2年ぶりにニセコに行ってきました。ここ10年くらいは毎冬必ずニセコには通っていたのですが、昨シーズンは色々事情があって行けなかったので、今年はその反動もあって連休でも何でもない時期にまるまる1週間の休みを取って5泊するという贅沢をしてきました。
もちろん毎日スキーをして遊ぶわけですが、そうなるとゲレンデだけでは飽き足らず、パウダーを求めてコース外に出て(ニセコは一定のルールの下コース外滑走が認められています)バックカントリーの真似事をするようになってはや5年。ここ数年はガイドさんに案内してもらいつつ、アンヌプリ山のピークから北斜面やバックボウルを滑走していましたが、今回はさらに一歩進めてワイスホルンのCATツアーへ参加してみることにしました。
結論から言うと、想像を遙かに超える素晴らしいディープパウダー三昧な体験をすることができました。天気ばかりは自然相手なので祈るしかないのですが、私がニセコへ行った時期はまさに折からの寒波による大量の降雪に恵まれ、現地の人をして「ちょっと今日の雪は深すぎましたね」と言わしめるほどの、ものすごいディープパウダーが溢れていました。
それをわずかなCATツアー参加者だけで丸一日独占し、終日降りっぱなしのフカフカの斜面を滑り、転がりまくってきました。
ということで、反省点なども含め来年に向けての備忘録として、どんなに素晴らしいめくるめく夢のような体験だったかまとめておきたいと思います。
ちなみにトップに貼ったこの↑写真、大量の雪煙を上げて滑っているのは私です。この写真についてもあとで触れていきたいと思います。
ニセコワイスパウダーCAT
まずは私が参加したCATツアーの概要から。これは前回までガイドをお願いしていたHANAZONOパウダーガイドと同様に、ニセコ花園スキー場が直営しているCATツアーで、正式名称は「ニセコワイスパウダーCAT」と言います。↓以下が公式サイトです。
ツアー名称にもなっている「ワイスホルン」はニセコのスキー場が広がるアンヌプリ山から北西方向、イワオヌプリを挟んで二つ隣にある標高1045mの山で、その斜面に2009年まで営業していた「ニセコワイススキー場」がありました。今回私が参加したCATツアーは、この閉鎖されたスキー場のゲレンデ跡とその周辺を滑るというものです。
本格的バックカントリーと違って、自分でハイクアップする必要はなく、上り行程は全てCAT(雪上車)を使用します。そのCATの定員が12人なので、必然的にこのツアーは一日あたり12人限定となっています。降りっぱなし、積もりっぱなしの広大なスキー場跡をたった12人で丸一日滑るという、他に例を見ない贅沢を味わうことができます。
ただし、本当にディープパウダーに出会えるかどうかは天気次第。降雪がなくても1日12人しか滑らないので、営業しているスキー場と比べると、ノートラックに出会える確率は格段に高いのですが、それでも降りたて積もりたてのフレッシュパウダーに敵うものはありません。
ツアー参加日の1週間くらい前から、天気予報と積雪量を見ながら、ドキドキワクワク楽しみにしていました。
ガイドも英語で参加者はほぼ外国人
当日朝はホテルまで迎えに来てもらえます。まずは花園スキー場のゲレンデベースに集合し、必要な書類に記入したり、注意事項を説明受けたり、装備を確認したりしていざ出発。花園スキー場からワイスまでは車でほんの10分ほどです。
ワイスホルンの麓で待ち構えていたのは、こんな雪上車です。これに乗り込んでさっそく山頂へ向かいましょう!
車内はこんな感じ。結構立派でふかふかなシートが付いていました。2×2のシートが3列で計12席。このツアーが12人限定である所以ですが、真ん中の補助席にはガイドが3人。CATの操縦士と助手席にスタッフがもう1人乗るので、実際には計17人が乗っています。
山頂に到着するとこういう状態でした。麓では無風の中深々と雪が降ってる状態でしたが、やはり山の上は風が吹き抜けて横殴りになっています。しかし吹雪と言うにはほど遠く、視界はそこそこあって悪くない状態です。
うっすらと太陽は出ているので写真で見るより実際は明るいのですが、こういう天気は雪面のコントラストが全く出なくて雪景色的にカメラ写りは悪くなります。それはもう諦めることにしましょう。それよりも雪の質と量の方が重要です。
なお今回の写真は先日手に入れたばかりのOLYMPUS TG-5と、GoProの動画+写真モードで撮影しました。明るさとかホワイトバランスか一応調整はしたのですが、雪景色はやればやるほど分からなくなってくるので適当なところで手を打っています。変な色合いに見えたならスミマセン。
さて、みんなスキーを履いて準備が整ったら、ブリーフィングです。わざと横文字で書いたのは訳があって、このツアー中ほぼ全ての説明が英語だったから。この写真の真ん中に立っているのが本日のメインガイドさんですが、彼はオーストラリア人でした。
そして参加者の中で日本人は我々一行だけで、あとはオランダ、スイス、ドイツなどなど、海外からこのニセコのパウダーを求めてわざわざ遠路はるばるやってきた人達ばかりです。
とはいえ補助のガイドさん達はすべて日本人ですから、言葉の問題は心配ありません。ベタベタのオージー英語はなかなか聞き取りづらくて難儀しましたが、分からないことは素直に日本人ガイドに聞けばOKです。
後は彼らの指示に従って滑っていくだけ、場合によってみんな一気に滑り出ることもあれば、間隔調整が必要な場合もあります。このCATツアーに参加するのはスキーヤーが多いようですが、今回も12人全員スキーでした。むしろガイドさんは4人中2人がスノーボードでした。
オープンバーンからツリーラン、ボウルまでバラエティに富んだコース!
さて、少し勘違いしていたのですが、このツアーで滑るコースはスキー場だった時代のコースばかりではありません。というかコースはむしろCATの通路に使われていて、滑るのはそれ以外の斜面が多かったと思います。その点はバックカントリー風味を味わえます。
例えばこんな感じで、以前はゲレンデだったのかも?と思わせる緩くて長い長い斜面だったり…
ところどころ木が生えていたして何も目印がなく、恐らくスキー場だった時代はコースではなかったと思われる開けた広大な斜面だったり、いろんな斜面を滑っていきます。
写真ではそうは見えなくても、意外に斜度があったりするのですが、深いパウダーは斜度がある程度あったほうが滑りやすくなるので、コース跡ではないところの方が楽しいです。
なお山頂から一気に最後まで滑り切るのではなく、途中の要所でこうして最集合(”Regroup”という単語をここで覚えました)して、さらに先のコース説明がされます。必ずガイドが一人先行して状態を確認し、目印となるトラックを付けつつ進んでいきます。過去には途中ではぐれてしまう人もいたそうですが、基本的にはそういう心配はあまりないようになっています。
さらにはガイドさんは時折こうして弱層テストをして、雪崩の危険性を確認していたりしました。弱層テストについては話としては知っていましたが、実際にやってる現場を見せてもらったのは初めてです。今回は新雪が連日降り続き、新しい雪の層が多かったと思いますが、特に問題は無かったようです。
そして、広い斜面だけでなく時にはこんな白樺の森の中を駆け抜け…
ズドンと真っ逆さまに落ちているボウル状の急斜面に出たり、
そしていつの間に移動していたのか、下りきった先にCATが待っていてくれます。
板を脱いだらスタッフに渡すとCATに積んでくれます。メインガイドのオージーは How was it? と聞いてくるので Great! Beautiful snow! と心の底から答えてしまいました。
私が参加した1月下旬は、毎日毎晩雪が降り続き、まさに言葉通りの”Bottomless”なディープパウダーが体験できました。前日のトラックなど跡形もないし、大量の降雪と適度な風と軽い雪が組み合わさると、自分たちがつい1時間前に滑ってつけたはずのトラックも、ほとんど消えているという状態でした。
ファットスキーを履いていたら何の苦もなく立っていられる雪面も、ストックに体重をかけようものなら、ズボズボとどこまでも埋まって行ってしまいます。
この写真はわりと踏み固められた雪面ですが、そこですらこの状態。パウダーリングをつけていても関係ありません。なのでストックの使い方はゲレンデとは全く違うわけで、滑るにもかなり苦労しました。
ということで、この日の雪は冒頭に紹介したとおり、現地よよく知っているガイドさん曰く「今日はちょっとパウダーの層が深すぎて難しいね」というくらいなのでした。
ナチュラルリゾート ニセコワイスホテルで昼食
午前中は9時前から始まって4本滑るとちょうどお昼になります。たったの4本かと思われるかも知れませんが、ゲレンデと違って深いパウダーの斜面を標高差500m、滑走距離にして2~3kmを滑りまくるので、かなり体力を使うし足にも来ます。
ということでお昼ご飯はとても重要です。
昼食会場はここ。CATが最初に出発したゲレンデベース付近に、こんな立派なホテルが建っています。スキー場はすでに営業していないし、(冬の間は)周囲に特に何かあるわけでもないのに、今でもこのホテルは営業しています。ここのレストランが昼食会場となっていて、これもCATツアーの参加者向けに貸し切られています。
私が頂いたのはこれ、見ての通りのカツ丼です。メニューは松花堂弁当とカツ丼の2択となっていて、しかもCATツアーを予約した際にどちらか決めたもので、実に2ヶ月前から予約していたもの。松花堂弁当では量的に足りないだろうな… と思っていたのですが、他の人が食べているのを横目で見ていると、さすがにそれなりのボリュームがありました。
なおこのカツ丼、卵とじが変な感じでちょっと見た目がアレですけど、ごはんもカツも量はたっぷりで味も悪くありませんでした。疲れた身体に染みこんでいきます。このほかにコーヒーも飲み放題で、つかの間の休憩をゆっくりと楽しめました。
午後は最後の体力を振り絞って2本滑って終了!
昼食後はCATに乗って再び… ではなくて5度目の山頂へ。午前中は3時間以上あったのに対し、午後は2時間弱。なのでここは折り返し地点ではなく残りは2本となりました。カツ丼を掻き込んだものの、100%復活とは行かずそろそろ体力と脚力の限界を迎えつつあります。
私たちがゼェゼェハァハァいってる横で、同行した外国人の面々は全く疲れ知らず。私と同年代かもっと年上に見えましたが、みんな超元気そうでノリノリでした。スキーの足前はそんなに違わないように見えたんですけどね(^^;
なお、滑走中は目の前の雪ばかり見ていて周囲を見渡す余裕はあまりなかったのですが、この斜面が広がるワイスホルンもアンヌプリに負けず劣らず適度な斜面が広がる山で、人の気配がしない真っ白な世界はとても美しかったです。
しかしそこは明らかに人工的に手が入った、森のないコース跡が広がり、ところどころにこうしてリフトの残骸が残っています。
このワイススキー場は、花園スキー場の運営母体が買収したことで、現在はこのCATツアーが行われているわけですが、これがつなぎの企画なのか、このままこのゲレンデはスキー場として再開することなく、人数限定のCATツアーエリアとしてずっとやっていくのかは分かりません。
できればこのままでいて欲しいと思っています。
最後はこの日一日お世話になったCATのまわりで記念撮影大会。さらにいい大人達が雪合戦を始めるに至りましたが、両腕一杯に抱えても重みを感じないサラサラの軽い雪で、塊を投げつけても空中でバラバラの粉雪に戻っていくような、まさに「パウダースノー」とはこういうのを言うんだな、と実感するような雪でした。
滑走経路振り返り
さて、この日一日の滑走経路を振り返っておきたいと思います。OLMYPUS TG-5で記録したGPSログからGoogleマップに軌跡をインポートしてみました。
赤いピンはCATに乗り降りしたポイントです。こうしてスキー場跡全体をコース外も含めくまなく滑りまくったことがわかります。このマップだけでは分かりませんが、滑走距離はおよそ20km以上近くあったと思われます。もちろん全てディープパウダーです。そんな体験ができるところは、世界中でもそうそう多くないと思います。
GoProで動画も撮った
なお自己満足のために動画も撮ってきました。良くあるスキーやボードのイメージ動画のように綺麗に撮れていないのですが… 全滑走記録を紹介したいところをグッと我慢して、1分に編集した動画を1つだけ貼っておきます。
写真同様に動画でもそうは見えないかも知れませんが、前半はけっこうな急斜面のディープパウダーを、雪煙を上げながら快調に滑ってきます。斜度が緩やかになった後半、コースが絞られて前の人達が刻んだトラックに乗ってしまい、期待したほどスピードが落ちません。
ゴールも見えてきたところでスピードオーバーを感じ、速度を落としたくなったのですが、斜度のないパウダーでしかもトラックに填まってるとあっては、スキーを横にずらすのが難しく、ならばノートラックの雪面に出てスピードを落とそう… と迂闊にトラックを外れたところで、急に足下だけブレーキが掛かり、身体は前に投げ出され一回転しつつ雪に埋まってしまった… という顚末が映っています。
もちろん痛くもなんともないのですが、とにかく笑ってしまって最後は一人でゲラゲラしているという動画です…(A^^;
なおその時にGoProが同時撮影していたスチル映像はこれ。雪からもがき出たらなぜか太陽と自分のスキーが頭上にあるという状態でした。ここでジタバタしていると、ますます頭が埋まっていくという蟻地獄状態でしたが、とにかく笑いしかこみ上げてきませんでした。
滑走写真も撮ってもらった
最後に、このCATツアーではガイドの一人が写真係として、我々の滑走中の写真を撮ってくれます。観光地のようにそれをプリントして1枚1000円で買わされる… のではなく、なんと太っ腹にもオリジナルのデータをそのままWEBにアップロードしてくれるのです。自分が滑ってる姿を見ることはほとんど無いので、これは超嬉しいサービス!
ということで、恥ずかしながらその中から何枚か格好良く撮れてるカットを貼っておきます。なお、トップに貼ったのはその中の一枚です。ボケッと突っ立ってるようで滑ってる感が希薄なのですが、雪煙の上がり方が良い感じで、ピントも露出もバッチリ決まってるので気に入っています。
それからだいぶ引きで撮られたこれも良い感じ。壁紙にしたいくらいです。斜度もたっぷりあって、私みたいなへっぽこでもフェイスショット浴びまくりでした。
横から撮ってもらったこれも良いですね〜 特に意識していなくてもファットスキーはちゃんとテールが沈んでトップが雪上に出てくるんですよね。滑っていてもすごい浮力を感じます。
でもってこれ。一番滑ってる感がありますが、多分、思いがけない斜度と目の前の木をよけるために、慌ててるところではないかと思います。内足は持ち上げすぎなのではなく、斜面がこのくらい急なのですが、お尻が沈んで後傾になってることに変わりはないかも…。
ということで、まだ他にもあるのですが、これも自己満足なのでこの辺にしておきます。自分の滑りを外から見ると色々気付くことがあります。とは言え動画で撮られると多分かなり凹んでしまうと思うので、スチルでちょうど良かったです。ちなみにカメラはニコンD7100にレンズは18-200mmでした。
晴れているとアンヌプリや羊蹄山をバックに、まるで雑誌かWEBの広告のような出来過ぎの写真後撮れるそうですが、雪質最高で快晴という組みあわせは本当に奇跡に近いわけで(私が参加した翌日がそれに当てはまったかも…)、それはまたいつかの楽しみに撮っておきたいと思います。
この思い出で1年を過ごしていく…
ということで、ワイスCATツアーは想像していたよりもかなりハードでしたが、雪にも恵まれ素晴らしいディープパウダー体験ができました。これを味わってしまうともうゲレンデでは物足りなくなりそうで怖いです。それなりに費用がかかるものですが、内容を考えると絶対にお得だと思います。
今回の素晴らしい思い出だけで、今年も1年なんとか生きていけそうです(^^; 来シーズンも是非このCATツアーに参加したいと思っています。