F1と言えば今週はホンダ復帰の話題で持ちきりです。そして噂を超えて、本日とうとう正式に2015年からマクラーレンへのホンダエンジン供給開始が発表されました。鈴鹿の日本GPが5年という長期契約更新したあたりからの既定路線ではありましたが、これでようやく日本にとってF1冬の時代も終わりを告げ、また再び往年のブームが再来すればと思っています。
それはさておき定例の観戦記です。開幕フライアウェイ4戦ののち、3週間のお休みを経て夏のヨーロッパラウンドがいよいよ始まりました。まずはスペインGP、バルセロナの北に位置するカタロニア・サーキットが舞台となります。長いメインストレート、そして中高速でぐるっと回り込む特徴的な3コーナーなど、バランスのとれたレイアウトのコース。マシンとドライバー、チーム戦略の総合力が問われます。
よく晴れた暑い気候の下、やはりここもタイヤの使いこなしが肝となることに変わりはありません。総じて左側につらいコース特性があり、予選からレースにおけるタイヤ戦略、ピットイン戦略に各チーム頭を悩ませる様子がありありとわかる展開となりました。
「母国レースで優勝するのは3回目だが、初めてのようにとても感動している」 フェルナンド・アロンソ/フェラーリ
そんな中でも予定通りにすべての作戦を進め、完璧な勝利を手にしたのが地元のアロンソです。予選グリッドはイマイチながらも、スタート後早い段階ででメルセデスを抜き去り、1回目のタイヤ交換でレッドブルをアンダーカット。あとはひたすらトップを快走します。タイヤマネージメントもトップを走るドライバーには一番有利な条件となるわけで、ライコネンとの戦いも十分にコントロールした結果のことだったのだろうと思います。
絶対的なスピードはもちろん、ここぞというところで勝負強さ、そして作戦の巧さを存分に発揮したレース内容でした、もちろん地元の大声援も後押ししたことでしょう。今シーズン、チームの判断ミスで大量にポイントを失ってきたフェラーリ/アロンソですが、ここで復活となるのでしょうか?
過去数シーズンの例を考えれば、アロンソにとって前半戦のポイント数こそがチャンピオンシップ獲得に向けた重点課題の一つであるのは間違いありません。今年のマシンは最速でないにしてもそこそこ戦闘力があるようですし、セカンドドライバーのマッサも調子いいので十分なサポートが期待できますし、今のところはチャンピオン奪還にかなり手応えを感じているのではないでしょうか。それだけにマレーシアやバーレーンのようなつまらないミスをこれ以上しないことが重要です。
「残念ながらまた2位だった」 キミ・ライコネン/ロータス
「3位よりはまし」ではなく「残念ながら」ときました。ライコネンにしては珍しいコメントと思わず思ってしまいますが、普通に考えれば当たり前です。しかも今回はタイヤに優しいロータスのマシンの特性を最大限に生かし、トップチームでは唯一、完璧で無理のない3回ストップ作戦を敢行。しかもオプションタイヤをメインに使ったわけで、いったいどれだけ他のチームと差があるのか?と驚いてしまいます。
しかし理想的な4回ストップ作戦でトップを行くアロンソには追いつきませんでした。これまでのレースと違って予選もそこそこに決めて、スタート直後はベッテルとアロンソに続きにメルセデスを何とか片付けました。しかし少ないピットイン回数はアンダーカットなどピット戦略の自由度がほとんどなくなることを意味しています。しかもレース中のちょっとした位置取りの差で、数秒のアドバンテージはすぐに逆転されてしまいます。終盤、猛烈な追い上げを見せましたが、先頭の利を生かし切ってレースをコントロールしたアロンソには届きませんでした。
やはりピットイン回数を減らす戦略というのは、予選で失敗したときの奇襲として効果があるのであって、確実に優勝を狙うにはやや楽観的で安定性に欠ける作戦なのでしょう。タイヤへの優しさをピットタイミングの柔軟な選択のために使い、変則的な4回ストップ作戦をとっていれば、あるいは勝機はあったのではないかと、後出しかつ素人ながら思ってしまいます。
とはいえライコネンはこれで連続ポイント獲得記録を更新し、今シーズン、おそらく一番多く表彰台に上っているドライバーだと思います。そのため、ランキングも2位を維持し、トップのベッテルに対し差を詰めています。アロンソの勢いが不気味ですが、チャンピオンをとるには、やはりあと少し何かが必要なようです。
「トップ3のマシンは僕らにとって少し速すぎた」 セバスチャン・ベッテル/レッドブル
ベッテルらしからぬコメントにして、レッドブルらしからぬレース内容でした。アロンソとの直接対決を避け3ストップ作戦をとろうとしたものの、全くタイヤは持ちません。結局仕方なく4回ストップ作戦へ変更するというお粗末なレース戦略。これではどうにもなりません。それでも被害は最小限に食い止めたと言えるのでしょう。幸いマクラーレンは絶不調、メルセデスの2台はレッドブルより状況は悪く、チームメイトのウェバーもグズグズ、ロータスのグロージャンもグズグズでした。一方でマッサに行かれてしまったのが、唯一の予想外の失点でした。
フェラーリよりもタイヤに厳しく、メルセデス並みの一発のスピードもないとなるとかなり重症です。ベッテルとしてはニューウェイの巻き返しを辛抱強く待つしかないのでしょう。とはいえ現時点でポイントリーダーですし、昨年も逆転劇を演じてきたことを考えれば、状況はそれほど悪くないと言えなくもありません。
「下位からスタートするときはすべてが複雑になる」 フェリペ・マッサ/フェラーリ
長いスランプを抜け、復活著しいマッサ。昨年の日本GPにおいて、小林可夢偉から2位の座をかすめ取っていったのは、偶然ではなかったようです。予選で失敗した後、中段からスタートして表彰台フィニッシュした今回のレース内容は、アロンソに負けず劣らず素晴らしいものでした。
でも、マッサのスペインGPといえば… 数年前のガス欠事件が思い出されます。残り数周で燃費が厳しくなり「大幅なペースダウンをしろ、しかしポジションは守り切れ」と無茶名指令を無線で受けたマッサは、焦って”What can I do!?”とマジレスしていました。
思えばそういった無理なスパルタがマッサを苦しめスランプを引き起こしていたのではないかと思います。もちろん、チームオーダー合法化のきっかけとなった、ドイツGPの例の無情かつ冷徹な無線指令も含めて。彼は褒めて励ますことで実力(以上?)を発揮するタイプなのかもしれません。微笑ましいチーム無線はちょっとしたブームになりそうです。
次のレースは前半戦の山場とも言えるモナコGPが来週末に開催されます!