タイトルの意味はレースを見ていた方ならすぐに分かるとは思いますが、これについてはまた後で触れるとして、F1はいよいよヨーロッパへと戻ってきました。そのヨーロッパラウンドの初戦、スペインGPの舞台はバルセロナ郊外のカタロニア・サーキットです。
このサーキットは昔からオフシーズン中のテストで使用されることもあって、各チーム、ドライバーとも勝手知ったるコース。もちろん、長いストレートから各種様々なコーナーをバランスよく持つレイアウトが特徴です。
開幕後4戦を終えて改善ポイントについてデータも揃ってきたり、時期的にもちょうど良いタイミングと言うこともあって、シーズン最初の大規模アップデートが施されることも少なくありません。
Fernando Alonso / McLaren MP4-31 / 2016年 日本GP
ということで、中盤戦に向けての再スタートであると同時に、オフのテスト期間中を含むシーズン前半戦の総決算としての意味も持つレースです。前戦の感想で、もしかしたら潮目は変わってきたかも?と書きましたが、その流れが本物かどうか? このレースで見えてくるものはいろいろありそうです。
「ヴァルテリには十分なスペースがあったと信じている」 キミ・ライコネン
フリー走行3回目ではトップタイムを叩きだしたものの、予選ではとっちらかってしまい、4番グリッドに沈んでしまいました。そしてスタートは、ライコネン自身はもちろん前後のライバル達がみんな良いスタートを切ったため、1コーナーに団子状態で突っ込んで行きます。
右にはトップ争いから一歩引いて早めにブレーキをかけたボッタス、左からはロケットスタートで飛び出してきたフェルスタッペン。3ワイドのままシケインのようにうねるコーナーに飛び込んでいきましたが… 結果、ボッタスがまずライコネンの右リアに当たり、それで進路を乱したライコネンはアウト側にいたフェルスタッペンに当たってしまいます。
コース上に残ることができたのはボッタスのみ。ライコネンとフェルスタッペンはマシンを大きく壊し、リタイアとなってしまいました。
中継画像ではボッタスとフェルスタッペンに挟まれてライコネンが行き場を失ったようにも見えますが、ライコネンとフェルスタッペンは二人してボッタスのせいだと言ってるところを見ると、コース上での見え方はまた違ったのかもしれません。
フェラーリのマシンは好調な中、ベッテルと比べてなかなか結果につながらないライコネンですが、やはり予選で少しでも前に出る事が重要なのではないかと思います。あとはタイヤ作戦がちゃんとしていれば、今シーズンは久々の勝利があり得るかも?と期待しています。
いまだにどのサーキットに行っても圧倒的な人気を誇るキミのことですから、もし優勝したら大変な盛り上がりになることは間違いないでしょう。なんなら、ちょっと先になりますが鈴鹿で勝ってくれるのも良いのではないかと思います。
さて、そのキミ人気のすごさをうかがわせる出来事がスペインではありました。その顛末は以下の記事にあるとおり。
あるいは以下のYoutubeのF1公式チャンネルに上がってる動画が最高です。いい動画過ぎて何度も見てしまいます。
1コーナーで起きた3台の接触事故の結果、キミが早々にリタイアした直後、国際映像にどアップで映った小さな男の子は、顔をくしゃくしゃにして号泣していました。いや、そこまで泣かなくても… というのは大人の意見で、彼がどのくらいキミとフェラーリにぞっこんで、このレース観戦を楽しみにしていたのかは、この泣きっぷりを見ればよく分かります。
それにしてもフェラーリは粋な事をするもんです。いつもはクールで無表情でファンサービスに消極的と思えるキミも、さすがにこのときは穏やかな顔をしています。
「レースは予定通りに進まなかった」 フェルナンド・アロンソ
ここスペインは言わずと知れたアロンソの母国です。パフォーマンスも信頼性もボロボロのホンダパワーユニットに愛想を尽かし、次のモナコGPを欠場することがすでに決まっており、実際にアロンソはスペインGPが終わった直後にアメリカに飛んでしまいました。
彼にF1を戦うモチベーションは残っているのか? という疑問が残る中、それに追い討ちをかけるように、またもやホンダのパワーユニットはトラブルに見舞われ、金曜日のフリー走行を棒に振ってしまいました。
他社製のパワーユニットには着々とアップデートが加えられている中、ホンダは燃料系に小改良を施したに過ぎません。しかも信頼性の欠如は今までどおり。いったいどうなることやら… と諦めムードの中で土曜日に奇跡は起こります。
実際のところどうしてああいうことが可能だったのか分かりませんが、アロンソはQ1のみならずQ2をスレスレ10位で突破して見せました。それだけでもすごいことなのに、なんと続くQ3で1回だけアタックした結果、ウィリアムズとフォースインディアを差し置いて、トップ3チームのすぐ後の7位に食い込んで見せました。
マクラーレンが兼ねてより主張するようにシャーシの出来はよいと言うことなのか? アロンソと地元スペインのファン達が生み出した文字通りの奇跡なのか? あるいはホンダのパワーユニットもトラブルなく回りさえすれば、そんなに悪くはないと言うことなのか?
否が応でもレースに期待がかかりましたが、残念ながらいろいろな不運が重なっただけでなく、そもそもレースペースはこのマシンにはなかったようです。周回を重ねるたびに次第に順位を落として行き、結果的には12位でチェッカーを受けました。最下位ではないどころか予選同様にウィリアムズに勝てたのは良いニュースですが、一方で買い巻く以来再開を争っていたザウバーに負けたことを考えると、複雑なものがあります。
ホンダは2戦後のカナダGPでの大規模アップデートを予定しているようですが、それも遅れる可能性が出てきました。いったいどうなることでしょうか?
アロンソが欠場するのは今のところモナコGPだけとされていますが、それも本当なのかどうなのか? あまり話題に上りませんが、その辺もどうなっているのか色々心配です。
「これがあるから僕はレースをしている」 ルイス・ハミルトン
ここ2戦はいろいろ納得のいかないレースをして不機嫌さが目立っていたハミルトンですが、表彰台では中国GPの時に見せたような上機嫌を取り戻しました。その要因はベッテルと1対1の勝負が出来た上に、その結果レースに勝てたことにあるのは間違いありません。。
内容も悪くありませんでした。スタート遅れてしまった後、逆転のためにアグレッシブに変則的なタイヤ作戦をとり、ベッテルと2回のサイド・バイ・サイドのバトルをした後、見事に逆転して見せます。
今回の勝負を決めた分かれ目は、タイムの出ないミディアムタイヤのスティントでどれだけ我慢できたかにかかっていたと思います。ハミルトンはボッタスのアシストもあって、ほぼベッテルに離されずに着いて行ったのに対し、ベッテルは前評判どおり、ミディアムタイヤで大きくタイムロスしてしまいました。
ベッテルの視点から見れば、アンダーカットを恐れるあまり、1回目のタイヤ交換を急ぎすぎたことから、その後のレース戦略が後手に回ってしまったのではないかと思います。「ラップリーダーは自分から動かない」の鉄則は守るべきだったのかも知れません。
いずれにしろ、マシンのアップデートを経てもなお、メルセデスとフェラーリのスピードは拮抗しており、その結果この二人のポイント争いも熾烈を極めつつあります。このままもつれて進んでいってほしいものです。
一方で、ボッタスについては新パワーユニットが予定外に使えなくなってしまった事が不運の全てとは言え、途中でハミルトンのアシストのために、ベッテルをブロックする役回りを演じざるを得なかったことは、状況からして仕方がないこととは言え、やはりどこかにまだセカンド扱いの呪縛から解けていないことを露呈してしまいました。ボッタスの試練もまだまだ続きそうです。
次戦は伝統のモナコGP!
次のレースは来週末、何もかもが特別な伝統のモナコGPです。残念ながらアロンソが欠場しますが、代わりにバトンが戻ってきます。路面の悪い超低速コースは、ホンダのパワー不足を覆い隠す格好のチャンス。車幅が増えてグリップが上がった今年のF1マシンによるレースは、いったいどんなことになるのか楽しみです。