行われそうにないので、着陸機を撮るためにA滑走路の反対側、ひこうきの丘へ行ってみましょう。


 こちらも人気スポットで駐車場が混むのですが、裏の畑の脇にも駐車場が増設されており、かなり余裕が出来ています。

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 ですが、こちらは曇り空が背景になるだけで、特に何も起きずあまり面白くありませんでした。このあと急速に天気が回復したらそれはそれで良かったのですが、どうも中途半端な感じ。なので、早々に諦めて引き上げることにしました。

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 なお、この日関東の平野部ではは非常に綺麗な夕焼けが空に広がりました。雨上がりの雲が少し残った空の夕焼けってすごいですよね。そこまで残っていれば良かった… と言っても夏至を過ぎたばかりのこの時期、日没は午後7時頃ですから、ついでにと言うよりはそれはそれでまた狙って行かないとダメかと思います。

D500+200-500mm本格始動

 ということで、Nikon D500による初撮影記でした。

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 感想については改めて言うことはありません。まだAFの機能をしっかり掴んでいないのですが、それでもAFはなんの迷いもなく完全に信頼が置けるし、安定した秒間10コマのスピードとRAW+JPEG記録していても息切れすることなく無限にシャッターが切れいてく感覚は素晴らしいです。ファインダーも見やすく、ミラーの動作もキレがあって、手ぶれ補正のSPORTモードと相まって、旅客機くらいであれば、1コマ1コマ性格にギリギリのフレーミングに追い込める感覚は、ただむやみにシャッターを切って数打ちゃ当たる戦法をとってる感があまりなくて、楽しめます。

 そして気に入ってるのはシャッターフィール。ミラーやシャッター幕など可動部が小さいせいか、爆速なわりにショックはほとんど感じず、しかも秒間10コマというスピードでありながら、1コマ切りが出来るくらい絶妙なシャッターボタンの重さとストロークも、私の感覚に合っています。じつは、K-1/K-1 Mark IIは秒間4.4コマしか出ない癖に、連写モードにしてると1コマだけ撮るのが難しいんですよね。必ず2コマ切れてしまうという感じがありました。

Nikon 望遠ズームレンズ AF-S NIKKOR 200-500mm f/5.6E ED VR

Nikon 望遠ズームレンズ AF-S NIKKOR 200-500mm f/5.6E ED VR

 レンズの描写製についてはまだよく分かりません。今回の撮影も気持ち絞る設定で撮りましたが、そのうち開放を試してみなくてはと思っています。ただAPS-Cですから画面周辺部を使ってないので、あまり気にすることはないかもしれません。とりあえずの印象は非常に良いです。

 むしろF1に向けて心配なのはむしろ絞った場合の方かも。流し撮りのためにNDフィルター欲しいのですが、200-500mmはフィルター径が95mmもあるのでまともになNDフィルターの選択肢がありません。

 このシリーズは95mmがありますが、比較的古いフィルム時代からあるシリーズらしく、昨年PENTAXのDFA150-450mmに86mm版を使ったところ、ハイライト部の滲みがかなり気になりました。なので小絞りボケとどっちがマシなのかちょっと迷います。

 さて、出来たらF1の前にいちど百里基地あたりに行って、もう少し厳しい場面で使ってみたいところです。

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