酔人日月抄

東京下町に暮らす写真とPENTAXとスキーと時代小説とお酒とプジョーを愛するある男の日常

京浜運河工場夜景クルーズ船に乗って川崎のモンサンミッシェルを撮りに行く

 今年のゴールデンウィーク中はあまり遠出はせずに、日帰りで写真を撮りに行く大人の遠足を楽しんでいます。その最後を飾るのは憧れの工場夜景撮影ツアーです。一度撮ってみたかったんですよね、工場夜景。とは言えどこにどんな撮影スポットがあるかも分からないので、まずは海上から主要なところを巡ってくれるクルーズツアーに乗ってみることにしました。

 東京周辺で工場夜景の名所と言えば川崎の沿岸地区にあります。都内各所から海上ツアー船はたくさん出ていますが、私たちが利用したのは横浜を起点にするツアーです。しかもツアー名称は「“肉食系交通船”で行く!京浜運河沿いの工場夜景&横浜イルミネーション90分クルーズ」と書かれています。

 ん?「肉食交通船」とはなんぞや? さらに口コミによれば、この肉食交通船によるクルーズツアーのハイライトは「川崎のモンサンミッシェル」とのこと。は? 川崎ってあの川崎? モンサンミッシェルとはあのフランスはノルマンディー地方の海上の修道院??? と、ハテナマークで頭の中がいっぱいになります。

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 百聞は一見にしかず。考えても仕方ないのでとりあえず行ってみることにしましょう!

横浜大桟橋から出発する京浜運河クルーズ

 今回利用したのは「京浜フェリーボート株式会社」という横浜をベースに遊覧船を運航する会社が企画している「京浜運河工場夜景コース」です。詳細は以下のリンク先にある通りです。

 出港地は横浜の大桟橋... と言っても、もちろん国際客船ターミナルではありません。その脇に「ピア大さん橋」という遊覧船等が接岸する小さな桟橋がありました。何度かこの辺りは訪れていますが、こんな桟橋があったとはまったく知りませんでした。

 さて、このクルーズ船の出航時刻は季節や曜日によって異なるのですが、私たちが利用した5月5日こどもの日は午後6時半となっていました。ちょうど日没と同時に出発となります。

 さて、問題の「肉食交通船」とはなんぞや?ということなのですが、その答えはこのクルーズで使用される遊覧船にあります。

 サンタバルカと言う洒落た名前の船なのですが、その名に似合わずかなり無骨な船なのです。と言うのも、もともと遊覧船として作られた船ではなく、羽田空港のD滑走路建設工事において作業員の海上輸送をするための船だったそうで、現役当時は「交通船」と呼ばれていたものだとか。

 羽田空港の工事が終わってから遊覧船に転用されたそうですが、特徴としては大きさの割りに定員が多く、加速に優れ最高速度もかなり高い船だそうです。

 限られた時間の中で遠くまで行けるのですが、乗り心地等々、決して快適な船ではないと(^^; だから「肉食」と自称していると言うことのようです。

 なるほど。肉食上等! 望むところだ! ということで、どんなことになるのか乗ってみましょう。

夕暮れの横浜港を出航


 時刻はほぼ定刻の6時半。連休中とあってお客さんは多く、我々含めて30名ほどはいたと思います。遅刻した人がいたようですが、時間厳守と言うことで待たずに出発してしまいました。

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 ここが出港地の「ピア大さん橋」です。氷川丸がすぐ向こうに見えています。正面の船が「肉食交通船」のサンタバルカです。半分が室内、残り半分は後部デッキ。念のためライフジャケットを着て乗り込みましょう。

 写真を撮る目的なので後部デッキに陣取りましたが、出来れば船の右側のに座った方が良いと思います。私は間違って左側に座ってしまいました... が、主要ポイントでは船を止めてくれるので、それほど気にすることはないかも。

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 さて、出発したら大さん橋のすぐ脇を抜け横浜港を横断し、京浜運河に向かって行きます。その際、みなとみらい方面を見ると淡い夕焼け空と富士さんのシルエットがくっきりと見えました。夜景だから曇ってもいいやと思っていましたが、やっぱり良いお天気になって良かったです。

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 さて、肉食交通船はその威力を発揮して時速約20ノット近いスピードを出して夕暮れの京浜運河を疾走していきます。小さな船のデッキですから、当然ですがちらほらと波飛沫が飛んでくるのが感じられますが、特に気になるほどではありません(...と、この時は思っていました)。

暮れなずむ京浜運河:海芝浦〜扇島〜浮島


 まずは一気に川崎を目指しつつマジックアワーで急速に暗くなりつつある工場地帯を眺めていきます。

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 本来は先を急いで流してしまうところだったようですが、船長さんが「あ、ちょっと寄り道しましょう!」と言って、速度を落として岸壁に船を寄せます。そこは今いろいろと大変なことになっている東芝の京浜事業所があります。ここは一部でとても有名な「海芝浦」という駅があるわけですが、そこにちょうどタイミング良く電車が停車中でした。

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 「海に一番近い駅」と言われる駅は日本全国に幾つもありますが、ここもその一つ。実際に駅のホームが岸壁スレスレにあります。そしてこの駅は東芝のためだけにあって、一般人は改札の外に出ることが出来ません。

 工場夜景としては面白いところではありませんが、海からこの駅を眺めるという図は珍しいのではないかと思います。

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 扇町あたりにやってきました。この岸壁にはJFEスチールの製鉄所があります。ちょうどどこかから鉄鉱石かなにか、原料を運んできた船が到着し、荷揚げが行われてる真っ最中でした。特に右端のクレーンは忙しく働いていました。

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 いわゆる「キリン」と呼ばれるタイプではありませんが、ガントリークレーンと言うのでしょうか。格好いいですよね。あまり照明がついてないので夜になってしまうとよく見えなくなってしまうそうです。この時間帯に見られて良かったです。

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 そしてこれは同じく扇島にある川崎天然ガス発電所です。この横浜から川崎にかけての沿岸には非常に多くの発電所があることに今更ながら気付かされました。

 それにしてもだんだん工場夜景らしくなってきましたね。煙突と鉄骨の構造物、そしてキラキラ光る灯りが格好良いです。でもこの発電所はもっと遅い時間になってからが見頃と言うことで、帰りがけにまた寄ってみましょう。

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 さらに船は進んで京浜運河のほぼ最北端、浮島までやってきました。この先はもうすぐ羽田空港です。ここに並んでるタンクはJX日鉱日石エネルギーの石油タンク群と、ガスを燃やしているらしい煙突があります。煙突からは控えめのフレアスタックが上がっていました。

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 同じく浮島の東燃ゼネラル石油の石油工場。おぉ!なんだか分からない構造物や煙突が立ち並んでキラキラ光っていて、いかにも工場夜景らしいです。でもちょっと海からだと遠い...。

 この日は明るさ優先で24-70mmF2.8のみ1本勝負なので、ちょっと辛いところですが仕方ありません。そもそも揺れる船の上から手持ちですから、あまり長いレンズを持っていても使うのは難しそうです。

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 さて、浮島あたりから再び西の方を振り返ると、富士山がさらにきれいに見えました。左端にはランドマークタワー、中央付近には先ほど近くまで行った天然ガス発電所も見えています。

 さて、ここからがいよいよこの工場夜景クルーズの本番です。

塩浜運河から川崎のモンサンミッシェルと巨大なスタックフレアを見る!


 船は少し戻って水江と千鳥の間にある塩浜運河の奥へと入っていきます。ここが本当に素晴らしい景観でした。

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 というのはこれです。まだ少し光を残した空と、その手前にある格好いい構造物は東亜石油の京浜製油所の建造物。これを「川崎のモンサンミッシェル」と呼ぶそうです。まぁ、なるほど!と思うか、え〜!と思うかは人それぞれの感性次第でしょう(^^;

 ちなみに私は本物のモンサンミッシェルを10年位前に見に行ったことがありますが... 感想は控えておきましょう。

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 手前の岸壁にはそれほど大きくないですが、原油を積んできたのか、あるいは精製された油を積み出しているのか、船が泊まっていました。

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 小さくしか写っていませんが、船の上には作業員の方が何人かいて、こちらに手を振ってくれました。世間(含む私達)はゴールデンウィークで浮かれている中、お仕事ご苦労様です。おかげで世の中は何事もなく動いています。

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 さらに奥に入っていくとこんな建物がありました。もはやなんだか分かりませんが同じく東亜石油の石油精製工場の一部です。

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 ここはかなり近くて70mmにズームするだけでこんなにドアップにありました。まるでイラストみたい。

 この辺りでは船を止めてくれて船首のデッキも開放されます。と言っても小さな船なのでなかなかスリルがあります。その代わり邪魔なものが周囲にはなくて撮り放題!

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 この工場にはモンサンミッシェル以外にもう一つ見所があって、それがこの派手なフレアスタックをはき出している煙突。

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 船は思い切り近くに寄っていきます。そんなに近づいたら危なくないですか?というくらいに!

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 ほとんど真下まで来ました。ここまで来ると何とも言えないガスの臭いと、炎から伝わる熱を感じます。そしてもちろんゴォ〜!という音が間近に聞こえます。炎の上に写っているのは月です。この不要なガスを燃やす炎よりもさらに月は明るいんですね。

 なお本当かウソか分かりませんが、この煙突から巨大な炎が上がるのはとても珍しいこと(年間に数えるくらいしかない)だそうです。

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 さて、最後にもう一度川崎のモンサンミシェルを見ておきましょう。ちなみに最近隣にニトリの倉庫が建ってしまい、幾分景観が損なわれてしまったようです...。その倉庫が建つ前はもう少し遠くの海上からもよく見えたので、よりモンサンミッシェル感があったとか...。

横浜港への帰路とみなとみらいの夜景


 さて、すっかり暗くなった京浜運河上を一路横浜に向けて戻りましょう。時間も押してるようなので、肉食交通船はさらに速度を上げて突っ走ります。

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 その帰り道でももちろん周辺の工場夜景を楽しめます。これは東京電力の東扇島火力発電所。発電所ってなんでこんなにキラキラなんでしょうかね? 格好良いから良いですけど。

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 そして首都高速湾岸線の鶴見つばさ橋のすぐそばにあるのは、扇島パワーステーションという名のLNG火力発電所。こちらは東京電力ではなく東京ガスと昭和シェル石油が出資して建設されたものだそうです。

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 さらに往路でも見た川崎天然ガス発電所に再びやってきました。先ほどより暗くなったので灯りが余計に目立ってより美しい姿を見ることができました。なお、この発電所はJXTGエネルギーと東京ガスが出資して、比較的最近に建設されたものだそうです。

 先ほども書きましたが本当にこの辺りには発電所が多いです。もう一つ横浜よりに東京電力の横浜火力発電所もあります。なんだかまるでシムシティの世界みたい、ってちょっと思ってしまいました。

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 さて船は横浜のすぐそばまで戻ってきました。複雑に絡み合う高速道路は大黒ジャンクション。その向こうにあるのがおなじみの横浜ベイブリッジです。横浜のシンボルカラーであるブルーにライトアップされていました。

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 最後は海上からみなとみらいの夜景を眺めることができました。おなじみの景色のようですが、ちょっといつもと角度が違っていて少しだけ新鮮な感じです。

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 みなとみらいが新しい横浜の景色とすれば、氷川丸とマリンタワーは古い横浜のシンボル。でもこうしてこちらもライトアップされています。

 ということで、90分のクルーズは盛りだくさんで、めくるめくうちに終了となりました。工場夜景を本格的に見物し撮影したのは初めてでしたが、超楽しかったです。写真に関してはいろいろ失敗したこともあったので、是非再挑戦したいです。

航路のおさらい

 今回巡ったコースは↓こんな感じです。


 左下の横浜港を出て京浜運河を川崎の浮島まで行き、大師運河と塩浜運河の奥まで入り込みました。巨大なスタックフレアの煙突とモンサンミッシェルがあったのは、運河の一番奥に入り込んでるあたりです。

 90分と言う短い時間でしたが、こうしてマッピングしてみると結構長距離を移動しており、いろいろと盛りだくさんでした。

使ったカメラ

 撮影データにある通り、今回使用したのはPENTAX K-1とDFA24-70mmF2.8です。レンズは悩んだのですが、やはり手持ち夜景とあって明るさ重視にしました。また船の上でレンズ交換もままならないだろうと言うことで、レンズはこの1本に賭けました。超広角が必要かも?と心配しましたが、基本的にそんなことはなくむしろ望遠側が必要だったようです。

PENTAX ズームレンズ HD PENTAX-D FA24-70mm F2.8ED SDM WR 21310

PENTAX ズームレンズ HD PENTAX-D FA24-70mm F2.8ED SDM WR 21310

 工場夜景と言えば本来は陸上で三脚を据えて、低感度で絞り込み、たっぷり長時間露光するのが定番ですが、船の上からではそれは出来ません。高感度に設定し、絞りをなるべく開けてシャッター速度を稼ぎ、とにかく手持ち撮影するしかありませんでした。それでも最近のカメラは高感度性能が進化しているので何とかなるのがすごいです。

 感度はISO3200くらいは必須。ISO6400だとかなり安心できますが、今回は躊躇せずにISO12800まで使いましたので、それほどブレで失敗したカットはありません。単純な手ぶれだけではなく船の揺れや振動もあるので、完全に頼ることは出来ませんが、手ぶれ補正の性能もそこそこ重要かと思います。

 でも、やはり今度は陸上から王道の撮影方法でも撮ってみたいですね。撮影エイポイントを調査しなくては!

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 なお、船を下りてみたらレンズの前玉はこんなことになっていました。さすがにここまで前玉が汚れると、高輝度の光源周辺に滲みが出たりして撮影画像に影響がありました。それよりもこれ海水によるものですから、さすがに防塵防滴のPENTAXだから大丈夫!とは言えず、レンズだけでなく鏡胴各部やボディの隅々までしっかりと念入りに掃除しておきました。