新年撮り初めはインターバル合成による東京湾岸の星空撮影に挑戦

投稿者: | 2018年1月8日

 大晦日に書いた昨年の振り返り記事の中で、2017年ベストショットとして福島で撮った星景写真を選びましたが、それらの星空写真を見返していて久々に星空撮影に挑戦してみたくなりました。と言っても街灯りにまみれた都内では、肉眼でオリオン座が見えれば良い方で、写真を撮るにしても出来ることは限られています。

 明るい都会で星空を撮るひとつの方法がインターバル撮影結果の比較明合成です。インターバル撮影と多重露光の合わせ技であり、これを使うと明るい町灯りの中でも、点像としてはほとんど見えない暗い星も、軌跡にすることでそれなりに写し込むことが出来ます。
 
 この手法はインターバル撮影が出来るカメラであれば、合成作業は後からPhotoshopなでも出来ますし、あるいは最近のカメラならカメラ内で合成作業まで出来る機種も珍しくありません。PENTAXの場合はK-3以降で概ねサポートされており、もちろんK-1にも「インターバル合成」という名前の機能が搭載されています。

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 以前にK-3でやったことがありますが、K-1でも「インターバル合成」をやってみることにしました。撮影地は東京ゲートブリッジ脇にある若洲海浜公園です。

K-1のインターバル合成機能

 まずはPENTAXのインターバル合成機能についておさらいです。上に書いた通り、これはインターバル撮影と多重露光を同時に行うもので、設定パラメータが多く、最適設定を見つけるのはなかなか大変です。


 これが3年前にK-3でやってみたときに書いた記事。今になって読み直してみてもそんなに変なことは書いてないようで安心しました。違うところがあるとすれば、今回はRAWで撮っていることと、ノイズリダクションとか気にせずAUTOのままにしています。あと、AFは使わずライブビューでMFしてピントは決めました。

 さて、それに加えK-1ではK-3と比べて「インターバル合成」機能自体が、アップデートしいくつか設定可能なパラメータが増え、より便利になっています。

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インターバル合成の設定画面

 「インターバル合成」機能は従来同様、ドライブモードの中に設定があります。基本的な設定項目は、撮影待機時間(=撮影間隔)、撮影回数(=合成枚数)、開始トリガー、合成方法、それに途中経過を全てファイルとして残すかどうか? です。

 この中で大きく進歩したのは、撮影待機時間に「最短」という項目が増えたこと。シャッタースピードと合成処理に必要な待機時間から、撮影間隔を見積もる必要がなく、最速最短でやって!と、カメラに任せきることが出来ます。時刻が重要な撮影でなければ「最短」が一番便利です。

 もう一つは開始トリガーの種類が大幅に増え、セルフタイマーやリモコンが利用可能となりました。これによりリモートケーブルがなくても、1枚目からブレを気にする必要がなくなりました。これらはK-1だけではなく、K-S2から取り入れられています。

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「撮影待機時間」のカスタマイズが可能

 さらにカスタム設定の中では、撮影待機時間の設定として2つの動作から選ぶことが出来るようになっています。ひとつは露光時間も含めて撮影間隔で指定する方法。6秒間隔で100回撮影すればちょうど10分となり、撮影開始時刻と終了時刻を正確に見積もることが出来ます。

 もう一つは露光時間を含まず撮影間隔指定する方法で、シャッター速度によらず常に5秒おきに撮影する、などの動作が可能となります。

 K-3までは露光時間を含んだ「撮影間隔」指定のみだったのですが、シャッター速度が遅くしがちな星景写真などでは、シャッター速度が秒単位になりやすいため、あまり短い時間を指定してしまうと、カメラの処理が追い付かず動作が思った通りにならないことがありました。

 しかしこれも上に書いた通り「最短」という設定がそもそも出来るようになったので、それを使う限りはこのカスタム設定はどちらに設定してあっても影響はありません。

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インターバル撮影中のAFに関するカスタマイズ設定

 もうひとつはAFの動作設定です。1枚目の撮影時にピントを合わせた位置で固定するか、撮影ごとに毎回AFを動作させるかを選ぶことが出来ます。ただのインターバル撮影時はともかく、インターバル合成時はMFでピントを最初から固定してしまうのが基本なので、これも関係ないカスタム設定と言えそうです。

 ということで、今回は以下のような設定で撮りました。

設定項目 内容
レンズ D FA15-30mmF2.8:16mm設定
露出モード 絞り優先オート
シャッター速度 0.5秒:露出補正-2/3EV(撮影間隔に対し本当はなるべくシャッター速度を長くしたい)
絞り F2.8というか開放(焦点距離÷F値=口径が大きい方が集光力が高くなる… はずなので)
ISO感度 1600(合成によるNR効果があるのでノイズなどはあまり気にしないで感度重視)
ホワイトバランス AUTO(RAW撮影なので気にしない)
記録フォーマット RAW
フォーカス マニュアル(ライブビューで事前にしっかり合わせておく)
レンズ補正 OFF(RAWなので撮影時は無関係、RAW現像時に適用するも可)
手ぶれ補正 OFF(インターバル合成モードに設定すると自動的にOFFになる)
ノイズリダクション AUTO(RAW記録なので気にしない)
撮影間隔 「最短」に設定
撮影回数 500回

 前回と比べると、RAW記録にすることでホワイトバランスなど、多くの項目について無視できるようになりました。露出についてはマニュアルにしなくても差し支えないだろうと言うことで、絞り優先のままで撮りました。

撮影結果

 さて結果ですが既にトップに貼った通りですが、再掲します。

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 はい、こんな感じになりました。Fの字が輝いているのは若洲海浜公園にある航路標識です。その向こうには東京ゲートブリッジの一部があり、行き交う車やトラックの灯りが複雑な軌跡となっています。さらにその向こうには小さく写っているのでは都心の夜景です。

 ちょうど北の方を向いているので同心円状に回転する星の軌跡を写すことが出来ました。この時期北西のこのあたりには天の川がまっすぐ立っているはずなのですが、さすがに東京では気配すら感じられないし、そもそも星の軌跡を撮ってるので天の川については何ともしがたいところです。なお、右上スレスレに点で写っているのが北極星だと思います。

 そして東京の空なのでヘリコプターや飛行機が写っていますが、破線になっているのはもちろんインターバル撮影しているから。さらに航路標識の真上あたり、一番高いところを真っ直ぐ写っている軌跡は、途中で消えていたりすることを考えると、もしかしたら人工衛星とかなにかその手の飛行物体かも知れません。

 さらにさらに、左下に移っている緑色の不思議な光の軌跡は、釣り人が投げる発光する浮きと思われます。

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 もう一枚撮りました。少しカメラを西の方に向けて、東京ゲートブリッジの本体部分を無理矢理入れてみました。左側に何重にも写っている軌跡は羽田を離陸した飛行機のものです。

 ということで、インターバル合成は1枚撮るのに非常に時間がかかるので、今回はたっぷり時間と手間をかけた割りに、得られた結果はこの2枚だけです。

 もちろん深夜までじっと粘ることも出来ますが、この日はこのあと満月直後の月が東から昇ってきて、さらに空が明るくなってしまいそうだったのでここでやめておきました。それに寒いし、撮影中はやることなくて暇ですし(A^^;

 なお、今回の撮影結果には実はあまり満足していません。何となく思ってたのと違う感じがするんですよね。どこがどうと言えないので、対策が難しいのですが、また再度挑戦してみたいと思っています。

東京ゲートブリッジの夕景

 せっかくなので、インターバル合成撮影をするまでの待機中に撮った他の写真を少し貼っておきたいと思います。

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 現場に到着したときはちょうど日没を迎えた時刻でした。完璧な快晴を期待していたのですが、ちょっと雲が地平線上に沸いてきたのが気になります。なお、ここからは富士山もよく見えるはずなのですが、それもまた雲の中に埋もれてしまっていました。富士山はこの前たっぷり見てきたのでまぁ良いです。

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 夕日を浴びたゲートブリッジも綺麗です。

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 間もなく完全に日は沈みました。この日はそんなに焼けませんでした。空気が澄んでる証拠でしょうか?

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 はい、これまで何度も撮ったことがありますが、マジックアワーの東京ゲートブリッジ。何度見ても綺麗ですね〜。無粋な雲が残念。

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 最近「アドバンスHDR」で撮るのがちょっとしたマイブームになっています。ここでもやってみましたが、これはダメですね。まったく合いませんでした。夕焼けの東京ゲートブリッジは素直に撮った方が良さそうです。

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 ということで、インターバル合成で撮影するポイントへカメラを設置。こんな感じで星の軌跡がこうなって… と試し撮りしながら脳内シミュレーション。もう少し暗くなったら撮影開始としよう… と思って撮ったのがこれ。そして結果は既にお見せした通りです。

使用したカメラとレンズ

 本文にも少し触れましたが、星を写すにはレンズ口径(≠F値)が大きい方が良いはずなので、焦点距離が長くて、かつF値の小さいレンズが有利です。ということは基本的には撮像素子のサイズは大きい方が、画角とのバランスにおいてレンズ選択の自由度が大きくなります。もちろん、多少ならばISO感度でカバーできるかもしれませんし、そもそも結果にどの程度影響するかは私はよく分かっていません。

 やはり星空はなるべく広角で撮りたいということで、今回はDFA15-30mm F2.8を使いました。ただ画角が広いとそれだけ地上の光源なども入りやすく、フレアやゴーストの戦いにもなります。トップに貼ってある写真がワイド端の15mmではなく微妙にズームして16mmで撮ってあるのも、その辺のバランスを取ったためです。インターバル合成による都会の星景写真にとっては、ゴースト/フレア耐性は非常に重要ですね。

PENTAX 超広角ズームレンズ HD PENTAX-D FA 15-30mmF2.8ED SDM WR 21280

PENTAX 超広角ズームレンズ HD PENTAX-D FA 15-30mmF2.8ED SDM WR 21280

 空気が澄んでいて、日の入りが早い冬場の方がやりやすいのですが、またチャンスがあったら調整してみたいと思います。若洲海浜公園には風力発電の風車もあるし、葛西臨海公園の観覧車なんかも地上に写し込む景色としては面白そうです。人目を気にしないならもっと街中という手もあるか… とか色々妄想していますが、手間がかかるのでなかなか腰が重たいのが一番の問題かも。