フィルムのスローさを楽しむ:PENTAX LX + Distagon T* 2/35mm + PROVIA 100F で撮った近所の秋

投稿者: | 2017年12月19日

 連日大雪のニュースを目にする中で「紅葉の写真撮ってきました!」というと季節外れにもほどがあるわけですが、こうこういう周回遅れ感もフィルムならではのものかな?と思って、構わずにお送りいたします。

 スマホ含むデジタルカメラ全盛の現代、写真は撮ったその場でだいたいの結果確認ができるし、パソコンに取り込んでLightroomで子細にチェックし現像し、すぐにSNSに上げるとかブログを書くなんてことは当たり前で、むしろ賞味期限は撮影後1週間くらい?な感じで、1ヶ月前の写真となるともうアーカイブ的な扱いになってしまいます。

 しかしフィルムの場合はそうはいきません。新鮮さが命のデジタルに対し、フィルムは熟成させてナンボのもの…  というのは、勝手な思い込みで、必ずしもそうではないと思うのですが、真冬の寒さに震えながら、小さなフィルムに写る鮮やかな紅葉の写真を眺めるのも、なかなか良いものです。

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 この秋の間に少しずつシャッターを切っていったフィルムをようやく撮り終え、現像から上がってきたので、じっくりと熟成された紅葉写真を振り返っておこうと思います。

カメラとレンズとフィルム

 さて最初に機材を紹介しておきます。

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 カメラは今年初めに激安で衝動買いしたPENTAX LX。色々とボロボロですが基本的なところは動きます。レンズは昨年末にこれまた衝動買いしたコシナツアイスのDistagon 35mmF2 ZK。こいつは新品だったのでまだピカピカです。使わないともったいない! そしてフィルムはいつ買ったか思い出せないけど、冷蔵庫に入っていたフジクロームのPROVIA 100Fです。保存期限は2019年2月なのでまだまだ大丈夫でしょう。


 このLX、今まで何本かフィルムを通した際は、絞り優先モードで撮っていましたが、露出補正ダイヤルの目盛り板が取れて無くなってしまい、オート+露出補正で使うのは不便になってしまったので、今回はマニュアルで撮影しました。

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目盛り板がなくなってしまった露出補正ダイヤル

 ファインダー表示はちゃんと設定値とメーター指示値が表示され、直感的に差分(=露出補正量)が分かりやすいので、こうやって使う方がずっと便利なことに今更気がつきました。だんだんフィルムカメラの作法を思い出してきたところです。

フィルムの撮影手順を楽しむ

 ということで、以下撮影結果です。写真を撮った場所は本当にその辺の近所であり、特に説明することもないので、フィルムカメラの扱いについての駄文でスペースを埋めておきます。戯れ言であって特に本文に意味はありません。

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 紅葉はフィルム映えするかな?と思って久しぶりにPENTAX LXにPROVIAをを装填したのは1ヶ月以上前。それから数枚ずつ撮り進んで、巻き上げレバーが動かなくなったのは12月に入ってからです。

 わざわざ遠くへ出かけるときにLXを持って行く気力もなく、たまに持って行ってもバッグから引っ張り出す余裕もなく、結局近所の公園を散歩するときに持ちだしただけになってしまいました。

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 デジタルカメラなら下手したら1日に何百枚もシャッターを切ることもあるのに、フィルムだとそうはいきません。それでもピントや絞りを変えて似たような写真を数枚撮ってしまうのは、これこそ昔ながらのフィルムの作法だったのか? デジタルに毒されたが故の数打ちゃ当たる的な撮り方なのか? もはやよく分かりません。デジタルならあっという間にって撮ってしまう36枚も、フィルムだとなかなか終わらないのはどうしたことでしょう。

 さて肝心の撮影ですが、AF/AEに頼り切っている身には、MF/MEでの撮影というのはなかなか新鮮な作業です。スクリーンをじっと眺めながらピントリングを何度も往復させ、絞りを選び、露出計の表示を見ながらシャッターダイヤルを回し、これで良いのか?と自問自答しながら、最終的に確信が持てないまま重たいシャッターボタンを押します。

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 いかにも精密なメカが動作してシャッターが切れた感触と音は、正直なところ「これこそ本当に写真を撮ってる音だ!」というよりはむしろ「本当にこれで撮れたの?」と疑いたくなるような頼りなさを感じます。LXですだからなのか? この時代のカメラはみんなこんな感じなのか?

 しかし巻き上げレバーの滑らかな感触はさすがフラッグシップ機。しかしつい巻き上げを忘れて、ピントも露出も構図も決まって息を止めてシャッターを押したのに、ウンともスンとも言わず、あぁ、また巻き上げるの忘れた… と、全て仕切り直しするということをことを繰り返してしまいます。

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 さて、そうして長い長い36枚の撮影が終わったところで、キコキコとフィルムを巻き戻します。小さなレバーを回しながらフィルムのフリクションを感じるのも、今や滅多にない体験です。スプールからフィルムが抜けるときの引っかかる感覚には、いつも少し緊張します。寒冷地や薄いモノクロフィルムでもあるまいし、フィルムを引きちぎったことなんてないんですけどね。いや、フィルムが切れる可能性があるのは巻き戻しじゃなくて巻き上げ時か?

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 LXは手動巻き戻しですが、すでに壊れてしまったAF時代のMZ-Sなどワインダー入りのカメラの場合、巻き戻し中に盛大なモーター&ギア音が響き渡るので、あまり人目のあるところではやりたくない作業です。フィルムの巻き戻し音なんて聞いたことない人も増えてきたでしょうから、不審な機械をいじってるおじさんがいる!と通報されかねません(いや、考えすぎ ^^;)

 さて、そんなこんなでようやく取り出したフィルム。ベロは残すべきとか、完全に巻き込むべきとか、そんな論争もあったなぁ… と懐かしく思い出しました。残す派は少しでも感光の可能性を下げるため、巻き込み派は未使用フィルムと間違えないため、でしたっけ? ちなみに私は完全巻き込み派です。というか、自動巻き戻しのカメラは有無も言わさず巻き込んでしまったし、手動の場合もベロを残すように巻き戻し作業を止めるのは面倒ですから。

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 そして今やフィルムの現像を受け付けているお店もすっかり減ってしまいました。都内でもすぐに思いつくのはカメラ量販店くらいです。それも巨大な店舗フロアの中のどこに受付カウンターがあるのか、探し回ってやっと見つかる程度にひっそりしています。

 それでも写ルンですなどネガフィルムなら翌日に仕上がったりしますが、リバーサルフィルムはそうはいきません。前回リバーサルフィルムを現像に出したときは、なんだかんだで中3日くらいかかった記憶があったのですが、今回は中1日で仕上がりました。単に営業日の関係だったのかも。

 なおリバーサルですから現像のみ。スライドマウントはせずスリーブで仕上げてもらいます。

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 まずはざっとフィルムの入ったシートを眺めるという作業が懐かしいですよね。ドキドキする瞬間です。色鮮やかな小さなコマが並んでいるのを見て、少なくとも真っ白とか真っ黒とか、露出を大幅に間違えたことはなさそう。

 この段階で、あ、このコマは傑作撮れたてるかも!という目星はだいたい分かってしまうものです。あとはライトボックスとルーペでじっくりピントなどをチェックしますが、傑作だと思ったコマは、実はピンボケだったり、傾いていたり、余計なものが写っていたりして残念な気持ちになります。

 それでも今は結局デジタルカメラで複写し、データ化する段階でピンボケ以外のことはだいたい修正できてしまったりします。それが良いことなのか悪いことなのかよく分かりません。というか、そこまで込みで考えてしまうとフィルムとはいえ撮影が雑になるわけです。

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 でもフィルムでもトリミングと階調の出し方くらいは、プリント時に調整できました。白黒で自家現像、自家プリントするなら自分の技術次第ですが、カラーの場合はDPE窓口のおじさん(とは限りませんが)に、その写真を見せながら意図と要望を伝えるという困難な作業が待っています。思った通りの仕上がりを手にするには、相手が素人でも玄人でも大変ですし、よく考えたら自分の拙い写真についてのこだわりを他人に語るというのは、わりと羞恥プレイだったな、と思います。

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 ということで、今回撮影した写真はだいたい以上です。

 なんか、こうして並べて見ると、見事に同じような写真ばかりでした。35mmというどちらかと言うと広角寄りのレンズなのに、なぜか寄って切り取る、という望遠的な使い方ばかり。35mmF2というレンズの懐の深さに感心するとともに、自信がないとこういうのばかり撮ってしまいまうのか… と反省もしています。

 紅葉が美しくて何となく見栄えはしますが、反省しています。もう少しいけると思ったんですけどね。でも、逆にこのレンズをK-1につけると、多分こういう写真は逆に撮れなくなるんじゃないかな?と、少し言い訳しておきます。そう、デジタルでももっとこのレンズを使ってみなくては、と思いました。

デジタル化について

 さて、フィルムのデジタル化の方法は以下のエントリーに紹介した方法で行いました。

 これに補足するなら、光源はiMacの液晶ではなく、フィルム時代に買ったFUJIFILM製のライトボックスを使用しました。

 また、RAWファイルの現像に当たっては、デジタル的な色づけをなるべく避けるため、カメラキャリブレーション・プロファイルにはNaturalを選択しています。ただしストレート出力ではなく、それぞれのカットに合わせて階調の調整は行っています。

 あと問題はホワイトバランス。AWBではフィルムらしい色味ごと補正されてしまいかねないし、昼光固定でいいとも言えません。やはり光源ごとに合わせる必要があると思います。

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 なので、まずはES-1にフィルムをセットせず、こんな感じで光源を直接撮影したRAWファイルを撮っておきました。撮影時にマニュアルWBを適用するという方法もありますが、どうせRAWで撮るので、あとからLightroom上でこのグレー画像でホワイトバランスを取り、そのデータを全てのカットに適用しました。

 でも、これでPROVIAの色になったかどうかと言われるとちょっと自信がありません。むしろK-1っぽいと言われるとそんな気がしてきてしまいます。まぁ簡易的なデジタル化手法ですしそれはそれで良いんじゃないかと割り切っています。